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機関の幾何学的諸元と運転条件を表す用語

第2章 本論文で用いる用語の定義と測定方法

2.1 機関の幾何学的諸元と運転条件を表す用語

機関の幾何学的諸元と運転条件を表す用語を表 2-1 に示す.表は日本語名称,英語名称,本論 で用いる記号,単位を示す.圧縮比に関しては,二行程機関で特別に用いる用語を示す.

二行程機関の場合,内燃機関で用いられる一般的な圧縮比,すなわち上死点における燃焼室容 積に対する下死点における筒内容積(上死点における燃焼室容積+行程容積)の比は,幾何学的 圧縮比と呼ぶ.四行程機関においては,幾何学的圧縮比を従来どおり圧縮比と呼ぶ.

クランク室(1次)圧縮比とは,クランクケース与圧式の二行程機関で定義する,下死点におけ るクランクケース容積に対する上死点におけるクランクケース容積(下死点におけるクランクケ ース容積+行程容積)を指す.クランクケースは吸気管とリードバルブを介して連通されるが,

クランクケース容積は,リードバルブのケース内側からピストン裏側のクランクケース部,およ び掃気ポート部内容積の総容積を指す.

給気後(2次)圧縮比とは二行程機関における有効圧縮比を指し,実質的な圧縮始め時期が排気 ポート閉じ時期であることから,上死点における燃焼室容積に対する排気ポート位置にピストン 上端がある時の筒内容積の比を指す.

表2-1において,排気量,シリンダー内径,行程,幾何学的圧縮比,1次圧縮比,2次圧縮比は 供試機関の図面値を扱う.

機関速度は火花点火信号をもとにしたF-V変換器による機関速度計により計測される.

吸気スロットル弁開度は,吸気バタフライ弁の軸に固定されたポテンショメーターによる開度 位置の検出から全開に対する比率として算出される.

排気弁開度は,駆動するサーボモーター内に内蔵されているポテンショメーターによる開度位 置の検出から全開(排気ポート位置)に対する比率として算出される.

火花点火時期は,クランク軸に固定された分度器を火花点火駆動信号と連動したストロボライ トにより目視し実測した.実験では,分度器をカメラで撮影し機関試験室外の操作室のモニタに て観測した.

燃料直噴時期は,クランク軸に固定したロータリーエンコーダー(360パルス/1回転)の上死 点信号を基準としたパルスジェネレーターにより,上死点後のクランク角度で管理された駆動信 号により制御される.この信号時期は実験中常にオシロスコープで確認した.

機関に供給される空燃比(A/F)は,上述の吸入空気質量と燃料消費質量より求める.しかしな がら,直噴機構を備える二行程ガソリン機関の場合,供給A/Fと筒内ガス中のA/Fは異なる.こ の場合,筒内A/Fは排気ガス中のCO,CO2により推測可能である.たとえば,機関速度一定,吸 入空気量一定でA/Fを変化させた場合,理論空燃比にある時はCO2が最大となる.本論では,当 量比(φ)は基本的に筒内の空燃比に関して扱い,当量比(φ)=1は筒内の混合気が理論空燃比 にある時とする.

表2-1 機関の幾何学的諸元と運転条件を表す用語

名称 英語名 記号 単位

排気量 displacement Vs cm3

シリンダー内径 bore Bore mm

行程 stroke Stroke mm

幾何学的圧縮比 geometric compression ratio ε クランク室(1次)圧縮比 crankcase (primary) compression ratio ε1 給気後(2次)圧縮比 trapped (secondary) compression ratio ε2

クランク角 crank angle C.A. degree 排気ポート開口期間 exhaust port opening period deg C.A.

掃気ポート開口期間 scavenging port opening period deg C.A.

機関速度 engine speed Ne r/min

吸気スロットル弁開度 intake throttle-valve opening ratio θth % 排気弁開度 exhaust valve opening ratio EOR %

上死点 top dead center TDC

下死点 bottom dead center BDC

火花点火時期 spark-ignition timing SI timing °BTDC 最適火花点火進角 minimum advance for the best torque MBT °BTDC 直噴始め時期 direct-injection timing DI timing °ATDC

空燃比 air fuel ratio A/F

当量比 equivalence ratio φ