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動作変更量制御手法の提案

第4章 周波数変化による動作変更量制御実験

第2節 動作変更量制御手法の提案

振動刺激による動作変更量は振動刺激周波数の増減により変化する.この性質に着目し,

目標となる関節角度と,実際に計測された関節角度との間の差に応じて P 制御のように周 波数を調整することにより動作変更量を制御し,目標関節角度へと使用者の関節運動を操 作する手法を提案する.この動作変更量の制御手法は以下の式によって表される.

𝐹𝑟𝑒𝑞𝑢𝑒𝑐𝑛𝑐𝑦 = 𝐾 (𝜃𝑑− 𝜃𝑔) (4)

ここで,Frequencyは振動刺激の周波数であり,Kはゲインである.𝜃𝑑は目標関節角度であ り,𝜃𝑔は計測された関節角度である.目標関節角度と計測された関節角度との間の差が増加 すると,振動刺激の周波数も高くなる.周波数変化による動作変更量制御の様子を図4-1へ 示す.図4-1中では,肘関節伸展運動中に,拮抗筋である上腕二頭筋へ振動刺激が加えられ た状況を想定している.このとき,提案手法により振動刺激周波数が変化するものとする.

振動刺激周波数が低いときには,動作変更量がほとんど生成されず,本人の動作意図にそっ た肘関節伸展運動を生成している.一方で,目標肘関節角度𝜃𝑑と計測された肘関節角度𝜃𝑔と の差が増加すると,周波数も高くなり,動作変更量が増大する.計測された肘関節角度と目 標肘関節角度との差が縮まると,周波数は低くなり,動作変更量は低減する.このように,

周波数が増大・減少を用いて,動作変更量を制御することができると考えた.

式(4)中のゲインKは動作変更量変化率(単位時間あたりに生成することができる動作変 更量を示す)に基づいて調整することができると考えた.前章第3節での実験で明らかとな ったように,振動刺激周波数変化に対する動作変更量変化率の増加具合は,被験者による個 人差がある.本研究においては,被験者中で最大周波数における変化率の最も低い被験者が,

最も動作変更を必要とする条件下で目標角度へ追従することのできるようにゲインを調整

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することとし,すべての被験者で同一のゲイン値で実験を行った.

図 4-1 振動刺激周波数変化を用いた肘関節伸展動作変更量の制御

第3節 実験条件および実験手順

第3章2節で説明した基本的実験手法および実験装置を使用して実験を行った.実験中,

被験者は肘関節伸展運動を生成し,伸展運動中に提案手法による動作変更量の制御を試み た.動作変更量制御実験時の肘関節加速度,角度域,振動刺激条件,目標肘関節角度軌道,

ゲインKの設定値などについて,以下で説明する.

〇実験中の肘関節運動および被刺激筋の負荷条件

実験中,被験者は決められた角度域で,一定の角速度の肘関節伸展運動を生成した.角度

域は45-20 [deg]であり,肘関節伸展角速度は3 [deg/s]であった.肘関節角速度は日常生活動

作おいて想定される関節角速度よりも遅い角速度であるが,提案手法による動作変更量制 御の様子を明瞭に観察するために3 [deg/s]で実験を行った.

前章の第5節において,被刺激筋の負荷条件が高くなると,動作変更量が生成し難くなる ことが明らかとなった.本実験では,基礎実験として被刺激筋の荷重負荷を加えず,フリー ハンドの状態で実験を行った.

〇提示した振動刺激条件

第3章3節では,振動刺激の周波数が30-90 [Hz]で増加するとき,動作変更量の変化率も また増加することが明らかとなった.本実験においては,この結果を踏まえ,提案手法にお ける振動刺激周波数変化域を30-90 [Hz]とした.式(4)で示される提案手法に,以下のルール を適用し,動作変更量の制御実験を行った.

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𝐹𝑟𝑒𝑞𝑢𝑒𝑐𝑛𝑐𝑦 = 𝐾 (𝜃𝑑− 𝜃𝑔) (4)

 

 

 

 

90, Freq. 90 [Hz]

30 90, Freq. ( ) [Hz]

0 30, Freq. 30 [Hz]

0, Freq. 0 [Hz]

d g

d g d g

d g

d g

K

K K

K K

 

   

 

 

    

 

      

 

 

   

 

 

    

 

目標角度と実際の角度にゲインをかけた値が90 を超えた場合,振動刺激周波数は90 [Hz]

で一定とした.また,目標角度と実際の角度にゲインをかけた値が30 [Hz]を下回った場合,

振動刺激周波数は30 [Hz]で一定とした.また,実際の肘関節角度が目標角度を超えた場合,

振動刺激周波数を0 [Hz]とした.振動刺激周波数は振幅1 [mm]で一定であった.

〇目標肘関節角度軌道

上肢パワーアシストロボットによる上肢認知アシストにおいては,これまで様々な目標 軌道の推定方法が提案されてきた[31]–[34].振動刺激による認知アシストにおいても,これ らの目標軌道推定手法を用いて認知アシストを遂行するものと想定される.

日常生活において認知アシストが実行される際には,各関節の目標関節角速度は刻々と 変化する.本実験においては,そのような多様な目標運動のうち,目標肘関節角度軌道が1

[deg/s]と2 [deg/s]の一定角速度で肘関節角度が推移する軌道,および目標肘関節角度軌道1

[deg/s]と2 [deg/s]の間で非線形に推移する非線形目標軌道であったと想定し,計3種類の目

標肘関節角度軌道へ向けて被験者の肘関節伸展動作変更量を制御する実験を行った.以降,

線形目標肘関節角度軌道1 [deg/s]と2 [deg/s]をそれぞれ目標軌道1,目標軌道2,非線形の 肘関節角度軌道を非線形目標軌道と呼称する.図4-2に各目標軌道を図示する.目標軌道の 生成は,被験者が肘関節伸展運動を開始した直後から生成開始した.各目標軌道に対して3 回ずつ制御実験が行われた.

