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 ネット上のコミュニケーション特性を考察・自覚する授業が、「影」への対処と して効果が見られるかを、事例をもとにした3つのテストを通じて検証した。これ らのことから、ネット上のコミュニケーション特性を考察・自覚する授業が、(A),

(B),(C)3つの事例に対する思考・判断・行動という具体的態度の向上に効果を及 ぼした可能性が伺えた。また、学習補助教材として開発したWe bコンテンツにつ いては、授業が円滑に行われたことから有用性が伺え、さらに電子掲示板を用いた 生徒自身による学習の整理が、長期的な記憶に結びっくことも示唆された。特に、

授業から1ヶ月後に行ったテスト(C)の自由記述からは、根拠を持った具体的な態 度の向上に結びついた可能性も伺えた。

 しかし、実験授業で取り扱った内容全てが効果的であったとは言い切れない。実 験授業3時間目で取り扱った〔質問5〕,〔質問6〕では、r議論に負けない」につ いては変化が見られたものの、他の項目では差がほとんどなかった。教室内という 制限された環境において自宅をイメージさせるのには、多少無理があったのかもし れない。さらに〔質問8〕,〔質問9〕では、「嘘をついても分かりにくい」という

ことからネット上のコミュニケーション特性を考察する機会の提供にはなったも のの、対面でのコミュニケーションでも嘘を見抜くことを容易ではないことから、

ネット上のコミュニケーションのみに原因を特定できない。また、実験授業4時間 目で取り扱う「文字表現」は、短時問のチャットに含まれる種類・量は限られてい るため、内容や実施方法として再検討の余地が残る。

 開発した教材に関しては、電子掲示板・アンケートシステムを中心として生徒同 士の相互作用を実現し、現実感のある学習が展開できたと考える。このことは、ネ ット上のコミュニケーション特性が身近に存在していることの認識につながった だけでなく、コミュニケーション特性から発生する「影」が身近に存在することの

自覚に結びっいたと考える。このことは、「影」への対処の3つのテスト(A),(B),

(C)の結果からも明らかである。また、テストの数値として高いものではなかった が、メタ的知識の育成につながる可能性が示唆されたものと捉える。

 現代社会において、インターネットを中心としたネットワークが絡んだ事件・事 故はあとを絶たない。しかも、ネットワークが生活に浸透するにつれ、事件・事故 は、時間や場所を問わず発生している。ネット上のコミュニケーションにおいても、

携帯電話利用者の増加、利用者層の拡大に伴い、発生する「影」は多岐に渡り罠に 陥る危険性もまた拡大している。今後も新たな「影」が発生することは容易に予想 されることからも、情報の授業において事例を個々に取り上げることは、一時的か

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つ部分的な効果にとどまる可能性が否定できない。

 そのような現状に対し本研究では、ネット上のコミュニケーション特性を考察・

自覚する授業が、ネット上の「影」に対応するための態度育成に効果的ではないか との仮説を立て取り組んできた。今後ネット上のコミュニケーションに接する頻度 や警戒感の分類による学習効果の違い、「影」に直面した際の状況の再定義を促す 学習内容、携帯電話での特性などについて検討し、より効果の高い学習内容・学習 環境開発を試みる必要がある。

 本研究は、ネット上でのコミュニケーションにおいては情報量が制限されている ことから、ネット上の「影」に着目して行ってきたが、詐欺など人の心理を悪用す る「騙し」は、ネット上に限らず対面を伴う現実の社会においても頻繁に存在する。

ヒューリスティクスやスクリプトは、ネットに限らず人が持つ情報を処理する手段 である。今後、人の推論についての先行研究をもとに広く考察していきたい。

 このように取り組むべき課題は多く残るが、これまでの研究成果をもとに継続的 に研究していくことで、これらの課題の追求と解決を目指し、授業における評価規 準・評価基準を作成した上で、教科「情報」の授業内容としての提案を目指したい。

