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試算結果

ドキュメント内 . (ページ 156-161)

3. 大手石炭会社の世界戦略と寡占化による影響調査

3.2 石炭価格に関する影響分析

3.2.4 試算結果

前項までに想定したエネルギーサービス需要、新技術及びエネルギー価格の想定の下で、

エネルギーシステムコストが最小となるようなエネルギー需給構造をシミュレーションし たところ、結果は以下のとおりであった。

(1)原料炭価格上昇の影響

原料炭価格が上昇しても、高炉一貫製鉄プロセスにおいてコークス、ひいては原料炭の 代替技術・代替物質が実用化されない限り、原料炭は必須の燃料資源である。よって、原 料炭価格の上昇はそのまま鉄鋼業の原料コスト負担増となる。具体的には、本試算におけ る価格上昇シナリオでは、例えば

2030

年時点について、ベースケースと原料炭価格高位ケ ースを比較すると、約

1.5

兆円の原料コスト負担増となった。

なお、我が国の高炉

5

社(新日本製鐵、JFE、神戸製鋼所、住友金属工業、日新製鋼)

2009

3

月期の売上高は合計約

13.3

兆円であり、この原料コストの負担増が現実のも のとなるとすれば、相当程度の影響を及ぼすものと考えられる。

一方で、鉄鋼業界としても原料炭確保の問題及び高品位の鉄鉱石確保の問題に対応すべ く、製鉄プロセスとして従来型の高炉・転炉法に加えて、天然ガスベースの直接還元製鉄 法や石炭ベース還元溶融製鉄法の開発導入を進めている

18

。特に、後者の石炭ベース還元溶 融製鉄法は、比較的供給安定性の高いと考えられる一般炭を用いた還元方法であり、本格 的に導入されるようになれば、上記の結果も大きく変化して原料炭の需給は緩和される可 能性がある。

0 1 2 3 4

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(兆円)

ベースケース

原料炭価格高位ケース

3-16

原料炭の調達コストの推移とケース間比較 出所)三菱総合研究所

18

神戸製鋼所は、 米国の

Styeel Dynamics Inc

社との協業で石炭ベース還元溶融製鉄法の商業第1号機(年

(2)一般炭価格上昇の影響

基本的に一般炭価格は埋蔵量が豊富であり、産炭国も分散しているため価格が急騰する リスクは小さいと考えられる。ただし、今後、中国及びインドを中心としたアジアの新興 諸国のエネルギー需要の急増に対応して石炭火力発電所の増設が急ピッチで進んでおり、

一般炭価格が上昇する可能性がないとは言い切れない。そこで、本検討では、中期的に(2030 年にかけて)一般炭価格が熱量換算ベースで

LNG

に対して一定の割合まで上昇するものと 想定した場合、エネルギーセキュリティの要として、ベース電源の発電燃料に一般炭を使 用している現状の電源構成がどのように変化する可能性があるのかについて試算を行った。

結果的には、図

3-17

に示したとおり、基本的な価格見通し(2030 年時点で熱量換算で

LNG

29%)のベースケースでは、引き続き石炭火力発電が2~3

割程度の大きなシェア

を担うこととなった。一方、仮に

2030

年にかけて一般炭価格が熱量換算ベースで

LNG

と 同等程度まで上昇するとした一般炭価格

LNG

並ケースの場合、石炭火力発電の発電電力量 が

2030

年以降はゼロになるとの結果が得られた。

これは、石炭火力発電と

LNG

火力発電を比較した場合、石炭火力発電の方が

LNG

火力 発電に比較して設備コストが相当程度割高であるためである。つまり、一般に石炭火力発 電と

LNG

火力発電を比較すると、燃料に関する燃焼前後の処理、燃焼の管理、及び環境保 全対策等のため、設備コストは石炭火力発電の方が

LNG

火力発電に比較して相当程度割高 であるものの、通常は燃料調達コストが一般炭の方が

LNG

に比較して熱量換算ベースで遥 かに低く(約

3~4

割程度) 、結果として発電コストは石炭火力発電の方が低い。しかし、

仮に一般炭価格が相当程度上昇した場合には、 (供給安定性を除外すれば)経済合理性の観

点からも

LNG

火力発電にシフトするという結果が得られたのである。

ただし、このような極端なケースを除き、一般炭価格の上昇と、電源構成の変化、つま り石炭火力発電から

LNG

火力発電へのシフトの関係については複数の要因を考慮する必 要がある。つまり、火力発電の発電コストは設備コスト+燃料コスト+運転・点検コスト から構成され、同じ石炭火力発電にも既存の電源と今後開発される電源があり、前者につ いてはある程度減価償却済みで後者に対して優位性を有することになる。よって、一般炭 価格に一定の上昇が見込まれると想定した場合にも、新規の電源開発を回避するという判 断と、ある程度までは既存の電源を稼働させ続けるという判断は両立する。

