第 4 章 考察
4.2 商店街における社会実験の考察
群馬県桐生市の桐生駅前にある商店街で行った社会実験について考察を行う.
防犯カメラの効果に関する質問では,防犯カメラの設置によって地域の防犯が 向上したと感じている人の割合が,社会実験を進めていくうちに多くなってい った.さらに,設置台数に関する質問では,防犯カメラを設置したいと考えて いる人の割合が増加している.このことから,防犯カメラの効果が社会実験の 進行にともなって周知され,多くの住民がもっとたくさんの台数のカメラを必 要だと感じるようになったと考えられる.防犯カメラに対する考え方に関する 質問では,防犯カメラが設置されていることに対して,安心感を感じるように なったという意見が多く,運用方法によって,プライバシーに配慮している点 が周知された結果なのではないかと考える.また,プライバシーを保護するた めに制定した防犯カメラ運用のガイドラインに関する質問では,ガイドライン を受け入れられると回答した人の割合が非常に多かった.また,このガイドラ インによってプライバシーが守られたと考えている人の割合も非常に多かった.
このことから,暗号化機能のない安価な防犯カメラでも,防犯カメラ運用のガ イドラインを制定することによって,一般市民に受け入れられる,プライバシ ーに配慮しながら,地域全体を見守る防犯カメラシステムの構築が可能である ことがわかった.社会実験を行った群馬県桐生市の商店街では,社会実験終了
69
後に商店街の人たちが中心となって防犯カメラ設置事業を推進した結果,2012 年度補正予算に盛り込まれた「商店街まちづくり事業」補助対象事業として,
防犯カメラ設置事業が採択され,予算を獲得した.実際に50台の防犯カメラが 桐生市の商店街に設置され,プライバシーに配慮して運用されている.本研究 の社会実験として設置した20台の防犯カメラがきっかけとなり,地域住民の防 犯意識を向上した結果,防犯カメラを設置することで,安心・安全な街を目指 す活動が波及し,50 台の防犯カメラの追加設置が,地域住民主導で行われたと いう実績に結びついた.桐生市の商店街における社会実験では,桐生市の商店 街を安心・安全なものにするということに大きく寄与することができたと考え る.商店街での防犯カメラ導入のモデルケースとしては,安心・安全な地域社 会の実現という点で,大きな成功と収めたと考えられる.
4.3 安中市における社会実験の考察
群馬県安中市で行った社会実験について考察する.安中市での社会実験は,比 較的犯罪が少ない地域が,「NHK大河ドラマ」により注目され,観光客が10倍 に増加する中,犯罪防止に向けて予防的に街頭防犯カメラを設置するという,
全国的に見ても初めての試みであった.社会実験を行った平成 24 年 12 月から の1年間,前年対比で安中市全体の犯罪(刑法犯認知件数)は増加したものの,
社会実験を行った当該地域では減少に転じ,半減するという実績を得られた.
アンケート調査の結果からも,防犯カメラの必要性を感じ,防犯カメラを設置 したいと考えている人が多いことがわかる.社会実験の実施が,社会実験を行 った地域の住民の防犯意識を高めることにつながったと考えられる.その結果,
地域住民主導で,安心・安全なまちづくりの為に経済産業省の補助金1650万円 を獲得するという実績に結びついた.犯罪を減少させ,住民主導で予算を獲得
70
するにまで至ったため,犯罪の増加が見込まれる地域,住宅街に観光地が点在 する地域への防犯カメラ導入の成功例として,モデルケースを作成することが できたと考えられる.
