ch-ダイアグラムは曲面絡み目Kの向きから導かれる向きを持っている. 定理 2.5 (主定理) Kを有向曲面絡み目. ΓをKのch-ダイアグラムとする. 集 合Γから交点を取り除いた集合の各連結成分にa1,· · · , anとラベルを付けて, 各 交点にc1, c2,· · ·, cmと名前を付け, 交点Ci毎に次の図10の様にして関係式を入 れ, Γ のバイカンドルをBQ(Γ) =)a1,· · · , an|r1(c1), r2(c1)· · · , r1(cm), r2(cm)*で 定める. このときBQ(K)∼=BQ(Γ)である.
a b
d c
f e
g h
r1(ci) :c=ab r1(ci) :g =ef¯ r2(ci) :d=ba r2(ci) :h=f¯e
図 10:
Γ a1
a2
a3
a4
a5
a6
a7
a8
a9 a10
a11
r1 :a2 =a1a7, r2 :a8 =a7a1
r3 :a3 =a2a8, r4 :a9 =a8a2
r5 :a4 =a3a9, r6 :a1 =a9a3 r7 :a5 =a4a1, r8 :a10 =a1a4
r9 :a6 =a5a10, r10:a11=a10a5
r11 :a1 =a6a11, r12:a7 =a11a6
BQ(F(Γ)) =)a1,· · · , a11|r1,· · · , r12*
図 12:
参考文献
[1] Tim Carrell, The surface biquandle, Pomona College, April 3, 2009.
[2] Katsuyuki Yoshikawa, An enumeration of surfaces in four-space, Osaka J. Math.
31 (1994), 497-522
[3] D. Roseman, Reidemeister-type moves for surfaces in four-dimensional space. Knot theory (Warsaw, 1995), 347-380, Banach Center Publ., 42, Polish Acad. Sci., War-saw, 1998
[4] A. Kawauchi, T. Shibuya, S. suzuki, Descriptions on surfaces in four-space, I Normal forms, Math. Sem. Notes Kobe Univ. 10 (1982), 75-125.
レギュラーアレクサンダーカンドルについて
野坂 武史 (京都大学 数理解析研究所 博士課程)
概要
有限なカンドルに対し,まず曲面結び目のカンドルホモトピー不変量を定式化した. その不変量は,カンドルの 分類空間の3次ホモトピー群に値を持ち,またカンドルコサイクル不変量の普遍不変量である. 本研究ではまず その空間の有理ホモトピー群を決定した. 次に,レギュラーアレクサンダーカンドルに対し,或る条件下で3次 ホモトピー群を決定付けた. 系として,カンドルコサイクル不変量やカンドルホモロジー群に応用を得た. また この手法を使い,2次ホモトピー群をも計算した. この報告書の詳細はプレプリント[N3]をご参照ください.
1 Introduction :古典的結び目のカンドルホモトピー不変量
カンドルとは, 分配側を満たす或る代数系の事である. カンドルとはおおよそ, 群より弱い演 算で, 「等質空間」に入る二項演算のことであって, カンドルは結び目理論への応用が多い. 今
回はFenn-Rourke-Sanderson[FRS]によって導入されたカンドルホモトピー不変量という古典
的絡み目の不変量に注目する. その不変量は, ラック空間BX の2次ホモトピー群π2(BX)に 値を持つのであった. 以前, 筆者はその不変量を調べていた[N1].
一方で, 論文[CJKLS]において, その空間BX の(コ)ホモロジー群を改良したカンドル
(コ)ホモロジー群が導入された. さらにその3-コサイクルを使い, 曲面結び目のカンドルコサ イクル不変量が導入された. この不変量は,任意の局所系係数の3次コホモロジー群に対しても 拡張された[CEGS]. そのカンドルコサイクル不変量は, いくつかの論文で計算されている.
本講演の趣旨の1つは, 古典絡み目のカンドルホモトピー不変量を曲面絡み目へ拡張・適用 させ, その基でのカンドルコサイクル不変量を研究していくものである.
2 復習:カンドルと X - カラリング
まずはカンドルから復習する. カンドルとは, 集合 X と二項演算 ∗ : X2 → X の組で,
∀x, y, z ∈X, x∗x=x, (x∗z)∗(y∗z) = (x∗y)∗z を満たし,∀x, y ∈X, ∃!w∈X,w∗x=y を満たすものである. 例えば, Z[T±]-加群に, 二項演算をx∗y =T x+ (1−T)yと入れたもの をアレクサンダーカンドルという.
