1.2 建設投資の中長期予測に係る予測手法の策定
1.2.6 維持・修繕
(1) 維持・修繕の定義
維持・修繕については、国土交通省「建設工事施工統計」における定義を採用する。つ まり、「経常的な補修工事、改装工事、移転工事、災害復旧工事及び区画線設置等の工事(作 業)など、既存の構造物及び付属設備の従前の機能を保つために行う建設工事」を指し、
点検、清掃、調査などの工事を伴わない維持管理業務や除雪作業等のみの発注は含まない ものとする38。老朽化に伴い機能が低下した施設等を取り替え、同程度の機能へ再整備す る等に要する費用である更新費や耐震改修などの機能を従前の水準以上に向上させる工事 に要する費用は含まない39。
(2) 維持・修繕市場の動向
近年の新設及び維持・修繕の動向を振り返ると、実額ほぼ横ばいを維持しているが、2011 年度以降は増加傾向がみられる。一方、新設の減少に伴い、全体額に占める維持・修繕額 の割合(以下「維持・修繕比率」という。)は上昇傾向にあり、2003年に23.0%であった が、2013年度には28.4%と5.4%ポイント上昇している(図表1-2-77)。
図表1-2-77 新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
442,547 434,813 405,801 401,351 392,302 386,093
330,342 345,931 326,646 328,170 374,048 132,050 127,006
127,876 131,415 129,461 132,037
124,425 124,035 138,595 142,690 148,694 23.0% 22.6%
24.0% 24.7% 24.8% 25.5% 27.4% 26.4%
29.8% 30.3%
28.4%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(億円)
(年度)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
38 同統計においては、「新設工事(構造物を新たに建設し、もしくは増改築・改良する工事をいい、災 害を契機とする改良復旧工事及び除却・解体・耐震改修工事を含む。)以外の工事」を指し、既存の 構造物及び付属設備の従前の機能を保つために行う経常的な補修工事、改装工事、移転工事、災害復 旧工事及び区画線設置等の工事(作業)を含むこととしている。ただし、同統計では建設業者に対し て新設工事及び維持・修繕工事の別の完成工事高を調査しているが、受注した建設工事が新設工事と 維持・修繕工事の双方を含む場合は主たる内容により区分される。
39 建築において、バリアフリー改修や省エネ改修等の工事のうち増改築にあたらないものについては維 持・修繕に含まれる。
(3) 予測の考え方
①政府(土木・住宅、非住宅)
政府部門における維持・修繕額40については、土木、住宅、非住宅の種類毎に、「建設工 事施工統計」(国土交通省)のデータを用いて、政府建設投資額に占める維持修繕比率の上 昇傾向から算出される近似式から、将来の維持・修繕比率を算定し、政府建設投資額に乗 じることにより、維持・修繕額を予測する41。
a) 維持・修繕比率の予測
○政府土木
図表1-2-78のとおり、政府土木における維持・修繕額は、2005年度~2008年度に一時
的に減少したが、その後2兆円前後の水準で安定している。一方、維持・修繕比率は、新 設の減少に伴い、ここ10年間は上昇傾向にある。
図表1-2-78 政府土木における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
11,117,283 9,879,717
8,572,877
7,764,978 7,488,282 7,101,862 7,199,193 6,728,561 6,072,991 6,216,625 6,744,317 2,350,434
2,047,705
1,961,064
1,894,856 1,712,781
1,769,274 2,063,661 1,899,960
1,948,507 2,158,685 2,424,032 17.5%
17.2%
18.6% 19.6%
18.6%
19.9%
22.3%
22.0%
24.3%
25.8% 26.4%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(百万円)
(年度)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
2004年度以降の維持・修繕比率の推移について対数近似を行い、将来の維持修繕比率を 推計した結果、2020年度に26.6%、2025年度に27.6%、2030年度に28.4%となった。
40 現在、政府において社会資本の老朽化対策として公共インフラの点検・診断が進められている。「今後 の社会資本の維持管理・更新のあり方について」(2013年12月社会資本整備審議会・交通政策審議会 答申)においては、点検・診断結果を踏まえ、インフラの長期的なライフサイクルコスト縮減の観点か ら、維持管理・更新計画の策定を進めることとされている。また、現在進められている個別施設計画の 策定において、維持管理等に係るコストを算定することが推進されている。今後、これらの動向によっ ては、維持・修繕額の将来予測の考え方や予測値を見直す必要性が生じる可能性がある。
