1.3 地域別の社会資本整備動向~近畿ブロック~
1.3.2 主要プロジェクト等の動向と期待される効果
本項では、前項で整理した近畿ブロックの課題に対応して進められている主要なプロジェクト と、期待される効果について記載する。「関西の相対的地位の低下と東京一極集中からの是正」に 対応して、広域の幹線道路網の整備と阪神港の整備を、「外国人旅行者の急激な増加」に対応して、
舞鶴港の整備を、「近畿を脅かす自然災害リスク」に対応して、南海トラフ地震対策と由良川・桂 川治水対策を、「社会資本の老朽化」に対応して、阪神高速道路の大規模更新・修繕事業と天ヶ瀬 ダム再開発事業、また、公共施設等総合管理計画を、「本格的な人口減少社会の到来と急激な高齢 化の進展」に対応して、京都北部連携都市圏をそれぞれ取り上げることとした。
(1) 道路網の整備(近畿圏環状道路・京都縦貫自動車道)
①近畿圏環状道路 a.大阪都市再生環状道路
「大阪都市再生環状道路」は、「大阪湾環状道路」「関西中央環状道路」「関西大環状道路」
の関西4環状ネットワークの1つである。産業・経済の物流拠点が集積する大阪湾周辺地域の幹 線道路ネットワークのミッシングリンクが課題となっており、事業を進めていくことで、経済・
社会活動を支える全国的な大動脈としての役割が期待されている。
図表1-3-9 4環状ネットワーク
(出典)国土交通省資料より抜粋
大阪都市再生環状道路は、大阪市を中心とする延長約60kmの環状道路で、湾岸線、淀川左岸 線、近畿自動車道、大和川線等で構成されている。現在は、淀川左岸線と大和川線で主に事業が 進められており、大阪都市再生環状道路が完成することにより、①都心への流入・通過交通が削 減されることによる渋滞緩和、沿道環境の改善、②新幹線、空港などの交通拠点へのアクセス向 上、③災害時の広域緊急交通路としての役割、④渋滞緩和による公共交通機関等の運行への信頼 回復、⑤交通ネットワーク整備により、商業・業務・文化等の機能をもつ新たな都市拠点の形成 などの効果が期待されている。
○淀川左岸線における事業
都心部における多数の慢性的な渋滞や沿線環境の悪化等を大幅に解消するとともに、その整備 により誘導される新たな都市拠点の形成等を通じた都市構造の再編を促す大阪都市再生環状道路 の一部を構成している。大阪湾岸地域と都心北部地域とのアクセス路線として、大阪北部から都 心に流入する交通を分散処理し、混雑を緩和するとともに、地域の利便性を向上させることが目 的である。
【事業概要】
第1期工事:延長約5.6km 北港JCT~海老江JCT 【2013年5月までに開通済】
第2期工事:延長約4.4km 海老江JCT~豊崎JCT 【2020年度完成予定】
延伸部工事:延長約8.7km 豊崎JCT~第二京阪・近畿道門真JCT【調査中】
図表1-3-10 大阪都市再生環状道路
(出典)阪神高速道路(株)ウェブサイト
上述のとおり、淀川左岸線の第1期工事は2013年5月に完成し、供用されており、事業の整 備効果が発現している。淀川左岸線事業再評価資料(2014年12月16日付)によると、淀川左 岸線1期区間開通後、3号神戸線(神戸方面)から淀川左岸線(湾岸線方面)へのルートが形成 され、神戸線からの交通が淀川左岸線へ流入。また、淀川左岸線の並行路線である大阪港線(都 心方面)の交通量が減少した。そのため、渋滞箇所であった阿波座合流へ流入する交通量が減少 し、第 1期区間供用前の平日渋滞量が 532(km・h)だったのに対し、供用後は 416(km・h)
と渋滞が緩和されている。また、並行する一般道福島桜島線では、供用後に島屋、梅香、千鳥橋 交差点の24 時間交通量が東西方向ともに減少、淀川左岸線の交通量は第 1期区間供用後で増加 していることから、交通の転換が図られている。現在実施されている第2期事業及び調査中の淀 川左岸線延伸部においても同様の効果が見込まれている。
図表1-3-11 淀川左岸線 事業の整備効果①
(出典)阪神高速道路(株)事業評価監視委員会資料より抜粋
図表1-3-12 淀川左岸線 事業の整備効果②
(出典)阪神高速道路(株)事業評価監視委員会資料より抜粋
○大和川線における事業
都心部における多数の慢性的な渋滞や沿線環境の悪化等を大幅に解消するとともに、その整備 により誘導される新たな都市拠点の形成等を通じた都市構造の再編を促す大阪都市再生環状道路 の一部を構成している。大阪府南部地域において、東西方向の道路機能向上を図り、地域の活性 化ならびに社会・経済活動の発展に寄与することが目的である。
【事業概要】
延長約10km 堺市堺区築港八幡町~松原市三宅中
⇒2013年3月に一部供用【三宅西出入口~三宅中】
未供用区間は9.1km(三宝JCT~三宅西)であり、2015年12月現在の進捗率は83%、2016 年3月に用地取得率100%を目標として、完成は2019年度を見込んでいる。
図表1-3-13 大和川線 事業概要
(出典)阪神高速道路(株)事業評価監視委員会資料より抜粋