カラリングを復習する. 有向古典的絡み目に対し, その1つの絡み目図式Dを選ぶ. カンド ルXに対し,DのX-カラリングとはDのアークの集合からXへの写像であり,各交点で左下 図のような関係式を満たすものとする. また同様に, 有向曲面結び目Σg "→ S4に対し, その1 つの結び目図式をD ⊂S3 をとる. DのX-カラリングとは, Dのシートの集合からX への写 像であり,各々の二重線で右下図のような関係を満たすものとする.
曲面絡み目の図式Dに関して, ColX(D)をX-カラリングの集合とかく. 同じ絡み目の別の
図式D" をとると, 自然な一対一対応 ColX(D) ←→1:1 ColX(D")がある事はよく知られている.
(これは1次元絡み目においても同様である). よって, ColX(D)は絡み目不変量になるが, 古 典的な対象物である. 例えば D を結び目図式としX をアレクサンダーカンドルとするとき, ColX(D)はアレクサンダー加群で表される事が知られている[Ino]. そこで, 次にこの不変量 ColX(D)に重みを課して細かい不変量を作っていく.
α β
γ
C(α)∗C(β) =C(γ)
α
β
γ
3 定義:曲面結び目のカンドルホモトピー不変量
この節では, 曲面結び目のカンドルホモトピー不変量の定義 [N2, §2.2]を解説する. この為に, カンドルX に関し, ラック空間BXを或るコーン(錐)を取る事で改良し, カンドル空間BQX を紹介する. テクニカルな議論のため定義3.1 を一瞥し, 次節を先に読まれても支障はない.
まず準備としてラック空間BX の3スケルトンを説明する. まず, 1スケルトンは, a ∈ X でラベルされた円達の一点和である. 次に2スケルトンは, 左下図のように, 1スケルトン
に(a, b) ∈ X2 でラベルした正方形らを貼り付けたものである; ここで各辺のラベルに適合
するように, 正方形を貼合せている. 次に3スケルトンは, 下中図のように, 2スケルトンに
(a, b, c)∈X2でラベルした立方体らを張り合わせたものである.
次に, カンドル空間BQXの3スケルトンは, ラック空間BXの3スケルトンに, (a, a)-セル のコーンをとったもの達を貼り付けたものとして定義する(右下図).
a
b b
a∗b
a b
b a∗b
c c c c
a∗c b∗c
b∗c
(a∗b)∗c a a
a a
図1 (a, a)でラベルされた2-セルと, (a, b, c)でラベルされた3-セルと,コーン.
次に, 有向曲面絡み目Lに対し, 不変量を構成する. その為にセル写像 S3 → BX を構成 していこう. まずDを図式とし, Dを有向曲面からS3への正則横断的な嵌め込みと見なすこ とで, その双対分割をS3 が得られる. 先ず, a ∈ X でカラーされたシートを横断する 1-セル を, BX のa ∈ X でラベルされた1-セルに送る. 次に, (a, b) ∈ X2 でカラーされた2重線に 双対な2-セルを, BX の(a, b) ∈ X でラベルされた2-セルに送る. 次に, (a, b, c) ∈ X3 でカ ラーされた3重点付近の3-セルを, BX の(a, b, c) ∈X でラベルされた3-セルに送る(図2を 見よ). 最後に, (a, a) ∈ X2 でカラーされた branch pointの周りを BQX の(a, a) ∈ X2 付の コーンへ移すことにする (ただし, 厳密にはbranch point の周りのセル分割を改良する必要が あり詳細は[N3, §2.2]にまわす). とにもかくにも,これらの構成は全体的に貼り合い, セル写像 ξD,C : S3 → BQXが構成される. そのホモトピー類をΞX(D;C)∈π3Q(BX)とおく, 実は, カ ンドル空間の4-cellの定義から, ΞX(D;C)は図式Dの取り方に因らない(詳細[N3, §2.2]).
