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 ここでは、ネット上のコミュニケーション特性を考察・自覚するためにはどのよ うな授業が考えられるかを念頭に行った、実験群を対象とする実験授業を示す。こ の実験授業により、第3章で示した授業構想の有効性と、開発したWe bコンテン ツの有用性を分析し、r情報C」の授業実践に結びつけるものとしたい。

 まず4−1節では、実際に行った授業内容を示し、4−2節では授業後に行った アンケートの結果から授業前後での意識の変化を見る。そして4−3節では、実験 授業が「影」への対処として有効であったかを確かめた、テスト内容と結果を示す。

4−1 実験授業の内容

 実験群3クラスに対して行う実験授業(以下、単に実験授業)は表4−1のような 4時問の内容とする。以下の4−1−1〜4−1−4項では、それらの具体的な授業の流 れを示しながら、アンケートシステムによる生徒の反応を記すとともに、授業実践

として適切な内容であったかを考察していく。また4−1−5項では、教科書記載内容 を中心とした統制群の授業内容を示す。

表4−1 4時間の授業内容

授業の主な内容 コミュニケーション特性

1

「思い込み」を自己内省するため、メールを利

した誤解体験の授業 文字情報

2

伝達手段が制限されたコミュニケーションと

、どのようなことかを体験する授業

匿名性 字情報

3

匿名の相手とのコミュニケーションにおける心 的傾向を認識させる授業

匿名性

室性・親密性

4

心理の違いが文字表現に現れることを認識させ 授業

文字情報

室性・親密性 己開示性

4−1刊 実験授業1時間目一思い込みを自己内省する場面一

3章で述べたように、ネット上のコミュニケーションにおけるトラブルに対し、

一56一

半数近くの生徒は危険性を認識しておらず、誘導される可能性については7割の生 徒が心配はないと回答している。そこで授業の動機づけとして、メールのやりとり を通して、誤解を招く可能性があること(相手の気持ちを汲み取ることの難しさ)

を実感させることを目指す。実験授業1時間目では、メールの内容から相手の気持 ちをくみ取り、誤解のない返信ができるかどうかを見る。このことは、誤解の生じ やすさを自覚させるためである。授業の流れを図4−1に示し、授業に用いた指導案 を、本4−1−1項の最後に表4−2として示す。

(グループA)

進路相談メールの作成

(グループB) (グループC)

相談メールヘの返信 相談メールヘの返信

誤解に対する注意は 誤解に対する注意を

促さない 促す

(グループA)

返信内容の検討と 結果のアンケート入力

(グループA,B,C全員) 各自結果の検討・考察

(グループA,B,C全員)

《実験1群》 考察した内容の口頭による発表・共有

《実験2群》 考察した内容の電子掲示板による発表・共有

図4−1 実験授業1時間目の流れ

 クラス内の生徒を人数および性別が均等になるような、A,B,C3グループに 分け、メールのやりとりを一度だけ行う。このメールのやりとりでは、グループB,

Cの生徒がグループAの複数の人からメールを受け取ることがないようにすると ともに、メールアドレスをランダムに割り振り、お互いにメールの相手が誰である かが明らかにならないようにした。

一57一

 授業の流れを詳しく述べる。まずグループAの生徒に、図4−2のような指示を与 える。グループAの生徒が、予め指定したグループBとCの生徒のメールアドレス ヘ作成したメールを送信した後、グループBとCの生徒は、メール内容をよく読ん でグループAの生徒に返信する。その際、グループBとCの生徒には図4−3,4−4 のような指示を与える。

あなたは将来のことで悩んでいるとします。

あなたは看護士になるか、教師になるかで悩んでいます。

看護士は小さいころからの夢でした。

英語が得意なので、英語の先生になることを、最近考え始めました。

あなたは、「自分では決めきれず、他の人の意見を知りたいと思った。」

とします。

次の流れに従って、グループBの人とグループCの人に同じ内容のメールを 送信してください。

1.あなたの悩みに対して、相手から、「OOOというアドバイスがもらえ   るといいな」という内容を決めてください。

2.次に、「000というアドバイスがもらえる」ような、悩みを相談する   メールを作成してください。

3.グループBの人とグループCの人に、同じ内容のメールを送信してくだ   さい。ただし、自分の名前は書かないでください。

図4・2 グループAへの指示内容

メールが届いたら、そのメールの内容をよく読んで、グループAの人に返事 を送ってください。

図4・3 グループBへの指示内容

メールが届いたら、そのメールの内容をよく読んで、グループAの人に返事 を送ってください。ただし、送り主の気持ちを誤解したり、送り主に誤解を 与えたりしないよう、よく見直してから送ってください。

図4・4 グループCへの指示内容

一58一

すなわちグループB,Cに対する指示の違いは、誤解に対する注意を促したか否か

だけである。

 グループB,Cからの返信をグループAの生徒が受信した後、グループAの生徒 は返信内容の検討を行い、その検討結果をもとに次のアンケートに回答する。

 〔質問1〕こちらの悩みを誤解無く正しく理解し、返信してきたのはどちらのグ      ループでしたか。

   (選択肢1)どちらかと言えばグループBのほうが誤解無く正しく理解して          いた

   (選択肢2)どちらかと言えばグループCのほうが誤解無く正しく理解して          いた

   (選択肢3)どちらも正しく理解していなかった    (選択肢4)どちらも正しく理解していた

授業を行った3クラスのアンケート入力結果は図4−5のとおりであった。なお、実 験2群には2クラスが該当するため、2群一1,2群一2と表している。

(%)