41 国土交通省「建設工事施工統計調査」の元請完成工事高と同省「建設投資見通し」の建設投資の実績 値は一致しないが、維持・修繕比率の傾向については同様に推移すると考えられ、「建設工事施工統 計調査」の維持・修繕比率を使用する。民間土木、民間住宅、民間非住宅においても同様とする。
○政府住宅
図表1-2-79のとおり、政府住宅における維持・修繕比率は、2008年度~2009年度に実
額が減少したことにより下降したが、それ以外の期間は新設の減少に伴い上昇傾向にある。
一方、実額では、2011年度以降は年間3,000億円台前半で推移し大きな変化は見られない。
図表1-2-79 政府建築における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
866,156 735,795
596,895
463,933 404,110 434,604 493,237 444,699 481,122
351,889 386,823 372,381
333,195
313,799 309,853
305,231 264,809 213,956 267,925 324,328
312,642 330,822 30.1% 31.2%
34.5%
40.0%
43.0%
37.9%
30.3%
37.6%
40.3%
47.0%
46.1%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(百万円)
(年度)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
2004年度~2013年度の10年の期間で概ね上昇傾向にあることから、2004年度以降の 維持・修繕比率の推移について対数近似を行い、将来の維持修繕比率を推計した結果、2020 年度に44.9%、2025年度に46.4%、2030年度に47.4%となった。
○政府非住宅
図表1-2-80のとおり、政府非住宅における維持・修繕比率は、2007年度までは新設の減
少に伴い、上昇傾向を示したが、2008年度以降はほぼ横ばいで推移している。
図表1-2-80 政府建築における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
3,391,312 3,031,142
2,249,029
1,946,346 1,808,408 1,785,086 1,949,576 2,029,203 2,041,063 2,002,156 2,321,034 1,009,682
824,422
830,742 801,065
831,983 885,382 932,042 1,062,072 1,102,167 1,077,769 1,194,934 22.9%
21.4%
27.0%
29.2%
31.5%
33.2%
32.3%
34.4% 35.1% 35.0%
34.0%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(百万円)
(年度)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
2008年度以降の維持・修繕比率の推移について対数近似を行い、将来の維持修繕比率を 推計した結果、2020年度に35.6%、2025年度に35.9%、2030年度に36.2%となった。
b)維持・修繕額の予測
将来の維持・修繕額は、土木、住宅、非住宅の分野別の政府建設投資額に、a)で求めた 維持・修繕比率の将来予測値を分野別に乗じることにより求める。
分野別の維持・修繕額=政府建設投資額×当該分野の占める割合×維持・修繕比率
2003 年度以降の各分野が政府建設投資全体に占める割合は、土木が 80%台後半、住宅
が2%~3%程度、非住宅が8%~10%程度で安定して推移している。そこで、2016年度~
2030年度の各分野が政府建設投資全体に占める割合を、2005年度~2014年度の10年間 の平均値(土木88.1%、住宅:2.9%、非住宅:9.0%)と仮定する。
以上から推計の結果、政府土木、政府住宅、政府非住宅及び政府全体の維持・修繕額の 将来予測値はで図表1-2-81のとおりとなった。
図表1-2-81 政府の維持・修繕額将来予測値
名目値 単位:兆円 実質値(2005年度価格) 単位:兆円
年度 2020 2025 2030 年度 2020 2025 2030
ケースA 4.6 5.2 5.8 ケースA 4.1 4.3 4.6
ケースB 4.5 4.9 5.3 ケースB 4.0 4.3 4.5
ケースC 4.3 4.4 4.6 ケースC 3.8 3.7 3.6
ケースD 4.3 4.4 4.6 ケースD 3.9 3.9 3.9
ケースA 0.3 0.3 0.3 ケースA 0.2 0.2 0.3
ケースB 0.3 0.3 0.3 ケースB 0.2 0.2 0.3
ケースC 0.2 0.2 0.3 ケースC 0.2 0.2 0.2
ケースD 0.2 0.2 0.3 ケースD 0.2 0.2 0.2
ケースA 0.6 0.7 0.8 ケースA 0.6 0.6 0.6
ケースB 0.6 0.6 0.7 ケースB 0.5 0.6 0.6
ケースC 0.6 0.6 0.6 ケースC 0.5 0.5 0.5
ケースD 0.6 0.6 0.6 ケースD 0.5 0.5 0.5
ケースA 5.5 6.2 6.9 ケースA 4.8 5.1 5.4
ケースB 5.3 5.8 6.2 ケースB 4.8 5.1 5.4
ケースC 5.1 5.3 5.4 ケースC 4.5 4.4 4.2
ケースD 5.1 5.3 5.4 ケースD 4.6 4.6 4.7
非住宅
全体 土木
住宅
非住宅
全体
土木
住宅
