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船着場とその周辺の魅力向上のための留意点

これまで第4~5章では,都内水上交通事業者や利用者(乗船者)の景観的視点から「海上」

における魅力向上に資する「魅力的な海上景観を望むに相応しい視距離(航路選定のための指標 値)」や「水上交通の魅力を伝えるメディア画像の構図特性(構図タイプ)」について明らかにし てきた.そこで本章では,「海上」における魅力向上のみにとどまらず,陸域と水域を横断的にと らえた「船着場」とその周辺施設に着目し,当該水際空間における魅力向上のための留意点につ いて論究する.

なお,「船着場」およびその周辺施設の魅力向上に資する留意点を導くにあたり,東京臨海部に 立地する官民が管理する全 122か所の船着場について調査を行った結果 1),東京臨海部には参考 とすべき魅力的な船着場(写真6-1)が存在しなかったため,河川敷地占用許可準則の特例措置に 伴う社会実験や特例措置の一般化による大きな影響を受け,約17年間にわたり水辺空間の賑わい や祝祭性を創出してきた「水都大阪・水の回廊エリア(写真 6-2)」に着目して,その事業経緯及 び実態調査を通じて,船着場とその周辺施設の魅力形成に向けた留意点について考究する.

写真6-1 単なる通過点となった船着場(筆者撮影) 写真6-2祝祭性が広がる道頓堀川(筆者撮影)

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6-1-2 「水辺を意識した建物」の定義

本章では,水都大阪・水の回廊エリア(図 6-1)を対象に 2018 年1月時点に現存した沿川建物 のうち「水辺に向けて窓越しに飲食スペースを有する(写真 6-3)」,「水辺デッキ側に出入口があ り水辺に開いた空間を有する(写真6-4)」,「水辺を見下ろせる水辺テラスを有する(写真6-5)」 のいずれかの整備が認められる建物を「水辺を意識した建物」と定義する.

一方,水辺側へ開口部があっても私有地となるなど一般利用者が自由に水辺へ出入りできない 施設(写真6-6)や水辺で憩える場所が確保されていない建物(写真6-7)は除外した.

写真6-3 水辺に向けて窓越しに飲食スペースが設置された建物(筆者撮影)

写真6-4 水辺側に出入口がある建物

(筆者撮影)

写真6-5 水辺テラスを有する建物

(筆者撮影)

写真6-7 水辺で憩える場がない建物

(筆者撮影)

写真6-6 自由に水辺へ出入りできない建物

(筆者撮影)

6-1-3 道頓堀川における賑わい形成プロセスの把握

魅力的な河川空間の形成にあたっては,事業初動期における管理運営者の工夫をはじめ,その 後の段階的な戦略プロセスが重要になると考えられる.この段階的な戦略プロセスを把握するた めに,水都大阪・水の回廊エリア内において河川空間整備が他地区に先駆けて展開された「道頓 堀川」を調査対象に設定した.調査に当たっては,水都大阪関連計画の変遷や「船着場」および

「水辺遊歩道」の整備概要などを把握するために,表 6-1 (1)に示す文献調査を実施した.さらに,

「水辺を意識した建物」の段階的な整備状況を捉えるために,表 6-1 (2)に示すヒアリング調査を 実施した.このヒアリング調査では,大阪市下水道河川部が2008年度から毎年実施しているとん ぼりリバーウォーク遊歩道に面した店舗を対象とした「間口調査注1)」および同遊歩道への「オー プンカフェの登録・設置状況確認調査注2)」の調査結果を入手し,10年間にわたる年度ごとの「水 辺を意識した建物」の整備状況および建物数の年間推移を整理する.さらに,これらの結果を踏 まえて「船着場」と「水辺遊歩道」と「水辺を意識した建物」の空間的波及状況と管理運営者の戦 略プロセスの実効性について考察する.

表 6-1 調査概要

(1)文献調査

調査期間 2017年7月1日(土)~2018年1月30日(火) 計7か月間 調査対象 水都大阪・水の回廊エリアに関連する既存資料2)~6)

調査内容

・水都大阪の関連計画の変遷

・水の回廊エリアの周辺整備(水辺遊歩道,船着場)の整備経緯

・水の回廊エリア内に設置された船着場の施設概要

(2)ヒアリング調査

調査日時 2017年12月21日(月)10:00~12:00 調査対象 大阪市建設局下水道河川部河川課

調査内容

・道頓堀川の事業計画と実施経緯

・水都大阪再生事業における行政の役割や広報活動内容

・大阪市が整備主体となる船着場や水辺遊歩道の整備時期や経緯

・「水辺を意識した建物」に関する資料提供(間口調査等の結果)

(3)現地調査

調査期間 2017年8月20日(日)~21日(月),12月20日(水)~21日(木)

調査対象 水都大阪・水の回廊エリア(図 6-1:大阪市中央区,西区,福島区)

対象河川:道頓堀川,東横堀川,大川,堂島川,土佐堀川,木津川 調査内容 ・船着場の整備・利用状況および沿川店舗の遊歩道の活用状況

・船上から水辺建築物の建築用途および建築形態などを記録

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6-1-4 船着場周辺部における「水辺を意識した建物」の立地的特性の把握

