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水田保有面積の変 化分析―要因分析 ―

5.5.1 Samraong 村の水田面積変化の要因

A. 雨季田

S村の水田保有の変動について表 5.4 を参照しながらその要因をより細かく見ていく。まず、

増加に着目すると、増加には相続によるものと購入による増加によるものの二つの形態がある。

減少は分与と売却に大別される。

S村の雨季田に限ってみれば、雨季田の増加 も相続または購入によるものであり、減少は分 与または売却によるものであった。転換や交換による水田の減少はみられなかった。

雨季田の増加を経験した世帯は全体の51 世帯のうち 13世帯(25.4%)であり、その総面積 350a は全体での増加面積 688a(100%)のうち 51%を占める。一世帯における雨季田の平均

面積は 26.9aとなり平均筆数にすると1.7筆である。

相続による増加を見てみれば、5世帯が相続によって 84a の雨季田を獲得しており、その平

均面積は 16.8aで平均筆数は1.4筆であった。1世帯あたり1.4筆ということ点を相続慣習から

検討すれば、相続を受けた若年世帯は、妻方からの一筆と夫方からの一筆の計2筆を相続で きるわけだが、実際には 1.4 筆であり、妻方または夫方の一方からのみ相続を受けた世帯が存 在していることが示唆される。

さらに購入した世帯数は 10 年間で 11 戸存在し、購入面積は合計 266a となっており、その 平均面積は 24.2a で平均筆数は 1.4 筆であった。S村においては、購入による増加は購入世 帯数や購入平均面積から見ても、相続よりも増加要因としてはより重要である。

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減少面積の合計は250aであり、それは全体の増加面積(688a)の36%に相当する。減少は 分与または売却によるものであるが、それぞれの減少に占める大きさをみると、分与による減少 は調査世帯 51 世帯のうちの11 世帯(21.5%)が 210a を分与によって減らしており、その平均 面積は一世帯あたり19.1aである。この 11世帯は 10 年間で一世帯あたり1.6筆を分与してい た。

次に売却による減少をみると、売却世帯はわずか2世帯による 40a のみで、1世帯あたり 20a の一筆を売却していた。このことから、減少の要因は分与によるものが大きく、それは減少面積

の 89%を占めている。雨季田では、このように購入によって面積を獲得できたものの子への分

与による減少経験を経て、10年間における雨季田の変化は 80aの微増となった。

B. 乾季田

乾季田についてみると、乾季田の増加は相続及び購入によるものがあり、減少については 分与による減少のみであった。売却や交換、転換による乾季田の減少はなかった。また、その 取引頻度は、雨季田と比較すると低い。相続や購入による増加部分の取引に関しては調査世 帯51世帯のうち、7世帯(13.7%)であり、雨季田の13世帯(25.4%)の半数であった。また、売 却や交換、転換によっての減少は5世帯(9.8%)のみであり、これもまた雨季田における取引世 帯 11世帯(21.5%)の半数となった。

乾季田の増加合計 338a は全体の 688a(100%)のうち 49%を占める。この増加を経験した のは7世帯でその平均面積は 48.3aであり、平均筆数でみると1.3筆である。

相続による増加をみると、平均相続面積は 30.0a で平均筆数は1筆であり、妻方または夫方 の一方からのみ相続を受けていると推測される。

さらに購入した6世帯の乾季田308aは全体の増加合計688a(100%)の45%を占めており、

比重は大きい。また購入世帯一世帯あたりの平均面積は 51.3a で平均筆数は 1.3 筆である。

乾季田の増加は購入によるところが大きいのである。

減少合計 120aは全体の増加合計 688a(100%)の17%に相当するものであるが、それは全 て分与による減少であった。分与による減少は5世帯が経験しており、一世帯あたりの平均面

積は 24.0a で 1.2 筆を分与により減らしている。このことから乾季田における増減変化は、購入

による増加と分与による減少が大きく、10 年間の増分 218a については、購入が大きな意味を もったことが窺える。

C. 全体(雨季田と乾季田を合わせたもの)

相続や購入を経験した世帯が獲得した面積をみるとS村では水田増加は、相続による獲得

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が17%(114a)、購入が83%(574a)となっており、購入によるものが大半を占めた。聞き取りによ

ると、ポル・ポト政権崩壊から 20 年ほどは相続や購入といった獲得手段のほかに開墾や政府 からの水田分配による獲得もみられたが、開墾や政府からの分配はこの10年ではみられない。

購入が売却に比べて多いことがわかるが、その背景としてはS村では、稲作農家は農外就業機 会を求めて離農・離村する世帯から水田を購入することで水田を獲得していると推測される。