当該事業による整備効果は、都心部の環状線や大阪港線では日常的に渋滞が発生しており、大 和川線の利用により渋滞区間を避けたルートの選択が可能となる。並行する一般道路である大堀 堺線や堺大和高田線、国道479号等では、センサス旅行速度が低い区間が存在し、混雑している 状況であるが、一般道路の交通が大和川線に転換することで、混雑緩和が図られ、渋滞損失時間 は未整備時と比較して45%の削減となることが見込まれる。また、自然災害等による迂回路の確 保が確立され、既存の高速道路と連結されることから、ネットワークのリダンダンシーが向上し、
事故・災害・工事等による通行止めに対応できるネットワークが構築される。
b.京奈和自動車道
近畿圏環状道路の一部を形成する京奈和自動車道は、京奈北道路、京奈道路、大和北道路、大 和御所道路、五條道路、橋本道路、紀北東道路、紀北西道路の 8 つの道路から構成されており、
大和平野を南北に縦貫して京都と和歌山を結ぶ延長約 120km の高規格幹線道路である。既存の 高速道路および主要な国道と連携することで相互ネットワークを形成し、近畿大都市圏での時間 短縮を図るとともに京都、奈良と和歌山の拠点都市の連携強化を図る役割を担っている。
図表1-3-14 京奈和自動車道の概略図
(出典)国土交通省近畿地方整備局奈良国道事務所ウェブサイト
○大和御所道路
大和御所道路は、京奈和自動車道のうち、奈良県中央部の一部を構成する道路で、広域的なネ ットワークの役割を果たすとともに、広域ネットワークの形成による地域間のアクセス向上、物 流の効率化による産業支援、観光産業の活性化等への寄与を目的とした道路である。
【事業経緯】
1992年度 大和御所道路 27.2km 事業化 1994年度 大和区間工事着手
2006年度 大和区間専用部延長7.8km開通 2006年度 御所区間工事着手
2011年度 御所区間専用部延長3.7km開通 2014年度 大和区間専用部延長1.6km開通 2014年度 御所区間専用部延長2.5km開通
現在は、御所南IC~五條北IC延長7.2km及び橿原北IC~橿原高田IC延長4.4kmの区間が 事業中である。また、開通により、並行する国道 24 号の渋滞間や交通事故の減少が期待されて いる。
図表1-3-15 大和御所道路の事業概要
(出典)国土交通省近畿地方整備局奈良国道事務所ウェブサイト
○紀北西道路
紀北西道路は、京奈和自動車道の一部として和歌山県紀の川市神領から和歌山市弘西までの延
長12.2kmの高規格幹線道路。京奈和自動車道と阪和自動車道を接続する道路でもあり、高規格
幹線道路網のネットワーク効果を高め、広域連携強化による救命救急活動の支援、地域の活性化、
国道 24 号をはじめとする現道交通環境の改善、交通安全の確保、災害時の交通確保などにも寄 与する道路である。
図表1-3-16 紀北西道路の概略図
(出典)国土交通省近畿地方整備局和歌山国道事務所ウェブサイト
【事業経緯】
1997年度 事業着手 1999年度 都市計画決定 2007年度 用地買収着手 2008年度 工事着手
2015年9月 紀の川IC~岩出根来IC 延長5.7km(暫定2車線開通)
残工事は、岩出根来IC~和歌山JCTの延長6.5km。京奈和自動車道(紀北西道路)と阪和自 動車道が接続することで、関西国際空港からのアクセス時間が短縮され、和歌山・奈良の主要観 光地が直結されることによる地域観光振興の寄与が期待される。また、京奈和自動車道の沿線地 域では企業立地が進展しており、民間需要の拡大による雇用の創出も見込まれ、地域の産業振興 にも寄与されることが期待されている。
②京都縦貫自動車道
京都縦貫自動車道は、「綾部宮津道路(23.4km)」「丹波綾部道路(29.2km)」「京都丹波道路
(31.3km)」「京都第二外環状道路(15.7km)」の4道路で構成され、全長約100kmの高規格幹 線道路である。宮津天橋立ICから丹波ICまでの52.6kmを京都府道路公社、丹波ICから久御
山ICまでの47.0kmを西日本高速道路株式会社が管理している。
京都縦貫自動車道は、未開通区間であった丹波綾部道路の丹波 IC~京丹波わち IC(18.9km)
が2015年7月に開通、1981年に着工して以来、約35年越しの全線開通となった。開通により、
京都南北間の移動時間短縮が図られ、京都北部の観光客の増加など沿道地域の活性化に寄与して いる。
図表1-3-17 京都縦貫自動車道
(出典)京都府道路公社ウェブサイト
全線開通したことにより所要時間は大幅に短縮され、京都縦貫自動車道未整備時点では、宮津 市から京都市まで約180分掛かっていたが、その後一部整備が進み約105分まで短縮、今回の全 線開通により約90分で通行できることになる。国土交通省近畿地方整備局が2015年8月に公表 したデータによると、宮津天橋立 IC~久御山IC間の所要時間が開通前の約 91分から開通後は 約78分と約13分短縮しており、1987年の未開通時と比較すると約100分短縮していると公表 している。