第4章 建築研究所新館建物の振動特性
4.3 解析モデル
4.3.1 せん断1質点系モデル
建物の基本的な振動特性を検討する場合は,1次固有振動に着目するため,図4.6に示すような単純な 1質点系モデルを想定する。
d
m k
f0,h0
c BF
RF
図4.6 せん断型1質点系モデル
2章でも述べたように,この振動系は質点の質量m,剛性k,減衰係数cの3つのパラメータを有し,
その振動特性は固有振動数 f0と減衰定数h0で表される。上記モデルの頂部の相対変位dは,図中に示 した2点の測定点の水平絶対変位の差で求められる。
RF BF
d=d −d (1)
ここで,添え字RF及びBFは図4.6中の測定点を示す。
新館建物に適用する場合は,X方向の絶対変位dBF及びdRFは地下階及び8階の床面の中央の値で代表 させ,図4.4に示した測定点で得られた記録から,下式で求める。
X BFN X BFS BF
( )
d δ 2+ δ
= (2)
X 8FN X 8FS RF
( )
d δ 2+ δ
= (3)
ここで,δ は図4.4に示した加速度計から算出した絶対変位で,左添え字X,Y及びZは方向成分,
右添え字は測定点を示す。一方,Y方向では以下のようになる。
Y BFN Y BFE BF
( )
d δ 2+ δ
= (4)
Y 8FN Y 8FE RF
( )
d δ 2+ δ
= (5)
4.3.2 せん断多質点系SRモデル
建物の水平方向の振動特性の変動を詳細に検討する場合,せん断多質点系モデルを用いる2)。新館建
1階は壁が多く変形は微小と考えられるため一体の基礎と見做し,上部構造を7質点の等価せん断モデ ルに置換する。また,地盤と建物の相互作用を考慮するために,基礎位置にロッキング(回転動)とスウ ェイ(水平動)の自由度を加え,図4.7の左に示すようなスウェイ-ロッキング(SR)モデルを想定する。こ こでmi,Ii及びkiは各層の質量,回転慣性及び剛性(i=0, ,7)" ,kRとcRはロッキングの剛性と減衰 係数,kSとcSはスウェイの剛性と減衰係数,WとHは建物の幅と高さである。ロッキングばねの取り 付け位置は地下階の中心(基礎底面から1階床までの高さの1/2の高さ)とし,Hはロッキングばねの取り 付け位置からの高さとなる。せん断多質点系SRモデルの運動方程式については2.2.1項で述べている。
kR,cR
kS,cS
k1
H
W
k2
k3
k4
k5
k6
k7
dS dR dB
GL RF
5F
BF
BL BR
水平 センサー 鉛直 センサー
m1,I1
m2,I2
m3,I3
m4,I4
m5,I5
m6,I6
m7,I7
m0, I0
H4
xi
x0
θ
¨xg
図4.7 せん断型多質点系モデル
このモデルの場合,建物頂部の変位に占めるスウェイの変位dS,ロッキングの変位dR,建物のせん 断変形による変位dBは,図4.7の右側の図に示した各測定点の絶対変位から下式で算出できる。
S BF GL
d =d −d (6)
R ( BL BR)H
d d d
= − W (7)
B RF GL S R
d =d −d −d −d (8)
ここでdGL,dBF及びdRFはそれぞれ地表,建物基礎及び建物頂部の水平絶対変位,dBLとdBRは建物基 礎の左端と右端の鉛直絶対変位であり,添え字は図4.7左の測定点に対応している。なお,8階より上の 階の質量は8階床レベルに集約しているため,建物頂部は図4.3及び図4.4中の8階床レベルに相当する。
このモデルの各部の変位の算出には前節で求めたdBFとdRFに加え,dBLとdBRが必要であり,地下1階 の3点の上下動から算出する。X方向では,次式のようになる。
Z BFN Z BFS BL
( )
d δ 2+ δ
= (9)
BR Z BFE
d = δ (10)
ここで,δ は図4.4に示した加速度計から算出した絶対変位で,左添え字X,Y及びZは方向成分,
右添え字は測定点を示す。一方,Y方向ではdBLとdBRは建物の中心軸での値が算出できないので,西 端の上下動で代用して次式で算出している。
BL Z BFS
d = δ (11)
BR Z BFN
d = δ (12)