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第 5 章 演劇的手法による活動の実態

5.2 演劇的手法の選択

5.2.3.2 調査結果と考察

学習者の自由記述問題には 5 つの質問がある。以下、順に述べる。記述内容は学年別に まとめた。

なお、原文は中国語のため、以下は翻訳したものである。

(1)現在、授業で使われている教材をどう思いますか。どのような教材が希望ですか。

(具体的な例を挙げてください)

① 二年生

・ 文法の説明が詳しいが、会話文の設定などが不自然

・ もっと現実味、面白みがある内容を入れてほしい

・ 文字だけではなく、イラストなどで場面を説明する教材がほしい

・ 日本のドラマのシナリオを教材に入れてほしい

・ 日本人の実際の生活場面で使う敬語会話を入れてほしい

・ 横書きの教材がほしい

・ 全部日本語で書いた教材がほしい

② 三年生

・ 単語量が多すぎる

・ 単語のところに、アクセントをつけてほしい。

・ もっと文法知識の詳しい説明が入っている教材がほしい

・ もっと若者の興味がある内容を入れてほしい

・ 会話中心の教材がほしい

・ 日本のドラマや映画などのせりふを教材にいれてほしい

・ 使用教材の文法は広くて浅い。もっと具体的な説明や例文がほしい。

会話文が堅い、人物や場面設定は現実味が乏しい。

日本歴史、政治の内容

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③ 四年生

・ 翻訳の教材に関しては、もっと実用性があるものがほしい

・ 日本で実際に使われている教材がほしい

・ 自分のレベルに合わせて、浅くても深くても勉強できる教材がほしい

・ イラストや漫画が入っている教材がほしい

・ 日本文化や風習などを紹介する教材がほしい

・ 表面的な日本だけではなく、考え方の違いなどの異文化コミュニケーション の知識が入っている教材がほしい

・ 難しい単語を勉強させる内容ばかりではなく、内容を考えさせる教材がもっ とほしい

・ もっとインタラクションができる教材がほしい。寸劇、ロールプレイなどの タスクを行ってほしい

・ 音声、映像などの教材をもっと使ってほしい

(2)授業の時、先生は日本のドラマを教材として利用したことがありますか。どのような ドラマが希望ですか。(具体的なドラマのタイトルを記入してください)

① 二年生

「先生が日本のドラマを教材として利用したことがある」と答えた学習者は 36%で、な いと答えたのは 54%である。ドラマに対する要望に関しては、以下のようにまとめられる。

内容に関する要望:①日本人の社会、文化を描くドラマ

②実際の日常生活の場面がたくさんあるドラマ

③学園ドラマなど若者の成長を描くドラマ 言葉に関する要望:①自然な日常会話が多いドラマ

②発音がきれいで、聞き取りやすいドラマ

③セリフのスピードが適切、実際の会話に近いドラマ

教材として使ってほしいドラマは『ごくせん』、『大奥』、『のだめカンタービレ』、『医 龍』、『白い巨塔』などである。

② 三年生

「先生が日本のドラマを教材として利用したことがある」と答えた学習者は 76%で、ない と答えたのは 24%である。ドラマに対する要望に関しては、以下のようにまとめられる。

内容に関する要望:①日本人の考え方、生活習慣、日本社会を描くドラマ

②学園ドラマ

③若者の友情、努力などを描く明るいドラマ 言葉に関する要望:①自然な日常会話が多いドラマ

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②方言がなく、セリフが標準語で、きれいな言葉遣いのドラマ

③セリフのスピードが適切、実際の会話に近いドラマ

教材として使ってほしいドラマは『ガリレオ』、『ホタルノヒカリ』、『1リットルの 涙』、『東京ラブストーリー』、『ファースト・キス』、『プロポーズ大作戦』などである。

③ 四年生

「先生は日本のドラマを教材として利用したことがある」と答えた学習者は 85%で、な いと答えたのは 15%である。ドラマに対する要望に関しては、以下のようにまとめた。

内容に関する要望:①日本の歴史や文化を描くドラマ

②人間や社会の闇を描くドラマが苦手で、希望や勇気を与えてくれ るドラマがいい。

言葉に関する要望:①自然な日常会話が多いドラマ

②正しくて美しい日本語のドラマ

③日本語字幕があるドラマ

教材として使ってほしいドラマは『篤姫』『百年の物語』『大奥』『世にも奇妙な物語』、

『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』、『JIN-仁』などである。

(3)ドラマなどの映像資料を用い、どのような教室活動を行ってほしいですか。

① 二年生

・ ドラマ、映画のセリフを真似る練習をしたい

・ ドラマを通して日本文化を紹介してほしい

・ ドラマを観ながら、新しい単語やフレーズを探す練習をしたい

・ ドラマの一部を見せて、続きのドラマを作る活動をしたい

・ ドラマを見た後の感想をディスカッションする活動をしたい

② 三年生

・ セリフを暗記する練習をしたい

・ ドラマの感想文を書いて、口頭発表をする練習

・ 声優ゲームをしたい

・ ドラマの再現演劇の活動をしたい

・ ドラマの同時通訳練習

・ ドラマの人物性格分析、ストーリーの推測

③ 四年生

・ ドラマの再現演劇の活動をしたい

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・ 同時通訳の練習をしたい

・ 「自分はドラマの中の人物だったらどうする?」という創作演劇をしたい

(4)日本語コミュニケーション能力を高めるにはどのような活動が希望ですか。

① 二年生

・ ドラマなどの再現演劇

・ グループで競争する活動(例えばディベート、口頭発表)

