1.2 建設投資の中長期予測に係る予測手法の策定
1.2.4 民間住宅投資
(2) 新設住宅着工戸数の予測の考え方
(新設住宅着工戸数の推移)
新設住宅着工戸数は、1996年代半ば以降減少傾向を示し、2009年度には77.5万戸台ま で落ち込んだ。その後緩やかに回復し、2015年度については91.6万戸になると予測され ている(図表1-2-18)。
図表1-2-18 新設住宅着工戸数の推移(1988~2016年度)
166.3 167.3 166.5
134.3 142.0
151.0 156.1 148.5
163.0
134.1
118.0 122.6 121.3
117.3 114.6 117.4 119.3 124.9 128.5 103.6 103.9
77.5 81.9 84.1 89.3 98.7
88.1 91.6 91.3
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
(万戸)
持家 貸家 分譲(マンション・長屋建) 分譲(戸建) 給与 (年度)
(出典)国土交通省「建築着工統計調査」を基に当研究所にて作成
( 注 )2015年度及び2016年度は当研究所による推計。
(住宅ストック数と新設住宅着工戸数の関係)
図表1-2-19のように、住宅16は、まず、居住世帯の有無によって分類することができる。
「居住世帯のない住宅」については、その状態により「一次現在者のみの住宅」「空き家」
「建築中の住宅」に分類され、空き家はさらに「二次的住宅」「賃貸用の住宅」「売却用 の住宅」「その他の住宅」に分類される。
図表1-2-19 住宅の体系図
(出典)総務省「住宅・土地統計調査」
16 総務省「住宅・土地統計調査」において「住宅」は、「一戸建の住宅やアパートのように完全に区画 された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築又は改造された もの」と定義されている。なお、「完全に区画された」とは、コンクリート壁や板壁などの固定的な 仕切りで、同じ建物の他の部分と完全に遮断されている状態をいう。「一つの世帯が独立して家庭生 活を営むことができる」とは、①一つ以上の居住室②専用の炊事用流し③専用のトイレ④専用の出入 口の設備要件を満たしていることである。
予測
新設住宅着工戸数を推計するにあたり、ストックである住宅総数の増減(「居住世帯の ある住宅増減(主世帯17数の増減)」及び「居住世帯のない住宅18増減」)とフローにあた る「新設住宅着工戸数」及び「除却戸数」の関係を整理することにより、以下の関係式を 導き出すことができる。
・当期の住宅ストック数≒前期の住宅ストック数+新設住宅着工戸数-除却戸数
↓
・新設住宅着工戸数
≒住宅総ストック増減数(当期の住宅ストック数-前期の住宅ストック数)+除却戸数
これを、 住宅総ストック増減数≒居住世帯のある住宅増減+居住世帯のない住宅増減 で置き換えると、
↓
◇新設住宅着工戸数≒居住世帯のある住宅増減+居住世帯のない住宅増減+除却戸数
以上の式から、新設住宅着工戸数は、「居住世帯のある住宅増減(主世帯数の増減)」
と「居住世帯のない住宅増減」の和で表される「住宅総ストック増減数」の動きと、建物 の老朽化や生活水準に合わせた住環境の改善を主な原因とした「除却戸数」によって構成 される。
住宅は生活の基盤をなすものであることから、「主世帯数の増減」は直接的に中長期の 新設住宅着工戸数を左右する要因であると言える。しかし、今後は、総人口に引き続き総 世帯数も減少することから、新設住宅着工戸数は「居住世帯のない住宅増減」や「除却戸 数」を要因とするものが多くを占めるようになっていく。
「居住世帯のない住宅増減」は、世帯数に対して住宅のストックは量的には充足された ものの、個々の世帯が住宅に対するニーズ(通勤・通学の利便、自然災害などに対する安 全・治安、日常の買い物・医療・福祉・文化等の利便、広さや間取り等)と合致せず、住 宅が新設された場合に、その分の住戸の除却・滅失がなければ空き家が増加することとな る。このような既存の住宅ストックと現代の住宅に関するニーズとの不一致により生み出 される「居住世帯のない住宅」は、新設住宅着工戸数を押し上げる要因となる。
また、「除却戸数」については建替え需要に伴い新設住宅着工戸数が押し上げられる。
以上の新設住宅着工戸数と住宅ストック増減の関係性を示したものが図表1-2-20である。
17 「主世帯」とは「住宅・土地統計調査」において、「住宅に居住している世帯のうち同居世帯を除い た主な世帯」と定義されており、居住世帯のある住宅を指す。
18 「居住世帯のない住宅」とは、「住宅・土地統計調査」において、「普段、人が居住していない住宅」
と定義されている。「一時現在者のみの住宅」(昼間だけ使用している、何人かの人が交代で寝泊ま りしているなど、そこに普段居住している者が一人もいない住宅をいう)・「空き家」・「建築中」