次 に水 田 保 有 面 積 の減 少 に着 目 する。減 少 は分 与 と売 却 に大 別 され、それは増 加 合 計

688a(相続と購入)の 54%に当たる 370a となっている。転換や交換による減少はなかった。減

少の合計 370a の大半は分与によるもので 330a(増加合計の 48%に相当)という数値になる。

売却による減少は2世帯による 40a(増加合計の6%に相当)とサンプル農家に関する限り少な い。

増加と減少の二つをあわせると、先に述べたとおり、全体で微増である。ここからわかることは、

S村のサンプル農家全体に関する限り、購入によって均分相続による減少部分を補っており、

結果として10年間における全体の保有面積の増減がほとんどみられず、結果として微増 となっ たことである。

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表5.4 Samraong村における水田保有の増減変化

(a) () (a) (a) (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () (a) (%) () 全体

該当数 51 51 51 51 19 19 6 6 16 16 12 12 12 12 2 2 0 0 0 0

合計 6,099 207 5,801 298 688 100 31 114 17 8 574 83 23 370 54 26 330 48 24 40 6 2 0 0 0 0 0 0

平均 119.6 4.1 113.7 5.8 36.2 1.6 19.0 1.3 35.9 1.4 30.8 2.2 27.5 2.0 20.0 1.0 n.a. n.a. n.a. n.a.

該当数 51 51 51 51 13 13 5 5 11 11 11 11 11 11 2 2 0 0 0 0

合計 2,897 127 2,817 80 350 51 22 84 12 7 266 39 15 250 36 20 210 31 18 40 6 2 0 0 0 0 0 0

平均 56.8 2.5 55.2 1.6 26.9 1.7 16.8 1.4 24.2 1.4 22.7 1.8 19.1 1.6 20.0 1.0 n.a. n.a. n.a. n.a.

該当数 51 51 51 51 7 7 1 1 6 6 5 5 5 5 0 0 0 0 0 0

合計 3,202 80 2,984 218 338 49 9 30 4 1 308 45 8 120 17 6 120 17 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0

平均 62.8 1.6 58.5 4.3 48.3 1.3 30.0 1.0 51.3 1.3 24.0 1.2 24.0 1.2 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.

出所:2017年現地調査による。

注記:1)項目別の増減の割合(%)は全体における増加面積の合計である688a100%として算出した。

   2)各項目を重複して経験した世帯が存在する。そのため増加及び減少の該当数の合計は保有面積の増加及び減少を経験した世帯の合計であり、各項目の該当世帯数を合算したものとはならない。

転換

 雨季田(二期作)

 乾季田(減水期一作)

調査時点 10年前 変化 増加 減少

合計 相続 購入 合計 分与 売却 交換

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5.5.2 世帯ごとにみたSamraong村の水田面積変化

A. 雨季田

S村における世帯ごとにみた水田保有変化(雨季田、乾季田、全体)

まず、S村についてであるが、ここでも雨季田、乾季田、雨季田と乾季田を合わせた全体の 三つについて水田面積変化を世帯ごとにみていく。

雨季田における水田の増減変化 について世帯ごとの考察からわかる特徴をあげれば、ポイ ントは2つある。まずは水田の購入世帯と被相続(分与)世帯は異なる世帯であるということであ る。もうひとつは、購入世帯の 10 年前の保有面積は、小規模で平均値を下回る世帯であった が、購入によって、それらの世帯は平均値 56.8a 以上、または同等の水田規模を確保していた。

10 年間における面積変化のうち、保有面積を増加させた面積の大きさを世帯別にみれば、

最小で9a、最大で50a の水田を増加させていた。

このことから、彼らの水田購入は分与によって減少した水田保有面積を埋め合わせるという 意図よりもむしろ、小規模世帯による水田保有規模の拡大志向が働いたことがわかる。

B. 乾季田

乾季田における増減変化についてみていくと、まず、雨季田よりも取引頻度が低いことがわ かる。また、購入世帯は6世帯いるものの、売却世帯はいなかった。そのため、乾季田について も水田減少の要因は分与によるものであった。ただし、分与によって減少した部分を購入によ って再び確保しようとする世帯は一世帯(世帯番号 43 番)のみであり、購入世帯と分与による 減少世帯というのは異なる世帯であった。このことから、水田を購入する世帯は分与によって減 少する水田面積を購入によって確保しようとしたのではないことがわかる。雨季田購入世帯同 様に乾季田の購入世帯は概して小規模であり(10 年前には平均以下かそれとほぼ同等の保 有面積しか保有していなかった)そういった世帯が、乾季田の購入によって、1ha を越える規模 となったわけである。注意しておくべき事はこういった購入による水田面積の拡大も、農業を志 向する大規模経営体とはみなせないことであろう。乾季田は二期作が可能な雨季田と異なり、

年一作の天水依存の減水期作のため、たかだか 1ha を少し超えるぐらいの規模であり、これく らいの規模では村の中でも大規模とはみなせない。事実、S村の中で比較的大規模な 2ha を 超えるような農家は(先の表 5.4 参照)ほとんど水田購入による規模拡大を行っていない。小規 模ないし中規模農家で分与を経験していない農家が水田の購入に動いており、結果として水 田保有規模をやや増やしたということであるとみられる。

さらに、世帯の中には乾季田の未保有世帯が多く存在していたが、その背景要因をみてい