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1.2 建設投資の中長期予測に係る予測手法の策定

1.2.5 民間非住宅投資

(1) 全体予測の考え方

民間非住宅建設投資は、政府建設投資や住宅建設投資に比べて、景気動向や企業収益の 動向など企業が設備投資を行う動きを大きな変動要因としている分野であり、中長期的な 日本経済の構造の変化に大きく影響される分野である。民間非住宅建築投資については、

製造業の国際的な価格競争の激化やICTの発達を含む日本の産業構造の変化、日本の生産 年齢人口の減少など、周辺環境の変化を念頭に置きつつ、使途別の経済成長率に係る経済 変数を、建設経済レポート№64 及び№65 における各使途の変動要因分析を踏まえつつ推 計を進めた。また、民間土木投資額については、建築投資や GDP 等との関連性を考慮し て算出する。

なお、本項では、民間非住宅建築着工床面積のうち、事務所、店舗、工場、倉庫につい て 2030 年度までの予測を行うこととし、その他の着工床面積の予測や民間土木を含めた 投資額の予測は、今後、算出を行う予定である。

さらに、今後、建設投資額を算出するにあたり、建築・土木各分野の関係企業・団体に インタビューを行い将来予測の参考とする予定である。

(2) 民間非住宅建築投資の予測の考え方

①民間非住宅建築着工床面積と投資の予測手法の概要

民間非住宅建築投資の中長期見通し予測手法については、基本的に 2005 年に公表した

「建設投資等の中長期予測~2010年度及び2020年度の見通し~」を踏襲することとした。

ここでは民間非住宅建築投資全体の予測手法の概要を述べる。

民間非住宅建築投資は、中長期的に需要量に見合った建設ストックが整備されるように 投資が行われるとの考えから需要サイドからアプローチを行い、民間非住宅建築を取り巻 く環境変化を考慮に入れつつ、経済成長率によって設定したケース毎に、使途別の需要変 動を検討し予測を行う。

民間非住宅建築投資額については、まず、使途別に建築着工床面積を予測し、これに床 面積あたりの単価を乗じて建築着工額を推計し、これを投資の概念に転換することにより 投資額を予測できるとの基本的考え方による。具体的には、まず、

A 既存のストック量

B 追加的に必要とされる新規のストック量 C 既存ストックの除却相当分=更新相当分

を求めることにより、フローにあたる投資量、すなわち「着工床面積」を算出する。既存 ストック量については、例えば事務所では、まず主要都市以外も含めた全国のオフィスビ

ルストック量(固定資産税の課税対象となっている全ての建物を対象)を把握するべく推 計を行った。

なお、具体的な推計手順は次に示す通りである。

推計手順

a)ストック量の推計28

まず、総務省「固定資産の価格等の概要調書」(以下、「固定資産概要調書」という。)の 1970年1月1日時点の事務所ストック29に、1975年1月1日までの事務所床面積の増加分 を加え、1975年1月1日時点のストック量を設定した。「固定資産概要調書」の使途別集 計は複数の使途が一本化されて扱われているため、当研究所にて、使途別の着工床面積を 基に分離作業を行い推計した。

b)経過年数別残存率(=1-経過年数別除却率)の設定

・基準とする経過年数残存率

「建設投資 30 年の歩みと建築物ストックの推計」における経過年数別残存率の推計値

(1985→1990年度の残存率)を基準とする。

図表1-2-54 経過年数別残存率(1985年→1990年)

経過年数別残存率

経過年数 非住宅計 事務所 店舗 宿泊施設 病院 工場 倉庫 学校

26年以上 84.1% 75.0% 83.1% 76.8% 74.0% 83.5% 87.2% 82.7%

21~25年 83.7% 76.6% 86.4% 81.3% 71.8% 84.7% 90.3% 85.2%

16~20年 87.1% 80.8% 90.0% 84.4% 80.3% 87.9% 95.8% 90.1%

11~15年 90.8% 90.5% 90.9% 86.5% 90.1% 92.8% 98.7% 95.0%

6~10年 94.6% 95.3% 98.2% 87.8% 95.1% 98.8% 99.8% 98.0%

0~5年 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

(出典)建設省「建設投資30年の歩みと建築物ストックの推計」を基に当研究所にて作成

・直近の全体残存率データ

ストック量および国土交通省「建築着工統計調査」による着工床面積から2005年→2010 年の使途別の全体(全ての経過年数を含む)残存率を算出する。

図表1-2-55 全体残存率(2005年→2010年)

非住宅計 事務所 店舗 宿泊施設 病院 工場 倉庫 学校

05→10年ベース残存率 94.8% 95.6% 93.4% 95.5% 86.6% 95.4% 95.6% 96.0%

(出典)当研究所にて作成

28 建設経済レポート№64、65での建設投資の変動要因分析では、今回の建設投資中長期予測と比較し て建築着工統計における併用住宅の取り扱いおよび年代の区切りが異なるため、ストック数値が異な っている。

29 固定資産概要調書においては、非木造では事務所と店舗が一本化されて扱われているため、19701 1日時点の事務所ストック算出にあたっては、事務所相当分を50%と仮定した。

・前回経過年数別残存率の補正

2005年→2010年の経過年数別残存率については、「建設投資30年の歩みと建築物スト ックの推計」における経過年数別除却率(=1-残存率)の推計値(1985→1990年度の除 却率)が使途毎に、全ての経過年数において同比率で低下したと仮定し、2005年から2010 年の全体残存率に合うよう補正した経過年数別除却率を求め、それを1から差し引くこと により求められる(図1-2-56)。

図表1-2-56 補正後の経過年数別残存率(2005年→2010年)

