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1.事前・事後調査結果の概要

 事前調査結果において、男女に有意差があったのは「先輩や大人からの薬物の誘いへ の対処の自己効力」であり、男子が断る自信が強かった。また、クラス別に有意差があ ったのは「友だちからの薬物の誘いへの対処の自己効力」についてであり、B組が断る

自信が強かった。しかし、他の項目については、男女差、クラス差が認められず、男女 差、クラス差はほとんどないと判断できた。

2.効果 1)態度

 成人時の喫煙意思については、男子では非喫煙の態度に改善傾向が見られたが、女子 では非喫煙の態度は授業により顕著に向上した。全体でも同様であった。事後調査にお いて非喫煙の態度を示した者の割合は、男子で8割弱、女子では9割弱の者が非喫煙の 態度を示した。したがって、授業により非喫煙の重要性が充分に認識されたといえる。

 成人時の飲酒意思については、男子では非飲酒の態度に改善傾向が見られたが、女子 では非飲酒の態度は授業により顕著に向上した。また、全体としては有意に変化した。

しかし、事後調査結果において非飲酒の態度を示した者の割合は、男女ともに4割強で あり、喫煙の場合と違い意識が低かった。

 生涯の薬物乱用の意思については、薬物は児童にとって触れる機会もないことから、

授業前でも全体で9割以上の者が非薬物乱用の態度を示しており、授業により女子では 全員が非薬物乱用の態度を示した。増加した割合は少なかったが、事前調査において高 い値を示したために、もともとの伸び幅が少なかったためであって、増加したことは評

価できる。

 喫煙の誘いへの対処の自己効力については、友だちからと先輩や大人からの誘いのい ずれにおいても、男女で大きく違いが見られた。女子では、有意に変化はしなかったも のも断る自信は微増した。しかし男子では、減少傾向が見られ期待とは異なる結果とな った。3時間目の授業で扱った内容だけに意外であった。ただし、先行研究の結果から も対処の自信を低下させることは容易であるが、高めるためには、内容や授業時間数な どに工夫が必要である。実際、1時間の授業で自己効力の向上を期待することは難しい とされている9)。本研究においても、時間数の少なさが一因と考えられえる。

 飲酒の誘いへの対処の自己効力については、友だちからと先輩や大人からの誘いのい ずれにおいても、授業後に男女ともに増加した。特に、先輩や大人からの飲酒の誘いを 断る自信は、女子において顕著に向上した。全体でも先輩や大人からの飲酒の誘いを断 る自信が向上した。飲酒は、児童にとって日常の生活の中で最も身近にある。正月行事 や祝い事や祭りの際に飲酒の行為があることや、飲酒の害についても社会的認知が低い ために、親などの身近な大人が勧めてくる場合も考えられ、断る自信を強めたことは意 義があった。

 薬物の誘いへの対処の自己効力については、友だちからと先輩や大人からの誘いのい ずれにおいても、生涯の薬物乱用の意思と同様に、全体で授業前でも全体で8〜9割の 者が断る自信を示しており、授業により先輩や大人からの薬物の誘いを断る自信は、男 女とも少しではあるが増加した。友だちからの薬物の誘いについては、男女ともに変化 が全くなかった。薬物は児童にとっては縁遠い存在であり、それを身近な友だちが誘う

ということは、現実性がなく実感しにくかったのであろうと思われる。

 ところで、誘いへの対処の学習にっいては、喫煙を取り上げて進めた。しかし、効果 を示したのが、喫煙ではなく飲酒であった。その理由については、今後検討をしていく 必要がある。

2)知識

 知識の習得においては、知識を持つ者の割合が男女とも授業により著しく増加した。

全ての知識項目の内で、男女ともに大きな増加が見られたのは、「たばこを吸い始める きっかけ」についてであり、3時間目の誘いへの対処法の学習内容であったことから、

授業の効果が大きく現れていると思われる。

 なかでも、飲酒の健康影響に関する知識の増加が顕著であったことは、事前調査段階 で飲酒の知識を挙げている児童が、男女ともに少なかったことに一因があると考えられ

る。特に女子は圧倒的に少なく、授業後には男子以上に増加した。

 全般的に飲酒については、喫煙に比べて有害性が社会的にも浸透していないことが、

児童の規範意識が低い背景にあると思われる。さらに詳しく各項目別に、回答内容にっ いて検討する。

 喫煙の健康影響では、男女ともに「息が臭くなる」や「歯が黒くなる」など授業で直 接扱った急性影響の中でも、より身近に感じられる項目が圧倒的に増えた。他にも「呼 吸機能への影響」なども授業で大きく取り上げた内容であり女子で大きく増えた。「依 存性がある』といったことは授業で初めて知ったようであった。すなわち、事前調査で は男子では全く挙がってなく、女子でも1人だけであった。事後調査で男女ともに大き く増えた。同様に、事後調査で初めて授業で扱った「思考力」の回答が見られた。また、

