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第 6 章 宇野浩二の戦後作品の文体特徴に関する分析

6.5 対応分析の結果

6.5.1 読点が打たれる場所

読点が打たれる場所を考察するために、本節では病前、病後と戦後の合計67編の作品から 読点と読点前の一文字を特徴データとして抽出し、対応分析を行う。データを集計する際、

第4章と同様に出現頻度の高い30項目をそのまま、第31位からの変数を「その他」にまと めて集計した。作品ごとに集計した結果を付録 6.1 に示し、各時期の作品における出現の総 度数を表 6.4に示す。対応分析の第 2 スコアまでの個体スコアの散布図に病前、病後と戦後

の95%の許容楕円を加えた結果を図6.9に示す。

表6.4 読点と読点前の一文字のデータ

読点前 の文字

出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後)

出現頻度

(戦後)

読点前 の文字

出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後)

出現頻度

(戦後)

は、 2,740 4,382 9,027 時、 440 447 576

て、 4,375 3,221 6,017 る、 266 326 799

で、 2,678 3,318 5,105 ど、 73 204 578

が、 2,847 3,177 4,954 き、 34 232 514

に、 1,916 2,524 5,776 な、 205 116 446

と、 2,036 2,322 3,922 う、 202 140 372

ら、 1,736 1,661 3,466 ば、 116 110 346

も、 1,240 1,202 2,411 日、 104 233 226

り、 627 1,192 2,399 だ、 134 102 211

た、 483 617 1,313 ず、 130 105 207

を、 355 374 1,640 頃、 79 165 185

し、 497 728 944 や、 212 80 106

か、 834 537 782 れ、 45 142 188

く、 466 598 1,047 ぐ、 6 58 259

い、 384 481 861 その他 1,516 3,047 3,908

の、 370 275 998

図6.9では、病前、病後と戦後の作品はそれぞれ黒、青と赤の色で示している。第1と第2 スコアの寄与率は、それぞれ28.47%、18.45%である。3つの時期の作品は若干重なっている が、おおよそ 3 つのグループになっていることが読み取れる。病前と戦後の作品は主に縦軸 を境界線として左右に分かれて配置されている。一方、病後の作品は散布図の下側に集まっ てプロットされている。第4 章と第5 章の分析結果で病後の作品に最も似ていると見られる

「日曜日」という作品は、病後作品の許容楕円に入ったことが確認できる。それ以外に、「従 兄弟の公吉」(1923年)、「心つくし」(1923年)と「足りない人」(1926年)の3作品も、病 後の作品に近いところにプロットされている。2回目の空白期間の前に発表された「身の秋」

(1941 年)と「水すまし」(1943 年)については、戦前の作品であるが、戦後の作品の近く に位置していることがわかった。

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図6.9 読点と読点前の一文字に基づいた対応分析の個体スコアのプロット

図6.10 読点と読点前の一文字に基づいた対応分析のバイプロット

-0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4

-0.6-0.4-0.20.00.20.4

CA factor map

Dim1 (28.47%)

Dim2 (18.45%)

病前 「木からおりてください」_ 病前 ぢゃんぽん廻り_

病前 人に問はれる_

病前 人癲癇_ 病前 俳優_

病前 十軒路地_

病前 千万老人_

病前 古風な人情家_ 病前 夢見る部屋_

病前 如露_ 病前 子を貸し屋_

病前 従兄弟の公吉_

病前 従兄弟同志_

病前 心つくし_

病前 思ひ出の記_

病前 恋の躯_

病前 或る春の話_

病前 日曜日_ 病前 昔がたり_

病前 晴れたり君よ_

病前 東館_

病前 歳月の川_

病前 浮世の窓_

病前 続軍港行進曲_

病前 足りない人_

病前 軍港進行曲_

病前 高天ヶ原_ 病前 鼻提灯_

病後 二つの道_ 病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_

病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_

病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_

病後 女人不信_ 病後 女人往来_ 病後 子の来歴_

病後 文学の鬼_ 病後 旅路の芭蕉_

病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_

病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_ 病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_

病後 湯河原三界_ 病後 終の栖_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_

病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_

戦後 うつりかはり_ 戦後 人間同志_ 戦後 友垣_

戦後 大阪人間_

戦後 寂しがり屋_

戦後 富士見高原_

戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_ 戦後 相思草_

戦後 秋の心_

戦後 自分一人_

戦後 自分勝手屋_ 戦後 西方町の家_

戦後 青春期_

-0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4

-0.6-0.4-0.20.00.20.4

CA factor map

Dim 1 (28.47%)

Dim 2 (18.45%)