70 60 50 40 30 20 10

0

Bのほうが○

圃実験1群

■実験2群一1

□実験2群一2

CのほうがO どちらも× どちらもO

図4・5 質問1の回答結果

当初、「Cのほうが誤解無く正しく理解している」との回答が明らかに多くなると 予想していたが、実際には1クラスでBのほうが多くなった。他の2クラスではC のほうが多くなったものの、誤解に対する注意を促しただけでは、誤解のないやり

とりを行うには十分ではないことが伺えた。それでも、「どちらも正しく理解して いた」という結果は多いクラスであっても3割に満たず、誤解が発生しやすいこと

 一

9

四︶ 一

を裏付けるものとなった。

 その後、アンケート結果をもとに各自が検討・考察する時間を設ける。実験1群 では、考察した内容の口頭による発表とクラス内での共有を行い、実験2群では、

考察した内容の電子掲示板による発表と相互作用による意見の共有を行い、授業を

まとめる。

 1時間目の実験授業によって、ネット上のコミュニケーション特性の「文字情報」

に関わる、多くの情報が制限され、こちらの意図するところが伝わりにくいという 性質を経験できたと考える。最後のまとめでは、次のような意見が見られた。

 ・相手の思いを誤解しないように注意しても、文字から相手の気持ちを汲み取る   のは難しい。(グループA,B,C)

 ・文字だけでこちらの思いを誤解されないように伝えるのは難しい。(グループ   A)

 ・自分の考えをしっかり受け取ってくれたのはグループOだった。(グループA)

 ・自分の考えを述べてしまい、相手が何を求めているのか考えなかった。(グル   ープB)

 ・相手の気持ちを考えてOOOというアドバイスをした。アンケートを見るとグ   ループCのほうが良い結果だったので安心した。(グループC・実験2群)

 ・相手の気持ちを考えてOOOというアドバイスをした。アンケートを見るとグ   ループBのほうが良い結果だったので気持ちを汲み取ることの難しさを実感   した。(グループC・実験1群)

これらの意見から、誤解を招く可能性があること(相手の気持ちを汲み取ることの 難しさ)を実感させられたものと考える。このことは、後述する事後アンケートの 結果(杢2−1項)からも伺える。

表4・2 実験群の授業内容(1時間目)

時 間

導 入

学 習 活 動 出席確認

事前アンケート2の実施

ネット心中の記事を引用し、rなぜこの事件はおこってしまっ たのか」を考えさせる。

・ 配布した新聞記事以外で、2003年3月16日に山梨県  上九一色村で「ネット自殺」未遂事件が起こり、自殺をは  かった一人の男性が、「ネット上で止めるっもりだったの  が、気づいたら仲間に引き込まれていた」と語った。

・ インターネット上で人はどんな心理状態になるのか。

指導上の留意点

原因の1つに、情報通信ネットワー ク上のコミュニケーションが関わっ ていることを引き出す。

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時 間

展 開

まとめ

学 習 活 動

・社会的タブーである話題さえできるネット社会で、知識だ   けで危険を回避できるのか。

・ インターネットのコミュニケーション特性とは何か。

本時の学習目標を掲げる。

これからいくつかの実験を行うことを伝え、実験中の注意点 を述べる。また、コミュニケーションにおけるモラル・マナ ーについて述べる。

OutlookExpressの起動

【実験1】これからメールのやりとりを行ってもらいます。

ただし、メールを送るのは、1回限りとします。

(配布用紙1)の配布

 用紙をよく読んで書いてある内容に従って作業を開始して

 下さい。

グループAのメールを、グループB,Cに同時配信する。

グループB,Cは、メールの返信をグループAに送信する。

グループAはアンケートに回答する。

グループA,B,Cそれぞれ、どのような気持ちからの内容 であるか、掲示板に書き込む。

実験1の結果を分析する。

(1)アンケート結果

 グループAの人にとって、どのメールが適切だったのかを  アンケート結果から読み取る。

(2)グループAの掲示板を開き、考えを見る。

(3)グループBの掲示板を開き、考えを見る。

(4)グループCの掲示板を開き、考えを見る。

《実験1群》

これらのアンケート結果および掲示板の記録から、重要な点 は何だと思われるか考え、何人かに発表を促し、発表のあっ た何人かの意見をもとに、まとめを述べる。

(<実験2群》

これらのアンケート結果および掲示板の記録から、重要な点 は何だと思われるか、掲示板【実験1】に入力させ、掲示板

【実験1】の書き込みをもとに、まとめを述べる。

指導上の留意点

目標に関連して、電子掲示板に自分 の考えを積極的に書き込んでもらう ことを伝える。

実験中には、近隣の友人を含め、コ ミュニケーションを行わないように 留意させる。

ネチケットの存在,チェーンメール の禁止,適切な件名の記述,発言に 対する責任,プライバシーへの配慮

B,Cは待っている間、新聞記事を 読んでおく。

Aは待っている問、新聞記事を読ん

でおく。

グループAには、返事の量ではなく、

「こちらの悩みを誤解なく正しく理 解したのはどちらか」という視点で 判断させる。

グループBとCの違いを述べる。

単に数値比較結果を見るのではな く、その背景を考えさせる。

これらのアンケートや意見(掲示板 の内容)から、必ずしもこちらの思 ったとおりの返事がくるとは限ら ず、誤解も生じうる可能性があるこ とを気付かせる。また、より誤解を 生じにくくするには、どうすればよ いのか具体的な態度まで考えさせ

る。

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