ここで, 実は, Ξ (D;C)∈π (BQX)が, 或る部分群に入る事を見よう. それには, 我々はD
∗ b
c
ξD,C
(a∗b)∗c b∗c
a∗c
a b a∗b
b
c
c
c
c b∗c
a∗c (a∗b)∗c b∗c
図2 (a, b, c)でカラーされた3重点から, (a, b, c)でラベルされた3-セルへ
としてbranch pointを持たない図式として取る [CS]. すると上のセル写像はξD,C :S3 →BX
へと制限される. 入射ι : BX → BQXをおき, 部分群π3Q(BX) ⊂π3(BQX)をその誘導射ι∗ による像とする. すると,結論はΞX(D;C)∈πQ3(BX)となる.
定義 3.1. L⊂ S4 を曲面絡み目とし, D⊂ S3 をその図式とする. Xを有限カンドルとする. カンドルホモトピー不変量とは
ΞX(L) = !
C∈ColX(D)
ΞX(D;C) ∈Z[π3Q(BX)]. (1)
この不変量はホモトピー群に値を持つので,一見解り辛い. そこでこの不変量の「ココロ」を 節8で簡単に述べておいた. 然しながら次のように定量的な話に還元できる.
注意 3.2. この不変量は, generalizedカンドルコサイクル不変量に普遍的である事を見よう(下 式(2)がそれを意味する). これを見る為に, まず局所系係数の3-コサイクルψ ∈H3(BQX;A) を固定する. HA :π3(BQX)→ H3(BQX;A)を, その局所系のフルヴィッツ準同型とする. す
るとψの generalized カンドルコサイクル不変量とは次で定義される:
Ψψ(L) = !
C∈ColX(D)
(ψ,HA
"
ΞX(D;C)#
) ∈Z[A]. (2)
この空間のホモロジー群 H3(BQX;A) は, [CJKLS, CEGS] で定義されたカンドルコホモロ ジー群H3Q(X;A)と一致する事を注記する. するとフルヴィッツ準同型の定義より, [CEGS]で 導入されたΨψ(L)の組合せ的定義と(2)とは一致する事がわかる. この式(2)の意義を述べる: 即ち, カンドルホモトピー不変量は定義からほぼ計算不可能なものであるが,もし3-コサイクル ψ の具体的表示が解れば, カンドルコサイクル不変量を通じて計算可能にするともいえる. 注意 3.3. 重要な局所系の一例を述べる. まず随伴群As(X)の定義を思い出す: 即ちAs(X) = ( x ∈ X | a·b = b·(a∗b) )という群表示で定義する. ここで上のセル分割よりAs(X) = π1(BX) = π1(BQX)に留意する. 任意のa ∈X に対して,全単写(• ∗a) :X →X (x*→x∗a) を考える. 全ての a ∈ X を考えると, これは作用π1(BX) ! X を誘導する. そこで X で 貼る自由加群 Z(X) を, Z[π1(BX)]-加群と見なす. すると複体の形から H3(BX;Z(X)) は 自明係数のH4(BX;Z)に同型となる [FRS2, Prop. 5.1]. するとこの同型を通じ, 4-cocycle φ ∈ H4(BQX;A)を局所系係数の3-cocycleと見なす事が出来る. これによるカンドルコサイ クル不変量は, [CKS]で導入されたシャドーコサイクル不変量と呼ばれる.
4 結果: π
3Q(BX) と π
2(BX ) の計算
我々は定義3.1で, Abel群π3Q(BX)を使った不変量を構成した. そこで2つ問題を考えよう: 問題(i)不変量の器であるπ3Q(BX)を調べ,カンドルホモトピー不変量を計算できるか?
(ii) πQ3(BX)を調べる暁に,非自明なgeneralized カンドルコサイクル不変量を 抽出する局所系係数を決定せよ.
(i)に応えるために, まずπ3Q(BX)の自由部分群 (有理ホモトピー群)を決定した:
定理 4.1. X を“連結成分”がlである有限カンドルとするとき, π3Q(BX)は有限生成である. さらに, πQ3(BX)⊗Q∼=Ql(l−1)(l3 −2). 特に, l = 1の時, πQ3(BX)は有限である.
注意 4.2. l-成分絡み目のボルディズム群を有理数でテンソルしたものはQl(l−1)(l3 −2) である事が 知られている. π3Q(BX)⊗Qは自然に, その群へ同型を作れる事がわかった. これの云わんと する事は,この自由部分群はカンドルXから連結成分の情報しか取り出せない事を意味する.
