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計算結果および考察

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 75-89)

図 3.10に,THERBの計算値と実測値の各内表面温度の面積加重平均値を示す。設定温度 と対応した表面温度の関係が見られる。実測値と THERB の表面温度は概ね合っているが,

Room2とRoom8に若干の乖離が見られる。これは,床下の温度が入力条件として入っていな

いため,実測の状況と異なるためだと推測される。

熱負荷の時刻推移を図 3.11に示す。この熱負荷に熱量拡散係数を乗じて各ゾーンに分配 する。

式(5)により実測値の吹出温度と吸込温度を既知条件として時々刻々のエアコン流速を 算出する。時刻変動が大きくないため,平均値である2.4[m/s]を採用した。

𝑣𝑣= 𝑄𝑄𝑇𝑇

𝐶𝐶𝑤𝑤𝑖𝑖𝑎𝑎𝛾𝛾𝐴𝐴𝑤𝑤𝑖𝑖𝑎𝑎(𝑇𝑇𝑤𝑤𝑖𝑖𝑎𝑎− 𝑇𝑇𝑠𝑠𝑓𝑓) (5)

図 3.10 空調設定温度と表面温度の精度検証

図 3.11 投入熱量の計算結果

19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

2 3 4 5 6 7 8 9

Tempureture[]

Room Number

Calculated Measured Setting

700 800 900 1000 1100 1200

0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21

Heat Load[W]

Time Heat Load

2016/10/18 2016/10/19 2016/10/20 2016/10/21

71

CFD で算出する各ゾーンへの吹き出し口の寄与の精度はまず空間の温度分布が正しくな

ければ,各ゾーンへの寄与をCFDで精度よく計算することは難しい。そのため,4.2節で算 出した流速と実測値による表面温度を境界条件として精度検証に表面温度実測値を用いる。

CFDの各ゾーンの温度の分布性状の精度検証結果を図 3.12に示す。CFDの計算値は,一部 には差異がみられるものの,計算値はおおむね実測値と近い傾向を示す。Room8 の温度に 0.8℃程度の乖離が見られるが,体積加重平均した温度では計測点が多いと計測機器の誤差 が生じるため許容範囲内だと判断した。図 3.13に吹出角度30°における吸込温度の比較を 示す。吸込温度の実測値(25.7℃)と計算値(26.0℃)の誤差は0.3℃で高い精度で実測値を捉 えており,モデルが現実に近い状況を再現できていることを確認した。なお,CFDでは定常 状態の計算を行っている。境界条件が正しければ正しい温度場・流れ場が得られるかどうか の検証であるため,時間的な変動は考慮していない。

図 3.12 各ゾーンのCFDの計算値と実測値の比較

図 3.13 吹き出し角度30°における吸込み温度の比較 22.5

23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Tempureture[]

Room Number

Measured Calculated

24.5 25 25.5 26 26.5 27

Calculated Measured

Temperature[]

Suction Temperature

72

分配係数を算出する際に図 3.10で算出した表面温度を使用するが,熱負荷が最低を取る 時刻のケースを検討する。最低負荷時のCFDの境界条件を図 3.14に示す。実測値は一部に は差異がみられるものの,計算値はおおむね実測値と近い傾向を示す。最低負荷時の熱量拡 散係数を図 3.15に示す。吹き抜け空間であるRoom3の係数が最も高く,浮力によって熱が 移動している現象が見受けられる。Room5,Room6 に関しては吹き抜けの隣室のゾーンにな るため熱が拡散して高い値を示している。図 3.16にCFDの解析結果を示す。吹き抜け上部 に見られる熱溜まりは,1FのRoom7の空調機からの気流の影響で2FのRoom4に熱が輸送さ れている現象が示唆される。

図 3.14 CFDの境界条件(表面温度)

図 3.15 各ゾーンの熱量拡散係数 19

20 21 22 23 24 25 26

Room2 Room3 Room4 Room5 Room6 Room7 Room8 Room9

Temperature[]