経過年数別残存率

経過年数 事務所 店舗 工場 倉庫

26年以上 93.7% 88.3% 94.1% 92.0%

21~25年 94.1% 90.6% 94.5% 94.0%

16~20年 95.1% 93.1% 95.6% 97.4%

11~15年 97.6% 93.7% 97.4% 99.2%

6~10年 98.8% 98.7% 99.6% 99.9%

0~5年 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

(出典)当研究所にて作成

上記経過年数別残存率から求められる経過年数別除却率をベースとして着工床面積の推 計を行う。

着工床面積の将来予測にあたっては、使途別の将来のストック床面積を予測し、その差 額に除却床面積を加えたものを着工床面積として算出する手法を採用する。

②ストック床面積の予測

ストック床面積の予測は総務省の「固定資産概要調書」及び国土交通省「建築着工統計 調査」から、過去のストック床面積を計測し、これを基に将来のストック床面積を算出す る。予測においては「原単位」という予測数値を使用する。原単位とは、例えば、事務所 では「オフィス人口 1 人あたりの床面積」、店舗では「実質民間最終消費支出あたりの床 面積」といった、使途別着工床面積の将来動向を基礎的要素として捉えたものである。原

(X期末)ストック床面積

≒(X-1期末)ストック床面積+(X期)着工床面積-(X期)除却床面積

∴ (X期)着工床面積

≒(X期末)ストック床面積-(X-1期末)ストック床面積+(X期)除却床面積

↓ ↓

①新規需要 ②更新(建替)需要

単位について変動要因を分析した上で、将来値を設定するとともに、経済成長率について 設定した各ケースにおける経済変量を別途予測し、両者を乗ずることにより将来のストッ ク床面積を予測した。

③GDP設定ケースについて

民間非住宅建設投資を算出するにあたり、前述の通り、内閣府「中長期の経済財政に関 する試算」(2016年1月21日)による経済再生ケースとベースラインケースの2つのシ ナリオを基に、2030年度までの経済成長率を設定した(1.2.2(3)参照)。

④民間非住宅建築全体の着工床面積

着工床面積の算出は、事務所、店舗、工場、倉庫、その他の使途別に求める。「その他」

は直近年度の実績を踏まえ、事務所、店舗、工場、倉庫の合計に対する比率から算出する。

(3) 民間非住宅建築着工床面積の予測

①事務所

a)着工床面積の動向

1980年代半ばから1991年にかけての地価の高騰(不動産バブル)に連動して事務所の 着工床面積は大幅に増加した。バブル期に地価上昇を見込んで積極投資を行った企業は、

1991 年のバブル崩壊後、業績悪化に陥り、事務所の着工床面積も大幅に減少した。2000 年以降は、都市再生事業による大規模な複合再開発が行われるとともに、2001 年の「不動 産投資信託(J-REIT30)」の創設で資金調達手法も多様化したことで、大都市を中心に大 型オフィスビルの建設が活発化し、事業拡大の動きが加速した。しかし、2008年のリーマ ンショック後は、再び着工床面積は減少し、その後ほぼ横ばいで推移している。

図表1-2-57 事務所着工床面積推移

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000

1980年度 1981年度 1982年度 1983年度 1984年度 1985年度 1986年度 1987年度 1988年度 1989年度 1990年度 1991年度 1992年度 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(千㎡)

(出典)国土交通省「建築着工統計調査」を基に当研究所にて作成

30 多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、

その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品。

バブル期

バブル崩壊後

J-REIT 創設 都市再生法

制定 リーマンショック

見通し

b)オフィス人口と事務所ストック床面積の推移

図表1-2-58 の通り、オフィス人口は1995 年まで増加したが、1999 年以降は減少に転

じた。一方、事務所ストック床面積は、増大するオフィス人口の受け皿として大幅に増加 し 1999 年以降のオフィス人口減少後も、増加基調が継続している。オフィス人口は今後 も減少していくことが予測される中、事務所ストック床面積はオフィス人口の長期減少傾 向に逆行する形で増加基調が継続している。

図表1-2-58 オフィス人口と事務所ストック床面積の推移

14,036 17,291

22,905

30,149 33,088 34,325

35,388 37,366

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000

1980年 1985年 1990年 1995年 1999年 2002年 2005年 2010年

(万㎡) (万人)

事 務所ス トック 床面積 オ フィス人口

(出典)オフィス人口は総務省「国勢調査」の職業別人口(専門的・技術的職業従事者、管理的職業従 事者・事務従事者・販売従事者)を基に当研究所にて作成(統計資料は2010年まで)

事務所ストック床面積は総務省「固定資産概要調書」、国土交通省「建築着工統計調査」を基 に当研究所にて作成

図表1-2-59は一人あたりの事務所床面積(事務所ストック床面積÷オフィス人口)の推移

を示す。1980年の7.6㎡から、2010年には17.4㎡(1980年比128.9%増)まで増加して いる。これは、従来、作業場という認識が強かったオフィスにゆとりや快適性が求められ るようになったこと、OA機器の導入で人間以外の必要スペースが増大したこと、更には外 資系企業の進出など海外主要都市と比較して狭小なオフィス環境の改善(増床)を図る動き も加わる等、オフィスビルの大規模化が進んできた結果であると考えられる。

図表1-2-59 一人あたりの事務所床面積の推移

7.6 8.6

10.2

12.6 13.5

14.7 15.5

17.4

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0

1980年 1985年 1990年 1995年 1999年 2002年 2005年 2010年

( ㎡/人)

(出典)オフィス人口は総務省「国勢調査」の職業別人口(専門的・技術的職業従事者、管理的職業従 事者・事務従事者・販売従事者)を基に当研究所にて作成(統計資料は2010年まで)

事務所ストック床面積は総務省「固定資産概要調書」、国土交通省「建築着工統計調査」を基 に当研究所にて作成