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評価実験 2 の考察

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第 5 章 自転車専用ハイウェイの評価

5.3 自転車専用ハイウェイの評価実験 2

5.3.4 評価実験 2 の考察

ことはなくなり、コストの増加は自転車への移行による時間損失分が大半を占めるよ うになる。この場合、コストの増加割合とCO2排出量の削減割合が一定で変化しなく なる。これが図5.10のような結果となる理由だと考えられる。よって、3.1.3項で述べ たハイウェイのメリット・デメリットのうち、「渋滞が悪化し、自動車の走行時間が増 加する」というものに関しては、逆に自動車の走行時間が減少していくこともあると 示された。

表5.6を見ると、時間価値の増加分がコストの大部分を占めていることがわかる。こ こで、本研究で用いた時間価値原単位については、4.3.3項で述べたように、国土交通 省の資料[43]を参考に以下のような式で算出している。

時間価値原単位(円/分・台)= 賃金フリンジベネフィット所得税等

労働時間 (5.1)

しかし、本研究で対象としている通勤時間というものは非業務時であり、賃金から 計算した値を用いて時間価値を算出してよいのか、疑問がある。また、同資料にも「非 業務時の時間価値の評価方法には、さまざまな手法が考えられる」とある[43]。表5.6 から時間価値がコストに占める割合は非常に高く、よって時間価値がコストパフォー マンスに与える影響も大きい予想されるが、有効性評価にどの程度関わってくるのか は分からない。そこで、時間価値原単位の変化でコストパフォーマンスがどう変化す るか、その有効性評価に与える影響を調べる必要がある。京都府の最低賃金である時 給751円[44]、つまり1分あたり12.5円を最低値とし、モーダルシフト日数が1.3日の 場合のデータをもとに、時間価値原単位の値を変化させ、コストパフォーマンスの変 化を算出したところ、図5.11、表5.7のような結果となった。ただし、図5.11の赤丸 で囲った部分が本研究で用いた時間価値原単位の値(30.70円/分・台)である。

表5.7を見ると、京都府の最低賃金に設定した場合でもコストパフォーマンスは

29.8g-CO2/円と低く、40〜50g-CO2/円エコカー減税・補助金と比較すると必ずしもハイウェ

イが有効とはならない。しかし、本研究の方針として、自転車専用ハイウェイを厳し く評価していることを考えると、ある程度の有効性はあると言える。

さらに、コストパフォーマンスが高い場合についても検討する。評価実験2の結果 の中で最もコストパフォーマンスが高かったモーダルシフト日数が3日のデータで同 様の解析を行ったところ、図5.12、表5.8のようになった。ただし、図5.12の赤丸で 囲った部分が本研究で用いた時間価値原単位の値(30.70円/分・台)である。

表5.8を見ると、例えば自家用車の時間価値原単位を京都府の最低賃金とした場合、

自転車専用ハイウェイのコストパフォーマンスは119g-CO2/円と非常に高くなり、40

自家用車の時間価値原単位(円/分)

コストパフォーマンス(g-CO2/円)

0 5 10 15 20 25 30

0 10 20 30 40 50 60

図 5.11: 時間価値原単位を変化させた時のコストパフォーマンスの変化グラフ(モー

ダルシフト週1.3日)

表5.7: 時間価値原単位を変化させた時のコストパフォーマンスの変化(モーダルシフ ト週1.3日)

時間価値(円/分・台) コストパフォーマンス(g-CO2/円)

12.5 29.8

15.0 16.5

20.0 8.70

25.0 5.91

30.0 4.48

35.0 3.60

40.0 3.01

45.0 2.59

50.0 2.27

55.0 2.02

60.0 1.82

0 20 40 60 80 100 120

0 10 20 30 40 50 60

自家用車の時間価値原単位(円/分)

コストパフォーマンス(g-CO2/円)

図 5.12: 時間価値原単位を変化させた時のコストパフォーマンスの変化グラフ(モー

ダルシフト週3日)