・ ドラマ、アニメ、映画などの声優ゲーム

・ ロールプレイ

・ 日本人と交流する活動

② 三年生

・ ドラマ再現演劇

・ 自分で台本を作る演劇

・ ディベートやスピーチ

・ 日本人と交流する活動

・ 全部日本語で授業を行う

・ グループで競争する活動

・ 日本語のみを使用する活動

③ 四年生

・ 日本人教師との交流

・ ロールプレイ

・ 演劇

(5)授業でドラマ再現演劇、ロールプレイ、即興演劇などの演劇的活動を行ったことがあ りますか?このような演劇的活動を授業に導入してほしいですか。

「授業でドラマ再現演劇、ロールプレイ、即興演劇などの演劇的活動を行ったことがあり ますか」という質問に対して、ほぼ全員行ったことがあると答えた。演劇的活動を授業に 導入してほしい学習者は 93%であった。導入してほしくないと答えた学習者からは以下の ような意見があった。

・ みんなの前で演じるのは恥ずかしい。

・ 先生に指名されると緊張や不安を感じる。

2) 教師の自由記述

教師の自由記述問題には 5 つの質問がある。以下、順に述べる。

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(1)授業を行う時、日本のドラマや映画などの映像資料を利用したことがありますか。も しあれば、タイトルを教えてください。

11 名の教師は全員、使用したことがあると答えた。

使用したドラマは『月の恋人~Moon Lovers~』、『鬼嫁日記』、『ドラゴン桜』、『1 リットルの涙』、『東京大空襲』などである。使用した映画、アニメは『千と千尋の神隠 し』、『ワンピース』、『日本沈没』などがある。

さらに、NHK のドキュメンタリ―の映像資料や人気のアニメ、ドラマをよく利用すると答 えた。テレビドラマに関しては日本語字幕、中国語字幕を両方見せているという。

(2)授業を行う時、映像資料をどのように利用していますか。具体的な方法を教えてくだ さい。

教師の記述を以下のようにまとめた。

①一部の内容を見せてから、学習者に自分のことばでまとめて発表させる。

②授業の内容と関連がある映像資料を見せる。

③ただ見せるだけ。

④リスニングのタスクとして利用する。

(3)映像資料を利用する時、不便や困難を感じることがありますか。

教師の記述を以下のようにまとめた。

①授業の時間が限られているので、映像資料を利用しにくい。

②ドラマや映画から必要なシーンを選び出すのに体力と時間が必要。

③映像の画質がよくない。

④中国語字幕がない映像資料に対して、学習者は理解しにくい場合がある。

⑤大部分の映像資料はストーリー性重視で、日本語教育に合う映像資料が少ない。

(4)学生の日本語コミュニケーション能力を高めるにはどのような活動を行っていますか。

教師の記述を以下のようにまとめた。

①毎回授業の最初の五分間は、口頭発表をさせる。

②ロールプレイ

③テキストの会話を暗記させる。

④テーマを決めてディスカッションをさせる。

⑤ グループ別のロールプレイコンテスト

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(5)授業でドラマ再現演劇、ロールプレイ、即興演劇などの演劇的活動を行ったことがあ りますか。このような演劇的活動に興味がありますか。ご意見や提案を教えてくださ い。

「ドラマ再現演劇、ロールプレイ、即興演劇などの演劇的活動」に対して興味あると興味 なしの二種類の意見に分かれている。演劇的活動の導入に賛成する教師は演劇的活動に関 して、「学習者のコミュニケーション能力を高める効果がある」「授業の雰囲気をよくする 効果がある」「学習者同士や教師と学習者の関係をよくする効果がある」という意見が多い。

演劇的活動に関する提案は以下のようになる。

・ドラマの再現演劇

・自分でドラマを作って演じる

・ドラマのセリフを吹き替える練習(声優ゲーム)など

中には演劇的活動に対して興味はあるが、実際に行う際に困難を感じる教師もいた。

主な意見は以下のようになる。

・人前で演じることに対して恥ずかしいと感じ、抵抗がある学習者がいる。

・演劇的活動に関する教材はほとんどない

・教師自身は演劇の知識がないため、どのように指導するのがわからない。

・会話授業以外の教室内の実施が難しい