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調査設計

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 104-109)

本節では、まず、なぜ化粧品業界を調査実施対象として選択したのかについて、消費プロセスに おける価値共創の基準に基づき、第一項で検討したい。それから、第二項では、質問票の設計や使 用される測定尺度の出典などについて詳しく紹介したい。

第一項 調査実施対象の検討

本研究のキーワードは、消費プロセスにおける価値共創である。本研究では、消費プロセスにお ける価値共創を、企業と消費者との間のインタラクションによるタイプと、消費者間のインタラク ションによるタイプに分類して検討する。調査実施対象を選定するまえに、まずは、それぞれのタ イプのインタラクションの特徴と必要な条件を明確にしなければならない。

企業と消費者との間のインタラクションによる価値共創を実現するためには、企業と消費者、特 に、従業員と消費者との直接的な接触、または双方向的な対話が必要となる。従業員が顧客と容易 にかつ頻繁に接触したり、コミュニケーションを行ったりすることが可能な場所は、小売店舗だと 考えられ、それは、第二章の第二節第四項「ブランド・コミュニケーションとコンタクト・ポイン ト」で述べた購買時コンタクト・ポイントに当たる。近藤[

2013

]は、小売店舗を、「企業と消費者が 相互作用を通じて経験価値を共創するためのプラットフォーム」と特徴づけた。また、

Pine and

Gilmore

[

1999

]によれば、小売店舗では、販売員は単なるサービスの提供者ではなく、「顧客とショ

ッピング経験を共創する一方の当事者」でもある。要するに、価値共創の実現には、マーケティン グ・コミュニケーション手段としての人的販売が重要であると理解されよう。今日、多くの小売業 者はリアル店舗のみらなず、ネットショップも経営している。ネットショップはリアル店舗と異な る特別な運営の仕方や特質などを持っているため、本研究の調査対象から除外することにする。つ まり、本研究では、実在店舗のみを考察する。

消費者間のインタラクションによる価値共創に関する研究は、主にブランド・コミュニティに集 中している。第二章の第三節第二項「価値共創とインタラクション」で述べたように、消費者間の インタラクションは、企業と消費者との間の一種の間接的なインタラクションだと見なされる。な ぜならば、一見すると企業がインタラクションに参与していないように見えるが、消費者たちが企 業によって提供された資源や情報をめぐってコミュニケーションを行っているからである。特に、

ブランド・コミュニティの場合、企業がプラットフォームを提供し、キャンペーンなどを開催する ことで、消費者間のインタラクションをより一層促進している。そうしたタイプのインタラクショ ンの接点は、購買後コンタクト・ポイントと影響コンタクト・ポイントだと考えられる(第二章の 第二節第四項「ブランド・コミュニケーションとコンタクト・ポイント」参照)。近年、インターネ ットの迅速な発展と普及に伴い、リアルなコミュニティより、ネット上のコミュニティの規模と影 響力が圧倒的に大きい。ゆえに、本研究では、ネット上のブランド・コミュニティに限定して調査 を行うことにする。

上記の内容をまとめてみれば、本調査の対象となる業界は、リアルな小売店舗とネット上のブラ ンド・コミュニティの双方を持ち、従業員と消費者との間、また消費者と消費者との間で、インタ ラクションが積極的に発生するという条件を満たさなければならない。そうした条件を満たしてい る業界は数多く存在しており、具体的には、アパレルを代表とするファッション業界、先端技術が 応用されたパソコン業界、携帯電話業界、家電業界などが挙げられる。ブランドビジネスを重要視 する化粧品業界においても、価値共創の現象がしばしば起きている。

製品を販売する前に顧客の肌の状態を見ながら、ヒアリングを通して肌の診断を行い、一人ひと りに合った方法をアドバイスするカウンセリングが、化粧品メーカーの従来のマーケティング手法 である[香月

2010]。顧客の美容に関する悩みや気になっているところを尋ねることによって、顧客

のニーズをより明確かつ正確に把握し、顧客を満足させる製品やサービスを提供することが可能に なる。また、香月[

2010

]によれば、人間の基本行動として「自分の話を聞いてもらいたい」という 願望があり、それは販売員と顧客とのインタラクティブなコミュニケーションを通じて達成される ことができ、顧客により高い満足度を感じさせる。近年、技術の発展に伴い、カウンセリング用ツ ールが大きく進化している。以前はスキンケアチャートのみが使用されていたが、現在、多くの化 粧品メーカーのビューティーアドバイザー(販売員)がタブレットを使って美容アドバイスを提供 する[大本

2016]。また、第二章の第四節第二項「企業と消費者との間のインタラクションによる価

値共創」で紹介したように、

SK-Ⅱ

の店頭では、ビューティーアドバイザーは「マジックリング(Magic

Ring

)」という独自の肌シュミレーションマシンを使い、キメ、ハリ、シワ、シミ、くすみ、ツヤと いう

5

つの要素から、顧客の肌の状態をチェックする(図

2-24

参照、

p.72

)。今日、高性能な肌診 断マシンを用いて、測定された肌の状態や問題点などを機械で数値化し、顧客に説明しながら最適 な製品を紹介する新たなカウンセリングサービスが、化粧品店頭では頻繁に行われている。化粧品 メーカーはそうした創意工夫を加えることにより、顧客とのインタラクションの頻度と品質を高め ている。

