大豆やその他の豆類に含まれる少糖頬を摂取した場合,ショ糖は直接消化酵素で,またガラクトシルサッカロ
・−スも腸内微生物のα−ガラクトシダーゼなどの酵素によって加水分解される・・−・方これら少糖炉分子の末端に
あるβ−フルクーシド結合は水素イオンにも触媒されて容易に加水分解されることが知られており(22),胃液が 強酸性であることからその影響が考えられる.
川村ら(107)はショ糖,ラフィノ1−ス,スタキか−スをそれぞれpHO..86,1ル10,2.10で370Cに保ったときの分 解率はラ・7ィノースの場合にそれぞれ45..2,32.9,4ul%であることを観察している・
胃液のpHはかなりの幅で変化するといわれているが正常人では絶食時2・2〜2 7,夜間は1・1〜2・6,食事中は 1.2〜2.0であるという(21).さらに胃壁で分泌される塩酸のpHは0〃87であるともいわれている(1吋そこで胃液 の酸濃度に近い塩酸酸性pHO.5〜3い0で体温(370C)に1.5,3,6時間保った場合のショ糖,ラフィノース,ス タキオ・−スの加水分解の程度を観察した.
6・1 実験方法
6・1・1 試料と加水分解の条件
スタキオ・−スは大豆より精製した(28)ものを用いたが他の少糖類および試薬煩ほ市販のものを用いた..
酸加水分解にあたり,あらかじめpHO.5,0..86,1.10,2.10,3 00の塩酸溶液を370Cに加温しておく・少糖類
(無水物)20mgを共栓試験管(¢15×100mm)に精秤し,これに塩酸溶液1‖Omほ加えて溶解し370Cに1・5,3・0,
6..0時間温暦するり所定の時間反応させたのち,直ちに中和に必要な畳(あらかじめ求めておく)の水酸化ナト リウム溶液を加え,さらにpHメータt−で正確にpH7..0とし,水を加えて10mJに定容したり
6・1・2 加水分解率の測定
空試験(塩酸溶液の代わりに.水を加えたもの)を含む還元糖含有量の少ないもの(pH2い1以上のもの)はその
−53−
まま,還元糖の多いもの(pIilい1以下のもの)は10倍に索釈したものから1・・Om′をとりSomogyi法(47)で還元糖
を定量した 同時に標準糖としてグルコース0〜200/唱を含む糖液および200〟gのラフィノースやスタキオ鵬ス がフルクトシド結合のみを分解した場合の分解率0い25,50,75,100%の加水分解物に相当する混合糖液(構成 糖分子比から算出して,ラフィノースの50%分解のときほ,ラフィノ・−ス100J唱,メリビオース67..2J唱,フル
クトース35.4〟gとなる.またスタキオ・−ス50%分解のときは,スタキフトース100〟g・,マンニノーリオ、−ス75.6
〟g,フルクトース27.0〟gとなる)についても同様に還元糖を測定し,これから各少糖類の分解率を算出した・
6・1・3 ペーパ1−クロマトグラフィー
還元糖測定の残液5.OmJをイオソ交換樹脂(Zeolit,混合)を用いて脱塩,濃縮(減圧,400C以下)して約0.5 mJにする.この濃縮液10〃Jを東洋濾紙No…50にスポットし,n−ブタノールービリジンー0..1Ⅳ塩酸(5:3:2)
で2回上昇展開し,クーアニ・ンジン試薬で発色して加水分解物を調べた・・
6・2 実験結果
6・2・1 加水分解物の還元糖の測定
それぞれ2%のショ糖,ラフィノース,スタキフトースをpHOい5,0.86,1い10,2.10,3い00でそれぞれ1.5,3..0,
6.0時間,370Cに加温した場合の還元糖の測定結果をTable6−1に示す(3例の平均値)
Table6−1ChangeSOfreducingpower(OD)afterhydrolysisofsucrose,
raffinose,andstachyoseatthepHrang・eOfgastricfluid
Incubation
(br) 050 0..86 1小10 2…10 300
15 0590 0.240 O 143 SucrOSe 30 0820 0.525 0310 60 0825 0785 O 656
0014 0 005
0.029 O 008 0.051 0016 1.5 0215 0117 0.068
Raffinose 3hO O500 0 222 0.129 6−0 0610 0415 0.259
0。006 0.002
0 012 0.003
0024 0.006 15 0.193 0..086 0.050
Stachyose 30 0 375 0」161 0098 60 0446 0342 O 200
0005 0.001 0010 O 002 0019 0.005 20mgOfoligOSaCCharidewashydrolysedinl.OmlofHCIsolutionat370C.
6・2・2 加水分解物のぺ−パ・−クロマトグラフィー
ラフィノースとスタキオ・−スを3時間,370Cに加温したものについてペー′く1一クロマトグラフィーを行ってみ
るとFigい6−1のようなスポトが認められた・pHO..5の場合にわずかにガラクトースの遊離がみられるが,グル コースやガラクトースのスポットは明確でないい スタキオース分子の両端のフルクトースとガラクトースのとれ たメリビフトースのスポットが微かに認められた・他のpHの場合にはいずれも残基,残糖で他のスポットはみら れなかった
6・2・3 混合糖液の還元糖の測定と遊離フルクトース割合の算出
ペーパークロマトグラフィーの結果からラフィノースやスタキオースからは主としてフルクトースの遊離が起
000(∴:〜0 0 ぐ二)ぐニ)
F「uc†ose
0。4
OL_ __ _....._.
