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第 4 章 宇野浩二の病気前後の文体変化に関する分析

4.5 タグ付き形態素の使用率

本節では、タグ付き形態素の使用率のデータに基づいて、両時期の作品で使用された基本 的な語彙を考察する。53編の作品から出現頻度が25回以上の1903変数のデータを抽出した。

出現頻度が高い上位20項目の両時期の作品における出現頻度を表4.6に示す。詳細なデータ を付録 4.6 に示す。作品の分布と病気前後の特徴を見るために、抽出されたデータに基づい て対応分析を行った。第1と第2個体スコアの散布図とバイプロットをそれぞれ図4.13と図 4.14に示す。

36

表4.6 タグ付き形態素の使用率のデータ(上位20項目)

タグ付き形態素 出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後) タグ付き形態素 出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後)

/記号 27,146 32,116 /助動詞 3,958 4,229

の/助詞 18,653 18,565 で/助詞 4,130 3,900

/助動詞 14,992 15,333 /動詞 3,627 3,755

/助詞 14,442 14,265 /助詞 3,882 3,352

て/助詞 12,648 9,913 から/助詞 2,727 3,040

/助詞 10,608 10,516 その/連体詞 2,687 3,033

/助詞 8,697 10,136 /名詞 4,786 269

を/助詞 9,133 9,632 の/名詞 3,095 1,953

/記号 8,758 8,609 /動詞 2,394 1,927

/助詞 8,365 8,168 /助動詞 2,357 1,844

図4.13 タグ付き形態素に基づいた対応分析の個体スコアのプロット

第1スコアと第2スコアの寄与率はそれぞれ5.72%と4.71%である。「子を貸し屋」以外の 病前の作品は集中しているが、病後の作品がより分散して分布している。「日曜日」は病後の グループの近いところに位置している。タグ付き形態素のデータセットは1903個の変数を持 つ高次元のデータセットであるため、バイプロットに次元ごとに寄与度の高い 100 変数(タ グ付き形態素)のみをプロットした。なお、病前の特徴的変数を見るために、図4.14に示し ているバイプロットの原点付近を拡大して図4.15に示す。

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

-1.0-0.50.00.51.0

CA factor map

Dim1 (5.72%)

Dim2 (4.71%)

. .

病後 二つの道_ 病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_

病後 善き鬼・悪き鬼_

病後 器用貧乏_ 病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_

病後 女人往来_

病後 子の来歴_

病後 文学の鬼_

病後 旅路の芭蕉_ 病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_

病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_

病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_ 病後 湯河原三界_

病後 終の栖_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_ 病後 風変りの一族_

病後 鬼子と好敵手_ 病前 「木からおりてください」_

病前 ぢゃんぽん廻り_

病前 人に問はれる_

病前 人癲癇_ 病前 俳優_

病前 十軒路地_

病前 千万老人_

病前 古風な人情家_

病前 夢見る部屋_

病前 如露_

病前 子を貸し屋_

病前 従兄弟の公吉_

病前 従兄弟同志病前 思ひ出の記__ 病前 心つくし_ 病前 恋の躯病前 或る春の話病前 昔がたり_ __

病前 晴れたり君よ_

病前 東館_ 病前 歳月の川病前 浮世の窓__

病前 続軍港行進曲_

病前 足りない人_

病前 軍港進行曲_

病前 高天ヶ原_

病前 鼻提灯_ 病前 日曜日_

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図4.14 タグ付き形態素に基づいた対応分析のバイプロット

図4.15 タグ付き形態素に基づいた対応分析のバイプロット(拡大図)

-2 -1 0 1 2 3

-3-2-10123

CA factor map

Dim 1 (5.72%)

Dim 2 (4.71%)

病後 二つの道_ 病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_

病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_ 病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_

