第 5 章 総合的検討
5.1 学力を規定する諸要因の相互関連性の分析
5.1.3 結果
(1)前学年の学業成績が当該学年の学習コンピテンスに及ぼす影響
各学年の学習コンピテンス尺度得点と前学年時の算数偏差値,国語偏差値との相関を算 出した。表 5.1-1 に示す通り,すべての学年の学習コンピテンスと前学年時の学業成績の 間には,有意な正の相関が見られた。相関の強さは中程度であった。
表5.1-1 各学年の学習コンピテンス尺度得点と 前学年の算数偏差値,国語偏差値の相関
前学年の学業成績 算数偏差値 国語偏差値 4年 .669** .590**
5年 .563** .419**
6年 .463** .432**
**p<.01
この結果に基づき,学年ごとに,学習コンピテンス尺度得点を従属変数,前学年の算数 偏差値,国語偏差値を独立変数にして重回帰分析を行った。なお,付録8の付表8-1に示 した通り,算数偏差値と国語偏差値の間には有意な比較的強い相関が見られたが,付表8-2 に示した通り,VIFはすべて10未満であった。よって,多重共線性を考慮した解釈を行う 必要はないと判断した。
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各独立変数の標準偏回帰係数を見ると,表5.1-2に示す通り,いずれの学年の学習コン ピテンスに対しても,前学年時の算数偏差値のみが有意な正の影響を及ぼした。
表5.1-2 各学年の学習コンピテンス尺度得点を従属変数,
前学年時の算数偏差値,国語偏差値を独立変数にした重回帰分析の結果
4年 5年 6年
β β β
算数偏差値 .524** .492** .315*
国語偏差値 .189 .115 .210 R2 .462** .326** .237**
**p<.01 *p<.05 β:標準偏回帰係数
(2)学習コンピテンス,親の期待の受け止め方が動機づけに及ぼす影響
学年ごとに,学習コンピテンス,親の期待の受け止め方と,動機づけの各尺度・下位尺 度得点の相関係数を算出した。
学習コンピテンスと親の期待の肯定的な受け止めと,内的調整及び同一化調整との間に は一貫して有意な正の相関が見られた。また,学習コンピテンスと,4年時の取入調整,5,
6年時の外的調整との間には,有意な負の相関が見られた。
親の期待の否定的な受け止めと外的調整の間には一貫して有意な正の相関が見られた。
また,5年,6年の内的調整との間には有意な負の相関が見られた。
表5.1-3 各学年における学習コンピテンス尺度得点,親の期待の受け止め方の 2つの下位尺度得点と動機づけの4つの下位尺度得点との相関係数
内的調整 同一化調整 取入調整 外的調整 4年 学習コンピテンス .540** .470** -.202* -.175
肯定的受け止め .418** .381** .079 -.076 否定的受け止め -.078 -.048 .136 .349**
5年 学習コンピテンス .616** .309** -.170 -.305**
肯定的受け止め .401** .452** .207 -.171 否定的受け止め -.314** -.208 .227* .300**
6年 学習コンピテンス .628** .391** -.161 -.345**
肯定的受け止め .454** .700** .106 -.180 否定的受け止め -.288** -.105 .175 .268*
**p<.01 *p<.05
以上に基づき,動機づけの4つの下位尺度得点を従属変数,学習コンピテンス尺度得点 と親の期待の受け止め方の2つの下位尺度得点を独立変数にした重回帰分析を行った。な お,付録8の付表8-3に示した通り,独立変数の間には有意な中程度から比較的弱い相関 が見られたが,付表8-4に示した通り,VIFはすべて10未満であった。よって,多重共線 性を考慮した解釈を行う必要はないと判断した。
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各独立変数の標準偏回帰係数を見ると,表5.1-4に示す通り,まず,内的調整に対して は,4年生と6年生においては,学習コンピテンスと肯定的受け止めが有意な正の影響を 及ぼした。5年生においては,学習コンピテンスが有意な正の影響,否定的受け止めが有 意な負の影響を及ぼした。
同一化調整に対しては,4年生と6年生においては,学習コンピテンスと肯定的受け止 めが有意な正の影響を及ぼした。5年生においては,肯定的な受け止めのみが有意な正の 影響を及ぼした。