4.4 e自警機器開発の考察
e 自警機器の開発においては,企業と共同で行ってきた.社会実験と平行して の耐久試験を行い,現行機種の改良およびミツバアビリティ製 e 自警カメラの 開発,ロッキー製e自警ドアホンの開発を行った.開発したe自警機器に対して は,画質検証実験を行った.開発したマツダ商事製e自警カメラ(eJKC-ZB102c)
とミツバアビリティ製 e 自警カメラ(MA-ejc132a)において,昼間の撮影に関 しては,人物・自動車共にはっきりと顔やナンバープレートの識別が可能であ った.夜間の撮影では,人物の顔や着衣の識別が可能であり.自動車のナンバ ープレートの識別が可能であった.マツダ商事製 e 自警カメラ(eJKC-ZB102c)
とミツバアビリティ製 e 自警カメラ(MA-ejc132a)に関しては,昼間・夜間,
人物・自動車の撮影に対して,防犯カメラとして要求される画質が確保されて いることが確認できたと考える.そのうえで,録画可能時間との兼ね合いにも なるが,さらなる画質向上に向けた検討を企業と行っていくべきだと考えてい る.ロッキー製 e 自警ドアホンに関しては,昼の撮影に関しては,人物・自動 車の顔やナンバープレートの識別が可能であった.夜間の撮影では,人物の顔,
自動車のナンバープレートの識別が可能ではあったが,判別が難しい場合もあ った.今後,夜間撮影画質の向上を図る必要があると考えられる.夜間の画質 向上については,赤外線 LED 投光機の改良や CCD の感度向上を行うことで,
画質向上が見込めるのではないかと考えている.e自警ネットワーク実現にのた めに必要不可欠な,低コストでプライバシーに配慮した防犯カメラの開発がで
71
きたのではないかと考える.
72
第5章 結論 5.1結論
本研究では,e 自警ネットワークに関する研究として,e 自警機器の導入のモ デルケースの作成,e自警機器の研究開発を行った.e自警機器導入のモデルケ ース作成においては,社会実験を 3 ヶ所で行い,プライバシー保護に配慮した 防犯カメラ導入のモデルケースの作成を行った.大規模商業施設へのプライバ シー保護に配慮した防犯カメラシステム導入のモデルケースとして,群馬県桐 生市にあるマーケットシティ桐生において社会実験を行った.商店街への安価 なプライバシー保護に配慮した防犯カメラシステム導入のモデルケースとして,
群馬県桐生市の桐生駅周辺にある商店街において社会実験を行った.今後の犯 罪の増加が見込まれる地域,住宅街の中に観光施設が点在している地域でのプ ライバシー保護に配慮した防犯カメラ導入のモデルケースとして,群馬県安中 市において社会実験を行った.どの社会実験においても,防犯カメラ導入の成 功例としてのモデルケースの作成ができ,社会実験を行った地域に関しては,
安心・安全なまちの実現という目標は達成された.また,数多くの新聞やニュ ース等で報道され,各自治体等からの連絡が相次いだ.現在,全国各地での e 自警ネットワークのテスト導入の動きがみられ,e自警ネットワークが世の中に 受け入れられてきているといえる.
e 自警機器の開発においては,既存カメラの改良,新型カメラの開発,e 自警 ドアホンの開発を行った.開発した e 自警機器には,防犯カメラとして要求さ れる必要最低限の機能が搭載されていることが確認でき,実用に耐えうる防犯 カメラの開発ができた.現在では,有限会社マツダ商事,株式会社ミツバアビ リティ,株式会社ロッキー,株式会社トステックの 4 社が e 自警機器の研究開 発に参加している.e自警ネットワークの実現に近づいていると言える.
73
本研究の取り組みが,今後世界中のメディアに取り上げられ世界規模で普及さ せることで,より安心・安全な社会になっていくことを望んでいる.
74
謝辞
本研究をまとめるにあたり,あたたかい励まし,的確なご指導,ご鞭撻を賜 りました藤井雄作教授,田北啓洋助教,薊知彦技術職員,社会実験に協力して くださった NPO 法人 e 自警ネットワーク研究会をはじめとする関係者の皆様,
e 自警機器の共同開発者である企業の皆様,本研究に関わっていただいたすべて の方々に深く感謝いたします.
また,論文の審査をしていただいた,山越芳樹教授,太田直哉教授に深く感 謝いたします.
そして,本研究室の方々をはじめ,支えてくれた皆様に感謝いたします..