4.2.1 調査地の概要
調査地はKandal州 Kandal Stuong郡Trea地区 Trea村(図4.1参照)であり、首都 Phnom
Penh から国道2号線を南西へ 27.8km 走り、シェムリアップ地域をさらに西に進んだところに位 置する(図 4.2参照)。また、プノンペン経済特区(Phnom Penh Special Economic Zone)へも村
から 17.0km ほどの距離にある。村の周辺には多くの農外就業機会が存在しており、村民は国
道2号線沿いに立ち並ぶ縫製工場やプノンペン市内の工場へ片道 30分ほどで通勤が可能で ある(図 4.3 参照)。Trea 村周辺にはローカルマーケットも点在しており、村内や集落内にも小 規模であるが日用品や子供相手の菓子、食品を販売する世帯が一部見られる。
63
Kandal
Kandal Province
Trea Commune Kandal Stueng District
図 4.1, Kandal 州 Kandal Stueng 郡 Trea 地区位置図
出所:筆者作成
64
図 4.3 Trea 村の位置と周辺図
出所:Google Earth(2016 年6月7日時点)
Phnom Penh City 27.8km
Trea Village
図4.2,Trea村とPhnomPenh市の位置図
出所:Google Earth(2016年6月7日時点) Phnom Penh Special Economic Zone
(PPSEZ) 17.0km
図 4.2 Trea 村とPhnomPenh 市の位置図
出所:Google Earth(2016年6 月7日時点)
65
表 4.1 にTrea 地区行政機関から得たデータをもとに Trea村の概要を示した。2015 年時点 で総戸数は 119 戸、人口 557 人のうち男女比は半々である。平均家族構成員数は4.68 人で あり、うち 18 歳以上の平均家族世帯員は 3.22 人であった。また、公的な扶助を受けていた家 計(貧困世帯)が28戸存在し、彼らはバッタンバン産米の定期的支給と無償の診療サービスを 受けることができる。
次に、村の土地資源利用からは、村の総土地面積約 67ha のうち 57ha が水田であり、この 数値から当該村は水田農業中心であることがわかる(表 4.2 参照)。村長の話では、1958 年時 点の村の総家屋数はわずかに 15 家屋であり、約半世紀を経て家屋数で 109家屋、世帯数で 119 戸まで拡大したことになる。
4.2.2 調査村の稲作
次に、調査村における稲作の特徴 について説明しておく。稲作が用排水、地形、土壌、自
表4.1 Trea村の概要(2015年)
総世帯数(戸) 119
人口(人) 557
男性 女性
平均家族構成員数(人) 4.68 18歳以上の平均家族構成員数(人) 3.22 平均縫製業就業家族員数 0.94 28
出所:Treaコミューン行政局,2016年 公的扶助受給世帯
270 287
(単位:ha、2015年度)
田 57.00
高地 2.00
低地 5.00
畑 0.35
宅地 2.34
その他 0.00
合計 66.69
出所:Treaコミューン行政局,2016年
表 4.2 Trea 村における土地資源利用
66
宅からの距離といった水田を取り囲む条件によって制約を受けることはいうまでもないが、特に 水文環境は重要である。この村における水稲は、灌漑が不完全で天水に依存するところが大 きい。しかも、水条件は天候や降雨量によって毎年変化する。
調査村の水利については図 4.4 に示した通り、水は調査村の北西部から流れ込む。調査村 には小川(Stream)と水田を結ぶ灌漑設備が二か所存在しているが、5 年前に損壊して以来、
機能を果たしていない。村長の話では、灌漑設備の修復見通しは立っていないということであ った。なお、調査村の住民は生活用水として主に雨水を利用している。
図 4.5 では、調査村における稲作の水田作付パターンを示した。調査村における稲作は雨 季早期作、雨季中期作、乾季作から成る。それぞれの栽培時期は、4月下旬から7月、7月中 旬から 12 月、1月から4 月上旬となっている。聞き取りによれば、調査対象時期とした2015 年 度には雨季早期作と雨季中期作が作付されていたが、十分な降雨量が得られなかったために 乾季作は作付無しということであった1。
1 水田の作付可能な回数は小川との距離と関係しており、小川に近い水田では裏作として畑 作物の栽培を行う農家も確認できた。
図4.4,Trea 村の水文地図
出所:Google Earth(2016年6月7日時点)
67
特に水が豊富な雨季中期作は、調査地における稲作の主力であり、昔から営まれてきたも のである。一方で、雨季早期作が始まるのは雨季がスタートする時期であることから、水田では 水文環境の制約を受けて水不足が生じていた。実際に調査村の稲作農家は雨季中期作にお ける作付を積極的に行うものの、雨季早期作は一部の稲作農家による作付に限られていた。こ ういった作期ごとに異なる稲作技術の導入水準については、集計稲作農家のデータをもとに 4 節で詳しく触れる。さらには、雨季早期作を作付けする二期作農家と作付に消極的な一作農 家を比較し、稲作経営の実態解明を試みる。