Room Number

Actual minimum load measured Minimum load caluculated

0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300

Room2 Room3 Room4 Room5 Room6 Room7 Room8 Room9

HQDC[-]

Room Numbver[-]

Low load area

73

(a) Y=1.5m 温度分布 (c) Y=3.27m 温度分布

(b) Y=1.5m 風速分布 (d) Y=3.27m 風速分布

図 3.16 CFD解析結果

74

各ゾーンの室温実測値と計算値の比較を図 3.17に示す。THERBの入力に用いる各ゾーン への投入熱量は,エアコン気流の影響を加味した熱量拡散係数に基づいて決定される。

Room4 および Room7 は測定点が多く,代表するゾーンとして選定した。Room7 に日中では,

1℃程度の誤差があるが,Room4は0.6℃程度の誤差に収まる。夜間では,Room7は0.7℃程

度の誤差,Room4は0.5℃程度の誤差が生じる。また,1Fと2Fの差として図 3.18に熱量拡 散係数の精度検証結果を示す。熱負荷の最低負荷時刻の各ゾーンの実測値を THERB の暖房 設定温度とした場合に各ゾーンの熱負荷の計算値が正値の熱負荷であると仮定する。その 熱負荷を基準熱負荷とした時に,THERBで計算した各ゾーンの積算値である全負荷とCFDの 吹出と吸込温度差に比熱比重と流量を乗じた計算値である投入熱量を熱量拡散係数で分配 してそれぞれ基準熱量と比較した。基準熱量を正値とした時,高い精度で基準熱量を再現し ていることが,THERBとCFDそれぞれの分配熱量で確認できた。

図 3.17 精度検証結果

図 3.18 熱量拡散係数の精度検証

0 2 4 6 8 10

20 22 24 26 28 30

0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21

Outdoortemperature[]

Temperature[]

Time

Measured Room7 Analysis Room7 Measured Room4

Analysis Room4 Outside temperature

0 50 100 150 200 250

Room2 Room3 Room4 Room5 Room6 Room7 Room8 Room9

Input heat quantity[W]

Room Number

Reference heat quantity THERB CFD

75

【吹出角度による感度解析】

熱分配法による手法の適用範囲を確認する目的で吹出角度を変更し,感度解析を行う。

投入熱量は吹き出し角度が変わると吸い込み温度が変わってしまうため,吹き出し角度 毎に投入熱量が異なってしまう。投入熱量が異なれば解析条件の変数が 2 つになる事を意 味するため,感度解析としてなりたたない。投入熱量を合わせないと比較ができないので 30°のケースの投入熱量を基準熱量とする。そして,吹出角度によって吸込み温度は異なる ため,基準熱量に合わせる形で吹出温度を変化させて投入熱量が基準熱量と 8%以内の誤差 で収まるまで収束計算をCFDで行った。吹出角度と吸込温度の比較を図 3.19に示す。

吹出し角度30°の実測値と比較して20°と40°のケースは吸い込み温度が実測値と比較し て誤差が大きく30°が最も実測値を捕捉する結果が得られた。水平方向からの吹出角度が大 きいと吸込温度が高くなる傾向にある理由としては浮力による影響を受けているからだと 推察される。

吹出角度による熱量拡散係数を図 3.20に示す。基準である30°のケースと比較して20°

や40°でも同じ傾向であることが確認できた。吹出角度よりも投入熱量に依存して変化する

と考えられる,また,流量にも大きく依存すると予測出来る。

感度解析結果を図 3.21に示す。吹出角度が20°のケースが主要居室の温度が高くなる傾 向がみられる。これは,吹出角度が大きくなるとRoom2などのゾーンに熱が分配されるため と考えられる。しかし,温度スケールとしては0.5℃程度の範囲で収まっており,風向を変 えてもあまり差異は見られない結果となった。

図 3.19 感度解析による吸込み温度の比較 24.5

25 25.5 26 26.5 27

20 30 40

Suction Temperature[℃]