病前 「木からおりてください」_ 病前 ぢゃんぽん廻り_

病前 人に問はれる_

病前 人癲癇_ 病前 俳優_ 病前 十軒路地_

病前 千万老人_ 病前 古風な人情家_ 病前 如露_ 病前 夢見る部屋_

病前 子を貸し屋_

病前 従兄弟の公吉_ 病前 従兄弟同志_

病前 心つくし_ 病前 思ひ出の記_ 病前 恋の躯_

病前 或る春の話_

病前 日曜日_ 病前 昔がたり_

病前 晴れたり君よ_ 病前 東館_

病前 歳月の川_ 病前 浮世の窓_ 病前 続軍港行進曲_

病前 足りない人_ 病前 軍港進行曲_ 病前 高天ヶ原_

病前 鼻提灯_

病後 二つの道_ 病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_

病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_

病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_

病後 女人往来_ 病後 子の来歴_

病後 文学の鬼_ 病後 旅路の芭蕉_

病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_

病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_ 病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_

病後 湯河原三界_ 病後 終の栖_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_

病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_

戦後 うつりかはり_ 戦後 人間同志_ 戦後 友垣_

戦後 大阪人間_ 戦後 寂しがり屋_

戦後 富士見高原_

戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_ 戦後 相思草_

戦後 秋の心_

戦後 自分一人_

戦後 自分勝手屋_ 戦後 西方町の家_

戦後 青春期_

は、

て、

で、

が、

と、 に、

ら、も、

り、

た、

を、

し、

か、

く、

い、

の、

時、

る、

ど、

き、

な、

う、

ば、

日、

だ、

ず、

頃、

や、

れ、

ぐ、

その他

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各グループの特徴的な項目を考察するために、図6.10に対応分析の第2スコアまでのバイ プロットを示す。左上に集まっている病前の作品では、今までの分析で見られた「て」、「が」、

「か」、「や」などの後ろに読点が打たれる特徴が顕著である。それに対して、縦軸の負の方 向に位置している病後の作品では、「頃」、「日」、「れ」と「その他」の後ろに読点を打つこと が多い。第 4 章の分析では、「な」、「の」、「を」は病前、「ど」、「き」などは病後の特徴とし て見られたが、病前から戦後にかけての作品を全体的に考察する場合、「に」、「な」、「の」、

「ぐ」、「ど」、「き」などの後に読点が打たれることが戦後の作品の特徴として現れている。

これらの項目の使用率を表6.5に示す。

表6.5 各時期の作品の特徴的な項目の使用率(%)

読点前の文字 使用率

(病前)

使用率

(病後)

使用率

(戦後)

て、 16.12 10.03 10.10

が、 10.49 9.89 8.31

か、 3.07 1.67 1.31

や、 0.78 0.25 0.18

その他、 5.58 9.49 6.56

日、 0.38 0.73 0.38

頃、 0.29 0.51 0.31

れ、 0.17 0.44 0.32

に、 7.06 7.86 9.69

の、 1.36 0.86 1.67

ど、 0.27 0.64 0.97

き、 0.13 0.72 0.86

ぐ、 0.02 0.18 0.43

6.5.1.2 読点と読点前の品詞

続いて、読点がどの品詞の後ろに打たれているのかについて、病前、病後と戦後の作品に 対して比較分析を行う。同じコーパスから特徴データを抽出し、67編の作品を個体、12種類 の品詞の後ろに読点が付く頻度を変数として対応分析を実行した。作品ごとに集計したデー タを付録6.2に示し、各時期の作品における出現の総度数を表6.6に示す。作品の分布および 作品と変数の対応関係を見るために、第 1と第2の個体スコアの散布図とバイプロットをそ れぞれ図6.11と図6.12に示す。

図6.11からわかるように、第1スコアの寄与率は33.13%、第2スコアの寄与率は24.46%

である。3 つの時期の作品は重なり、病前の作品は主に縦軸の負の方向に配置されている。

病後と戦後の作品は、大体縦軸を境界線として左右に分かれてプロットされている。病後の 作品は、主に、横軸の正の方向に集中し、戦後の作品は主に負の方向に集まっている。「日曜 日」は病前の 95%の許容楕円からかなり離れ、病後のグループに入っていることが確認でき る。

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表6.6 読点と読点前の品詞のデータ

読点前の品詞 出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後)

出現頻度

(戦後)

助詞+読点 19,377 21,388 39,975

接続詞+読点 2,484 2,476 5,135

名詞+読点 1,608 3,292 4,332

助動詞+読点 1,950 1,823 3,160

副詞+読点 638 874 3,417

動詞+読点 622 1,753 2,313

形容詞+読点 339 362 887 連体詞+読点 13 27 141 代名詞+読点 14 54 105 感動詞+読点 80 24 36 記号+読点 20 40 78 接頭辞+読点 1 3 2

