3. 受援者に与える効果
3.4. 受援者実験の分析結果及び考察
3.4.3. 衝突余暇時間(Time-To-Collision)
TTC に関する仮説 C)では、共助システムによりリスクを早期に認知できる ので、早い段階から減速を開始することができ、TTCが増加すると考えられた。
また、TTCが増加する傾向は、警告提示タイミングが早くなるほど強く表れる と考えられた。
図3-16は警告が提示されない場合と各警告提示タイミング別のTTCを比較 した結果を示している。
図 3-16 TTC分布
警告が提示されることによって TTCが 5秒以上になる確率が大きく上昇し ていることが分かる。また警告提示タイミング別に比較をしてみると、1.5~
2.5 秒前と3.5~4.5秒前の分布は近しく、2.5~3.5秒前はTTCが1秒以下も
しくは5秒以上と両極端な分布となっていた。
~1 1~2 2~3 3~4 4~5 5~ 警告なし 21.82% 3.64% 16.36% 10.91% 12.73% 34.55%
1.5~2.5秒前 3.85% 0.00% 3.85% 11.54% 11.54% 69.23%
2.5~3.5秒前 13.04% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 86.96%
3.5~4.5秒前 3.45% 0.00% 3.45% 13.79% 6.90% 72.41%
10%0%
20%30%
40%50%
60%70%
80%90%
T 100%
T C の 比 率(
%)
42
上記の分析は直感的なものであるため、定量的に各警告提示タイミングの TTC分布がどの程度類似しているかを分析するために Bhattacharyya 係数を 活用した。Bhattacharyya係数は2つのヒストグラムを比較し類似度を定量的 に表す係数であり以下のように算出される。
Bhattacharyya係数= ∑𝑛𝑖=1√𝑃𝑖 𝑄𝑖
式中の𝑃 は 1 つ目のヒストグラムの𝑖番目の階層の比率を意味している。ま た、式中𝑄 は 2 つ目のヒストグラムの𝑖番目の階層の比率を意味している。
Bhattacharyya 係数は0~1 の値を取り、1 に近いほど類似度が高いことを意
味する。
図3-17はBhattacharyya係数を用いてTTC分布の類似度を比較した結果
である。この結果からも 1.5~2.5 秒前と 3.5~4.5 秒前の警告タイミングは極 めて近しい TTC 分布になっていることが分かる。対して警告が提示されたと
しても2.5~3.5秒前の場合は比較的類似度が低くなっている。
図 3-17 Bhattacharyya係数によるTTC分布の類似性
図3-18は警告タイミング別のTTCが5秒以上の比率を比較した結果を示し ている。タイミングに関わらず、警告が提示される場合には TTCが 5秒以上 の比率が大きく上昇していることが分かった。
ライアン法による多重比較の結果、以下のペアに有意差が確認できた。(他の ペアには有意差はなかった)
“警告なし”<“1.5~2.5秒前” … p≒0.003
“警告なし”<“2.5~3.5秒前” … p≒0.2 e-4
“警告なし”<“3.5~4.5秒前” … p≒0.95 e-3
1.5~2.5秒前 2.5~3.5秒前 3.5~4.5秒前
警告なし 0.893 0.717 0.878
1.5~2.5秒前 0.847 0.996
2.5~3.5秒前 0.861
43
図 3-18 TTCが5秒以上の比率
これらの結果から、TTCに関する仮説のうち全体的にTTCが上昇するとい う部分は仮説を採択できると考えられる。
一方で、警告提示タイミングが早まるに連れ TTC が上昇するという部分は 支持されない。2.5~3.5 秒前の警告提示は Bhattacharyya 係数によって算出 した類似度が比較的低く、TTC の分布も中間領域が無いという特徴的な結果 であった。これらの結果からも 3.4.1.衝突率の考察で得られた知見と同様に、
2.5~3.5秒前の警告では受援者に迷いを生じさせるタイミングであり、他のタ
イミングに比べ衝突対象より先に交差点を通過するという危険な判断を促し てしまう可能性が高いと考えられる。
34.55%
69.23%
86.96%
72.41%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
No warning Late Middle Early
T T C が
5 秒 以 上 の 比 率(
%)
p ≒ 0.003
p ≒ 0.95 e-3 p ≒ 0.2 e-4
1.5~2.5秒前 2.5~3.5秒前 3.5~4.5秒前 警告なし
44