Callout from horaizontal plane 20 30 40

measured value

76

図 3.20 感度解析による熱量拡散係数の比較

図 3.21 風向の感度解析結果 0

0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

Room2Room3Room4Room5Room6Room7Room8Room9

HQDC[-]

Room Number[-]

20 30 40

22.5 23 23.5 24 24.5 25

0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21 0 3 6 9 12 15 18 21

Temperature[]

Time[h]

1F 2F 20°:1F,2F 30°:1F,2F 40°:1F,2F

77

まとめ

本研究では,ES では強制対流の卓越する環境下において室内の温熱環境を予測すること が難しいという課題に対して CFD によって熱源からの熱輸送を計算し,任意に分割した各 ゾーンへの寄与の比率によってESで計算された熱負荷を分配する手法を提案した。提案手 法で使用する熱量拡散係数の精度を確認する目的で,THERBの精度を確認した上で,出力値 である表面温度をCFDの境界条件として計算を行い,CFDの精度を確認した。また,風向に よる感度解析を行い風向が各ゾーンに与える影響を調査した。更に熱源の足し合わせが有 効かどうかの確認を行う目的で,各階毎に熱量拡散係数を計算し,熱負荷を分配することに より主要居室における室温の精度を確認した。以上の検討から以下の知見が得られた。

1) THERBを用いて時々刻々の投入熱量を計算し,CFDの境界条件(表面温度と空調気流速)

の計算を行い,表面温度が実測値を概ね捕捉することを確認した。

2) CFDの計算した物理量(壁面からの熱損失,各ゾーンの温度)から熱量拡散係数を算出 し,主要居室の温度が精度良く捕捉できることを確認した。また,熱量拡散係数の精度 を確認する目的で投入熱量の比較を行いその精度を確認した。

3) 移流分布が室温に与える影響を確認するため,空調機からの吹出角度に関する感度解 析を行った。吹出角度により室内温度分布に誤差を生じるものの適切な角度が入力さ れれば移流量に係る投入熱量が正しく予測されて,実測と計算による室温がよく一致 することを確認した。ただし,吹出角度による熱量拡散係数の変動は少なく,温度スケ ールとして0.5℃程度の範囲で収まる。従って,吹出し角度は熱分配法では大きく寄与 しないと考える。

78 記号

𝛼𝛼:熱量拡散係数[−]

𝐶𝐶𝑝𝑝:空気の比熱[J/kgK]

γ:比重[kg/m3] 𝑉𝑉𝑖𝑖:iゾーンの容積[m3] 𝑇𝑇𝑖𝑖`:iゾーンの温度[K]

𝑇𝑇𝑠𝑠,𝑖𝑖:iゾーンの基準温度[K]

𝑞𝑞𝑤𝑤𝑜𝑜𝑠𝑠𝑙𝑙𝑖𝑖:壁面からの熱損失[W]

𝑄𝑄𝑇𝑇:空調機の投入熱量[W]

𝐶𝐶𝑤𝑤𝑖𝑖𝑎𝑎:空調機吹き出し空気の比熱[J/kg・K]

Aair:空調機の吹き出し口面積[m2]

𝑇𝑇𝑤𝑤𝑖𝑖𝑎𝑎:吹き出し口空気温度[K]

𝑇𝑇𝑠𝑠𝑓𝑓:吸い込み口空気温度[K]

Ti,j:i室,対象要素jの温度[K]

𝑐𝑐̅𝛾𝛾̅:家具を含む室の見かけの容積比熱[J/m3・K]

Si,j:i室,対象要素jの面積[m2]

hi,j:i室,対象要素jの対流熱伝達率[W/m2・K]

Vo:外気との換気量[m3/s]

c𝛾𝛾:空気の容積比熱[J/m3・K]

qi:iゾーンの熱負荷[W]

v:吹き出し風速[m/s]

L:全熱負荷[W]

Tair:吹き出し口の温度[K]

Ts:吸い込み口の温度[K]

79 参考文献

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