図6.11 読点と読点前の品詞に基づいた対応分析の個体スコアのプロット

さらに、図6.12に示している対応分析のバイプロットに基づいて、変数と作品の対応関係 を考察する。バイプロットの下側に位置している病前のグループの作品では、「感動詞+読点」

が大きく寄与し、それ以外に「助動詞+読点」、「接続詞+読点」と「助詞+読点」の使用も比較

-0.5 0.0 0.5 1.0

-1.0-0.50.00.5

CA factor map

Dim1 (33.13%)

Dim2 (24.46%)

病前 「木からおりてください」_

病前 ぢゃんぽん廻り病前 人癲癇病前 人に問はれる__ _ 病前 俳優_

病前 十軒路地_

病前 千万老人_

病前 古風な人情家_

病前 夢見る部屋_

病前 如露_

病前 子を貸し屋_

病前 従兄弟の公吉_

病前 従兄弟同志_

病前 心つくし_

病前 思ひ出の記_

病前 恋の躯_

病前 或る春の話_

病前 日曜日_

病前 昔がたり_

病前 晴れたり君よ_

病前 東館_

病前 歳月の川_

病前 浮世の窓_

病前 続軍港行進曲_

病前 足りない人_

病前 軍港進行曲_

病前 高天ヶ原_

病前 鼻提灯_

病後 二つの道_

病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_ 病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_

病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_

病後 女人不信_ 病後 女人往来_

病後 子の来歴_ 病後 文学の鬼_

病後 旅路の芭蕉_

病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_ 病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_

病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_ 病後 終の栖_ 病後 湯河原三界_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_

病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_ 戦後 うつりかはり_

戦後 人間同志_

戦後 友垣_ 戦後 大阪人間_

戦後 寂しがり屋_ 戦後 富士見高原_

戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_

戦後 相思草_ 戦後 秋の心_

戦後 自分一人_

戦後 自分勝手屋_ 戦後 西方町の家戦後 青春期__

90

的に多い。それに対して、右上の病後のグループでは「名詞+読点」、「連体詞+読点」、「動詞+

読点」などの変数が特徴的である。一方、バイプロットの上側のやや左に配置されている戦 後のグループでは、「副詞+読点」、「形容詞+読点」と「代名詞+読点」のような使い方が多い。

これらの項目の使用頻度を表6.7に示す。

図6.12 読点と読点前の品詞に基づいた対応分析のバイプロット

表6.7 各時期の作品の特徴的な項目の使用率(%)

読点前の品詞 使用率

(病前)

使用率

(病後)

使用率

(戦後)

助詞+読点 71.38 66.60 67.09

接続詞+読点 9.15 7.71 8.62

助動詞+読点 7.18 5.68 5.30

感動詞+読点 0.29 0.07 0.06

名詞+読点 5.92 10.25 7.27

動詞+読点 2.29 5.46 3.88

連体詞+読点 0.05 0.08 0.24

副詞+読点 2.35 2.72 5.74

形容詞+読点 1.25 1.13 1.49

代名詞+読点 0.05 0.17 0.18

-0.5 0.0 0.5 1.0

-1.0-0.50.00.5

CA factor map

Dim 1 (33.13%)

Dim 2 (24.46%)

病前 「木からおりてください」_ 病前 ぢゃんぽん廻り病前 人癲癇病前 人に問はれる___

病前 俳優_ 病前 十軒路地_

病前 千万老人_ 病前 古風な人情家_ 病前 夢見る部屋_

病前 如露_ 病前 子を貸し屋_ 病前 従兄弟の公吉_

病前 従兄弟同志_ 病前 心つくし_ 病前 思ひ出の記_

病前 恋の躯_ 病前 或る春の話_

病前 日曜日_

病前 昔がたり_ 病前 晴れたり君よ_

病前 東館_

病前 歳月の川_ 病前 浮世の窓_

病前 続軍港行進曲_ 病前 足りない人_

病前 軍港進行曲_ 病前 高天ヶ原_ 病前 鼻提灯_

病後 二つの道_

病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_ 病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_

病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_

病後 女人不信_ 病後 女人往来_

病後 子の来歴_ 病後 文学の鬼_

病後 旅路の芭蕉_

病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_ 病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_

病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_ 病後 終の栖_ 病後 湯河原三界_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_

病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_ 戦後 うつりかはり_

戦後 人間同志_

戦後 友垣_ 戦後 大阪人間_

戦後 寂しがり屋_ 戦後 富士見高原_

戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_

戦後 相思草_ 戦後 秋の心_

戦後 自分一人_

戦後 自分勝手屋_ 戦後 西方町の家戦後 青春期__

助詞 読点+ 接続詞 読点+

名詞 読点+

助動詞 読点+ 副詞 読点+

動詞 読点+

形容詞 読点+ 連体詞 読点+

代名詞 読点+

感動詞 読点+ 記号 読点+

接頭辞 読点+