一般的にたばこの害で知られている「肺への影響」は、事前調査段階でも児童の回答は 多く見られた。事後調査でも多く挙がっていた。逆に、「死」や「がん」といった一般 的に即答できそうなものや「体に悪い」といった影響は、事後調査では全体で減少して いる。このことから、授業後に児童は学習したことにより、学習内容に則した知識の内 容が、より具体的なものに変化してきたことが考えられる。受動喫煙については、授業 で多く取り扱った内容だったが、全体的に減少してしまった。受動喫煙という言葉が、

 しかし、回答の具体性が進んだように見受けられる。すなわち、事前調査段階では、

「まわりの人のほうが害が大きい」、「まわりの人が煙を吸い肺を悪くする」、「まわりの 人ががんになりやすい」、rまわりの人の迷惑になる」といったものであった。一方、事 後調査では、まわりの人に影響があると回答した中に、「特に子どもには影響が強い」、

r自分は吸っていなくてもまわりで煙を吸うだけも吸ったことになる」など、より具体 的な回答内容に変わってきた。事後調査の感想の欄にも吸わない人にも害があることが 分かったとした者が数名いた。このことから、受動喫煙については児童の理解が深まら なかったとするには即断すぎるが、学習において理解につなげていくためには、インパ クトがあり児童の印象に残るような内容など、何らかの工夫が必要であると考えられる。

 飲酒の健康影響では、前述したように事前調査段階で飲酒の知識を挙げている児童が 男女ともに少なかったことで、事後調査では学習した内容が多く挙げられた。事前調査 段階では一般的によく知られている「酔う」といった大まかに捉えた回答から、事後調 査では、「身体に及ぼす急性影響」が男女とも多く挙げられた。具体的には、事前調査 段階ではr頭がクラクラする」やrボーっとなる」などの症状的な回答が多かった。事 後調査では、授業の内容を反映して「脳が麻痺する」や「脳が縮む」などの脳への影響 へと変化してきた。加えて、ビデオの内容に則した「赤い顔」、「事件・事故」、「思考力」、

「依存症」といった回答が、事後調査で初めて挙がってきた。授業の効果が大きく現れ ていると思われる。

 乱用される薬物では、事後調査において、女子では「シンナー」が圧倒的に増えたが、

男子では変化が少なかった。事前調査結果では、男女差が見られなかったことから、教 育効果の違いが示唆された。男子では事前調査段階でも誤答r健康影響」が多かったが 事後調査ではより多くなってしまった。女子では事前調査段階では同様に多かったが、

事後調査では大きく減少した。質問を丁寧に読むことで、女子のほうが誤答r健康影響」

を減らすことができたのであろうと思われる。事前調査段階で、女子は薬物名の隠語を

挙げていたが、男子はそういった傾向はなかった。しかし、事後調査では、男子、女子 ともに正式な薬物名が多く挙げられるようになった。とりわけ女子では顕著であった。

なお、覚せい剤の隠語であるエス(S)とかスピードなどの隠語が女子で増え、男子では 事後調査で初めて挙がってきた。これらは、ビデオで覚せい剤の隠語が紹介されたこと の影響が大きいと思われる。事前調査段階では、男子、女子ともに薬物のことを、世問 一般で「ドラック」と言っていることが影響して、誤答で「ドラック」を挙げていたが、

事後調査では男子で改善されたが、女子では改善されなかった。

 薬物乱用の健康や社会に及ぼす影響では、事後調査で、男女ともに「幻覚・幻聴」、「依 存症」、「事件・事故」といった回答が大きく増えた。これらは、ビデオで詳しく説明が されていたことであった。ビデオの効果によると考えられる。加えて事後調査で初めて、

「手足麻痺」、「意欲減退」、「生活への問題」といった回答がでてきたことも、同様に考 えられる。事前調査段階では「頭がおかしくなる」程度に理解していた内容が、事後調 査では「脳への影響」と学習内容を反映したものに変わってきた。

 たばこを吸い始めるきっかけでは、事前調査段階では、男女ともr興味・好奇心」、r依 存症」、「誰かが吸っていたから」、「不特定の人からの誘い」といった曖昧な回答内容で あったが、事後調査では、「友だちや先輩からの誘い」が急増し、具体的に学習内容を 反映したものになった。また、事後調査において、男女とも「ストレス」と回答したの が増えたことについては、学習活動においてワークシート教材として使用した「友だち からのプレッシャー」の影響が考えられる。断ることにプレッシャーを感じることを、

rストレス」を感じることと結びつけたのかもしれない。

 全般的に見て、男子と女子で回答数に大きく違いがあったのは、女子における喫煙の 健康影響であり、r臭い」、r歯が黒くなる」は、男子の2〜3倍回答していた。事前事後 の調査段階で女子は、薬物乱用の健康影響「歯がボロボロになる」を男子の2倍程度回

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