第5章 動圧グルーブ流体潤滑軸受用潤滑剤の劣化
5.5 考察
第5章 動圧グルーブ流体潤滑軸受用潤滑剤の劣化
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5.5.4 軸受内の温度分布
松岡らはHDDスピンドルモータに組み込まれた流体軸受部分の温度分布をコンピュ ータ解析,ならびに赤外線カメラにより実測している11).Fig.5-22はスラスト軸受部の 温度を赤外線カメラを用いて実測した際の模式図である.ステンレス製スラストプレー トと赤外線を透過するガラス部材で構成することにより,スラスト軸受部から放射され る赤外線の強度から微小領域の温度分布を測定したものである.
Fig.5-23 はこの手法により実測した温度(図中○印)とコンピュータ解析の結果(実線)
を示したもので解析値と実測値がよく一致していることがわかる.ラジアル軸受は
Fig.5-1 に示すよう周囲にスリーブがあるため実測が不可能なため解析のみの結果とな
る.Fig.5-24はFig.5-1の軸受部の拡大図である.動圧グルーブを内径面に持つスリーブ
が固定されたシャフトの周りを反時計方向に回転すると潤滑剤は動圧グルーブに沿っ て矢印の方向に集められ(ヘリングボーンの中心)圧力が上昇しシャフトを中心に軸受 スリーブが保持される.この時ヘリングボーンパターンの中心を頂点とした温度勾配が 生じる.
Fig.5-25 はコンピュータ解析による 20℃におけるラジアル軸受の温度分布を示した
ものである.ヘリングボーンパターンの中心を頂点とした温度勾配が生じている事がわ かる.
Fig.5-23 Lubricant temperature rise as function of bearing rotation speed
Fig.5-23 潤滑剤の温度上昇と軸受回転数の関係(出典:文献11)
Fig.5-24 Oil flow of hydrodynamic grooved bearings Fig.5-24 流体軸受内の潤滑剤の流れ
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5.5.5 マランゴニ効果の誘発
平野らが転がり軸受において EHL膜形成の際,温度勾配によりマランゴニ効果が影 響することを示している12).マランゴニ効果とは液体の表面張力や界面張力の局所的変 化により接線力が生じ液体内部に流動が誘起されるものである13).同一物質では温度が 低いほど表面張力が高く,類似した分子構造であれば高分子量物質のほうが表面張力は 高い.液体内部で温度勾配が生じるとマランゴニ効果が誘起され高分子量物質は表面張 力が高いため低温側に集中する.すなわち負荷を受けているEHL 膜内に低分子量物質 が移動することになる.
Fig.5-25は動圧グルーブを有する流体軸受の温度分布を示すもので,軸受内に温度勾
配が生じることがわかる.したがって流体軸受においても低粘度の低分子量物質が軸受 中心に集まる.それは気液境界部に蒸発しにくい高分子量物質が集まることとなり,低 粘度物質の残留率が高まり粘度上昇を抑えたと推測する.
本報では基油にDOSを用いた流体軸受用潤滑剤での実験データで考察を進めたが,
PAO や他のエステル系基油でも劣化時の反応で生成する低分子量物質や高分子量物質 がマランゴニ効果により同様の偏析が生じ,低粘度物質の残留率が高まり,モータ消費 電流値の増加が予測より少なくなったと判断する.
20 21 22 23 24
20.5 21.5 22.5 23.5 24.5
℃
10 0 5
-10 -5 -10 -5 0 5 10
mm mm
座標 座標
温 度
Fig.5-25 Temperature distribution in hydrodynamic grooved bearings Fig.5-25 流体軸受内の温度分布
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