第3章 肘関節動作変更の諸特性検討
第5節 被刺激筋への負荷条件変化の動作変更への影響
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〇提示した振動刺激条件
先述のように本実験では,振動刺激が加えられた筋の負荷条件を変化させるとともに,振 動刺激の周波数を30 [Hz],60 [Hz],90 [Hz]と変化させながら実験を行った.振動刺激の振 幅は,前節で説明したバイブレータのピストンクランク機構により1 [mm]であった.
〇被刺激筋の負荷条件変化方法
図3-20へ,被刺激筋の負荷条件の変化手法を図示する.被験者は両腕の手先に重りを把 持し,肘関節伸展運動を行った.手先に把持した重りの重量は1 [kg],2 [kg],3 [kg]の3種 類であった.さらに,手先に重りを把持しないフリーハンド条件を加え,合計4条件で実験 を行った.
図 3-20 被刺激筋の負荷条件変化方法
本実験の条件を一覧として表3-6へ示す.先述のように,各負荷条件下で周波数も変化さ せ,第 3 節で確認したような周波数変化による動作変更量変化率の変化が負荷条件におい ても確認されるかについて確かめた.
表3-6 本実験の負荷条件および周波数条件一覧
Load condition Frequency [Hz]
Free hand 30 60 90
1 [kg] 30 60 90
2 [kg] 30 60 90
3 [kg] 30 60 90
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〇肘関節運動の教示
被験者が決められた角度域で,一定の角速度で肘関節伸展運動を行うことができるよう に,練習を行った.肘関節動作教示の手順を以下に説明する.
まず,実験者が被験者の左腕(Reference arm)の手首を把持し,3 [deg/s]で45 -20 [fdeg]の 角度域において,肘関節伸展運動を被験者に行わせた.このとき,被験者は左腕(Reference arm)で感じている肘関節運動と同様の運動を右腕(Vibrated arm)で生成した.この練習を 繰り返し行い,被験者に所定の角速度・角度域で肘関節伸展運動を行う練習を行った.この 練習の後に実験者による肘関節伸展運動の教示なしで両肘において肘関節伸展運動を行わ せ,両肘伸展運動を生成可能であることを確認したうえで本実験を行った.
〇実験手順
本実験の手順を以下に示す.
1. 両肘関節角度を0 [deg]にし,肘関節角度の記録を開始した
2. 実験者は被験者の左腕(Reference arm)の手首を把持し,45 [deg]まで屈曲させた.この とき,被験者は右腕(Vibrated arm)において左腕(Reference arm)で知覚した肘関節角 度と同様の肘関節角度を生成した.
3. 両腕に重りを把持させ,その後右腕(Vibrated arm)への振動刺激を開始し,振動刺激の 開始と同時に被験者は肘関節伸展運動を開始した.フリーハンド条件の場合,振動刺激 が加えられた直後に被験者は肘関節伸展運動を開始した.
4. 被験者は左腕(Reference arm)の肘関節角度が20 [deg]に達したと感じるまで肘関節伸 展運動を行い,被験者が肘関節伸展運動を停止した時点で振動刺激を停止し,肘関節角 度の記録を停止した.
先述のように,本実験においては,振動刺激の周波数を変化させつつ4つの負荷条件で実 験を行ったが,各条件はランダムに提示し,被験者は次の実験で提示される振動刺激条件を 認知しない状況で実験を行った. 全ての被験者において,各振動刺激条件で3回の実験を 行った.
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〇被験者
本実験では,負荷条件の変化による動作変更量への影響の傾向を把握することを目的と して,3名の被験者で実験を行った.被験者の年齢,身長,体重,利き手および性別を表 3-7へ示す.なお,本節で述べる実験はすべて九州大学大学院工学研究院の倫理委員会より認 可を得たプロトコルに基づき実験を行った
表3-7 被験者の詳細
Participant Age Weight (kg) Height (cm) Hand dominance Sex
1 22 65 176 Right Male
2 23 62 165 Right Male
3 23 81 170 Right Male
第3項
実験結果代表例として被験者1の実験結果を図3-21へ示す.赤実線は右腕(Vibrated arm)の肘関節 角度の軌跡であり,黒破線は左腕(Reference arm)の肘関節角度の軌跡を示す.負荷の増大 に着目すると,同一の周波数では負荷条件が増大するほど動作変更量は低減している.一方 で周波数の増大に着目すると,同一の負荷条件では周波数が増大するほど動作変更量は増 加していることがわかる.
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(a) フリーハンド条件(負荷なし)
(b) 1 [kg] 負荷条件
(c) 2 [kg] 負荷条件
(d) 3 [kg] 負荷条件
図 3-21 各負荷条件における肘関節伸展動作変更(被験者1)
各被験者における負荷条件の増加による動作変更量への影響および,負荷条件下におけ る周波数変化の動作変更量に対する影響を定量的に評価するために,第 3 節で用いた,式 (2)による動作変更量変化率の算出を行った.本実験においても,全被験者の全実験におい て,肘関節伸展運動はすくなくとも5 秒間継続されていたので,5秒間の区間で変化率を導 いた.図3-22へ各被験者の,各負荷条件における動作変更量変化率の3回試行の平均値を 示す.
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(a) 被験者1の変化率推移
(b) 被験者2の変化率推移
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(c) 被験者3の変化率推移
図 3-22 各負荷条件における肘関節伸展動作変更変化率
変化率の推移から,以下のことが示された.
1. 同一被験者の,同一の周波数で比較すると,被刺激筋への荷重が増大すると,動作変更 量変化率は低減する傾向にある.
2. 同一被験者の,同一の荷重条件では,周波数変化により動作変更量変化率は30-90 [Hz]
の周波数増加によって値が高くなる傾向にある.
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