2017年8月に福岡県福岡市(日本)の九州大学箱崎キャンパス内の執務室を対象として 夏期冷房時の実測を行った。図 4.2~図4.4に対象室の図面および測定点を示す。図4.5に 空調機の測定点を示す。消費電力は電圧と電流を計測しカタログ値の力率を乗じて算出し ている。表 4.1に実測条件,表 4.2に本実測で使用したエアコン仕様のカタログ値を示す。
表4.3に測定方法を示す。空間の室温,壁体表面温度,屋外の外気温度および日射量,隣室 温度,空調機の室内機および室外機の吸い込みおよび吹出し温湿度,空調機の消費電力を測 定している。表4.4に実測で使用した測定機器を示す。
エアコンの設定は,冷房で25℃設定として,風量は微風(10.35m3/min),風向は水平面か
ら下方に22.5°とした。本研究では,解析を単純化する目的で,実測データから在室者が少
なく,人の出入りが無い日を抜粋して検討を行っている。エアコンの吹き出し角度と家具の 配置によってはショートサーキットなどが発生し,部屋平均の温度よりも吸い込み温度が 高くなる可能性が生じる。本研究では,そのような温度成層を形成する条件を室内中央部に パーティションを設けることでバルク温湿度と室内機の吸い込み温湿度に相違が生じるよ うに工夫した。具体的には,エアコンの気流を遮らない【条件A】とエアコンの気流を遮る べく室内中央部にパーティションを設置した【条件B】の2つの条件で解析を行った。
図 4.2 測定対象の測定点および平面図
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図 4.3 測定対象の測定点および断面図
図 4.4 執務室のB断面図
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図 4.5 空調機測定点
表 4.1 実験条件
項目 内容
測定対象 九州大学箱崎キャンパス
建築学棟本館4階執務室
期間 2017.8.22~2017.9.1【条件A】
2017.8.12~2017.8.20【条件B】
エアコン設定
温度 冷房25.0℃
風量 微風10.35m3/min
風向 下方22.5°固定
家具の配置 条件A パーティションがない場合 条件B パーティションを設置した場合
表 4.2 実測で使用したエアコンのカタログ値
項目 数値
冷房能力(kW)
最小 0.9 定格 4.0 最大 4.5
電気特性
運転電流(A) 6.7
消費電力(kW)
最小 0.130
定格 1.250
最大 1.730
力率(%) 93
室内機
電動機出力(W)×台数 24×1 風量 (m3/min)
強(H) 13.97 弱(M) 11.95 微(L) 10.35 室外機 電動機出力(W)×台数 38×1
風量(m3/min) 43.23
87 表 4.3 測定方法
表 4.4 測定機器
測定点 測定方法
室内 空間 サーモレコーダー① 温度・湿度 T型熱電対 温度
室内 表面
壁面
T型熱電対 温度 床面
天井面 窓面 内窓 棚
屋外 外気 サーモレコーダー① 温度・湿度
日射 日射計 日射量
隣室
廊下 サーモレコーダー① 温度・湿度 西隣室
サーモレコーダー② 温度 東隣室
下階隣室
エアコン
室内機 吸い込み
サーモレコーダー① 温度・湿度 吹き出し
室外機 吸い込み
サーモレコーダー② 温度 吹き出し
電力 電力計 電流・電圧
測定機器 測定項目 仕様[測定分解能/精度]
サーモレコーダー① 温度・湿度
【測定精度】
温度: ±0.3℃ (10~40℃), ±0.5℃ (その他)
湿度: ±2.5 %RH (25℃ 10~85 %RH)
±4.0 %RH (25℃ 0~10%, 85~99 %RH)
【測定分解能】
温度: 0.1℃ 湿度: 1 %
サーモレコーダー② 温度
【測定精度】
温度: ±0.3℃ (-20~80℃), ±0.5℃ (その他)
【測定分解能】
温度: 0.1℃
データロガー 温度 最大;200ch サンプリング周期;10ms~1h T型熱電対温度[0.1℃/±(0.1 % of rdg+0.5 ℃)]
電力計 電流・電圧
測定方式:ディジタルサンプリング方式 サンプリング:1 回/ 秒(10 波形=瞬時値)
電圧[ 0.01V/±0.3%rdg. ±0.2%f.s.] 電流[0.001A/±0.3%rdg.