次に, 連結成分がl = 1のとき, π3Q(BX)の捩れ部分群を決定しよう. だが一般の空間では ホモトピー群の計算が難しいため, 定理4.3では条件を課し議論した. まず, アレクサンダー カンドルX がレギュラーとは, Z[T±]-加群として (1−T)X = X を満たし, (Te−1)X = 0 を満たす最小数eが|X|と互いに素となる事をいう. 例として, 有限体Fq とω ∈ Fq に対し, x∗y:=ωx+ (1−ω)yとしたFq上のカンドル構造は,レギュラーである, 但しω-= 0,1とする. 定 理 4.3. X を レ ギ ュ ラ ー ア レ ク サ ン ダ ー カ ン ド ル と す る. ま た |X| が 奇 数 で あ り, H2Q(X;Z)∼= 0と仮定する. このとき, πQ3(BX)∼=H4Q(X;Z)となる.
注意 4.4. この定理で多くの仮定をおいたが, そこそこ広いクラスである. 例えば, 奇数次の拡 大体Fqに入る上述のカンドルではこの条件を見たす,ただし標数は2を除く.
証明は§7で解説する. ここでは, 問題(ii)に応える系を紹介したい:
系 4.5. 定理4.3内のX に対し, 任意のカンドルコサイクル不変量は, HQ4(X;A)のコサイクル によるカンドルコサイクル不変量の線形和となる. ここで注意3.3より HQ4(X;A)を局所系係 数コホモロジー群と思っている.
Proof. 定理4.3での同型が, Hurewicz 準同型を通じて得られる事による. 詳細略.
さらに,奇素数位数の連結なカンドルに関して, カンドルコサイクル不変量を決定した:
系 4.6. X = Z[T]/(p, T −ω) とする. ω -= ±1 のとき, π3Q(BX) ∼= 0. ω = −1 のとき π3Q(BX)∼=Z/pZであり, さらにそのXの任意のカンドルコサイクルは, 望月3コサイクル不 変量の定数倍である. ここで望月3コサイクルとはH3(BQX;Fp)∼=Zp の生成元をいう. Proof. H2Q(X;Z) = 0は知られている. またω -= ±1のとき, H4Q(X;Z) = 0であり, ω =−1 のとき, H4Q(X;Z) =Z/pZとなる事を著者は示した([N2]). また望月3コサイクルを使った不 変量は, 非自明である事が知られている. 後は定理4.3から得られる.
5 結果: π
2(BX) の計算
さらに今回の計算手法を使い, π2(BQX)を計算した. これは一次元結び目のカンドルホモト ピー不変量の容れ物であった(定義は[N1, §2]を見よ). 或るXのクラスに関し, π2(BQX)を 次のように決定付けた:
定理 5.1. 奇数位数のレギュラーアレクサンダーカンドルXに対し, 次の分裂完全列を与える:
0−→π2(BQX)−→H3Q(X;Z)−→H2Q(X;Z)∧ZH2Q(X;Z)−→0.
この定理の証明は§7で後述する. 以下,この定理の完全列がどう強力であるかを述べたい. ま ずH2Q(X;Z)とH3Q(X;Z)から,位数の9以下のレギュラーアレクサンダーカンドルXに関し, 捩れ込みでπ2(BQX)をすべて決定した. 位数の6以下は, [N1]で調べたので, 7≤ |X| ≤ 9の 場合に下表のようにまとめた. ここでH2Q(X;Z)とH3Q(X;Z)の計算はLitherland-Nelson[LN]
による.
X H2Q(X;Z) H3Q(X;Z) π2(BQX)
Z[T]/(7, T + 1) 0 Z/7Z Z/7Z
Z[T]/(7, T −ω) 0 0 0
Z[T]/(2, T3+T2+ 1) 0 Z/2Z Z/2Z
Z[T]/(9, T + 1) 0 Z/9Z Z/9Z
Z[T]/(3, T2+ 1) Z/3Z (Z/3Z)3 (Z/3Z)3
Z[T]/(3, T2+T−1) 0 0 0
Z[T]/(3, T2−T−1) 0 0 0
表1 H2Q(X;Z)とH3Q(X;Z)から得られるπ2(BQX)たち. ここでω!=−1とした.
