第 6 章 宇野浩二の戦後作品の文体特徴に関する分析
6.5 対応分析の結果
6.5.2 タグ付き形態素の使用率
3 つの時期の作品で使用されている基本的な語彙を考察するために、タグ付き形態素の使 用率のデータを抽出して対応分析を行った。67編の作品から出現頻度が15回以上の合計4037 項目の変数が得られた。作品ごとに集計したデータを付録 6.3 に示し、各時期の作品におけ る出現の総度数を表6.8に示す。
表6.8 タグ付き形態素の使用率のデータ(上位20項目)
形態素 出現頻度
(病前)
出現頻度
(病後)
出現頻度
(戦後) 形態素 出現頻度
(病前)
出現頻度
(病後)
出現頻度
(戦後)
、/記号 27,146 32,116 59,581 で/助動詞 3,958 4,229 4,700
の/助詞 18,653 18,565 19,868 で/助詞 4,130 3,900 3,864
た/助動詞 14,992 15,333 16,518 し/動詞 3,627 3,755 4,032
に/助詞 14,442 14,265 15,937 も/助詞 3,882 3,352 3,781
て/助詞 12,648 9,913 11,857 その/連体詞 2,687 3,033 4,285
は/助詞 10,608 10,516 11,931 から/助詞 2,727 3,040 3,664
を/助詞 9,133 9,632 10,409 い/動詞 2,394 1,927 2,512
が/助詞 8,697 10,136 10,296 の/名詞 3,095 1,953 1,755
。/記号 8,758 8,609 9,750 な/助動詞 2,357 1,844 2,300
と/助詞 8,365 8,168 8,409 いる/動詞 2,196 1,751 2,213
対応分析を行い、第1と第2個体スコアのプロットを図6.13に示す。第1スコアと第2ス コアの寄与率はそれぞれ6.53%、3.55%である。病前の「子を貸し屋」は病前の作品からやや 離れていることが読み取れる。
形態素の変数が多いため、図6.14のバイプロットでは寄与度の高い100変数のみをプロッ トした。右側にプロットされている病前のグループでは、これまでの分析で見られた「私/代 名詞」、「彼女/代名詞」、「彼/代名詞」、「そんな/連体詞」、「だが/接続詞」、「そして/接続詞」、「だ っ/助動詞」、「だ/助動詞」、「だろ/助動詞」、「こと/名詞」などの項目が、病前の作品の近くに プロットされている。病後の作品では、動詞「云う」とその活用形「云っ」が特徴として見 られる。一方、戦後の作品では、接続詞の「そうして」、「それで」、助詞の「くらい」、「けれ ど」、記号の丸括弧、二重鍵括弧と読点が特徴的な変数として現れている。また、病後と戦後 の作品では、人名名詞を多用する傾向が見られる。これらの項目の時期ごとの出現頻度を表 6.9に示す。
92
図6.13 タグ付き形態素に基づいた対応分析の個体スコアのプロット
図6.14 タグ付き形態素に基づいた対応分析のバイプロット
-2 -1 0 1 2
-2-1012
CA factor map
Dim1 (6.53%)
Dim2 (3.55%)
・
・ ・
病前 「木からおりてください」_ 病前 ぢゃんぽん廻り_
病前 人に問はれる_
病前 人癲癇_ 病前 俳優_
病前 十軒路地_
病前 千万老人病前 古風な人情家_ _ 病前 夢見る部屋_ 病前 如露_
病前 子を貸し屋_
病前 従兄弟の公吉_
病前 従兄弟同志_
病前 心つくし病前 思ひ出の記病前 或る春の話_病前 恋の躯___ 病前 日曜日_
病前 昔がたり_ 病前 晴れたり君よ_ 病前 東館_
病前 歳月の川_
病前 浮世の窓_
病前 続軍港行進曲_
