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規模変動の可視化手法

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 89-93)

4. ソフトウェア開発プロジェクトの変動マネジメント手法

4.4. ソフトウェア規模の変動可視化手法

4.4.3. 規模変動の可視化手法

4.4.3.1. 規模変動可視化のための規模測定方法の選択

ソフトウェア規模の変動量把握の課題に対する解決手段として、設計段階から継続的に 規模の変動を可視化するための手法を提案する。

最初に、継続的に規模の変動を可視化するために適している規模計測方法を選択する。

以下に、規模の変動を、継続的に可視化するための要件を整理する。

78 (1) 理解容易性

外部設計段階から規模を計測可能であり、画面や帳票等のレイアウトなどの、利用 者やプロジェクトオーナーが理解容易な情報との対応関係が明確であること

(2) 客観性、精度

人に依存せずにぶれのない規模を算出可能であること (3) 測定の容易さ

計測や再計測に必要な時間が短時間であること

規模変動の継続的可視化に適した規模測定法を選定するため、第 3章の表 3-6 LOC と FP法及びFS法の強みと弱みの比較」を元に、上記の(1)~(3)の要件への適否を比較の観点 とした比較結果を、表 4-3に示す。

表 4-3 規模変動可視化の観点でのソフトウェア規模見積り手法の比較

No. 測定方法 (1) 理解 容易性

(2) 客観性 精度

(3) 測定の 容易さ

規模変動 可視化への 適合性

1 SLOC

(ソースコード 行数)

× 根拠が曖昧

× 担当者の経 験等に依存

△ 業務経験が 必要

×

2 機能数

(画面・帳票数)

○ × 粒度が粗い

○ △

正 確 に 把 握 できない

3 FP (Function Point) 法 △ ○ △

計測の負荷 が大きい

4 FS (Function Scale) 法 ◎

外部設計書 と対応

○ 計測者によ らず同一

○ ○

差分計測が 可能

理解容易性については、FS 法は、画面レイアウトや帳票レイアウトなどの、利用者にわ かりやすい設計情報を元に規模を計測可能なため、ソフトウェアの仕様と規模の対応関係 について、利用者などのステークホルダが理解容易である。客観性と精度については、FS 法では画面などの構成要素を元に機械的に規模を算出するため、測定者に依存せずにぶれ のない機能規模を算出することができる。測定の容易さについて、FS 法は、画面ごとのコ ントロールの数をワークシートに記入するだけで、画面単位やサブシステム全体の規模等 を自動的に計算できるようになっている。測定に要する時間に関しては、測定方法を理解 すれば一画面当たり数分で算出できる。また、「画面項目定義書」等の定型化された画面の 外部仕様書等を適用することにより、FS 値を自動的に計算するための計測ツールを作成す

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ることも容易であり、規模計測の自動化が可能となる。さらに、一度、規模を計測してお けば、仕様変更等があった場合には、該当の画面やコントロールの数だけを部分的に見直 してワークシートに記入することで、最新の規模を求めることも容易である。このため、

差分計測が可能となり、規模の変動を継続的に集計することに適している。

上記の比較検討結果により、FS法が、外部設計情報から、ぶれのない機能規模を少ない 負担で繰り返し測定できるため、規模の変動状況を継続的に把握する上で適していると判 断した。ただし、規模変動可視化に関する(1)~(3)の要件を満たす規模計測方法であれば、

他の方法を採用することも可能である。

4.4.3.2. 規模変動の可視化手法

以下に、上記のFS法を適用した規模変動の可視化手法のプロセスを説明する。

(1) 規模計測の集計自動化

継続的に規模計測を行うため、作業プロセスに FS 計測を組み込んでおく。設計担当 者は、担当画面の規模を定期的又は規模に影響する変化があった場合に再測定する。FS 法では、「FS 集計ワークシート」に、画面レイアウト設計書を元にしたコントロールの 種類別個数を記入することで、画面や帳票などの機能別の規模を自動集計する。設計担 当者が入力したFS集計ワークシートをサーバにアップロードし、システムやサブシステ ム単位の規模一覧と規模分布図を自動出力し、一連の規模可視化プロセスを自動化する ことで、継続的に規模変動を可視化する。

(2) 規模変動可視化のタイミングの設定

規模の変動を継続的に可視化し、ステークホルダとの間で共有するためには、規模計 測の結果を集計し、可視化するタイミングをプロジェクト計画として設定しておくこと が重要である。計測及び集計のタイミングを決めておくことで、設計担当者の規模計測 を同期させ、プロジェクトオーナーとの間での仕様やスケジュールの調整などを、時期 を逃さずに適切なタイミングで行うことが可能となる。

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具体的な規模計測のタイミングの一例を、図 4-14に示す。図に示す規模計測時期につ いて以下に説明する。①から④の数字は図 4-14の計測時期(①~④)に対応している。

① 最初にFS の詳細計測が可能になる外部設計工程において、画面レイアウトと主要機能

(検索、表示、更新、登録)の設計を終える時点

② 顧客レビュー終了時点(レビュー指摘を設計に反映させた時点)

③ 外部設計終了時点

④ 上記の時点以外に規模への影響が大きい要望や変更が必要になった際に追加で測定す る

(3) ステークホルダとの事前合意事項

各時点での規模の変動量に応じて仕様やコストの見直しを行うことについては、プロジ ェクトオーナーを含むステークホルダとの間で事前に合意しておくことが重要である。例 えば、SI ベンダーが開発を受託する形態のプロジェクトにおいて、受託者がこのような事 前説明や合意形成を行わず、規模増加が発生してから機能削減や費用増加の交渉を行った 場合、受託者側の見積責任などを問われ、調整が難航するリスクがある。これに対して、

仕様やコストの見直しについて事前に理解を得ておくことにより、仕様調整や計画変更の 際に関係者の協力が得られやすくなる。

(4) 規模分布の可視化

規模の変動は、個々の機能別の規模の増減だけでなく、後述するように、規模の大小や システム全体での機能別の分布状況が、習熟度との関係によって生産性や要員の割り当て に影響を及ぼす。このため、規模計測のタイミングに合わせて、規模分布状況を表すグラ フを、毎回自動的に出力することで、分布状況の変動がわかるようにした。

図 4-14 規模変動の計測時期

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図 4-15は、FS法による画面ごとの規模計測結果を元に、画面単位の規模の分布状況を表 したものである。横軸に200 FSごとのFS値、縦軸に画面数による度数分布で表現している。

この機能分布図により、どの程度の規模の画面が何画面存在しているかを俯瞰でき、工数 見積や要員配置、スケジュール策定等に活用できる。たとえば、規模が大きい画面は難易 度も高いことが多いため、経験が豊富でスキルの高い要員に割り当て、経験の少ない要員 には規模が小さめの画面を割り当てて複数画面を繰り返し担当させ、習熟効果による生産 性向上を図るというように、適切な要員の割り当て等に活用できる。

規模の計測の都度、規模分布図を更新し、規模の変動状況を分布状況として可視化する ことにより、プロジェクトマネジャーが、規模変動の状況をシステム全体で俯瞰的、包括 的に把握でき、対策を打つべきポイントを把握しやすくなる。

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