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自己補対アンテナについて

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 33-38)

集積するアンテナに求められる特徴としては、1)マイクロメートル級サイズである こと、2)平面型構造を有すること、3)広帯域特性を有すること、の3点が挙げられる。

1)は例えばダイポールアンテナでは、アンテナサイズが実行波長の1/2倍に等しい場 合に最も効率良く電磁波の送受信が可能であることから、テラヘルツ帯の波長に対し

て数100µm級サイズのアンテナが望まれる。2)は集積デバイスの形成過程において、

半導体メサに対して金属蒸着等の電極形成プロセスによってアンテナを集積一体化さ せることが考えられるため、平面型構造を有するアンテナが望まれる。3)は、簡易な 通信方式を用いた通信システムを目指している事から、アンテナには超高帯域特性が 求められる。既存の 通信から概算すると、 の通信速度を得るためには

1.4THz程度の帯域が必要となる[ 18]ことが考えられる。本研究ではこれらの要項を 満たすアンテナの一つである平面型自己補対アンテナに着目し、半導体デバイスに集 積するアンテナとして提案する。

2.3.1 自己補対アンテナの広帯域性原理

(a) ダイポールアンテナ (b) スロットアンテナ 図2.10 補対関係にある2種類のアンテナ

図2.10に補対関係にある2 種類のアンテナを示す。アンテナにおける補対関係と は、金属部分と非金属部分がそれぞれ反転した状態のダイポールアンテナとスロット アンテナの関係を指し、補対関係のアンテナはバビネの原理(Babinet’s Principle)に より、ダイポールアンテナの電界成分ED とスロットアンテナの磁界成分HS、及 びダイポールアンテナの磁界成分HD とスロットアンテナの電界成分 ES が同様の フィールドパターンを取る。この時

ED =±Z0HS (2.1)

HD = 1 Z0

ES (2.2)

Z0 =

jωµ

jωϵ+σ (2.3)

である。

ここで、ダイポールアンテナの給電端電圧と電流を 、 、スロットアンテナの

給電端電圧と電流をVSIS とすると、二つのアンテナの電圧、電流の間には、式2.1、 式2.2を用いて

VD = lim

c20

C2

ED ·dl= lim

c20

C2

Z0HS·dl=−Z0IS

2 (2.4)

VS = lim

c20

C2

ES ·dl= lim

c20

C2

Z0HD ·dl=−Z0ID

2 (2.5)

の関係式が成立する。この時、ダイポールアンテナの入力インピーダンスZD とス ロットアンテナの入力インピーダンスZS との間には、式2.4、式2.5を用いて

ZD ·ZS = VD ID · VS

IS

= (Z0

2 )2

(2.6) が成り立つ。自由空間中で2.3式は単純に大気の波動インピーダンスZ0 = 120πΩで あるため、2.6式は

ZD ·ZS = (60π)2 (2.7)

と書きなおせる。結論として、補対関係にある2つのアンテナの入力インピーダンス の積は一定の値となる。

2.3.2 自己補対アンテナの入力インピーダンス

図2.11 サイズ無限大の理想的な自己補対アンテナ

自己補対アンテナとは、図2.11に示すようなアンテナの金属部分と非金属部分が同 形状で、 °回転させると完全に金属部分と非金属部分が入れ替わる形を持つアンテ

ナである。この形状は自己補対形状と呼ばれ、ダイポールアンテナとスロットアンテ ナのどちらにも見なす事ができ、形状が同じであるため入力インピーダンスは等しく、

かつその時の各アンテナのインピーダンスは式2.7を満たす。そのため自己補対アン テナの入力インピーダンスZin は、

Zin =√

ZD·ZS =ZD =ZS = 60π (2.8)

と定数になり、周波数に対して無依存となることが報告されている。この定イン ピーダンスを与える式2.8は虫明の関係式(Mushiake s Relationship)、自己補対形 状が定入力インピーダンスを持つ性質は自己補対の原理、とそれぞれ呼ばれる。これ らの原理は平面型アンテナでサイズが無限大の理想自己補対アンテナの場合において 適用できるものである。

(a) ボウタイアンテナ (b) ログスパイラルアンテナ 図2.12 解析対象とした自己補対アンテナ

本研究においては図2.12に示す比較的設計が容易な平面型自己補対アンテナの一種 であるボウタイアンテナとログスパイラルアンテナを解析対象とする。

なお、アンテナの入力インピーダンスが周波数無依存となるのはアンテナの大きさ が波長に対して無限大とみなせる理想自己補対の時であるが、本研究で設計を行うア ンテナはµm級の有限サイズであるため、周波数選択性が生じることが定性的に予測 できる。

3

COMSOL Multiphysics における集

積レクテナ特性解析のためのモデル化と 解析例

3.1 はじめに

本研究では、自己補対アンテナ集積デバイスの特性を明らかとするため、テラヘル ツ帯及びマイクロ波帯における電磁界シミュレーションによる特性解析が不可欠であ る。ただし、提案レクテナはアンテナと整流素子を集積した構造であるため、一般的 なアンテナの基礎特性解析のみではデバイスの特性を把握することは難しい。本章で は汎用物理シミュレーションソフトウェアである COMSOL MultiphysicsR(以下、

COMSOL)を用いた電磁界シミュレーションによって提案デバイスにおける特性解析

が可能となるように、先行研究[ 19]のモデルに則り解析モデルの構築を行う。

本章の構成を以下に示す。

3.2節では、本研究において使用するCOMSOL のモジュール及びその支配方程式 について述べる。

3.3節では、本研究における対象デバイス構造のモデリングと、材料特性の設定など について述べる。

3.4節では、対象デバイスの周波数領域における特性を把握するため、定常解析に向 けたモデル化を行い、設定条件や境界条件について述べる。

3.5節では、対象デバイスの検波特性を明らかにするため、時間領域における検波解 析に向けたモデル化を行い、設定条件や解析条件について述べる。

3.6節では、整流素子単体の解析モデルにおける定常解析の解析例を示す。

3.7節では、提案レクテナにおける本研究で対象とした電磁界解析における各種解析 例を示す。

3.8節では、デバイスの対抗解析モデルにおいて、ボウタイアンテナ単体モデルを対 象とした解析結果を示す。

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