(注)ケースA~Dについては、1.2.3を参照。ケースC及びDの名目額は同値である。
②民間土木
民間土木の維持修繕額予測についても、①政府と同様、民間土木投資額(維持修繕を含 む総額)に占める維持修繕比率の傾向から算出される近似式から将来の維持修繕比率を推 計し、民間土木投資額(1.2.5で予測)に乗じて予測を行う。
図表1-2-82のとおり、民間土木の維持修繕額は2011年度以降わずかながら増加傾向が
見られるものの、ほぼ横ばいで推移している。一方、維持・修繕比率は、新設の増減に影 響を受け、2010年度~2013年度は新設の減少により30%を超えている。
図表1-2-82 民間土木における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
3,130,496 3,159,351 3,265,428 3,226,550 3,377,989 3,408,771 3,062,254
2,693,149 2,893,086 2,759,095 2,955,422 1,347,266 1,288,934 1,326,844 1,362,678 1,320,377 1,450,634
1,251,594 1,272,239
1,439,459
1,399,433 1,383,211
30.1% 29.0% 28.9%
29.7%
28.1%
29.9% 29.0%
32.1%
33.2% 33.7%
31.9%
25.0%
26.0%
27.0%
28.0%
29.0%
30.0%
31.0%
32.0%
33.0%
34.0%
35.0%
0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
2004 年度~2013 年度の 10 年の期間で見ると、30%の水準付近をほぼ横ばいならが 緩やかな上昇傾向で推移していることから、2004年度以降の維持・修繕比率の推移につい て対数近似を行い、将来の維持修繕比率を推計し結果、2020年度に33.1%、2025年度は 33.6%、2030年度に34.0%となった。
③民間住宅
図表1-2-83のとおり、民間住宅における維持・修繕比率は、2008年度までは16%~17%
の水準で安定的に推移したが、2009年度以降、新設額の減少と維持・修繕額の増加に伴い 上昇し、2011 年度以降は 22%付近で安定している。実額についても、2010 年度までは、
概ね2兆円台前半で推移していたが、2011年度以降は増加し、2013年度には3兆円を超 えている。そこで、維持・修繕額の将来予測については、最新の動向を踏まえ、2014年度 の維持・修繕額を過去3年間(2011年度~2013年度)の平均額の28,600億円とし、2015 年度以降を建設工事費デフレーター・建設総合の動きと連動するものとする。
図表1-2-83 民間住宅における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
12,688,262 13,104,978
11,774,198 12,148,996 11,694,478 11,475,645
8,085,712 11,788,869
9,739,076 9,895,941 11,077,826 2,483,995 2,686,448
2,365,694 2,289,995
2,391,250 2,294,836
2,185,048 2,274,765
2,706,140 2,802,981 3,070,798
16.4% 17.0% 16.7%
15.9% 17.0% 16.7%
21.3%
16.2%
21.7% 22.1% 21.7%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000 18,000,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(年度)
(百万円)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」
④民間非住宅建築
図表1-2-84のとおり、民間非住宅建築の維持・修繕額は、2005年度~2008年度は4.5
兆円前後で推移し、リーマンショック後の2009年度および2010 年度は4兆円を下回る 水準まで減少したが、2011年度以降は4.5兆円前後の水準に戻り、過去10年間を通して 比較的安定している。2014 年度の維持・修繕額については、過去10 年間(2004年度か ら2013年度)の平均額の43,584億円とし、2015年度以降については建設工事費デフレ ーター・建設総合の動きと連動するものとする。
図表1-2-84 民間非住宅建築における新設額、維持・修繕額および維持・修繕比率の推移
8,917,901 9,450,562 9,740,337 10,144,820 10,342,702 10,267,977 8,431,026
7,335,555 7,726,999 7,841,704 9,889,808 4,049,363
3,925,791 4,302,941
4,564,141 4,582,499 4,501,146 3,919,827
3,849,435
4,550,063 4,661,672 4,726,981 31.2%
29.3% 30.6% 31.0%
30.7% 30.5% 31.7%
34.4%
37.1% 37.3%
32.3%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
維持・修繕 新設 維持・修繕比率
(百万円)
(年度)
(出典)国土交通省「建設工事施工統計調査」