病前 足りない人病前 軍港進行曲__ 病前 高天ヶ原_ 病前 鼻提灯_ 病後 二つの道_
病後 人さまざま_ 病後 人間同志_
病後 人間往来_ 病後 善き鬼・悪き鬼_
病後 器用貧乏_ 病後 夢の跡_
病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_ 病後 女人往来_
病後 子の来歴_ 病後 文学の鬼_ 病後 旅路の芭蕉_
病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_
病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_
病後 母の形見の貯金箱_ 病後 水すまし_ 病後 湯河原三界_
病後 終の栖_ 病後 線香花火_ 病後 身の秋_
病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_ 戦後 うつりかはり_
戦後 人間同志_ 戦後 友垣_ 戦後 大阪人間_ 戦後 寂しがり屋_
戦後 富士見高原_ 戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_ 戦後 相思草_ 戦後 秋の心_
戦後 自分一人_ 戦後 自分勝手屋_
戦後 西方町の家戦後 青春期_ _
-2 -1 0 1 2
-2-1012
CA factor map
Dim 1 (6.53%)
Dim 2 (3.55%)
病前 「木からおりてください」_ 病前 ぢゃんぽん廻り_ 病前 人に問はれる_ 病前 人癲癇病前 十軒路地_ 病前 俳優_ _ 病前 千万老人病前 古風な人情家_ _ 病前 夢見る部屋_ 病前 如露_
病前 子を貸し屋_ 病前 従兄弟の公吉病前 心つくし_病前 思ひ出の記病前 従兄弟同志病前 或る春の話_病前 恋の躯____
病前 日曜日_ 病前 昔がたり_ 病前 晴れたり君よ_ 病前 東館_
病前 歳月の川_ 病前 浮世の窓_ 病前 続軍港行進曲_ 病前 足りない人病前 軍港進行曲__
病前 高天ヶ原_ 病前 鼻提灯_ 病後 二つの道_
病後 人さまざま_ 病後 人間同志_
病後 人間往来_ 病後 善き鬼・悪き鬼_
病後 器用貧乏_ 病後 夢の跡_
病後 夢の通ひ路_ 病後 女人不信_ 病後 女人往来_
病後 子の来歴_ 病後 文学の鬼_ 病後 旅路の芭蕉_
病後 木と金の間_ 病後 枯木のある風景_
病後 枯野の夢_ 病後 楽世家等_ 病後 母の形見の貯金箱_ 病後 水すまし_ 病後 湯河原三界_
病後 終の栖_ 病後 線香花火_ 病後 身の秋_
病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_ 戦後 うつりかはり_
戦後 人間同志_ 戦後 友垣_ 戦後 大阪人間戦後 寂しがり屋__ 戦後 富士見高原_
戦後 思ひ川_ 戦後 思ひ草_ 戦後 相思草_ 戦後 秋の心_
戦後 自分一人_ 戦後 自分勝手屋_
戦後 西方町の家戦後 青春期_ _
、 記号/ の 助詞/ て 助詞/ の 名詞/
私 代名詞/ こと 名詞/ か 助詞/
『』 記号/ 彼 代名詞/ だ 助動詞/ いっ 動詞/
来 動詞/
彼女 代名詞/ う 助動詞/
() 記号/ 云っ 動詞/
へ 助詞/
お 接頭辞/ そうして 接続詞/
母 名詞/ 芳郎 名詞/
だっ 助動詞/ 牧 名詞/
丈 名詞/
お仙 名詞/
ぐらい 助詞/ 深見 名詞/ 木 名詞/
すぐ 副詞/ き 動詞/ それで 接続詞/ 由比 名詞/
竹 名詞/
三重 名詞/
元子 名詞/
助 名詞/ 同じ 連体詞或 連体詞// 云う 動詞/
久米 名詞/
次 名詞/
彼等 代名詞/
そんな 連体詞/
郎 名詞/
