第 5 章 総合的検討
5.2 学力の変化パターンとの関連
5.2.1 目的
第3章では,学力の変化の典型パターンとして,国語,算数ともに10パターンずつを見 出した。ここでは,それらの違いがどの要因によって生じるかを可能な限り探索する。
5.2.2 方法
分析対象の選定 質問紙調査の対象者のうち,6 年間の算数と国語の偏差値に欠損値が なく,学力変化の典型パターンに分類された児童は,2007年度~2009年度入学者243名で あった。
各パターンの度数は表5.2-1 の通りである。このうち,質問紙調査の対象が4 年生以上 であることから,学力の変化が4年生以降に生じ,かつ,度数が少なくとも10人以上のも のを選定することとした。算数では,1学年上位・5年生型,1学年下位・6年生型が該当 した。一方,国語では該当するものがなかった。
分析の方針 図5.2-1のaに示す通り,1学年上位・5年生型は,1年~4年まではほぼ 一定であったが,5年時に著しく上昇し,6年時にそれまでの水準に戻るタイプである。こ の5年時の変化が何によって生じたのかを探ることが焦点となる。そこで,一定型を対照 群として,5 年時の動機づけ,学習コンピテンス,学習方略,親の期待の受け止め方を比 較する。
1学年下位・6年生型は,図5.2-1のbに示す通り,1年~5年までは一定に推移したが,
6年時に著しく下降するタイプである。これについても,一定型を対照群として,6年時の 動機づけ,学習コンピテンス,学習方略,親の期待の受け止め方を比較する。
表5.2-1 2007年度~2009年度入学者における学力の変化パターンの分布
算数 国語
変化パターン 度数 % 変化パターン 度数 % 1学年上位・5年生型 15 6.2 1学年上位・6年生型 6 2.5 1学年上位・1年生型 8 3.3 1学年上位・1年生型 3 1.2 2学年上位・56年生型 3 1.2 1学年上位・4年生型 7 2.9 3学年折半・456年生型 10 4.1 3学年折半・456年生型 3 1.2 2学年下位・12年生型 4 1.6 2学年下位・12年生型 2 0.8 1学年下位・2年生型 14 5.8 1学年下位・2年生型 8 3.3 1学年下位・6年生型 12 4.9 1学年下位・1年生型 8 3.3 1学年下位・3年生型 7 2.9 1学年下位・3年生型 7 2.9 1学年下位・1年生型 7 2.9 1学年下位・5年生型 4 1.6
一定型 87 35.8 一定型 150 61.7
その他 76 31.3 その他 45 18.5
合計 243 100.0 合計 243 100.0
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●:1学年上位・5年生型 〇:一定型 ●1学年下位・6年生型 〇一定型
a.1学年上位・5年生型のパターン b.1学年下位・6年生型のパターン 図5.2-1 分析対象とした算数の変化パターン
(縦軸は変換得点)
5.2.3 結果
(1)1 学年上位・5 年生型と一定型の比較
5 年時の動機づけ,学習コンピテンス,学習方略,親の期待の受け止め方の尺度得点に ついてt検定を行った。その結果,表5.2-2の通り,内的調整,学習コンピテンスでのみ有 意差が見られ,両者ともに1学年上位・5年生型の方が,一定型よりも有意に高い得点で あった。
表5.2-2 1学年上位・5年生型と一定型の内的調整,
学習コンピテンス(ともに5年時)の平均(M)と標準偏差(SD),t検定の結果 1学年上位・
5年生型 一定型 t検定の結果 内的調整 N 12 58 t(68)=2.83,p<.01
M 3.42 2.65
SD 0.81 0.87
学習コンピテンス N 11 57
M 33.73 29.68 t(66)=2.03,p<.01
SD 4.58 6.29
(2)1 学年下位・6 年生型と一定型の比較
6年時の動機づけ,学習コンピテンス,学習方略,親の期待の受け止め方の尺度得点に ついてt検定を行った。その結果,表5.2-3の通り,学習コンピテンスでのみ有意差が見ら れ,1学年下位・6年生型の方が,一定型よりも有意に低い得点であった。
-15 -10 -5 0 5 10 15
1年 2年 3年 4年 5年 6年
-15 -10 -5 0 5 10 15
1年 2年 3年 4年 5年 6年
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表5.2-3 1学年下位・6年生型と一定型の学習コンピテンス(6年時)の 平均(M)と標準偏差(SD),t検定の結果
1学年下位・
6年生型 一定型 t検定の結果 N 11 79 t(88)=3.45,p<.01
M 23.55 30.44
SD 5.77 6.27
5.2.4 考察
本節では,4 年生以降の算数の学力変化が特徴的な2つのパターンについて,一定型と 比較して,その規定要因を探った。
1年~4年まではほぼ一定で,5年時に著しく上昇し,6年時に4年時までの水準に戻る,
1学年上位・5年生型は,一定型よりも5年時の学習コンピテンスが高かった。また,1年
~5年までは一定に推移し,6年時に著しく下降する,1学年下位・6年生型は,一定型よ りも6年時の学習コンピテンスが低かった。このことから,両パターンに共通して,学習 コンピテンスが著しい変化の決定的な要因であることが示唆された。
この点に関しては,すでに,第4章において,知能とならび,学力と直接的に強い関連 性のある要因は,学習コンピテンスであることが明らかになったが,今回の結果は,それ と整合するものである。
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