ここ数年、インターネットの発展と普及に伴い、ファンと共にブランドを育てていく「共創コミ ュニティ」が、化粧品業界においてもよく見かけられるようになってきている。たとえば、業界大 手の資生堂が

2014

年にオープンしたオフェィシャル・コミュニティ「

SHISEIDO

おめかし会議」(図

2-12

参照、

p.43)

、コーセーの主力メイクアップブランド『

ESPRIQUE(エスプリーク)

』が

2015

に立ち上げた共創コミュニティ「Dressing Room by ESPRIQUE」などが挙げられる。また、第二章 の第二節第六項「クチコミとブランド・コミュニティ」で述べたように、

2000

年代に入ると、ユビ キタスネットワーク、特に

SNS

Social Networking Service

:ソーシャル・ネットワーク・サービス)

の急速な普及のため、ブランド・コミュニティが大きく変容し、

Facebook

Line

Twitter

WeChat

Instagram

などでのブランド・コミュニティが登場した。化粧品メーカーはそれらの

SNS

を利用し

て、オンラインキャンペーンを開催したり製品の画像をアップロードしたりして、消費者間のイン タラクションを積極的に促進する。

上記の内容をまとめてみれば、化粧品業界においては、リアルな小売店舗とネット上のブランド・

コミュニティの双方が存在し、従業員と消費者との間、また消費者と消費者との間では、インタラ

クションが積極的に発生するという価値共創の条件が満たされている。それゆえに、本研究では、

化粧品業界を調査実施対象として取り扱うことにする。

第二項 質問票設計と測定尺度

本調査のアンケートにおける「化粧品」とは、化粧水、乳液、美容液、日焼け止めクリームとい ったスキンケアするための基礎化粧品と、ファンデーション、アイライナー、アイシャドウ、口紅 などを含むメークアップ化粧品の両方を指す。矢野経済研究所の調査によれば、

2016

年度の日本国 内の化粧品市場規模は、前年度比

102.9%の 2

4,715

億円となり、そのうち、スキンケア製品を中 心とする男性用化粧品の市場規模は、わずか

1,192

億円だけであった。化粧品の消費量や製品カテ ゴリーの豊富さなどの指標からみれば、言うまでもなく、女性が化粧品市場の主役である。それゆ えに、今回の調査対象を女性のみにした。

アンケートのはじめに、被験者の年齢と職業について尋ねる。それから、被験者に以下の①と② の条件を同時に満たしている化粧品ブランドを一つ書いてもらう。その化粧品ブランドについては、

被験者が「思いつかない」を選択した場合、アンケート終了となるように設定した。

① そのブランドを購入する際、専門販売員によるカウンセリングサービス、肌テスト、メーキャ ップサービスなどを受けたことがある

② そのブランドのコミュニティサイトや

SNS

公式アカウントなどを閲覧している、もしくは閲覧 したことがある

それ以降の質問は全部、被験者が書いた化粧品ブランドについて答えてもらう。すべての質問項 目は「1.全く当てはまらない」、「2. 当てはまらない」、「3.どちらとも言えない」、「4. 当てはまる」、

「5. 非常に当てはまる」からなる

5

ポイントスケールのリッカート法によって測定される。また、

質問順序による先入観を抑え、全体的なデータの精度を上げるために、質問項目を一定程度にラン ダムに表示させた。

まず、価値共創に関しては、企業と消費者との間のインタラクションと消費者間のインタラクシ ョンに分けて

3

項目ずつ設定し、

Prahalad and Ramaswamy

[

2004

]、王・万[

2012

]、涌田[

2013

]に基 づき、化粧品業界での実際の状況に合わせて一部修正で作成した尺度で測定する(表

4-1

参照)。

表 4-1 本研究で使用する価値共創を測定する尺度

測定尺度 コード 質問項目

企業—消費者間の インタラクション

FC1

そのブランドの販売員は、熱心にカウンセリングサービス、肌テスト、メーク アップサービスなどをしてくれる

FC2 そのブランドの販売員は、私の要望、またはニーズを理解してくれる FC3 そのブランドの販売員は、私の要望や質問に対して積極的に応えてくれる

消費者間の インタラクション

CC1

そのブランドのコミュニティサイトまたはSNS公式アカウントには、私が興 味・関心を持っている情報がたくさんある

CC2

そのブランドのコミュニティサイトまたはSNS公式アカウントには、私にとっ て役立つ情報がたくさんある

CC3

そのブランドのコミュニティサイトまたはSNS公式アカウントで、私は積極的 に投稿したり、投稿に対してコメントしたりする

出典:Prahalad and Ramaswamy [2004]、王・万[2012]、涌田[2013]をもとに筆者作成

それから、顧客満足度とブランド・ロイヤルティの測定尺度については、それぞれ

Oliver

[

1980

] と

Yoo & Donthu

[

2000

]に基づいて作成した(表

4-2

、表

4-3

参照)。

表 4-2 本研究で使用する顧客満足度を測定する尺度

測定尺度 コード 質問項目

顧客満足度

CS1 そのブランドを選んで、私は満足している CS2 そのブランドは、賢明な選択だ

出典:Oliver [1980]をもとに筆者作成

表 4-3 本研究で使用するロイヤルティを測定する尺度

測定尺度 コード 質問項目

ブランド・

ロイヤルティ

BR1 そのブランドに対する好感は簡単に消えない BR2 今後、そのブランドを購入しつづける

出典:Yoo & Donthu [2000]をもとに筆者作成

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 104-109)