取入調整に対しては,4年生,5年生ともに,学習コンピテンスが有意な負の影響を,肯 定的な受け止めが有意な正の影響を,加えて,5年生では否定的な受け止めが有意な正の 影響を及ぼした。6年生では有意な回帰式は得られなかった。
外的調整に対しては,一貫して学習コンピテンスが有意な負の影響を及ぼした。また,4 年生と5年生では,否定的な受け止めが有意な正の影響を及ぼした。
表5.1-4 動機づけの4つの下位尺度得点を従属変数,学習コンピテンス尺度得点,
親の期待の受け止め方の2つの下位尺度得点を独立変数にした重回帰分析の結果 内的調整 同一化調整 取入調整 外的調整
β β β β
4年 学習コンピテンス .453** .384** -.296** -.213*
肯定的受け止め .232* .225* .211* .042 否定的受け止め -.084 -.050 .173 .366**
R2 .348** .268** .100* .162**
5年 学習コンピテンス .507** .104 -.289* -.237*
肯定的受け止め .153 .390** .358** -.038 否定的受け止め -.195* -.147 .205* .248*
R2 .435** .239** .170** .153**
6年 学習コンピテンス .519** .230** -.275*
肯定的受け止め .304** .644** -.086 否定的受け止め -.119 .032 .187
R2 .498** .537** .160**
**p<.01 *p<.05 β:標準偏回帰係数
(3)動機づけと知能が学習方略に及ぼす影響
動機づけの4つの下位尺度得点,知能偏差値と,学習方略の2つの下位尺度得点との相 関係数を算出した。その結果,表5.1-5に示す通り,動機づけの4つの下位尺度とプラン ニング方略,作業方略との相関は5,6年で同様であり,内的調整,同一化調整とは有意な 正の相関,取入調整とは有意な相関は見られず,外的調整とは有意な負の相関が見られた。
知能偏差値は,5年生の作業方略との間にのみ,有意な正の相関が見られた。
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表5.1-5 動機づけの4つの下位尺度得点,知能偏差値と,
学習方略の2つの下位尺度得点との相関係数 プランニング方略 作業方略 5年 内的調整 .519** .539**
同一化調整 .343** .307**
取入調整 -.090 -.086
外的調整 -.275* -.243*
知能偏差値 .201 .316**
6年 内的調整 .489** .478**
同一化調整 .509** .511**
取入調整 -.012 .042
外的調整 -.228* -.384**
知能偏差値 -.161 -.051
**p<.01 *p<.05
以上に基づき,学習方略の2つの下位尺度得点を従属変数に,動機づけの4つの下位尺 度得点,知能偏差値を独立変数にして重回帰分析を行った。なお,付録8の付表8-5に示 した通り,独立変数の間には有意な中程度から比較的弱い相関が見られたが,付表8-6に 示した通り,VIFはすべて10未満であった。よって,多重共線性を考慮した解釈を行う必 要はないと判断した。
各独立変数の標準偏回帰係数をみると,表 5.1-6 に示す通り,プランニング方略に対し ては,5年生では,内的調整のみが有意な正の影響を及ぼした。6年生では,同一化調整が 有意な正の影響を,知能が有意な負の影響を及ぼした。
作業方略に対しては,5年生では,内的調整と知能が有意な正の影響を及ぼした。6年生 では,同一化調整が正の影響を,外的調整が負の影響を及ぼした。
表5.1-6 学習方略の2つの下位尺度得点を従属変数,動機づけの4つの下位尺度得点と知 能偏差値を独立変数にした重回帰分析の結果
プランニング方略 作業方略
β β
5年 内的調整 .402** .460**
同一化調整 .146 .076
取入調整 -.030 -.019
外的調整 -.057 -.009
知能偏差値 .122 .237*
R2 .302** .350**
6年 内的調整 .258 .200
同一化調整 .370** .302*
取入調整 -.135 .093
外的調整 -.042 -.326**
知能偏差値 -.232* -.075
R2 .362** .385**
**p<.01 *p<.05 β:標準偏回帰係数
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