表5.8: 時間価値原単位を変化させた時のコストパフォーマンスの変化(モーダルシフ ト週3日)

時間価値(円/分・台) コストパフォーマンス(g-CO2/円)

12.5 119

15.0 30.3

20.0 12.2

25.0 7.60

30.0 5.53

35.0 4.35

40.0 3.58

45.0 3.04

50.0 2.65

55.0 2.34

60.0 2.10

〜50g-CO2/円というエコカー減税・補助金のコストパフォーマンスと比較しても十分 有効な方策であると言える。

以上の結果から、自転車専用ハイウェイにもある程度の有効性はあると結論付ける ことができる。しかし、この評価は時間価値原単位に大きく依存しているため、議論 の余地があり、不十分である。そこで、自転車専用ハイウェイについて、別方向から の評価も試みる。

CO2削減量による評価

3.1.2項や3.1.3項、3.2.1項などで述べたように、自転車専用ハイウェイは安価に自

転車専用の道ができ、CO2削減効果が得やすいというメリットがあるが、一方で対象 地域の交通への影響が大きいというデメリットもあり、この影響も評価に含める必要 がある。そこで、本研究では時間価値、走行経費、交通事故損失も含めてコストとし、

コストとCO2削減量のバランスを見る、つまりコストパフォーマンスで有効性を評価 することにした。しかし前述したように、時間価値原単位の算出方法には議論の余地 があり、方策のコストを適切に定量的な値として算出することは難しい。また、議論 の余地がある時間価値を除外した場合の、ハイウェイ設置前後でのコストの変化を表 5.9に示す。この場合、自動車から自転車へ移行することによる走行経費の減少量がコ ストの大部分を占めるため、コストが負の値となり、コストパフォーマンスでは議論 できなくなる。

表 5.9: モーダルシフト週1.3日、時間価値を除いた場合のハイウェイ設置前後でのコ ストの変化

走行経費 交通事故 方策実施に コストの

自動車 自転車 損失 かかる費用 合計値

(百万円/年) (百万円/年) (百万円/年) (百万円/年) (百万円/年)

設置前 5,831 0 10,500 0 16,331

設置後 4899 297 10,500 12 15708

増加量 -932 297 0 12 -623

さらに、3.2.2項で述べたように、比較対象のエコカー減税・補助金のコストパフォー

マンス算出時には、コストとして減税・補助金額しか考慮しておらず、捉え方が大き く異なるため適切ではない面もある。これらのことから、自転車専用ハイウェイの有

2.1節で述べたように、本研究では運輸部門、特に自家用車からのCO2排出量が多い ことから、排出量削減の1つの手段として自転車へのモーダルシフトに着目した。つ まり、自転車専用ハイウェイが設置された時に削減されるCO2排出量について、脱炭 素社会構築に有効と言える量であるのかという評価も必要である。そこで、自転車専 用ハイウェイのCO2削減量を京都市の運輸部門からの削減目標量と比較し、どの程度 削減目標に寄与するのか考察することでさらに有効性を検討する。

まず、モーダルシフト日数を変化させた時のCO2削減量の変化を図5.13、表5.10に 示す。モーダルシフト日数が0日の場合にCO2削減量が負の値となっているが、これ はCO2削減量がなく、自動車からのCO2排出量がハイウェイ設置によって増加したた めである。

ここで、京都市情報館の地球温暖化対策計画[46]によると、京都市における2010年 の運輸部門でのCO2削減目標量は20万tとなっている。2.1節で述べたように、自家 用車は運輸部門の50%を占めているため、京都市における自家用車からのCO2削減目 標量は10万tと推測される。この削減目標量に対する自転車専用ハイウェイ設置によ るCO2削減量の割合をまとめたものが表5.11である。ただし、表5.11ではモーダルシ フト0日の場合については除外してある。

表5.11を見ると、モーダルシフトが週1.3日の場合には削減目標量の6%程度である が、週3日の場合には15%程度にまでなる。方策実施にかかる費用が非常に小さいこ とを考えれば、自転車専用ハイウェイは自家用車からのCO2排出量削減に有効な方策 であると言える。