PHO.5 0.861.10 2.10 ■ ′ ′ 0.5 0.861.10 2.10 RくIffinose S†qchyose
Figu6−1Paperchromatogramofhydr・Olyzates
Twenty mg of sug■arS Wereincubated in 1..OmlHClat370Cfor3hours.SoIventsystem:
n−butanoトpyridine−0.1NHCl(5:3:2),aS−
Cending(twice);Stainingreagent:P−anisi−
dine−HCl
ると考え,200〟gのラフィノースやスタキオースの分解
Fig.6−2 Mixedreducing・SugarS(ODat530 nm)correspondingtothehydroly−
Zate fromraffinose(△)or・StaChy−
OSe(口)
Themixlngratiosarebasedonl(氾%
hydrolysISi.e.totalfr・uCtOSe has been liber・atedandtheotherr・educing oligosa−
CCharideis melibiose or manninotriose,
respectively.
物に相当する糖混合液忙ついて還元糖を測定するとFig…6
−2のように分解割合に対して測定値が正比例する.そこでTable6−1の値からラフィノ・−スおよびスタキオ・−
スから遊離したフルクトースの割合(w/w)を算出した P=R/Mxl/NxlOO
P:もとの糖に対する遊離フルクトースの割合(%)
R:試料液還元糖測定の吸光度
M:試料液が完全にアルクトースを遊灘したものに相当する混合液還元糖の測定吸光度 N:試料糖の構成分子の単糖数(ラフィノース=3,スタキオース=4)
算出結果はTable6−2のようになった.・ラフィノースやスタキオースが上記のような加水分解3時間では,そ れぞれ0..7〜12.6,0.57〜9.3%の単糖(フルクトース)を遊離することになった
Table6−2 Therates(w/w%)offructoseliberatedf士・Omraffinoseor・StaChyose Incubation
(llr)
086 110 210 3。00 Raffinose l5 6−7 39 0 32 009
30 126 74 0.70 017 6−0 23.6 143 138 O 34 15 498 289 0−29 O 06
30 9 32 5.67 0.57 0.13
6,0 19.8 11 58 101 O 26
Stachyose
Ther・ateS(w/w%)ofliberated fructosewer・eCalculatedfromtheequationdescried in the text.
−55−
PH
2.1 l.1 0.86 0.5 6・3 考 察
胃液に相当するpHの塩酸溶液で少糖類を加水分解し た場合の還元糖の増加を塩酸濃度についてみるとFig…6
−3のようになるいこの塩酸濃度は塩酸が完全に解離する ものとして算出したものであるが,還葬糖が少ないとき は酸濃度に比例して直線となる−.また同一膿度のショ糖,
ラフィノ・−ス,スタキオ1−スのようにニ,三,四糖煩と なるに従って直線範囲にある還元糖畳が少なくなってい る小加水分解物のペーパークロマトグラフィーからガラ クトースの遊離はpHO..5以外ではみられない・・このよう なことから少糖類では構造的にショ糖を形成するβ−フ ルクトシド(またはα−グルコツド)とガラクトシド結 合部位とでは加水分解速度が大きく異なる.後者の場合 の分解速度が非常に小さく主としてフルクトースの遊離 のみが起るものと考えられるりまたシ。糖形成結合部位 は同一・濃度のショ糖,ラフィノース,スタキオ・−スでは それぞれ2/2,2/3,2/4 となる.したがって直線範
Fig∴・6−3Reducingsugarsvs・COnCentrationof HCI
Theconcentration was calculated from theoreticalvalueofpHaslOO%dissociation
ofHCl.Sucrose(●),Raffinose(△),Or Stachyose(□)wasincubatedforl.5(−−),3.0(−),Or・6uO(・一一−−−−)hours.
囲にある還元糖畳が少なくなることは,ショ糖残基の濃度が小さいためと考える.このこと以外にショ糖とラフ ィノースのフルクトシドの酸加水分解速度は後者が小さいがその差は大きいものではない(22)
消化酵素インベルク・−ゼはβ−フルクトンダ・−ゼでないのでガラクトシルサタカロースには全く作用しない・・
しかしTable6−2からラフィノー・スやスタキオ・−スが胃液中に3時間存在すれば,それぞれ0.7〜12.6,0…57〜臥3
%の糖(・7ルクーース)を遊離することになり胃酸によって直接加水分解(消化)しうることになるい またフル クトシル基の失われた還元性少糖類であるメリビオース(またはマンニノトリオース)は微生物のα−ガラクト シダ・−ゼによってガラクトー・スとグルコースに分解されるものと考える..この場合且cogiのα一ガラクトシダー
ゼの性質(3.2・2 11)などからフルクトースのとれた残基がもとの糖よりも容易に酵素作用を受け二次的な間接 的消化が容易となる小
6・4 要 約
大豆など豆類に含まれる少糖類のうち,その約半分あるいはそれ以上に相当するガラクトシルサッカロースは これを分解する消化酵素がないとされている.しかし胃液が酸性であるからこの少糖掛こなんらかの影響がある と考えた..そこで胃液に相当する塩酸酸性(pHO…5〜3..0)で370C,1一.5〜6,0時間この少糖類を加温してその変
化を還元糖の定量とペ・−/く−クロマトグラフィ・−で調べたい その結果,このような酸性ではフルクトースのみの 遊離が起り,胃液中に3時間存在するとしてラフィノースで0.7〜12一.6%,スタキオースで0・・57〜9」・3%のフルク
トースを遊離することになった…
−56一