先 名詞/ やはり 副詞/
とき 名詞/
訳 名詞/ けれど 助詞/
なか 名詞/
そして 接続詞/ 直木 名詞/
だろ 助動詞/ 等 名詞/ 市井 名詞/
殆 名詞/
ほう 名詞/ 違い 名詞/
片野 名詞/
しょ 名詞/
佐蔵 名詞/ 健三 名詞/ くる 動詞/
位 名詞/ 祖母 名詞/
紋 名詞/ ごろ 名詞/
香 名詞/
社 名詞/
進也 名詞/
里江 名詞/
中平 名詞/
徳 名詞/
健作 名詞/
半 名詞/
あいだ 名詞/ 迄 助詞/
もとより 副詞/
病院 名詞/
太一 名詞/ 島木 名詞/
道也 名詞/ ころ 名詞/
松本 名詞/
せき 名詞/ まえ 動詞/
だが 接続詞/
みの 名詞/ 古泉 名詞/
八木 名詞/
江 名詞/
玉子 名詞/
高天 名詞/
八右衛門 名詞/ 赤井 名詞/
木原 名詞/
香里 名詞/
きさ子 名詞/ 婦 名詞/
丹 名詞/
93
表6.9 各時期の作品の特徴的な項目の出現率(%)
形態素 使用率
(病前)
使用率
(病後)
使用率
(戦後) 形態素 使用率
(病前)
使用率
(病後)
使用率
(戦後)
私(わたし、
わたくし、あたし) 1.49 0.08 0.15 人名名詞 0.75 2.02 2.54
彼女 0.51 0.21 0.00 云う(云っ、云い) 0.06 0.34 0.33
彼(かれ) 0.64 0.48 0.01 そうして 0.09 0.12 0.21
そして 0.12 0.00 0.00 それで 0.05 0.05 0.12
だが 0.05 0.00 0.00 けれど 0.00 0.03 0.08
だ(だっ) 0.71 0.25 0.14 丸括弧 0.04 0.18 0.30
だろ 0.09 0.01 0.00 二重カギ括弧 0.10 0.29 0.68
そんな 0.11 0.03 0.01 読点 8.44 9.97 15.53
こと 0.73 0.33 0.32
さらに、名詞、動詞と形容詞を除いたタグ付き形態素のデータを用いて対応分析を行った。
作品から抽出したデータは550個の変数があり、その出現頻度の高い上位20項目の総度数を 表6.10に示し、作品ごとの出現頻度を付録6.4に示す。
表6.10 タグ付き形態素の使用率のデータ(名詞、動詞、形容詞を除いた上位20項目)
形態素 出現頻度
(病前)
出現頻度
(病後)
出現頻度
(戦後) 形態素 出現頻度
(病前)
出現頻度
(病後)
出現頻度
(戦後)
、/記号 27,146 32,116 59,581 で/助動詞 3,958 4,229 4,700
の/助詞 18,653 18,565 19,868 で/助詞 4,130 3,900 3,864
た/助動詞 14,992 15,333 16,518 も/助詞 3,882 3,352 3,781
に/助詞 14,442 14,265 15,937 その/連体詞 2,687 3,033 4,285
て/助詞 12,648 9,913 11,857 から/助詞 2,727 3,040 3,664
は/助詞 10,608 10,516 11,931 な/助動詞 2,357 1,844 2,300
を/助詞 9,133 9,632 10,409 私/代名詞 4,786 269 566
が/助詞 8,697 10,136 10,296 ある/助動詞 1,600 1,365 1,611
。/記号 8,758 8,609 9,750 あっ/助動詞 1,136 1,662 1,679
と/助詞 8,365 8,168 8,409 それ/代名詞 1,651 1,285 1,281
