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6・−1空間的に散在する個体群の動態における外敵,餌,および営巣場所の役割   

Elton(1949,1966)は,植物および動物一般における自然条件下での個体群の存在様式は空間的に散在したも   のであることを豊富な実例をあげることにより指摘した。本研究はこの点に関して,空間的に散在した分布をも   つカリバチ類各種の各小生息場所における個体数が,①小生息場所への外敵の攻撃様式,②小生息場所周辺の餌   資源の豊富さ,の2つの要因によって大きく左右されて.■いることを示した。   

本研究であつかった借坑性および築造性カリバチ類の自然状態での営巣場所は,木本炉の幹部や枝部濫開口し   ている甲虫頬の脱出坑,およびイネ科植物などの折れた茎内部などであり,本調査他におけるカリバチ類の小生   息場所の空間分布は,自然状態でのかれらの小生息場所の分布とおおむね同様であったものと考えられる。   

空間的に.散在した小生息場所を動物がどのように選択するかについては,Fretwell&Lucas(1970)および   Fretwe11(1972)によってはじめて定式化された。彼らのモデルは,小生息場所の好適度が密度依存的に悪化する  

ような状況では,個体ほ移動分散することによって,より好適度の高い小生息場所を選択しようとするという仮   定にもとづいている。。この結果,各小生息場所における個体の適応度ほ同じになるはずであることをかれらは   予測した?このようなことは,定性的にはすでに森下(1952)やKluiiver&Tinbergen(1953)らによっても指摘   されていたことである。最近,Fretwe11らの仮説を検証する研究がいくつか報告されているが(たとえば  

Whitham,1978;Messier,Virgl&Marinelli,1990など),それらはいずれも小生息場所の好適度の密度依存的な悪   化が資源をめぐる種内競争による場合をあつかっており,本研究のように寄生圧が密度依存的な悪化をもたらし  

ている場合についてこは従来報告がない。そこでここでは,まず各小生息場所におけるカリバチの個体数に対し   て,寄生圧および餌資源急がそれぞれどのような影響をおよぼしていたかについて,より一般的な観点から検討   してみたい。   

第3章において詳しく述べたように,外敵による攻撃は各小生息場所におけるカリバチ個体数に対しておおむ   ね密度依存的に働いていた。この結果,5種9世代中4種7世代で,卵から羽化成虫までの生存率は,密度依存   的に低下していた(表3−17,3−19,および3−21を参照)。また,各小生息場所におけるハチ雌成虫の採餌効   率は,周囲の餌条件によっておもに規定される−・方で,営巣個体数が増えると採餌効率が下がるというような密   度依存性ほ認められなかった(表4−12および図4−26を参照)。   

この二つの要因がカリバチ煩の個体群動態におよぼす複合作用について検討するために,図6−1に餌条件の   異なる3種焦の小生息場所におけるカリバチ類の営巣個体数と,生渡産卵数,卵から成虫までの生存率,および   純増殖率との関係を模式的に示した。まず,餌条件のよい場所ほど1卵に給餌するための餌を集めきってしまう   までの時間が短かかったことから,そのような場所での生海産卵数は多いことが期待できる。ただし,これには   雌成虫の産卵能力自体によって上限が存在することはいうまでもない。次に,どの小生息場所においてもカリパ   テ・頬の営巣個体数が増えるほど寄生率が増大し,生存率は下がっていた。この結果,生海産卵数と卵から成虫ま   での生存率を乗じた純増確率Roと営巣個体数との関係は図の右のようになり,Fretwell&Lucas(1970)の理想   自由分布を表わす図と同じものになった。各小生息場所における平衡個体数ElおよびE2はRo=1の直線との交点   であり,実際の営巣個体数はこの平衡個体数のまわりで変動していたものと考えられる。Emaxは,ハチの産卵速   度に上限があるため,餌条件がどんなによい場所でも,また営巣場所(竹)がどれだけたくさんある場所でも,  

