第4章 新しい自着火燃焼:成層自着火燃焼
4.4 成層自着火燃焼の検証方法
図4-14 四行程ガソリン火花点火機関における当量比と排ガス濃度の関係 (4-23)
図4-15 筒内A/FとCO, CO2, O2の関係
(二行程ガソリン均一給気燃焼と二行程ガソリン成層給気燃焼の比較)
10 15 20 25 30
15
10
5
0
In-cylinder A/F
CO ,CO 2 ,O 2 ,%
Homogeneous charge
CO 2
CO
Stratified charge
CO
φ=1
Short-circuited fresh chrge (Tpapping efficiency (ηtr) = 85 %)
O 2
CO 2 O 2
φ*=1
4.4.2 空気利用率の定義と見積もり方法
成層自着火燃焼を機関実験で検証するために,混合気形成の観点から成層給気状態を判定し,
同時に自着火燃焼運転を確認した.この方法を,図4-16に従い以下に示す.
成層給気状態を定量評価するために,空気利用率(Air utilization ratio; AUR)を次のように定義 する.
AUR = Mf*/Mf (4-1)
Mf:ガス交換において筒内に留まる空気質量,
Mf*:筒内新気の内燃焼に関与する空気質量
均一給気自着火燃焼の場合,吸入空気質量をMsとすると,掃気行程中排気管に吹き抜ける空気 質量はMs-Mfであるから,既燃ガス中には残留酸素がないとの仮定のもと,排気中の酸素濃度か ら吹抜け新気量を見積もるいわゆるWatson法 (4-24) を応用すると,
(Ms-Mf ) / Ms = O2 / 21 (4-2) O2:均一給気状態における排気中の酸素濃度(%)
21:大気中の酸素濃度(%)
一方,成層給気状態では,燃焼に関与せず排気管に排出される空気質量はMf-Mf*であるから,
1サイクル毎に排気管に排出される総空気質量は,Ms-Mf + Mf-Mf*,すなわちMs-Mf*となる.
(4-2) 式と同様に,
(Ms-Mf*) / Ms = O2* / 21 (4-3) O2*:成層給気状態における排気中の酸素濃度(%)
(4-1),(4-2),(4-3) 式より,
AUR = (21-O2*) / (21-O2) (4-4)
既燃ガス中には残留酸素はないという仮定および均一給気,成層給気,両者の燃焼場の当量比 をそろえるために,CO2排出が最大となる当量比(φ*)を与え実験を行う.すなわち,φ*の時,
燃焼場の空燃比は理論空燃比と仮定した.
図4-16 空気利用率(AUR)の定義と見積り方法
Homogeneous-charge auto-ignition (HCAI) Exhaust pipe Cylinder
Short -c irc ui t
Bur nt g as Residual gas Fresh charge
M f
Stratified-charge auto-ignition (SCAI) Exhaust pipe Cylinder
Residual gas
Short -c irc ui t
Burnt gas
Fresh charge
D is charged ai r
M f *
Air utilization ratio
= M f M f * AUR
= 21 - O 2 21 - O 2 *
M
f; Mass of fresh charge in cylinder
M
f*; Mass of fresh charge utilized for combustion
4.4.3 成層自着火燃焼の判定方法
均一混合気となるように十分に早い燃料噴射時期を与え,排気弁開度を調整し,均一給気自着 火燃焼を起こす.自着火燃焼の確認は点火プラグの火花を停止しても運転が持続するか否かで判 断する.給気比一定ならば燃料噴射時期にかかわらずガス交換状態は同一と見なし,この時の給 気比を維持しながらφ* を与え実験を行う.この均一給気自着火運転時のO2を用い,徐々に燃料 噴射時期を遅らせ O2* の変化から空気利用率(AUR)を求める.AUR の低下に比例して燃料消 費量は減少し同時に出力も低下する.この状態で自着火運転であれば,それは成層自着火燃焼と 判定できる.