一般炭価格2倍ケース

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(億kWh)

一般炭価格3倍ケース

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(億kWh)

一般炭価格LNG並ケース

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(億kWh)

ベースケース

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(億kWh)

3-17

一般炭価格見通しの違いによる電源構成の変化(発電電力量ベース)

出所)三菱総合研究所

この点については、図

3-18

から確認できる。一般炭価格

LNG

並ケース以外の他

3

ケー スでは、石炭火力発電について僅かとはいえ新規の電源開発を行うことが経済合理的であ るとの結果が得られた。一方、一般炭価格

LNG

並ケースでは新規の電源開発は行わず既存 の電源を耐用年数に応じて使用するという結果が得られた。これは、一般炭価格

3

倍ケー スについては、一般炭価格が上昇し切るまでの比較的安価な期間について稼働させ、価格 が高位に安定する

2025~2030

年以降は、既存の電源のみを稼働させることがエネルギーシ ステムコスト全体をより削減するという合理的判断の結果である。

なお、このような試算結果は、あくまで本モデルが、試算対象期間中の各種コスト情報 について予見可能であるとした上で、我が国のエネルギーシステムコスト全体の最小化計 算を行っているためである得られるものであり、現実的には、電気事業者として新たに開 発した電源を燃料価格の上昇のため短期間で停止するということは考えにくい点に留意す る必要がある。ただ、1 つ言えることは、仮に

2030

年にかけて一般炭価格が相当程度まで 上昇したとしても、その間の比較的安価な時期を捉えて稼働させることが経済合理的であ るという判断がなされる程に、石炭火力発電に経済的な優位性があるということである。

ベースケース

0 100 200 300 400 500 600

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(GW)

一般炭価格2倍ケース

0 100 200 300 400 500 600

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(GW)

一般炭価格3倍ケース

0 100 200 300 400 500 600

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(GW)

一般炭価格LNG並ケース

0 100 200 300 400 500 600

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(GW)

3-18

一般炭価格見通しの違いによる電源構成の変化(設備容量ベース)

出所)三菱総合研究所

(3)試算結果のまとめ

試算結果を基に、原料炭価格上昇の影響及び一般炭価格上昇の影響を、改めて整理する とのとおりである。

3-4

試算結果のまとめ

原料炭価格上昇の影響 一般炭価格上昇の影響

ケース設定

ベースケースでは、直近の価

格である

200USD/t

を維持。

高位ケースでは、400USD/t

@2025 まで上昇し、その後 横ばいと想定。

ベースケースでは、2030 年 に熱量換算で

LNG

30%ま

で上昇。他に、同

60%

90%

LNG

並ケースを想定。

エネルギー需給への影響

・(原料炭の代替技術・代替 物質はないとの想定のた め、)粗鋼生産量に応じて、

引き続き原料炭需要が発 生。

・ベースケースでは、石炭火 力発電が発電量ベースで

2

~3 割を担う一方、

LNG

並 ケースでは

2030

年以降ゼ ロに。

・ただし、

LNG

30~100%

の 価 格 の 場 合 、

LNG

60%

価 格 の 場 合 で あ って も、新規電源開発が合理的 であるとの結果は、石炭火 力発電の有効性を示して いる。ただし、

LNG

90%

価格となると新規電源開 発はほとんど進まず、既存 電源の有効利用に止まる。

その他の影響及び留意点

・2030 年時点では約

1.5

兆 円の原料コスト負担増。

・ただし、原料炭の代替技 術・代替物質に関する研究 開発が積極的に進められ ており留意が必要。

・現実的には、一般炭価格が

高騰するまでの短期間の

みの稼動を想定して電源

を開発することは考え難

く、あくまで全体のエネル

ギーシステムコスト最小

化の結果である点に留意

が必要。

ドキュメント内 . (ページ 156-161)

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