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第4章 新しい自着火燃焼:成層自着火燃焼

4.5 実験結果

4.5.4 燃費およびエミッション性能

図4-20は成層自着火(SCAI)と均一給気自着火(HCAI)の図示燃料消費率(Indicated specific fuel consumption; ISFC),図示HC排出率(Indicated specific hydrocarbon emission; ISHC),図示NOx排 出率(Indicated specific nitrogen oxides emission; ISNOx)を比較する.

ISHCに注目すると,成層自着火(SCAI)は均一給気自着火(HCAI)に比べIMEP=300 kPa以 下の領域で低減しており,特にIMEP=200 kPaで最大約60 %低減している.これは,燃焼室中心 で混合気形成され自着火にいたるSCAIによって,シリンダーの壁ぬらしなどによる未燃HCの排 出が低減されたためと思われる.しかしながら,この低減量はISFCの違いとなって現れるほど十 分な量ではない.ISNOxに注目すると,成層自着火(SCAI)は均一給気自着火(HCAI)に比べて わずかに増加する傾向が見られる.しかしながら,IMEP=300 kPaより低負荷では均一給気自着火

(HCAI)同様ほぼゼロレベルであり,自着火燃焼の利点は維持されている.

また図4-20では,同時に従来の標準的な予混合四行程火花点火機関とも比較した.ここで,予 混合四行程火花点火機関は理論空燃比,最適点火進角(Minimum advance for the best torque; MBT)

を与えている.IMEP=200 kPa前後において,ISFCは約20 %,ISHCは約85 %,ISNOxは約95 % 低減している.

成層自着火(SCAI),均一給気自着火(HCAI)ともに ISFC が予混合四行程火花点火機関に対 し改善されているが,これは供試機関における自着火燃焼の二つの特徴による.

図4-21は,二行程ガソリン均一給気自着火燃焼機関と予混合四行程火花点火機関の,同一IMEP における P-V線図を比較している.本図における,二行程ガソリン均一給気自着火燃焼機関の排 気ポートタイミングで決まる2次圧縮比は8.8,四行程機関の圧縮比は12である.機関速度は3,000

r/min,IMEP=280 kPaとなっている.この図において,均一給気自着火には熱サイクル上の二つの

改善が見られる.一つ目は上死点における等容燃焼の改善である.これは,自着火の急速燃焼に よる.二つ目は下死点における膨張比の拡大である.これは,排気弁の排気始め時期可変効果に よる.自着火燃焼の着火タイミングを最適に設定すると,低負荷域ほど排気弁開度は小さくなる が,排気ポートをふさぐ形状であるため同時に排気始め時期は遅くなる.そのため,低負荷ほど 有効膨張比は高くなる.図4-22は,本供試機関のそれぞれの燃焼モードにおける有効膨張比を比 較している.ここで,有効膨張比は各ポイントにおける排気弁位置から計算している.このよう に,成層自着火(SCAI)と均一給気自着火(HCAI)は,低負荷ほど膨張比は高い.そのため,図 4-20に見られるようにISFCは低負荷ほど低くなる傾向を持つ.

3,000 r/min

図4-20 各燃焼モードと四行程機関における

図示燃料消費率,図示HC排出率および図示NOx排出率の比較

180 200 220 240

0 100 200 300 400 500 600

IM EP, kPa

IS F C , g /kW h

BMEP=0kPa 4-stroke SI (ε =10)

HCAI SCAI

0 5 10 15

0 100 200 300 400 500 600

IM EP, kPa IS H C , g/ kW h

BMEP=0kPa

4-stroke SI (ε =10)

S CAI HCAI

0 2 4 6 8 10

0 100 200 300 400 500 600

IMEP, kPa IS N O

x

, g/ kW h

BMEP=0kPa 4-stroke SI (ε =10)

HCAI

SCAI

図4-21 P-V線図の比較

(二行程ガソリン均一給気自着火燃焼機関と四行程ガソリン火花点火機関の比較)

1.8 2.2 2.6 3.0 3.4 3.8

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

2-stroke HCAI 2=8.8)

Exhaust open

1.8 2.2 2.6 3.0 3.4 3.8

Log (Specific volume)

4-stroke SI (ε=12)

ε=4

ε=6 ε=8

ε=10

ε=12 ε=14

3,000 r/min, IMEP=280 kPa,

Log ( In-c y linder pr es s u re ), k P a

図4-22 各燃焼モードにおける有効膨張比の比較

7 8 9 10 11 12 13 14 15

0 100 200 300 400 500 600 700 800

IMEP, kPa

Ef fectiv e ex pa ns io n r atio

HCS I SCAI HCAI

S CS I