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潤滑剤の飛散・流出

ドキュメント内 早稲田大学審査学位論文(博士) (ページ 93-97)

第5章 動圧グルーブ流体潤滑軸受用潤滑剤の劣化

5.2 流体軸受のトライボロジー課題

5.2.2 潤滑剤の飛散・流出

流体軸受における潤滑剤の飛散・流出の要因は「にじみ出し」,「バブル」,「衝撃」

である.

「にじみ出し」はフッ素系コーティング剤が有効であり,長期間放置条件での流出を 防いでくれる4)

「バブル」とは潤滑剤に溶解した空気等の気体であり,軸受内の圧力変動で発生した バブルを速やかに排出できる軸受構造とグルーブパターンで対応する.Fig.5-5 のよう にヘリングボーンパターンを外側の半分が長い非対称にすることで軸受すきまに充満 した潤滑剤を外へ流出することなく,内部に保持することが可能となり潤滑剤漏れが発 生しなくなる4)

Fig.5-6 はヘリングボーングルーブの角度,軸受長さと発生圧力の関係を示したグラ

フである.グルーブ角度は片側約30度が最大の発生圧力となる,また,軸受長さは長 い程発生圧力が高くなる.しかし気液境界面での空気の巻き込みと潤滑剤の漏れが生じ やすいことを実験ならびにシミュレーションにより確認し,グルーブ角度は20 度にす ることで潤滑剤漏れを防いでいる4)

Fig.5-5 Pumping seal

Fig.5-5 ポンピングシール(出典:文献 4)

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Fig.5-7 はエッチングでグルーブを設けたシャフトにアクリル製スリーブを組み合わ

せた観察用流体軸受である.潤滑剤は顔料により赤く着色している.前述のように上側 のヘリングボーングルーブはa>bの非対称になっている.(A)は停止状態の写真で①の 部分は潤滑剤で満たされているが部分的に気泡が入っている.また,②部分は上下グル ーブを分離する空隙であり,潤滑剤で満たされている.(B)は回転中の写真である.上 グルーブの a 側は b 側の圧力と均衡がとれる位置までしか潤滑剤で満たされないため (B)の①には潤滑剤がない.停止中にあった②の空隙部の潤滑剤はグルーブ内の気泡と 入れ替わったため空気の帯となっている.(A)と(B)は可逆的であり潤滑剤の流出がなく,

回転中には常にグルーブの有効長さを潤滑剤で満たしている.

Fig.5-6 Relations of a groove angle, bearing length and the pressure Fig.5-6 グルーブ角度,軸受長さと発生圧力の関係

A) B)

a

b ②

A) B)

a b

Fig.5-7 Photograph of the lubricant behavior in the bearing Fig.5-7 軸受内の潤滑剤挙動の写真

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89 非対称のヘリングボーングルーブにより潤滑剤の流出を防止できるが,それでも軸受 すきまから潤滑剤が流出することがあり,それに対応するため Fig.5-8 に示すようにシ ャフト側にテーパ形状の潤滑剤溜まり設けることが高速回転時に有効である.シャフト 側にテーパを加工しておくことにより,軸受が回転をはじめると,テーパ部にある潤滑 剤には遠心力が加わる.テーパ部の潤滑剤は壁面に沿った遠心力の分力Fが作用する.

1式においてmは潤滑剤質量,rは潤滑剤が付着している位置の半径,ωは回転時の角 速度でθはテーパの角度である.

F = mrω2sinθ (1)

この構造を用いることで,軸受すきまから離れた位置にある潤滑剤も軸受すきま内に 供給され,潤滑剤の流出を防いでいる4)

Fig.5-8 Centrifugal force seal Fig.5-8 遠心力シール(出典:文献 4)

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90 衝撃に対しては潤滑剤自身の持つ表面張力で十分に対応できる4).Fig.5-9は潤滑剤の 漏れが発生する際の落下衝撃値と軸受半径すきまの関係を示したものである.軸受直径

4mmのSUS420J2製シャフトとアクリル製スリーブからなる透明流体軸受モデルを作成

し,ゴムブロック式落下衝撃試験機を用いて最大加速度230Gまでの落下衝撃を加えた 際,軸受すきまの潤滑剤流出状態を確認したデータである.軸受半径すきまは20μm~ 100μmで実施した.Fig.5-9から半径すきまが20μm以下であれば230Gの衝撃でも潤 滑剤流出は生じない.実際の流体軸受の設計において,軸受半径すきまは 2μm~15μ mと十分に小さい範囲で設計されるため問題はない4)

Fig.5-9 Fall-impact resistance performance Fig.5-9 耐落下衝撃性能(出典:文献 4)

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