で構成されるが、2013年においては「空き家」の構成比が96.1%を占める。
図表1-2-20 新設着工戸数と住宅ストック増減の関係(イメージ)
前期 当期 主世帯
増加数 居住世
帯のな い住宅 増加数
除却 戸数 新設
住宅 着工 戸数 A
A
空き家
空き家
①主世帯増加
+1 1
B1
B1
子供が独立 B2 【新築】
+1 -1
C1
C1 空き家
子供が独立 C2
②居住世帯の
-1 +1
ない住宅
増加 D
死亡等
空き家
-1 +1
E
死亡等 F
F
転居(ニーズと合致) 空き家
+1 1
G
(ニーズの不一致、別荘等) 空き家
転居 G 【新築】
③除却戸数
1 1
H
除却
H
【建替】
【集合住宅に建替】
+4 +1 1 6
I J K
L 空き家 M
I
除却
(出典)当研究所にて作成
①主世帯数増減の予測
国立社会保障・人口問題研究所の将来予測によると、我が国においては、図表1-2-21の ように、2020年頃から世帯数は減少することが予測されており、2020年~2025年では約 60万世帯減、2025年~2030年では約117万世帯減が見込まれている。
図表1-2-21 世帯数の増減に伴う住宅ストックの増減
←実績 予測→ (世帯)
調査年 2005 2010 2015 2020 2025 2030
主世帯総数 47,632,797 50,477,548 51,308,108 51,453,028 50,857,483 49,685,363 増減数
(ストック増減) - 2,844,751 830,560 144,920 -595,545 -1,172,120
増減率 - 5.97% 1.65% 0.28% -1.16% -2.30%
(出典)実績値は、総務省「国勢調査」より。予測値は、国立社会保障・人口問題研究所「『日本の世帯 数の将来推計(全国推計)』(2013(平成25)年1月推計))」を基に当研究所にて作成。
( 注 )国立社会保障・人口問題研究所「『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2013(平成25)年1 月推計))」において推計される世帯数は一般世帯であるため、過去3回分の国勢調査における 一般世帯と主世帯の割合を算出し、その平均を一般世帯数に掛け合わせて調整を行った。
②居住世帯のない住宅数増減の予測
住宅ストックは 2013年時点で6,063万戸であるが、このうち「居住世帯のない住宅」
の戸数は853万戸(14.1%)であり、その内、空き家は820万戸で住宅ストック全体の13.5%
を占めている(図表1-2-22)。中古住宅流通・リフォーム市場の拡大・活性化、空き家の 有効活用といった施策が進められている一方で空き家は依然として増加の傾向にある。
2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、2016年に改定予定の住 生活基本計画において「急増する空き家の除却の推進」が施策目標の一つとして掲げられ るなど、空き家対策は国の住宅政策の重要課題と位置付けられている。
図表1-2-22 住宅ストックの動向
(戸)
1978 1983 1988 1993 1998 2003 2008 2013
住宅数 35,450,400 38,606,800 42,007,200 45,878,700 50,246,000 53,890,900 57,586,000 60,628,600
① 居 住 世 帯 あ り 住宅数 32,188,700 34,704,500 37,413,400 40,773,300 43,922,100 46,862,900 49,598,300 52,102,200
割合 90.8% 89.9% 89.1% 88.9% 87.4% 87.0% 86.1% 85.9%
② 居 住 世 帯 な し 住宅数 3,261,700 3,902,300 4,593,800 5,105,400 6,323,900 7,028,000 7,987,600 8,526,400
割合 9.2% 10.1% 10.9% 11.1% 12.6% 13.0% 13.9% 14.1%
一時現在者のみ 住宅数 318,400 446,900 435,300 428,600 393,600 325,900 326,400 242,800
割合 0.9% 1.2% 1.0% 0.9% 0.8% 0.6% 0.6% 0.4%
空き家 住宅数 2,679,200 3,301,700 3,940,300 4,475,800 5,764,100 6,593,300 7,567,900 8,195,600
割合 7.6% 8.6% 9.4% 9.8% 11.5% 12.2% 13.1% 13.5%
賃貸又は 住宅数 1,565,400 1,834,000 2,335,800 2,618,900 3,520,000 3,977,500 4,475,600 4,600,000