±0.2%f.s.]
有効電力[0.001kW/±0.3%rdg. ±0.2%f.s.]
有効電力量[0.00001MWh/有効電力の測定確度± 1dgt.]
日射計 日射量 ISO9060 Second class
感度定数;7μV/W・m-2 安定性;<±1.7%/1年
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本検討では実測値を用いてエアコンのCOPと消費電力を以下の方法で算出した。
空調機のエネルギー消費効率を示す成績係数(COP[-])は空調能力(q[W])と消費電力(P[W]) を用いて
P COP
q = (4.1)
と表せる。空調能力(q[W])は,顕熱(qs[W])と潜熱(pl[W])の処理量の和で
l
s q
q
q= + (4.2)
と表される。ゆえに顕熱と潜熱の処理量を算出することで空調能力を求める。
室内機風量をVair[m3/s],空気密度を𝜌𝜌[𝑘𝑘𝑔𝑔(𝐶𝐶𝐴𝐴)/𝑚𝑚3]とする。
顕熱の処理量は,室内機吸込温度(Tra[K]),室内機吹出温度(Tsa[K])を測定し,乾き空気の 定圧比熱を(Cp[J/kg(DA)・K])とすると次式となる。
𝑞𝑞𝑠𝑠 =𝐶𝐶𝑝𝑝∙ 𝜌𝜌 ∙(𝑇𝑇𝑎𝑎𝑤𝑤− 𝑇𝑇𝑠𝑠𝑤𝑤)∙ 𝑉𝑉𝑅𝑅𝑖𝑖𝐺𝐺 ]
/ ) ( [ 2 . 1
] ) ( / [ 1005
m3
DA kg
K DA kg J Cp
=
⋅
= ρ
(4.3)
潜熱の処理量は,室内機吸込湿度(Xra[kg/kg(DA)]),室内機吹出湿度(Xsa[kg/kg(DA)])を測定 し,水の蒸発潜熱(r[J/kg])とすると次式となる。
i sa ra
l r x x Q
q = ⋅ρ⋅( − )⋅
] / ) ( [ 2 . 1 ] / [ 10 5 .
2 6 J kg kg DA m3
r= × ρ= (4.4)
実測では,湿度は相対湿度𝜑𝜑[%𝑅𝑅𝑅𝑅]で測定されるため重量絶対湿度(X[kg/kg(DA)]).に変換 する必要がある。まず,Tetens(1930)の式[13]より水面における飽和水蒸気圧(es[hPa]) は相対湿度と空気温度(θ[℃])を用いて次式で表される。
237.3 7.5
10 1078 .
6 +
×
×
= θ
θ
es (4.5)
この飽和水蒸気圧に相対湿度を乗じて水蒸気圧(es[hPa])は es
e= ×
100
ϕ (4.6)
となる。
理想気体の状態方程式より重量絶対湿度は次式で求められる。
) 25 . 1013 ( 97 . 28
02 . 18
e x e
× −
=
水 蒸 気 の 分 子 量:18.02 乾 燥 空 気 の 平 均 分 子 量:28.97 海 面 で の 平 均 的 な 気 圧:1013.25[hPa]
(4.7)
消費電力(P[W])の算出には,電力計で測定した電流(I[A])と電圧(v[V]),カタログ値の力率
(交流電力の効率を示す値で,皮相電力に対する有効電力の割合)を用いて次式で計算でき る。
×力率
×
=I A
P (4.8)
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式(4.2)~式(4.8)の計算を行うことで,式(4.1)により実測値によるCOP を算出することがで きる。なお,風量はエアコンカタログの定格値を使用することとする。