第5章 2000 年以降の里親委託の増加をもたらしたもの
7. 考察
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媒介効果を検討した.ランダム効果モデルが採択され(χ2(4)=7.84,p=n.s),施設定員充 足率に有意な正の関連がみられた.また,虐待対応件数の有意な正の効果はやや増加した が,福祉司数の効果は有意ではあるものの大きく弱まった.相談対応件数比は有意な負の 効果を示し,福祉司一人あたりの相談対応件数比が減少すると,里親委託率が増加すると いう結果が示された.
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の児童相談所のみ,それも里親業務のみに従事する専任職員を置いている児童相談所はわ ずか10か所にすぎなかった.しかし,厚生労働省が2011年度に都道府県政令指定都市・
中核市を対象に行った調査では,すべての自治体に里親担当職員が置かれている(厚生労 働省雇用均等児童家庭局 2012)(ただしこれは,里親業務のみの専任職員だけではなく,
兼任の場合も含めており,かつ,両者の調査対象は同じではない).このことは,2000 年 以降里親専任職員の設置が進んだことを如実に示している.福祉司の増員は「里親担当」
とされる福祉司の設置を伴っており,この里親担当職員の設置が里親委託の伸展に効果を もたらした可能性がある.
役割過重の軽減化の効果は,福祉司の置かれた環境が劣悪なところでは,里親委託が伸 展しない状況があることを意味している.この点で福祉司の置かれている環境の改善を図 ることは重要であり,とくに自治体ごとの格差を解消していく必要は大きいと考えられる.
福祉司の労働環境の改善は,個別のケースに従来よりも時間を割くことを可能にしたと考 えられるが,それでもなお福祉司の業務量が過重である可能性は高く,今後も福祉司の労 働環境に注目していく必要は大きいだろう.
本章の分析においては,2000年以降の里親委託の伸展をもたらした要因は,児童虐待の 増加の直接的・間接的な効果であることが示された.児童虐待が増加したことにより養護 児数が増加し,その結果として施設への入所も里親への委託もともに増加した.けれども,
児童虐待の間接的な効果である福祉司数の増加とその労働環境改善の効果は,児童虐待の 増加という直接的な効果よりも大きい.これは里親委託にとって国の政策の果たす役割が 大きいことを意味するが,国が社会的養護を受ける子どもの福祉の発展のために理念的に 政策を変更したというよりは,国が現実の問題(児童虐待の急増)に対応した結果,意図 せざる結果として生じた可能性がある.児童虐待の社会的増加によって,さらに言えば,
それにより発生した急務の課題に対応せざるを得なくなった国の政策的対応によって,結 果的には,里親委託が増加したという可能性は否定できない.
2000年以降,里親委託率は増加したが,施設措置と比較すると,それでも国内の社会的 養護を受ける子どものうち1割強を占めるにすぎない.その比率は,先進諸外国の中では,
いまだに比較にもならない程度の比率である.2000年以降の里親委託率の増加が,里親委 託の質的な転換を示すものであるのならば,今後も里親委託が伸展していく可能性は十分 にあるが,そうでないのであれば,里親委託が再び減少していくことも考えられる.里親 委託は質的な変化を遂げつつあるのだろうか.この問題について,次章からは,福祉司や
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里親へのインタビュー調査を通じて,本質的な伸展なのか否か,また本質的な意味で変化 を妨げていることは何かを検討していきたい.
(付記)本章で用いたデータは厚生労働省から公開されている年次別のマクロデータ及び,
既存の統計資料の2次利用である.
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