既存建物の再活用(リノベーション)や建物の新規造成(新規開発)等の開発手法の違いが「水 辺を意識した建物」の立地的特性や空間的波及状況に与える影響を捉えるために,様々な開発手 法で造成された「水辺を意識した建物」が混在する水都大阪・水の回廊エリアを対象に表 6-1 (3) に示す現地調査を実施した.この調査では,水都大阪・水の回廊エリアに2018年1月時点で現存 した「水辺を意識した建物(全99軒)」および「船着場(表 6-2,全9ヶ所)」,「水辺遊歩道」の 整備状況を捉えるために,調査船上から沿川建物の河川側への開口部の有無や水辺テラスや船着 場の設置状況および利用実態を撮影・確認するとともに,調査精度の確保の観点からビデオ記録 を併せて実施した.分析範囲としては,船着場を中心に向けて人の流れや賑わいが創出されると の仮説に立ち,人が無理なく歩ける距離500m7)を基準として,船着場を中心に上下流方向へ各500

m(計1km)とし,「水辺を意識した建物」の建物数やその整備状況を捉えた.その結果をふまえ,

水都大阪・水の回廊エリア内の「船着場」と「水辺遊歩道」と「水辺を意識した建物」の3 者の 整備状況から水辺環境を活用した賑わい形成のための立地的特性について考察する.

表 6-2 水の回廊エリアの船着場概要

No. 船着場名 管理者 河川名 最寄り駅(距離) 形態 1 湊町船着場 大阪市 道頓堀川 大阪なんば駅(200m)他 浮桟橋 2 太左衛門橋船着場 大阪市 道頓堀川 地下鉄難波駅(350m)他 岸 壁 3 日本橋船着場 大阪市 道頓堀川 近鉄日本橋駅(200m)他 岸 壁 4 本町橋船着場 大阪市 東横堀川 堺筋本町駅(350m) 岸 壁 5 八軒家浜船着場 大阪府 大川 天満橋駅(直結) 浮桟橋 6 ローズポート 大阪府 堂島川 北浜駅(350m)他 浮桟橋 7 福島港 大阪府 堂島川 中之島駅(220m)他 浮桟橋 8 大阪国際会議場前港 大阪府 堂島川 中之島駅(50m) 浮桟橋 9 大阪ドーム千代崎港 大阪府 木津川 ドーム前千代崎駅(100m)他 浮桟橋

6-2 道頓堀川における賑わい形成プロセス

表 6-1 (1),(2)の調査結果として,道頓堀川の河川管理者である大阪市の取り組みと船着場と水 辺遊歩道の整備状況を整理するとともに,行政の取組方針の変遷に着目して 3期に大別したもの が表 6-3である.

さらに,先述した大阪市提供の各種調査結果(表 6-1 (1)~(3))をもとに各期のとんぼりリバー ウォーク遊歩道沿道に立地する「船着場」と「水辺遊歩道」,「水辺を意識した建物」の立地的関係 を示したものが図 6-2,図 6-5および図 6-7,「水辺を意識した建物」の区間別該当件数を示したも

のが図 6-3である.また,ヒアリング調査の結果をもとにとんぼりリバーウォーク遊歩道でのイ

ベント回数の推移を示したものが図 6-4である.以降では,これらをもとに道頓堀川の河川空間 の賑わい形成に向けた取り組みプロセスについて考察する.

表 6-3 大阪市の取り組みと道頓堀川周辺の整備状況 年月 大阪市の取り組みと道頓堀川周辺の整備状況

2001.6 ●内閣官房都市再生本部により都市再生プロジェクトに指定

2002.3 ◆湊町リバープレイス(水辺拠点)および湊町船着場完成

2004.3 12

●河川敷地占用許可準則の特例措置の通達

◆とんぼりリバーウォーク(戎橋~太左衛門橋区間:170m)完成

◆遊歩道整備と同時に太左衛門橋船着場完成

※同区間が国土交通省より特例措置の適用区間として認定

※道頓堀川水辺協議会による水辺利用の運用規則・ルールの検討開始 2005.6

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●河川敷地占用許可準則の特例措置を活用した社会実験開始

※まちづくり・賑わい創出効果,適正な維持管理,河川空間への新たなニーズ把握を目的として実施

●民間事業者による「とんぼりリバークルーズ」試行開始

※第1次試行期間:810日~919日(40日間)

※第2次試行期間:1221~28日,1月4~9日(12日間)

2006.3 ●民間事業者による「とんぼりリバークルーズ」事業開始

2008.12 ◆湊町リバープレイスと対岸の建物を結ぶ浮庭橋が完成

2009.4 ◆とんぼりリバーウォーク(太左衛門橋~相合橋区間:100m)完成

2009.8 ◆とんぼりリバーウォーク(相合橋~日本橋区間:130m)完成

◆遊歩道整備と同時に日本橋船着場完成

2011.3 6

●河川敷地占用許可準則の特例措置を活用した社会実験が終了

●河川敷地占用許可準則の一部改正(特例措置の恒久制度化)

2012.4 ◆とんぼりリバーウォークの管理運営業務(指定管理者)を公募

※指定3ヶ年の管理運営業務を「南海電鉄」が選定

2013.4 ◆とんぼりリバーウォーク全区間(浮庭橋~日本橋間:約1km)開通

2015.4 ◆とんぼりリバーウォークの管理運営業務(第2回)を公募

※指定3ヶ年の管理運営業務を「南海電鉄」が2回目の選定

2017.5 ●独立型店舗として水辺遊歩道の占用(バーベキュー利用)が開始

【凡例】●:大阪市の取り組み,◆:道頓堀川周辺の整備状況