さらに有限体上に入るアレクサンダーカンドルに関しては, そのFq 係数2,3次コホモロジー 群は, 望月拓郎先生に決定されている[M1]. であるので, 上の完全列を使い,有限体上のアレク サンダーカンドルのπ2(BQX)⊗Z/pZは厳密に計算できるようにした. 3次拡大までの有限体 に関してはπ2(BQX)⊗Z/pZ全てを決定した (詳細は[N3, §6]を見よ). その計算結果の中で, 注目に値するものを紹介しよう:
系 5.2. X を 二 面 体 カ ン ド ル の h 個 直 積 と す る: X = "
Z[T]/(p, T + 1)#h
. こ の 時, dim(π2(BQX)⊗Fp) =h2(h2+ 11)/12.
h = 1のとき, 以前, 畠中英里氏と著者はπ2(BX)と群ホモロジーH3(Z/pZ;Z)との自然な 同型を作った[HN]. この同型はDijkgraaf-Witten 不変量とカンドルコサイクル不変量を繋げ る有効な同型であった. しかしh >1の時, dim(π2(BQX)⊗Fp) は4次の割合で増加するので, (3次的に増加する)群ホモロジーより豊富な量と期待される.
さらに応用として, 次のように或る3次カンドルホモロジー群を決定した:
系 5.3. X を奇数位数の二面体カンドルとする. 即ち, X = Z[T]/(m, T + 1). この時, H3Q(X;Z)∼=Z/mZである.
Proof. 畠中氏と著者[HN]は, π2(BQX)∼=Z/mZを示した. またH2Q(X;Z)∼= 0は知られてい
でmが奇素数のとき, [NP, §3]でホモロジー代数の手法で解決された. 今回はホモトピー群か ら接近し,捩れ部分群こみでmの一般化を得る事が出来た事になる.
また一方で,一次元結び目における問題(ii)の答えとして, 強い主張が得られた:
系 5.5. X を奇数位数のレギュラーアレクサンダーカンドルとする. 任意のカンドル(ホモト ピー)コサイクル不変量は, HQ3(X;A)の3コサイクルによるシャドーコサイクル不変量の線形 和とかける.
この事より, HQ3(X;A)によるシャドーコサイクル不変量が, レギュラーアレクサンダーカ ンドルから出来上がる不変量の限界ともいえる. 逆に言えば, 今後の課題として, HQ3(X;A)の シャドーコサイクル不変量を調べれば, 不変量の意味が解っていくだろうと期待している.
6 定理 4.1 の証明方針: π
3Q(BX) ⊗ Q と π
2(BX ) ⊗ Q の計算
定理らの証明で一番鍵となるのは, Clauwens[Cla]により発見されたラック空間上の位相モ ノイド構造である.
この構造を説明する為に, [FRS, FRS2]によるラック空間の抽象的な定義を思いおこそう. まずY をX-setとする, 即ちAs(X)の作用付き集合とする. そのときBYXを思い出そう. 定 義は次である:X とY に離散位相をいれて, 空間$
n≥0
"
Y ×([0,1]×X)n#を考える
. そして
次の同値関係を考える:
(y;t1, x1, . . . , xj−1,1, xj, . . . , tn, xn)∼(y·xj;t1, x1∗xj, . . . , xj−1∗xj, tj+1, xj+1, . . . , tn, xn).
(y;t1, x1, . . . , xj−1,0, xj, tj+1, . . . , tn, xn)∼(y;t1, x1, . . . tj−1, xj−1, tj+1, xj+1, . . . , tn, xn), (3) この商空間をBYXとかきラック空間と呼ぶ. Y が一点の時, §2のBXと一致する事がわかる.
また次に, カンドル空間BYQXを定義しよう. まず次の部分空間を考える:
%
n≥2
&
(y;t1, x1, . . . , tn, xn)∈Y ×([0,1]×X)n|xi =xi+1 for somei∈Z, i≤n−1}. (4)
これをXYD と書き,合成写像: XYD "→$
n≥0
"
Y ×([0,1]×X)n#proj.
→ BYX を考える. そこでカ ンドル空間を合成写像の錐 (コーン)と定義し, BYQX とかく. Y が一点のとき, §2でのBQX と一致する事がわかる.
Xをレギュラーなアレクサンダーカンドルとする. Y =Z/eZ"Xとする. (+, y)∈Z/eZ"X に対し,全単写∗(+, y) :X →X; x*→T"y+ (1−T)xをとると,Y のXへの作用を誘導する .