なお、4.7.2項で述べたように、本研究でシミュレーションの対象としたのはハイウェ

イを設置する範囲の一部のみである。シミュレーション範囲はおよそ10km×10kmで あり、設置するハイウェイのうち、京都市全体の範囲はおよそ20km×15kmである。ハ イウェイ設置によるCO2削減量は単純に設置する範囲の面積に比例するというわけで はないが、仮にそのように想定した場合、京都市全体でのモーダルシフトによるCO2

削減量が、削減目標量に対してどの程度の割合になるかまとめたものが表5.12である。

表5.12を見ると、モーダルシフトが週に3.5日の時点で、京都市が設定した自家用 車からのCO2排出削減目標の約半分にまで到達することがわかる。この値は概算値で あるが、自転車専用ハイウェイによるCO2削減効果が非常に大きく、CO2削減方策と して有効性が高いということは言える。

最後に、表5.12の設定の場合、ハイウェイ設置によるCO2削減量が、京都市の運輸 部門全体の排出量に対してどの程度の割合となるかまとめたものが表5.13である。

CO2排出量(t-CO2

-5,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

0 1 2 3 4 5

モーダルシフト日数(日/週)

図 5.13: モーダルシフト日数によるCO2削減量の変化グラフ

表 5.10: モーダルシフト日数によるCO2削減量の変化

モーダルシフト日数(日/週) CO2削減量(t-CO2

0 -374

0.5 2,197

1.0 4,961

1.3 6,102

2.0 9,466

2.5 12,154

3.0 14,577

3.5 16,745

4.0 19,506

5.0 24,018

表 5.11: モーダルシフトによるCO2削減量が京都市の削減目標量に対する割合 モーダルシフト日数 CO2削減量 削減目標量に

(日/週) t-CO2 対する割合(%

0.5 2,197 2.20

1.0 4,961 4.96

1.3 6,102 6.10

2.0 9,466 9.47

2.5 12,154 12.15

3.0 14,577 14.58

3.5 16,745 16.75

4.0 19,506 19.51

5.0 24,018 24.02

表 5.12: モーダルシフトによるCO2削減量が京都市の削減目標量に対する割合(京都

市全体)

モーダルシフト日数 CO2削減量 削減目標量に

(日/週) t-CO2 対する割合(%

0.5 6,591 6.59

1.0 14,883 14.88

1.3 18,306 18.31

2.0 28,398 28.40

2.5 36,462 36.46

3.0 43,731 43.73

3.5 50,235 50.24

4.0 58,518 58.52

5.0 72,054 72.05

表 5.13: モーダルシフトによるCO2削減量が京都市の運輸部門からの排出量に対する 割合(京都市全体)

モーダルシフト日数 CO2削減量 運輸部門からの排出量

(日/週) t-CO2 対する割合(%

0.5 6,591 0.39

1.0 14,883 0.87

1.3 18,306 1.07

2.0 28,398 1.66

2.5 36,462 2.13

3.0 43,731 2.56

3.5 50,235 2.94

4.0 58,518 3.42

5.0 72,054 4.21

表5.13を見ると、モーダルシフトが週1.3日の場合は運輸部門からの排出量を約1%削 減するに過ぎず、モーダルシフトが週3.5日でも約3%の削減である。しかし、既存の 道路を利用してハイウェイを設置し、自転車へのモーダルシフトを促進するという方 策でこれだけの効果があるということはこの方策の強みと言える。京都市情報館の地 球温暖化対策計画[46]によると、運輸部門からのCO2排出削減目標達成のための手段 として、「交通需要管理施策の推進」、「自動車の更なる技術開発とクリーンエネルギー 自動車等の普及」、「エコドライブの実践」などが挙げられているが、以上のことから、

自転車専用ハイウェイの設置という方策も十分にそれらの1つとして提案可能である と結論付けられる。

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