本研究では、脱炭素社会構築の1つのアプローチとして自家用車での通勤に着目し、
そのCO2排出量には削減する余地があり、これには自転車へのモーダルシフトが有力 な候補となるが、実際にはモーダルシフトは進んでいないことから、抜本的な自転車 利用促進方策として自転車専用ハイウェイを提案した。自転車専用ハイウェイは既存 の道路の一部を利用するため、方策実施にかかる費用が安価というメリットがある一 方、自動車が迂回することによって走行経費や走行時間、交通事故が増加するなど様々 なデメリットも考えられる。このメリット・デメリットを定量的に評価するため、自 転車専用ハイウェイのコストパフォーマンスを定義し、このコストパフォーマンスを 算出するために交通流シミュレータを開発した。交通流シミュレータで算出した値を エコカー減税・補助金と比較し、有効性を検討した。
第2章では、研究の背景として、自家用車利用の現状とその問題点についてまとめ、
自転車へのモーダルシフトが有力であるが、現在モーダルシフトは進んでいないため、
抜本的な自転車利用促進方策が必要であると述べた。その後、自転車専用ハイウェイ を提案し、この有効性を定量的に評価することが目的であると述べ、想定する都市の 条件から本研究では京都市およびその近郊を対象とすると述べた。
第3章では、自転車の利用を阻害する要因についてまとめた後、主な阻害要因であ る自転車の走行環境に関する要因を打開する方策として自転車専用ハイウェイを提案 し、詳細について述べた。自転車専用ハイウェイにはメリット・デメリットが存在し、
有効性を議論する場合には定量的な評価が必要であるため、自転車専用ハイウェイの コストパフォーマンスをまず定義し、このコストパフォーマンスを算出するためには シミュレーションが必要であると述べた。また、有効性を検討する場合の比較対象で あるエコカー減税・補助金のコストパフォーマンスについても定義し、算出した。
第4章では、開発した交通流シミュレータについて、道路ネットワークの表現機能、
CO2排出量・コストの算出機能、自動車交通流シミュレーション、自転車交通流シミュ レーション、シミュレーション結果の出力に関する機能という5つの項目に分けて説明 した。特に、CO2排出量・コストの算出機能の部分では、方策実施にかかる費用、走 行経費、時間価値、交通事故損失について算出方法を詳細に述べた。その後、範囲を 限定してシミュレーションすることについて触れた。この条件で、開発した交通流シ
ミュレータを用いて交通流の再現性の検証実験を行い、現実の交通流とある程度の相 関はあると確認した。
第5章では、第4章で開発した交通流シミュレータを用いて評価実験を行った。まず モーダルシフトをしないという設定で自転車専用ハイウェイ設置前後のコストやCO2 排出量を比較し、妥当な結果が得られることを確認した。その後、モーダルシフト割 合をいくつか変化させてコストパフォーマンスを求め、有効性について考察した。さ らに、京都市が掲げる運輸部門からのCO2排出削減目標を参考に、自家用車で削減す べき量を推定し、自転車専用ハイウェイの設置によってその量の何割程度が削減可能 であるのかも算出した。
評価実験から、自転車専用ハイウェイのコストパフォーマンスは非常に低いという 結果になったが、これは自動車から自転車へモーダルシフトした時の時間損失が非常 に大きくなるためと分かった。このことから、自転車専用ハイウェイを設置する場合 には、自転車へ移行した時に旅行時間が大きく増えないように工夫しなければならな ず、この方策の提案は課題である。また、通勤時間の時間価値原単位の算出には議論 の余地があるため、その値を変化させて解析した結果、限定的にではあるが、自転車 専用ハイウェイにある程度の有効性はあると分かった。さらに、京都市の削減目標お よび運輸部門からのCO2排出量と比較した結果、自家用車からのCO2排出量を削減 する手段として自転車専用ハイウェイは有効であり、提案する意義があると分かった。
今後は、交通流シミュレータの再現性と範囲を改善し、時間価値原単位についての考 察、および本研究で対象としなかった健康増進による医療費削減効果や経済的な損失 まで考慮に入れ、その上で自転車専用ハイウェイについて定量的に評価できれば、よ り有効な提案となるだろう。
謝 辞
本研究を進めるにあたり、研究の方針や進め方について非常に適切な助言をあたえ てくださっただけでなく、いつも研究室の雰囲気を楽しいものにしてくださった下田 宏准教授に心より感謝いたします。
プログラミングの基本的な作法からシミュレータの高速化まで、技術面で数多くの 御支援を頂き、また修士論文提出間際は徹夜で研究室に待機し続け、私達をサポート して下さった石井裕剛助教に心より感謝いたします。
論文や書籍取り寄せその他一切の事務処理をしていただき、また、研究室で快適な 生活を送るために本当に多くの仕事をしてくださった山下恵未依さん、若林友美さん、
普照郁美さんに心より感謝いたします。
研究が行き詰まった時のディスカッションから、ジョージアタワー建設という息抜 きに至るまで、様々な面で楽しい研究室生活を提供してくれたM2メンバーの河野翔 君、小野義人君、北村尊義君、藤原央樹君に心より感謝いたします。
また、様々な御支援・ご助力をしていただいた研究室メンバーの全ての方々に、こ こで御礼申し上げます。
最後に、修士論文のフォーマットを快く提供して頂き、ノルウェーのお土産では〇
〇本を買ってくるなど、数多くのネタを提供し続けて下さったはるやま先輩に本論文 を捧げます。
参 考 文 献
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