 これにより、情報Cの教材にとどまらず情報Aや情報Bにおいての適用も検討さ れうる。情報Aにおいては、内容(2)「情報の収集・発信と情報機器の活用」のウ

「情報の収集・発信における問題点」において、情報社会で必要とされる心構えの 根拠として適用できる。また情報Bにおいては、内容(4)「情報社会を支える情報 技術」のウ「情報技術の進展が社会に及ぼす影響」の学習において、情報技術の進 展が社会に及ぼす影響の負の面としての適用や、情報技術を社会の発展に役立てる 上で、技術のみが先行せぬよう必要となる多角的視野の一面としての適用も考えら れる。さらに表5−1に示すように、教科「情報」のみならず公民科の科目「現代社 会」や「倫理」、家庭科の科目「家庭総合」や「生活技術」との関連を図ることに も発展しうる。このことが、教科「情報」を学習する意義をさらに高めることにつ ながるのではないか。

 また、情報セキュリティは3っの柱から成り立っていることからも、技術面の進 展による今まで以上に効果の高いサイバーパトロールの開発・整備や、それに連携 する法律の制定などを望むところである。同時に、新たな「影」に対して、情報の 提供、対策の公開といった迅速な対処や、被害者のための救済窓口の普及などによ る、より多くの人々が安心して利用できる情報社会が到来することを期待したい。

 以上、将来的展望を述べたところで、本論文を閉じることにする。

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表5・1 他教科との関連

教科・科目 内  容 関連事項

公民・ (2)現代の社会と人間とし高度情報化による社会生活の変化につい 現代社会 ての在り方生き方 ての理解と、現代社会における青年の生き

ア現代の社会生活と青 方についての自覚を深めさせる。

公民・倫理 (2)現代と倫理 人間の尊厳と生命への畏敬、科学技術と人 イ 現代に生きる人間の 間とのかかわりについて、倫理的な見方や 倫理 考え方を身に付けさせ、自己の生き方にか

かわる課題として考えを深めさせる。

公民・倫理 (2)現代と倫理 生命、情報社会における倫理的課題を、自 ウ現代の諸課題と倫理 己の課題とつなげて追求させ、現代に生き る人間としての在り方生き方について自 覚を深めさせる。

家庭・ (1)人の一生と家族・家庭 生涯発達の視点で各ライフステージの特 家庭総合 ア人の一生と発達課題 徴と課題について理解させ、青年期の課題

である自立について認識させる。

家庭・ (3)家庭生活と技術革新 高度情報通信社会と家庭生活とのかかわ

生活技術 イ家庭生活と情報 りについて理解させる。

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謝辞

 本研究を進めるにあたり、兵庫教育大学大学院での2年間、始終懇切丁寧にご指 導いただきました長瀬久明先生に深く感謝するとともに、心から御礼申し上げます。

先生の親切かっ的確なご助言とご支援なくしては、修士論文として本研究をまとめ ることはできなかったであろうと心より感謝と敬意を表します。

 さらに、研究を進めるにあたり、貴重なご指導と温かい励ましをいただきました 成田滋・和子先生に深く感謝し、御礼申し上げます。また本研究において幾度とな く貴重なご指摘やご助言を賜りました、教育方法講座の正司和彦先生、総合学習系 教育講座の伊奈諭先生、森広浩一郎先生をはじめとする各ゼミ院生諸氏、相談者で あり良きアドバイザーであった成田ゼミ院生諸氏に対し、感謝と御礼申し上げます。

 特に、昼夜を問わず共に勉学・ゼミ・研究に励み、公私を問わず悩みや課題を自 分のことのように考えて下さり、適切な助言と前向きな意見を提供し続けてくれた 親友澤村賢隆氏には、心より深く感謝し、御礼申し上げます。

 授業を担当してくださり新たなる知識と教養を培っていただきました総合学習 系教育の諸先生方をはじめ、ともに情報交換しながら研究を進めてきた総合学習系 院生諸氏に対しても深く御礼申し上げます。皆様が私に与えて下さった、ここでの 2年間の生活の中で培った豊富な知識と体験は、必ずや現場での教育活動に生かさ れるものと信じております。このような経験は私にとって非常に意義深いものであ

ったと言えます。

 終わりになりましたが、このような貴重な研修の機会を与えて下さいました鹿児 島県教育委員会、鹿児島県立大島高等学校の皆様方、ならびに授業実践に快くご協 力下さいました山下清實校長ならびに諸先生方にも深く感謝申し上げます。

 そして、誰よりも私の心の支えとなりよき理解者であった妻ひとみと、誰よりも 力強い応援をくれた娘のひろな、息子の龍成に対し、深く感謝すると共に心から御 礼を述べたいと思います。

 本当にありがとう  。

2005年12月20日

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