[Cla]に基づいて,BYXに位相モノイド構造を入れよう:
µ: (G×[0,1]n×Xn)×(G×[0,1]m×Xm)→G×[0,1]n+m×Xn+m, µ([g;t1, . . . , tn, x1, . . . , xn],[h;t"1, . . . , t"m, x"1, . . . , x"m]) :=
[gh;t1, . . . , tn, t"1, . . . , t"m, x1·h, . . . , xn·h, x"1, . . . , x"m], BYX は弧状連結となる事も注記する. さらに写像 BYX → BX は主 Y 束になるので
∼
定理4.1の概証 Y =Z/eZ "Xとする. まずBYXのモノイド構造から, H∗(BYX;Q)にホッ プ代数構造を入れる. また, BYX は或る基点付ループ空間になる事も注意しよう. 定義より, BYX は有限型のCW複体だから, ミルナー・ムーアの定理が適用できる: 即ち, Hurewicz準 同型 π∗(BX)⊗Q → H∗(BYX;Q)は単写であり, なおかつその像は原始的元の貼る部分空間 に同型となる事になった( [FHT] を見よ). 被覆BYX → BX のトランスファーを使う事で,
H∗(BYX;Q) ∼= H∗(BX;Q) がすぐ解る. また H∗(BX;Q) の構造はよく知られている[EG]
ので,すぐ原始的元が何かわかる. とくにπ3(BX)⊗Q ∼= Ql(l+1)(l+2)
3 がわかる. さらに入射 BX →BQXによる誘導射H∗(BX;Q)→H∗(BQX;Q)に着目する. この射による原始的元の 行き先を確認する事(詳細略)で, 目的のπ3Q(BX)⊗Q∼=Ql(l−1)(l−2)
3 が得られる.
7 証明の方針: π
3Q(BX) と π
2(BX) の計算
定理5.2の概証 Y =Z/eZ "Xとする. まずBYXは或る基点付ループ空間になるので, 知ら れている事に, 一次ポストニコフ不変量k3 ∈ H3(π1(BYX);π2(BYX)) は二倍で消える [AP].
π1(BYX)の捩れ部分群の位数は|X|で割り切れるので k3 = 0となる (下の補題7.1 を見よ).
これは次を即座に意味する: 即ち, Hurewicz準同型H :π2(BYX) →H2(BYX;Z)が単写であ り, 次の分裂完全列がある:
0→π2(BX)−→H H2(BYX;Z)−→H2(π1(BYX);Z)−→0.
π2(BX) ∼= π2(BQX)⊕Zを思い起こす([N1, Proposition 3.12]). そこで右ふたつの項を計算 しよう. その際に, 次の二つ補題を示す必要がある (これの証明は[N3, §4と5]を見よ): 補題 7.1. Xをレギュラーアレクサンダーカンドルとする. π1(BYX)∼=Z⊕H2Q(X;Z).
補題 7.2. Xを同様とする. このとき H2(BYX;Z)∼=Z⊕H2Q(X;Z)⊕H3Q(X;Z).
π2(BX)∼=Z⊕π2(BQX)より, 補題らを上の完全系列に代入すれば, 定理の結果が得られる ! 定理4.3 の概証 次にH2Q(X;Z) ∼= 0の仮定の基でπ3(BX) を計算しよう. 普遍被覆空間 BX' →BYX をおく. BX' に位相モノイド構造を入れると, 再び[AP]の結果より, 2次ポスト ニコフ不変量k4 ∈H4(π2(BX);' π3(BX))' は二倍で消える. よって, Hurewicz 準同型を奇素数 pで局所化することで,次の分裂完全系列を得る事になる:
0−→π3(BX)' (p)
−→H H3(BX;' Z)(p)−→H3(π2(BX);' Z)(p)−→0. (5) ここで定理5.2から右項がπ2(BX) ∼=H3Q(X;Z)が即座にわかる. 次に真ん中の項を計算す るために,BX' を見ていこう. 次のホモトピー同値を与える簡単な補題が有用である:
補題 7.3. Mを, 弧状連結でπ1(M)∼=Zな位相モノイドとする. このとき M ×S1 3M(.
Proof. f :S1 → Mを基本群の生成元として取る. Mの二項演算µと, 被覆g :M → M( を
取ると, µ◦(f ×g) :S1×M → M( は弱ホモトピー同値を与える.
また次に, Y =Z/eZ "X として, BYX を考える. 補題 7.1により, π1(BYX)∼= Zである. よって, BX' ×S1 3BYXである.