これ以上の平衡個体数は得られないことを示しているも   

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題意嘲岩剃   静潔癖悪  

\⁚﹂  

陽性羽eP髄召撃小∧空戦  

営巣個体数  

図6−−1 餌条件の異なる3種類の小生息場所における営巣個体数と,産卵   数,生存率および純増殖率との関係。本文参照。   

Fretwell&Lucas(1970)のモデルがそうであったように,ここでもハチはその小生息場所の価値に関して全   知であることが仮定されている。すなわち,小生息場所の周囲の餌条件および小生息場所における外敵の攻撃頻   度についての情報をすべて知った上でハチは生息場所を選択していることが期待されている。しかし,実際には   ハチが巣を作り始める前に周囲を探索することによりこれらの情報を収集している徽供は認められなかった。お   そらく,ハチは営巣を始めてから数日の間に,経験的に小生息場所の好適度を認識するのであろう。つまり,図   6−1に示したようなメカニズムで小生息場所選択がおこなわれるのは,実際にはハチが営巣をはじめてしばら   くたってからであろう。小生息場所の好適度が低い場合,具体的には,①餌あるいは外敵に関する条件がきわめ   て悪いため,営巣途中で巣を放棄して移出したり,②巣への産卵および給餌終了後,次の巣は別の小生息場所で   作ったりする,などの選択がなされるであろう。実際に,①がおこったと思われる例は,特に周囲の餌条件が悪   い場所で認められ,泥で巣を築造した直後巣を放棄する場合や,給餌途中の巣を放棄する場合が多く観察された。  

また,寄生者の産卵を受けた場合,育児室の内容物をすべて巣外へ捨てた後,巣自体を放棄し,移出する例もオ  オフタオビにおいて認められた。同じ例は,岩田(1975)によっても報告されている。②に関しては,囲2−28   で顕著に認められたように,営巣個体数の少ない(餌条件の悪い)小生息場所ほど連続して営巣がおこなわれる   確率が低かった。   

以上のモデルから予測されることとして,ハチの各小生息場所における平衡個体数はその場所の餌条件に応じ   てさまざまの億をとるということがあげられる。図6−2は,オオカバフの各小生息場所における1年間の累療   産卵数の頻度分布を示したものである。各小生息場所は,数十年にわたって継続的に稲城竹が存在している場所   

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完成育児室数  

図6−2 オオカバフスジドロバチの各小生息場所における完成育児室数の頻   度分布(1983年)。  

であった。羊のことと,1978年に設定された小生息場所(st8)において,約6年間で営巣数が平衡点近くまで達   したこと(図2−14および2−15),および小生息場所ごとの年次的な個体数変動幅は小さかったこと(囲2−1   4および2−15を参照)などから,図6−2に示されたオオカバフの営巣数は各小生息場所における平衡個体数   をほぼあらわしているものと考えられる。さて,この図をみると,年間累積産卵数のレベルによって小生息場所   はいくつかのグル・−プに分けられることがわかる。まず,ほとんどの小生息場所は産卵数が5以下のグループに   属していた。このような小生息場所は,第4章でみたようにほとんど周囲に広葉樹林が存在していない,餌条件   の悪い場所であった。営巣を始めてもハチはすぐに移出したものと思われる。産卵数が5〜25程度の小生息場所   は餌条件が多少とも良好で例年ハチの営巣がみられたが,寄生老の密度依存的作用のためにこれ以上の個体数レ   ベルには到達し得なかった場所である。−・方,注目すべきは,産卵数が25以上であった5ヶ所の小生息場所であ   る。これらの場所はいずれも共通した特徴をもっていた。すなわち,①稲城竹小屋内における稲城竹の設置のし   かたが,竹の切口(オオ・カバフの営巣場所)がほぼ同じ平面にそろうような−般的な置きかたではなく,切口が   小屋内で3次元的に散らばった形で設際してあるか,もしくは(診設置してある稲城竹の切口周辺に草本植物がお   おいかぶさるように繁茂していた。このような状況下では,寄生者の攻撃は空間的に分断され,その寄生圧のか   かりかたは,あたかもいくつかのハチの小生息場所が近接して存在しているときのようなものであったものと予   想される。この結果,これらの小生息場所ではハチの個体数が通常の小生息場所よりも高いレベルまで到達して   いたのであろう。以上のように,図6−1から予測された平衡個体数の場所間での変異は実際にも認められたこ   とになる。   

次に,オオカバフの地域個体群全体の個体数を規定する要因としての小生息場所数の問題について触れる。図   6−2から予測されるように,地域内,特に餌条件のよい場所にもっと多くの小生息場所が存在すると仮定すれ