図 4-2 目標軌道1,目標軌道2および非線形目標軌道

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〇ゲインKの値の調整

式(4)中のゲインKの値を調整することにより,目標角度と実際の角度との差に対する周 波数変化の強弱を調整することができる.ゲイン調整の手法についてはさらなる検討が必 要であると推測されるが,先述のように,今回は動作変更量変化率を参考としてゲインの値 を調整することとした.動作変更量変化率は「単位時間あたりに生成することのできる動作 変更量」の指標であり,本研究では,1秒間に生成することのできる動作変更量を示す.第 3節の実験において,動作変更量変化率はすべての被験者において,周波数増大とともに増 大することが明らかとなった.一方で,その値には個人差があることも明らかとなった.動 作変更量変化率の値が大きければ,1秒間に生成することのできる動作変更量も大きくなる.

動作変更量変化率の値が低い場合,ゲイン値を高くする必要があり,動作変更量変化率が十 分高い場合,ゲイン値は低い値で良いと考えられる.

本研究におけるゲイン調整の考え方として,「最大周波数90 [Hz]において最も動作変更量 変化率の低い被験者が,最も動作変更量を必要とする目標軌道に対して追従することがで きるようにゲインの値を調整する」ことにより,被験者全員の肘関節運動を目標の肘関節運 動へ制御することができるものと考え,最大周波数において最も動作変更量変化率の低い 被験者を基準として,全員に同じ値のゲイン値を適用して実験を行った.最大周波数90 [Hz]

における動作変更量変化率に着目した理由は,最も動作変更が必要な状況下では,最大周波 数で振動刺激が加えられる可能性が高いためである.

表3-3を参照すると,「最大周波数90 [Hz]において最も動作変更量変化率の値が低い被験 者」は,被験者5であり,その値は1.7 [deg/s]である.一方で,「最も動作変更量を必要とす る目標軌道」は,被験者に指示された肘関節伸展運動の角速度が3 [deg/s]であったことを考 えると,目標軌道1 (1 [deg/s])のときに,最も意図する肘関節運動との角速度差が大きく,

動作変更量を必要とするものと考えられる.

ここで本研究では,被験者5の肘関節伸展運動と目標関節角度との間に差が生じた場合,

その差を1 [s]程度で埋める制御を行うことを目指し,ゲイン調整を行うものとした.1 [s]程

度で目標軌道1との角度差を埋めるためには,被験者5の最大周波数90 [Hz]にけおける動 作変更量変化率が1.7 [deg/s]であり,目標軌道1での目標肘関節運動角速度と被験者の意図 する肘関節角速度との差が2 [deg/s]であることを考えると,目標肘関節角度と実際の肘関節 角度との差が 2 [deg]程度になったとき,最大周波数で振動刺激が加わるようなゲイン値と すればよい.そこで本研究では,ゲイン値を50に調整し,提案手法による肘関節動作変更 量の制御を試みた.

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〇実験手順

実験手順を以下に説明する.

1. 両肘関節角度を0 [deg]にし,肘関節角度の記録を開始した

2. 実験者は被験者の左腕(Reference arm)の手首を把持し,45 [deg]まで屈曲させた.この とき,被験者は右腕(Vibrated arm)において左腕(Reference arm)で知覚した肘関節角 度と同様の肘関節角度を生成した.

3. 右腕(Vibrated arm)への振動刺激を開始し,振動刺激の開始と同時に被験者は肘関節 伸展運動を開始した.また,振動刺激の開始と同時に目標肘関節角度軌道の生成および 提案手法による振動刺激周波数の制御を開始した.

4. 被験者は左腕(Reference arm)の肘関節角度が20 [deg]に達したと感じるまで肘関節伸 展運動を行い,被験者が肘関節伸展運動を停止した時点で振動刺激を停止し,肘関節角 度の記録を停止した.

被験者には,どの目標軌道への制御がなされるのかは伝えずに実験を行った.各目標軌道 に対して3回ずつ上記の手順を繰り返した.

〇被験者

本実験に参加した被験者は,第3章2節および3節で行われた実験の参加者と同じ7名 の被験者に対して実験を行った.

第4節 実験結果

本実験における左腕(Reference arm)の肘関節伸展運動角速度の平均値ならびに被験者間 での標準偏差は,角速度3.4 [deg/s],標準偏差0.7であった.肘関節伸展動作変更量の制御 実験の結果を,図4-3~図4-9へ示す.

図中の赤実線および黒破線はVibrated arm(右腕)及びReference arm(左腕)の肘関節角 度の軌跡を示し,緑破線は目標肘関節角度軌道を示す.黄実線は振動刺激周波数を示す.す べての結果において,右腕(Vibrated arm)の肘関節伸展運動が目標肘関節伸展運動へ制御 されている.

73 (a)

(b)

(c)

図 4-3 (a)目標軌道1,(b)目標軌道2,(c)非線形目標軌道に対 する肘関節伸展動作変更量制御実験の結果(被験者1)

74 (a)

(b)

(c)

図 4-4 (a)目標軌道1,(b)目標軌道2,(c)非線形目標軌道に対 する肘関節伸展動作変更量制御実験の結果(被験者2)