3. 主要セットメーカーの調達方針、調達動向の実態把握
3.1 国内主要セットメーカーにみる調達方針や動向
日産自動車はグローバル調達を推し進めており、
2015
年までに日本で生産された部品 の比率を2011
年時点の約35%から 16%に半減させ、海外生産では材料も含めて 2015
年までに現地調達率100%を目指すとしている。
物流費用のかさんでいる部品をピックアップし、近接地域から調達を促進していく方 針であり、部品会社に対して、部品ごとにガイドラインを示し、日産工場内への工場立 地や隣接地への立地、近隣地区への進出を求めていくとしている。
ルノー・日産グループとして、部品(モジュール)品種数を大幅に削減するとともに、
1
モジュール当たりの生産量を拡大し量産効果を引き出す方針を打ち出している。また、新型車両設計技術である「日産
CMF(コモン・モジュール・ファミリー)
」を2013
年 以降、車両開発に導入し、これにより車のクラスを越えた共用化が可能となり、コスト 低減が可能であるとしている。CMF では、車を「エンジンコンパートメント」、「コッ クピット」、「フロントアンダーボディ」、「リヤアンダーボディ」の4
つのモジュールに 分け、各モジュールにバリエーションを設け、これらを組み合わせることで自動車の設 計を行うというものである。図表 200 日産
CMF(コモン・モジュール・ファミリー)の概念図
車両タイプ
ミニバン
SUV
セダン
ハッチ バック
エンジン コンパートメント
(フードの高さ)
フロア アンダーボディ
(車両重量)
コックピット
(座席位置)
リア アンダーボディ
(車両重量)
重い
中間
高い
中間
重い
中間 高い
低い 軽い 低い 軽い
(資料)日産自動車プレスリリース(2012年
2
月27
日)よりMURC
作成ホンダ自動車は、2010年時点において、2013年を目処に部品ごとに調達先を最大で 半分に集約し、調達地域を日米欧から新興国にシフトさせ、量産効果を高めて調達コス トを約1割減らすとともに、品質管理を徹底する体制を整える方針としている。
2012
年には、シビック、CR-V、アコードの3
車種について、排気量が異なるエンジンも搭 載できるよう基本設計を変更して車台を統合して部品を共通化するとともに、部品1種 類あたりの発注数量を引き上げ、量産によるコスト低減を図るとしている。Teir1
メーカーであるデンソーは、2009 年に全社横断組織である「DP-EM(DENSOProject for Emerging Markets)室」を設置し、現地にあった最適品質を実現するため、
開発、調達、品質など部品の設計から製造工程までの全面的な見直しを実施している。
また、中期経営戦略として設計から生産までを抜本的に見直し、「低コスト化技術」を 新たな技術分野として確立する「コストハーフ活動」を進めており、①最適機能、②最 適品質、③最適生産、④現地化推進を行うことで、製品技術での差別化により収益力を 向上させるとしている。
図表 201 コストハーフの取り組み
取り組み項目 概要
最適機能 ユーザー調査、競合調査により、機能・性能を絞り込み 最適品質 市場要求を満たす品質/性能に緩和
最適生産 現地工程に適した作りやすい構造
現地化推進 素材、型、設備の現地調達、現地設備の有効活用
(資料)株式会社デンソー、「2012年
3
月期第2
四半期決算説明会資料」をもとに作成図表 202 国内主要自動車メーカー、Tier1企業の部品調達動向
2009
年2010
年2011
年2012
年トヨタ自動車
地域仕様車の開発、部品の現地調達を徹底
し、生産までをすべて現地で完結する地域 最適設計を進め、このノウハウを他の新興 国市場や世界各国にも展開。 「BR
(ビジネス・リフォーム)現地生産・現地調達推進室」を新設、生産・調達の現 地化を迅速に進める。
系列サプライヤーの海外への進出を促進
して、現地調達率を引き上げることで、リ スクを分散。 直接納品を受けている 4,000~5,000種類の
部品のうち、半分程度を、車種を超えて使 えるよう設計を共通化 残り半分の部品は、地域ごとに最適なもの
を開発し、災害が発生してもほかの地域に 影響が波及することを防ぐ。 Toyota New Global Architecture
(TNGA)の導入、異なる車種間で部品・ユニットを 共用化し、開発の効率化と原価低減を実 現。
車種ごとの個別発注から、複数の車種をま
とめて発注する方式に変更、国・地域別の 発注も見直し、グローバル規模で一括発 注。部品の発注量を最大化し、調達コスト を大幅に引き下げる。 新興国では、日本以外からの現地調達率
(自国内に限らず)100%を目指す。
日産自動車
円高対策として、高級車においても海外部
品を採用。 国内生産に占める海外部品採用率を約 2
割から
2012
年に4
割程度に増やす計画。 ルーマニアの自動車メーカーであるダチ
アからプレス金型を調達。日産がルノー傘 下のダチアに金型技術を供与し、製造した 金型を世界の自動車工場に供給する体制 を整える。 日本製製品の比率を半減、日本で生産され
た部品の比率を35%から 16%に半減(2015
年まで)。 主要 15
車種で2013
年までに総コスト15%
減。
海外生産(新興国も含む)では材料も含め
て2015
年までに現地調達率100%を目指
す。 物 流 費 用 の か さ ん で い る 部 品 を ピ ッ ク
アップし、近接地域から調達を促進。部品 会社に対して、部品ごとにガイドラインを 示し、日産工場内への工場立地や隣接地へ の立地、近隣地区への進出を求めていく。 ルノー・日産グループとして、部品(モ
ジュール)品種数を大幅に削減するととも に、1モジュール当たりの生産量を拡大し 量産効果を引き出す。ホンダ自動車
コミューター( 2
輪)の8
割の部品について、グローバルで、
3
社程度の部品メーカー から調達する形に切り替え(「C8G3」)。現 地調達率を下げ、グローバル調達を加速。量産効果によりコストダウン。
現地で調達できる部品をまず理解し、部品
のほうに合わせて図面を作るというアプ ローチを徹底。 2013
年をメドに部品ごとに調達先を最大で半分に集約するほか、調達地域を日米欧 から新興国にシフト。
量産効果を高めて調達コストを約1割減
らすとともに、品質管理を徹底する体制を 整える。 シビック、 CR-V
、アコードの3車種について、排気量が異なるエンジンも搭載でき るよう基本設計を変更して車台を統合。約
3
万点とされる部品を金額ベースで4~5
割共通化する 部品1種類あたりの年間発注数量を現在
の4倍の最大240
万個に引き上げ、今後3~4年で3車種合計の調達費を3割減ら す。
デンソー
現地にあった最適品質を実現するため、開
発、調達、品質など全社横断組織「DP-EM(DENSO
Project for Emerging Markets)
室」を設置し、部品の設計から製造工程ま での全面的な見直しを実施。
ブラジルにテクニカルセンターを設置、各
拠点にある営業・技術・事業企画・調達な どの機能について順次DNBR
に集約し、南 米全体の今後の事業成長を支える体制を 構築していく。 「デンソーグループ・グローバル中期方
針」にダントツのコスト競争力を持つ、グ ローバル調達・生産・供給体制の構築を掲 げる。 インド北部のハリヤナ州グルガオンでテ
クニカルセンターを開所、日本のデンソー 本社の調達部門と協力して、インドで調達 できる原材料についての評価機能も担う。 北米市場では日本からの CKD
部品の輸入を半減、設備の現地調達率を大幅に高め る。
アイシン精機