病後 女人往来_ 病後 子の来歴_病後 文学の鬼_

病後 旅路の芭蕉_ 病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_ 病後 枯野の夢_

病後 楽世家等_ 病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_ 病後 湯河原三界_

病後 終の栖_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_ 病後 風変りの一族_

病後 鬼子と好敵手_ 病前 「木からおりてください」_

病前 ぢゃんぽん廻り_ 病前 人に問はれる病前 十軒路地病前 俳優_病前 千万老人_病前 人癲癇___ 病前 古風な人情家病前 如露_病前 夢見る部屋__

病前 子を貸し屋_ 病前 従兄弟の公吉_ 病前 従兄弟同志病前 思ひ出の記病前 或る春の話病前 恋の躯病前 昔がたり____病前 心つくし_ _

病前 晴れたり君よ_ 病前 東館_ 病前 歳月の川病前 浮世の窓__ 病前 続軍港行進曲病前 軍港進行曲_病前 足りない人_ _

病前 高天ヶ原病前 鼻提灯_病前 日曜日て 助詞_/_、 読点/ 私 名詞/ の 名詞/

彼 名詞/ こと 名詞/ あっ 助動詞/ 彼女 名詞/

だ 助動詞/ 十 名詞/ いっ 動詞/

年 名詞/ う 助動詞/

事 名詞/『』 記号/ だっ 助動詞/

たち 名詞/ 云っ 動詞/

丈 名詞/ お 接頭辞/ しかし 接続詞/

() 記号/ ほど 助詞/ そうして 接続詞/

助 名詞/ 深見 名詞/

あの 連体詞/

また 接続詞/ こういう 連体詞/ そんな 連体詞/

木 名詞/

そして 接続詞/ ぐらい 助詞/ 竹 名詞/

だろ 助動詞/

牧 名詞/

石造 名詞/ 市井 名詞/

片野 名詞/

芭蕉 名詞/ 石村 名詞/ 云う 動詞/

郎 名詞/

佐蔵 名詞/ 健三 名詞/

円 名詞/ 位 名詞/

香 名詞/ 里江 名詞/

商売 名詞/ 云い 動詞/ 健作 名詞/

お仙 名詞/ 迄 助詞/

太一 名詞/ 島木 名詞/ 自動車 名詞/

絵 名詞/

せき 名詞/ み 動詞/ だが 接続詞/

みの 名詞/ 藤 名詞/

古泉 名詞/

けれど 助詞/

八木 名詞/ 材木 名詞/

電話 名詞/

畑中 名詞/ 江 名詞/

宇 名詞/

香里 名詞/

市原 名詞/ 崎 名詞折口 名詞/ /

さき 名詞/ 商 名詞/ 号 名詞/

玉子 名詞/ 太平 名詞/ 太一郎 名詞/新吉 名詞/

作品 名詞/

正 名詞/

戸山 名詞/ しだいに 副詞/

太 形容詞/ なか 名詞/ 茂兵衛 名詞/

団子 名詞/ かわり 名詞/

ほう 名詞/ 工場 名詞/

そば 名詞/ むかっ 動詞/

順三 名詞/ とお 形容詞/

遠野 名詞/ 叔母 名詞/

わけ 名詞/

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

-1.0-0.50.00.51.0

CA factor map

Dim 1 (5.72%)

Dim 2 (4.71%)

病後 二つの道_ 病後 人さまざま_

病後 人間同志_ 病後 人間往来_

病後 善き鬼・悪き鬼_

病後 器用貧乏_ 病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_

病後 女人往来_

病後 子の来歴_

病後 文学の鬼_

病後 旅路の芭蕉_

病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_

病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_

病後 母の形見の貯金箱_

病後 水すまし_ 病後 湯河原三界_

病後 終の栖_ 病後 線香花火_

病後 身の秋_ 病後 風変りの一族_

病後 鬼子と好敵手_ 病前 「木からおりてください」_

病前 ぢゃんぽん廻り_ 病前 人に問はれる_

病前 人癲癇_ 病前 俳優_ 病前 十軒路地_

病前 千万老人_ 病前 古風な人情家_

病前 夢見る部屋_ 病前 如露_

病前 子を貸し屋_ 病前 従兄弟の公吉_ 病前 従兄弟同志病前 思ひ出の記__ 病前 心つくし_ 病前 恋の躯病前 或る春の話_病前 昔がたり__

病前 晴れたり君よ_ 病前 東館_ 病前 歳月の川病前 浮世の窓__ 病前 続軍港行進曲_

病前 足りない人_ 病前 軍港進行曲_

病前 高天ヶ原_ 病前 鼻提灯_

病前 日曜日_

、 記号/ て 助詞/ 私 名詞/

の 名詞/ 彼 名詞/

こと 名詞/ あっ 助動詞/ 彼女 名詞/

だ 助動詞/ 十 名詞/

いっ 動詞/

年 名詞/ う 助動詞/

事 名詞/ 『』 記号/ だっ 助動詞/

たち 名詞/

云っ 動詞/

丈 名詞/

お 接頭辞/ しかし 接続詞/

() 記号/ ほど 助詞/

そうして 接続詞/

助 名詞/ あの 連体詞/

また 接続詞/ こういう 連体詞/

そんな 連体詞/

そして 接続詞/ ぐらい 助詞/

だろ 助動詞/

片野 名詞/

石村 名詞/ 云う 動詞/

郎 名詞/ 健三 名詞/

円 名詞/ 位 名詞/

商売 名詞/ 云い 動詞/ 健作 名詞/

迄 助詞/

島木 名詞/

絵 名詞/

み 動詞/ だが 接続詞/

けれど 助詞/ 電話 名詞/

宇 名詞/

さき 名詞/ 玉子 /

しだいに

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図 4.14 の右上には、「遠野」や「叔母」、「深見」、「健作」、「片野」、「自動車」、「竹」、「芭 蕉」、「古泉」、「島木」といった名詞、動詞「云う」とその活用形「云っ」、「云い」、接続詞の

