第 5 章 コミュニケーション評価実験
5.2 評価実験の方法
5.2.1 評価の概要
前節で述べた評価の目的を調べるためにコミュニケーション評価実験を実施した。コ ミュニケーション評価実験では、実験参加者5名と会話エージェント6名で構成された 20代のコミュニティと50代のコミュニティを作り、システムを運用した。この実験で は、実験協力者に1ヵ月間システムを使用してもらい、システム運用開始前、システム 運用期間中、システム運用期間後にアンケートを行い、前節で述べた評価の目的を調 べた。
評価の目的1は、ゆるいつながりの実現の確認である。図5.1が示すように、ゆるい つながりの構成要素である「場所・行動共有感覚を感じられること」「強制感・ストレ
場所・行動共有感覚
強制感・ストレスの無いコミュニケーション ゆるいつながり
図 5.1: ゆるいつながりの実現の確認
PEB促進 PEB持続
場所・行動共有感覚
強制感・ストレスの無いコミュニケーション ゆるいつながり
図 5.2: ゆるいつながりのPEB促進・持続への効果の評価
ス無くコミュニケーションをとれること」が実現できているかをアンケートにて確認 した。
評価の目的2は、ゆるいつながりのPEB促進・持続への効果の評価である。図5.2 が示すようにPEB促進・持続が実現できたか、および、ゆるいつながりのPEB促進・
持続への効果をアンケートにて評価した。
5.2.2 実験協力者とコミュニティメンバ
図5.3に年代別のSNS利用率を示す[41]。SNSを利用していない人は、SNSに慣れて おらず、SNSを目新しく感じるため、本システムでのコミュニケーションに対する感 じ方がSNSを利用している人と異なる可能性がある。そこで、今回の実験は、SNS利 用率が高い20代の実験協力者と、SNS利用率が低い50代の実験協力者に対して実施 した。
実験協力者は4章で述べたように、以下の基準で20代の男女5名、50代の男女5名 を選んだ。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
10代 20代 30代 40代 50代 60代
SNSの 利用率(%)
図 5.3: 年代別のSNSの利用率[41]
• 同居している世帯人数が少ない
• PEBを行う機会がある
• 情報機器を扱える
上記の条件により選んだ20代の実験協力者Y1〜Y5と、50代の実験協力者E1〜E5 の属性を表5.1に示す。
本実験では、図5.4のように、1つのコミュニティを実験協力者5名と会話エージェ ント6名の11名で構成した。また、20代の実験協力者を集めた20代グループと、50 代の実験協力者を集めた50代グループを作った。
本実験においても、4章で述べたように高度な会話エージェントの開発は研究の対象 外にしているので、会話エージェントは実験者が演じることにした。会話エージェン トが足跡・つぶやきを残す頻度は、実験協力者の足跡・つぶやきを残す頻度に合わせ て、場所ごとのタイムラインが一日のうちにすべて入れ替わる数以上の足跡・つぶや きが残されるように調節した。
5.2.3 システム運用期間
4章で述べたように、PEBが持続されたかを調べるためには、3週間以上の期間が必 要である。そこで、本実験では、システムの運用期間は2010年11月15日から2010年 12月14日までの1カ月とした。
表 5.1: 実験協力者の属性
実験協力者 年齢 性別 居住地 職業大分類 家族構成 SNSの利用
Y1 24 男 三重県 生産工程・労
務作業者
一人暮らし 利用している
Y2 24 女 広島県 サービス職業
従事者
一人暮らし 利用している
Y3 23 男 福岡県 事務従事者 一人暮らし 利用している
Y4 25 女 大阪府 無職 母と弟との三
人暮らし
利用している
Y5 23 女 千葉県 サービス職業
従事者
一人暮らし 利用していない
E1 59 男 愛媛県 事務従事者 妻と子供の三
人暮らし
利用していない
E2 50 女 広島県 無職 夫との二人暮
らし
利用していない
E3 59 女 京都府 専門的・技術
的職業従事者
子供と兄弟と の三人暮らし
利用していない
E4 57 女 北海道 サービス職業
従事者
夫と子供の三 人暮らし
利用していない
E5 50 女 千葉県 専門的・技術
的職業従事者
夫との二人暮 らし
利用していない
20代グループ 50代グループ
会話エージェント 会話エージェント
× 6名 × 6名
20代の実験協力者
(現実の人々)
× 5名 × 5名
50代の実験協力者
(現実の人々)
図 5.4: コミュニティメンバの構成
PEBが推薦される
皆の行ったPEBや つぶやきが表示される 画面が遷移
場所ボタン
図 5.5: 場所ボタンを押すことでPEBが推薦される画面例
5.2.4 システムの有効性評価実験で使用したシステムとの相違点
4章のシステムの有効性評価実験では、Bluetoothステーションを用いてユーザの位 置を同定し、ユーザの位置と場所に対応したPEBを音と振動と共に推薦することによ り、気付きの付与を実現していた。しかし、Bluetoothステーションを10名の実験協 力者の各家庭に設置し、Bluetoothの通信距離を調整することは現実的に難しい。そこ で、今回のコミュニケーション評価実験では、ユーザがPEBを行う機会があると考え られる時間になると自動的に音で注意喚起を行い、ユーザの生活サイクルに合わせた PEBを推薦する。PEBを推薦する時間は、事前に実施した生活習慣アンケートの結果 から決定した。ただし、ユーザの生活サイクルに合わせてPEBを推薦するのみでは、
気付きの付与を実現できるか不明であるが、本実験では、ゆるいつながりに着目して いるので、気付きの付与が実現できているかは評価の対象外とした。
また、Bluetoothステーションがないので実験協力者の位置を同定できないため、図 5.5のように、自分のいる場所に対応した場所ボタンを押すことで、自分のいる場所と 生活サイクルに合わせたPEBが推薦され、自分のいる場所で残されたコミュニティメ ンバの足跡やつぶやきが表示されるように変更した。
システム運用後 運用期間システム システム運用前
運用1週間前 実験機器・インストラクションシートの送付
システムの説明 事前アンケート*への回答
PEB実行頻度アンケートの実施 PEB実行頻度アンケートの実施 PEB実行頻度アンケートの実施 PEB実行頻度アンケートの実施
事後アンケート**の実施 運用1週間後
運用2週間後 運用3週間後 運用1ヶ月後
運用後
時間経過
システムの運用開始
システムの回収 運用2日前
• :事前アンケートは生活習慣アンケートとPEB実行頻度アンケートと環境意識を問うア ンケートから構成される。
** :事後アンケートは有効性評価アンケートと環境意識を問う質問から構成される。事後 アンケートは、システム運用期間終了後にすぐ事後アンケートに回答するよう依頼した。
***:追加アンケートは、有効性評価アンケートの結果を元に、特定の実験協力者に対して 実施した。
この期間システム を利用してもらった
追加アンケート***の実施
図 5.6: コミュニケーション評価実験の手順