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第 3 章 児童期における学力の発達的変化の検討

3.3 小学校 6 年間の学力変化の分析(2):変化パターンの類型化の試み

3.3.4 考察

本節では,山田(1990)の方法を応用することによって,算数,国語の6年間にわたる 学力の変化パターンの類型化を試みた。その結果,算数,国語ともに典型的なパターンと して,10パターンを見出すことができた。さらに,この10パターンのうち,一定型(図 3.3-11)と1学年上位・1年生型を除いた8パターンは,低学年に変化し,高学年は安定す るパターンと,逆に,低学年は安定し,高学年に変化するパターンの2つのグループに分 けることができた。かくして,予想通り,小学校6年間の学力の発達的変化には多様な変 化パターンが混在することが確認された。なお,典型的な10パターンの性別による人数を 比較すると,算数の2パターンで有意差が見られたが,いずれも比較的人数の少ないパタ ーンであった。このことから,男女差はほとんどないと考えられる。

算数,国語ともにもっとも多かったのは,偏差値の変動幅のレンジが10以内である一定 型であった。ただし,算数では32.6%,国語では58.6%であり,国語の方が算数よりも変 化しない者が多かった。この傾向は先行研究(Nakajima, 1969;丹藤,1989)と一致した。

-15 -10 -5 0 5 10 15

1年 2年 3年 4年 5年 6年

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このことから,算数と国語では割合が異なるものの,藤田(1995)が指摘した学業成績固 定化傾向は,相当数の児童において生じると考えられる。

学力が変化したパターンのうち,国語と算数で共通していたパターンは,1学年上位・1 年生型のパターンと低学年変化・高学年安定に分類された5パターンであった。このうち,

1学年上位・1年生型において見られる1年時の学力の著しい高さは,おそらくは,小学校 受験時の勉強による成果であったと推測される。受験勉強によって自分の平均的な学力水 準よりも一時的に高くなったが,その成果は1年で消失し,2年時以降は本来の学力水準 を戻ったのではないだろうか。この意味では,1学年上位・1年生型は,一定型の特殊ケー スとして分類すべきかもしれない。

低学年変化・高学年安定は,算数,国語ともに,1年生~3年生のいずれかの学年時に学 力を落とすが,4年生以降回復し,その水準を3年間維持するパターンである。これまで,

算数,国語は3年生から4年生にかけて学習遅滞が著しく増加することが報告され(天野・

黒須,1992;諸田,2004),いわゆる「9歳あるいは10歳の壁」の根拠としても引用され てきた(藤村,2011;黒田,2013など)。しかしながら,本研究の結果はこうした従来の 知見とは異なり,算数では100名(16.3%),国語では88名(14.4%)の児童が4年生以降,

学力を向上させ,6年生まで維持した。渡辺(2011)は,9歳,10歳は「峠」「壁」などネ ガティブに捉えられてきたが,発達上は,質的に「飛躍」できる年齢である可能性を指摘 しているが,本研究はこの主張を支持するものであった。

一方,低学年安定・高学年変化に分類された変化パターンをみると,算数と国語ではそ の様相が異なっていた。算数では,4年生から5年生で学力が著しく上昇するが,6年生で もその水準が維持される2学年上位・56年生型,4年生の水準まで急落する1学年上位・5 年生型,5 年生まではほぼ一定の水準で推移するが,6 年時に著しく学力を低下させる 1 学年下位・6年生型,の3つのパターンが見られた。第2章でも述べたように,研究協力 校の児童はほぼ全員が私立中学の受験をする。2学年上位・56年生型と1学年上位・5年 生型における5年時の学力の著しい上昇はそうした受験勉強の影響によるものと考えられ る。そして,2学年上位・56年生型が18名であるのに対して,1学年上位・5年生型は93 名であることから,受験勉強による一時的な学力向上の効果は,短期間で消失しやすい可 能性がある。あるいは,6年時の学力が著しく下がるのは,6年時のテストの実施時期が,

中学受験がおおむね終了した2月であることから,学習動機づけが著しく低下したからか もしれない。そして,1学年下位・6年生型における6年時の学力の著しい低下も同様の理 由ではないだろうか。いずれも推測の域でしかないので,これ以上の追及は差し控えたい が,前述した1 学年上位・1年生型の場合も含め,受験勉強が児童の学力の発達的変化に どのように影響し,その影響力がどのくらい持続するかについては,今後検討すべき課題 である。

国語においては,4年時,6年時でのみ著しく学力が上昇する1学年上位・4年生型,1

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学年上位・6年生型,5年時でのみ著しく低下する1学年下位・5年生型,の3つのパター ンが見られた。特定の学年で生じた一時的な状態であること,また,それ以外の学年の学 力はほぼ一定である点では共通しており,おそらくは,当該学年において,そうした状態 を作り出す何らかの固有の要因があると考えられる。例えば,研究協力校では漢字検定を 定期的に実施しており,その対策のための勉強による影響などである。これについても,

今後の検討課題である。

以上の通り,各パターンが生起する理由については,現段階では結論づけることはでき ない。しかし,本節の結果からは,学業成績が固定化される児童がいる一方で,特定の変 化パターンを踏んで固定化されない児童も一定数いることが明らかにされた。

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