第3章 二行程ガソリン均一給気自着火燃焼機関
3.4 自着火燃焼画像
次に,自着火燃焼の可視化画像から自着火発生に関する考察を試みる.
図3-8に,燃焼可視化実験装置を示す.機関は,ボア×ストローク=80 mm×80 mm,排気量402 cm3の水冷単気筒二行程ガソリンPDI-AR燃焼機関で,ヘッドに直径30 mmの石英材の観察窓を 備えている.この窓は,燃焼室直径のほぼ80 %をカバーしている.燃焼画像は,毎秒9000コマ の高速度ビデオカメラ(コダック製HS4540)を用い,ヘッド側からトップビューの火炎を直接撮 影して得られた.運転条件は,機関速度 3000 r/min,図示平均有効圧力 (Indicated mean effective
pressure; IMEP) =270 kPa,筒内における当量比=1となっている.排気弁開度は,機関の燃料消費
率が最小となるように,自着火タイミングが最適となる位置に調整されている.
図3-9に燃焼可視化画像を示す.画像は,クランク角2°刻みに,上死点前4°から上死点後10°
まで,計8枚をa~hに並べている.画像は,着火始めを認識しやすくするために,グレースケー ル画像を画像処理にて白黒反転処理をほどこし,最小輝度は白,最高輝度は黒としている.各画 像右下に確認できる変化のない黒点は,ガスからの熱で発光しているスパークプラグの電極であ るが,本実験時は火花を停止している.
上死点前4°のaにわずかに微小な多くの火炎が燃焼室の広い範囲に現れ始め,上死点でははっ きりとした複数の火炎に成長している.その後,燃焼室全体に輝度が増大し,上死点後10°には 燃焼を終える非常に高速の燃焼となっている.この燃焼プロセスの傾向は,毎サイクル同様であ る.しかしながら,初期に発生する火炎の分布が毎サイクル不規則に異なることに注目した.均 一給気自着火燃焼と呼ぶものの,筒内における混合気は完全には均一ではなく,ある程度不均一 となる.また,掃気行程と圧縮行程中における,新気と残留ガスの混合も不完全となるから,筒 内のガス温度分布も同様にある程度不均一となる.この場合,圧縮端に近づいた時に,筒内ガス において混合気ガス温度が自着火温度に達し混合気の当量比が着火可能な範囲にある個所から,
初期の自着火火炎が発生すると推測した.ある個所から火炎が発生すると,急速に燃焼室全体へ と自着火燃焼は広がる.そこで,自着火が発生するか否かは,この初期自着火火炎の発生に大き く依存すると考えた.
この自着火燃焼の初期火炎発生における筒内温度と混合気形成に関する考察から,本研究にお ける新しい自着火燃焼コンセプトを考案した.
(a) Apparatus for visualization of combustion
(b) View area
図3-8 燃焼可視化実験装置と可視化領域
Optical window
Cylinder bore
Exhaust
Squish
(Ultimage 2.6 by Graftek)
Lens(Nikkor 55mm Micro f 3.5) Camera controller
(POWER Mac 8100)
Image analysis Image analysis syatem Image intensifier
(HAMAMATSU PHOTONICS C5836)
CCD VTR camera (KODAK EKTAPRO Motion Analyzer model-4540)
Experimetal engine
図3-9 高速度ビデオ(グレースケール)撮影による均一給気自着火燃焼画像 各画像下に示しているのは,画像に対応するクランク角度(上死点前).
各画像のグレースケール(256分解能)は輝度を表し,黒色ほど高輝度.
-4°ATDC
-2°ATDC
0°ATDC
2°ATDC
4°ATDC
8°ATDC
10°ATDC 6°ATDC