売却用の住宅 割合 4.4% 4.8% 5.6% 5.7% 7.0% 7.4% 7.8% 7.6%
別荘など 住宅数 137,200 216,200 295,000 369,100 419,200 498,200 411,200 412,000
二次的住宅 割合 0.4% 0.6% 0.7% 0.8% 0.8% 0.9% 0.7% 0.7%
その他の住宅 住宅数 976,600 1,251,500 1,309,500 1,487,800 1,824,900 2,117,600 2,681,100 3,183,600
割合 2.8% 3.2% 3.1% 3.2% 3.6% 3.9% 4.7% 5.3%
建築中 住宅数 264,100 153,700 218,200 201,000 166,200 108,800 93,300 88,100
割合 0.7% 0.4% 0.5% 0.4% 0.3% 0.2% 0.2% 0.1%
調査年 ストック合計
(出典)総務省「住宅・土地統計調査」を基に当研究所にて作成
(予測方法)
「居住世帯のない住宅」の予測においては、「一時現在者のみ」・「空き家」・「建築中 の住宅」の分類別からそれぞれの将来ストックを推計し、変化分を算出する。
a)一時現在者のみの住宅
図表1-2-22によると、1983年の446,900戸をピークに減少傾向にあるが、将来予測に
おいては、2013年の242,800戸で今後も継続すると仮定した。
b)空き家
前回 2005 年の中長期予測においては、過去の建て方(戸建て、長屋建て、共同建て)
別にストック数のトレンドをとらえる方法(手法Ⅰ)を採用した。
一方、空き家は「二次的住宅」、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」、「その他の住宅」
の種類に分類される。近年の空き家増加の特徴等を踏まえ、これらのストック数のトレン ドをとらえる方法(手法Ⅱ)による予測を併せて行うこととする。
(ⅰ) 手法Ⅰ (建て方別による推計)
「戸建て」・「長屋建て」・「共同建て」の建て方別に、経過年数を説明変数に回帰式 を設定して予測を行う。なお、推計においては、計量経済分析ソフトEviewsを利用し、
総務省「住宅・土地統計調査」の1998年~2013年(5年間隔、4時点)の47都道府県
(47×4=188 サンプル)の数値を用いた。また、推計では、各都道府県のダミー変数を 考慮しているが、紙面の関係上、ダミー変数の推計結果については省略した。予測結果
は図表1-2-23のとおりである。
・戸建て:y=8311.064×x +29464.89 (R2=0.958026) 線形近似
・長屋建て:y=-428.0851×x +10725.53 (R2=0.972777) 線形近似
・共同建て:y=21556.82×Ln(x)+71894.10 (R2=0.986529) 対数近似
( 注 )x:予測経過年数
ここでは1998年を1とし、以降5年ごとに2003年…2、2008年…3と設定。
図表1-2-23 手法Ⅰ 建て方別 空き家数予測
(戸)
調査年 空き家総計 戸建て 長屋建て 共同建て
1993 4,475,800 1,511,600 442,400 2,501,600 1998 5,764,100 1,826,300 515,000 3,383,700 2003 6,593,300 2,117,100 432,000 4,017,300 2008 7,567,900 2,503,500 415,500 4,622,600 2013 8,195,600 2,999,200 454,600 4,711,900 ↑実績 2015 8,399,863 3,134,700 434,160 4,831,003 ↓予測 2020 8,973,197 3,494,198 395,452 5,083,547 2025 9,517,003 3,884,818 375,332 5,256,853 2030 10,035,327 4,275,438 355,212 5,404,677
(出典)実績値は、総務省「住宅・土地統計調査」より。予測値は当研究所にて作成。
(ⅱ)手法Ⅱ (空き家の種類別に推計)
以下で述べるように、空き家の種類(「二次的住宅19」、「賃貸又は売却用の住宅20」
「その他の住宅21」)別にこれまでのストック数の推移に特徴がみられると考え、それぞ れの種類の空き家の将来ストック数を予測した。
19二次的住宅には「週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、普段は人が住んで いない住宅」(別荘)、普段住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、た まに寝泊まりしている人がいる住宅」(その他)がある。