対応分析の第1と第2個体スコアの散布図を図6.15に示す。図6.15からわかるように、病 前の「日曜日」は他の作品から大きく離れ、また、「恋の躯」という作品も他の作品からやや 離れている。そこで、「日曜日」と「恋の躯」を除いて対応分析を行った。対応分析の第1と 第2個体スコアの散布図とバイプロットをそれぞれ図6.16、図6.17に示す。第1と第2スコ アの寄与率はそれぞれ 29.57%、7.67%である。病前、病後と戦後の作品はそれぞれグループ を形成していることがわかる。
94
図6.15 名詞、動詞、形容詞を除くいた対応分析の個体スコアのプロット
図6.16 「日曜日」と「恋の躯」を除いた個体スコアのプロット
-1 0 1 2
-1012
CA factor map
Dim1 (25.65%)
Dim2 (8.71%)
・
・ ・
病前 「木からおりてください」病前 夢見る部屋病前 千万老人病前 人癲癇病前 ぢゃんぽん廻り__病前 人に問はれる__病前 古風な人情家_病前 十軒路地__病前 如露病前 俳優_ __ 病前 子を貸し屋病前 従兄弟の公吉_病前 心つくし_ _病前 従兄弟同志病前 思ひ出の記__
病前 恋の躯_
病前 或る春の話_
病前 日曜日_
病前 昔がたり_
病前 晴れたり君よ_
病前 東館_ 病前 歳月の川病前 浮世の窓__
病前 続軍港行進曲_
病前 足りない人病前 軍港進行曲病前 鼻提灯_病前 高天ヶ原___ 病後 二つの道_ 病後 人さまざま_ 病後 人間同志病後 善き鬼・悪き鬼病後 旅路の芭蕉病後 器用貧乏病後 木と金の間病後 女人往来_病後 文学の鬼___病後 夢の跡病後 夢の通ひ路_病後 人間往来_病後 女人不信___病後 子の来歴__ _
病後 枯木のある風景_ 病後 枯野の夢病後 楽世家等__ 病後 母の形見の貯金箱_ 病後 水すまし_病後 終の栖_病後 湯河原三界病後 線香花火__
病後 身の秋病後 鬼子と好敵手_病後 風変りの一族__ 戦後 うつりかはり_ 戦後 人間同志戦後 大阪人間戦後 寂しがり屋_戦後 友垣__ _ 戦後 富士見高原戦後 自分一人戦後 西方町の家戦後 秋の心戦後 自分勝手屋戦後 青春期_戦後 思ひ川戦後 思ひ草_戦後 相思草_______
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
-1.5-1.0-0.50.00.51.0
CA factor map
Dim1 (29.57%)
Dim2 (7.67%)
・
・
・ 病前 「木からおりてください」病前 ぢゃんぽん廻り__
病前 人に問はれる_
病前 人癲癇_ 病前 俳優_
病前 十軒路地_
病前 千万老人_
病前 古風な人情家_
病前 夢見る部屋_
病前 如露_
病前 子を貸し屋_
病前 従兄弟の公吉_
病前 従兄弟同志_
病前 心つくし_
病前 思ひ出の記_
病前 或る春の話_
病前 昔がたり_
病前 晴れたり君よ_
病前 東館_
病前 歳月の川_
病前 浮世の窓_
病前 続軍港行進曲_
病前 足りない人_病前 軍港進行曲病前 高天ヶ原_ _
病前 鼻提灯_
病後 二つの道_ 病後 人さまざま_ 病後 人間同志_
病後 人間往来_ 病後 善き鬼・悪き鬼_ 病後 器用貧乏_
病後 夢の跡_ 病後 夢の通ひ路_
病後 女人不信_ 病後 女人往来_
病後 子の来歴_ 病後 文学の鬼_ 病後 旅路の芭蕉病後 木と金の間__
病後 枯木のある風景病後 枯野の夢_ _ 病後 楽世家等_ 病後 母の形見の貯金箱_ 病後 水すまし_
病後 湯河原三界_ 病後 終の栖_
病後 線香花火_ 病後 身の秋_
病後 風変りの一族_ 病後 鬼子と好敵手_ 戦後 うつりかはり戦後 人間同志__
戦後 友垣_ 戦後 大阪人間_
戦後 寂しがり屋_ 戦後 富士見高原_
戦後 思ひ川戦後 思ひ草__ 戦後 相思草_ 戦後 秋の心_ 戦後 自分一人_
戦後 自分勝手屋_ 戦後 西方町の家戦後 青春期_ _