「しかし」、「そうして」、「また」、連体詞の「こういう」などが特徴的な変数として現れてい る。右下では、「せき」、「太平」、「石造」、「戸山」、「八木」などがプロットされている。拡大 した図4.15によると、病前の作品では、接続詞の「そして」、「だが」、助動詞の「だっ」、「だ ろ」、「だ」、名詞の「私」、「彼女」、「彼」、「こと」、連体詞の「あの」、「そんな」などが特徴 的な変数として現れている。宇野浩二は病前では物語を書く際に、「私」、「彼女」、「彼」とい った人称代名詞を多く使用している。そのうち、特に、第一人称代名詞の「私」の出現率が 高いことが確認された。一方、病後の作品では代名詞の使用が少なくなり、その減少を補う ために登場人物の名前を直接書くようになった。散布図で見られた特徴的な項目の使用率を 集計した結果を表4.7に示す。

表4.7 特徴的な項目の出現率(%)

形態素 出現率

(病前)

出現率

(病後) 形態素 出現率

(病前)

出現率

(病後)

人名名詞 0.78 2.12 そうして 0.10 0.12

私(わたし、あたし) 1.55 0.09 あの 0.09 0.06 彼(かれ) 0.66 0.50 また 0.05 0.09

こと 0.76 0.35 こういう 0.03 0.11

だ(だっ) 0.74 0.27 そんな 0.11 0.03

彼女 0.53 0.22 そして 0.12 0.00

云う(云っ、云い) 0.07 0.36 だろ 0.09 0.01

しかし 0.10 0.14 だが 0.05 0.00

本節の分析によると、人名名詞など物語の内容に関する特徴的項目が多く、作品の分布に 影響していることがわかった。そこで、作品の内容に大きく依存する名詞、動詞、形容詞を 除き、対応分析を行った。名詞、動詞、形容詞を除いた場合、合計343個の変数を抽出した。

分析に用いたデータの時期ごとの総度数を表4.8に示し、詳細なデータを付録4.7に示す。

対応分析の第1と第2個体スコアの散布図を図4.16に示す。図4.16では、病前の「日曜日」

と「恋の躯」という作品は他の作品から遠く離れているため、それを除いて分析した結果を 図4.17に示す。第1と第2スコアの寄与率はそれぞれ24.60%、10.05%である。

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表4.8 タグ付き形態素の使用率のデータ(名詞、動詞、形容詞を除いた上位20項目)

形態素 出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後) 形態素 出現頻度

(病前)

出現頻度

(病後)

/記号 27,146 32,116 /助動詞 3,958 4,229

の/助詞 18,653 18,565 で/助詞 4,130 3,900

/助動詞 14,992 15,333 /助詞 3,882 3,352

/助詞 14,442 14,265 から/助詞 2,727 3,040

て/助詞 12,648 9,913 その/連体詞 2,687 3,033

/助詞 10,608 10,516 /代名詞 4,786 269

/助詞 8,697 10,136 /助動詞 2,357 1,844

を/助詞 9,133 9,632 彼/代名詞 2,044 1,530

/記号 8,758 8,609 ない/助動詞 1,727 1,299

/助詞 8,365 8,168 ある/助動詞 1,600 1,365

図4.16 名詞、動詞、形容詞を除いた対応分析の個体スコアのプロット

図4.17からわかるように、名詞、動詞と形容詞を除いた場合でも、病前と病後の作品はそ れぞれグループを形成している。また、図 4.18 のバイプロットから、上述した相違以外に、

形態素の表記にも変化が生じたことがわかった。病前の作品では接続詞、副詞、連体詞など を漢字で書き、病後の作品では仮名で書くことが多い。両時期の特徴として挙げられる各項 目の使用率を表4.9に示す。

-0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6

-1.0-0.50.00.51.01.52.02.5

CA factor map

Dim1 (20.26%)

Dim2 (11.95%)

. .

病前 歳月の川_

病前 夢見る部屋_

病前 子を貸し屋_ 病前 従兄弟の公吉病前 心つくし病前 足りない人病前 晴れたり君よ_病前 千万老人_病前 人癲癇_病前 或る春の話_病前 ぢゃんぽん廻り病前 「木からおりてください」病前 鼻提灯______ 病前 軍港進行曲病前 人に問はれる病前 高天ヶ原_病前 十軒路地病前 昔がたり_病前 古風な人情家病前 思ひ出の記病前 従兄弟同志_病前 東館病前 俳優____病前 浮世の窓_病前 如露__ __

病前 日曜日_

病前 続軍港行進曲_

病前 恋の躯_

病後 枯木のある風景_

病後 枯野の夢_ 病後 人間往来病後 女人不信病後 線香花火_病後 湯河原三界病後 人さまざま__病後 子の来歴__ _ 病後 文学の鬼病後 夢の跡_ _

病後 旅路の芭蕉病後 器用貧乏病後 木と金の間_病後 鬼子と好敵手_病後 終の栖_病後 楽世家等病後 風変りの一族病後 母の形見の貯金箱____病後 夢の通ひ路_ _ 病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 人間同志_ 病後 二つの道_病後 女人往来_ 病後 身の秋_

病後 水すまし_