第4章 建築研究所新館建物の振動特性
4.1 新館建物と観測の概要
4.1.1 地盤条件
建築研究所は,茨城県つくば市の北部,霞ヶ浦へ流れ込む桜川と利根川支流の小貝川に挟まれた標 高約30mの洪積台地上に位置する。観測施設の設置時に実施された地盤調査結果を表4.1に示す。地中 88mまでは時折砂礫層を挟む粘土層と細砂層が主体となっている。深さ88mの砂礫層及び深さ42mの 砂礫層を基盤層と考えたときの,鉛直入射するせん断波(S 波)の基盤層から表層への伝達関数を図4.1 に示す。図中には,2004年10月6日の茨城県南部地震で観測された地中の加速度記録の地表/地中89m(図 4.3のA01/A89)及び地表/地中43m(同A01/A43)のフーリエスペクトル比を併せて示す。88mから上の層 を考えたときには,0.8Hz,2Hz及び4Hz付近に,42mから上の層を考えた場合は1.5Hz及び4Hz 弱に 卓越が見られ,伝達関数とフーリエスペクトル比は両者とも良い対応を示している。
表4.1 建築研究所敷地の地盤構造
# 深さ
(m)
層厚 (m)
VP
(m/s) VS
(m/s) ρ
(t/m3) 土質 1 0.0 2.0 170 110 1.30 ローム
2 2.0 6.0 200 1.30 砂質粘土/粘土質砂 3 8.0 6.0 1430
160 1.50 砂質粘土/粘土 4 14.0 8.0 1630 260 1.80 細砂/砂質細砂 5 22.0 6.0 1500 200
6 28.0 14.0 1570 270 1.75 砂質粘土/粘土 7 42.0 6.0 1880 460 1.90 砂礫
8 48.0 8.0 1780 340
9 56.0 12.0 1690 290 1.75 砂質粘土/粘土 10 68.0 12.0 1790 380 1.95 砂礫/細砂 11 80.0 8.0 1600 280 1.75 砂質粘土/粘土
12 88.0 500 2.00 砂礫
注) VP: P波速度(m/s), VS: S波速度(m/s), ρ: 単位体積重量(t/m3)
Obs. X Obs. Y Theory
0.5 1 2 5 10 20
Amplitude ratio
0.1 0.2 0.5 1 2 5 10
Freq. (Hz)
(a) Eq.#11 A01/A89
0.5 1 2 5 10 20
Amplitude ratio
0.1 0.2 0.5 1 2 5 10
Freq. (Hz)
(b) Eq.#11 A01/A43 Obs. X
Obs. Y Theory
図4.1 建築研究所敷地地盤の増幅特性(左: 地表/地中89m(A01/A89),右: 地表/地中43m (A01/A43))
4.1.2 建物の概要
1998年3月に竣工した新館建物は地下1階,地上8階建ての鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で,地下部 分は鉄筋コンクリート(RC)造,上部架構の一部が鉄骨(S)造となっている。建物の建築面積は676m2,延 床面積は5,023m2で,直接基礎によって深さ8.2mの粘土層に支持されている。上部構造は,一部RC壁 を有するが,主体は骨組構造である。東に隣接する本館建物とはエキスパンションジョイントを介し た渡り廊下によって結ばれており,構造的には互いに独立している。写真4.1に建物外観を,図4.2に本 館と新館の位置関係を示す。なお,新館建物平面の軸はほぼ東西-南北に一致しており,以下の検討で は東方向をX方向,北方向をY方向として扱う。
写真4.1 新館建物外観
28.3m
21.0m
8.2m
64.8m 6.5m
26.0m 27.0m
新館 本館
低層棟
BF 2F
2F 7F
N
(a)平面
(b)断面
GL
新館 本館
図4.2 新館及び本館の位置関係
4.1.3 観測システム
竣工と同時に稼動した観測システムは,新館建物内に11台,敷地地盤内に7台,隣接する本館建物内 に4台の計22台の加速度計を有する。図4.3及び図4.4に新館及び地盤内の加速度計の配置を示す。建物 より最も離れている地盤上の加速度計は南方向に約100mの距離であり,最も深い加速度計は地中深さ 89mの砂礫層に埋設されている。また建物の立体的な挙動の把握を目的として,図4.4(a)及び(c)に示す ように地下1階及び8階の床レベルにはそれぞれ3台の加速度計を設置している。また2階と5階の床レベ ルには建物の東側と西側の2箇所に加速度計がある(図4.4(b)参照)。
全ての加速度計の記録は,新館4階の強震観測室で集中収録されている。加速度計は全て変位帰還型 で,加速度の直流成分から測定が可能である。24bitのAD変換器を有しており,実効分解能は18 bit,
ダイナミックレンジに換算して114dB 相当となる。地中89m に埋設されている加速度計(図4.3中 A89) の3成分の加速度のうち,いずれかがトリガレベル(1cm/s2)を超えると収録を開始し,同じトリガレベ ルを60秒間連続で下回った時に収録を停止する。
50 m 100 m 20 m
A14
A01 B01 C01
A43
A89 N14
8FS 8FN 8FE
5FE 5FW
2FW 2FE 1FE
BFS BFN BFE
図4.3 新館建物内及び地盤内の加速度計の配置
BFN
BFS
BFE
5FW
5FE
ELV
8FN
8FS
8FE
(a) Basement floor (BF) (b) 5th floor (5F) (c) 8th floor (8F)
X (N090E) Y (N000E)
図4.4 地下1階(BF),5階(5F)及び8階(8F)床レベルの加速度計の配置