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今回の中長期予測の考え方

1.2 建設投資の中長期予測に係る予測手法の策定

1.2.2 今回の中長期予測の考え方

(1) 予測の対象

予測の対象は、前回2005年に行った予測と同様、建設工事のうち新築・増築・改築(建 替えを含む。)を指す「建設投資」にあたるものと、「建設投資」には含まれない「維持・

修繕」分野である11

「建設投資」は一般に、投資の主体によって「政府建設投資」と「民間建設投資」に分 けられる。それぞれが、「建築投資」と「土木投資」に分かれる。

「維持・修繕」は「建設投資」には含まれないものであるが、政府建設投資、民間土木 投資においては、統計の制約上、「建設投資」に「維持・修繕」が含まれる(図表1-2-9)。

図表1-2-9 予測の対象(イメージ)

(住宅・非住宅)

(住宅・非住宅)

「維持修繕」

建設投資

新築 建替 増築・改築

維持・修繕 維持・修繕 民

間 政 府

土  木

建  築 土  木

建  築

維持・修繕

維持・修繕 新設

改良

新設 改良 新築 建替 増築・改築

(注)政府部門の建設投資(政府建設投資)及び民間部門の土木の分野における建設投資(民間土木投資)

については、それぞれの分野における維持・修繕が含まれる。

11 2005年における予測の「維持補修」は耐震改修など施設の機能向上を含む工事を指すのに対し、今 回予測する「維持・修繕」は国土交通省「建設工事施工統計」における「維持・修繕」を指す。

今回の予測対象

(2) 予測の基本的な考え方

中長期的な予測においては、次の理由から計量経済モデルによらず、建設投資に影響を 与える要因を特定し、それらの要因が、政府建設市場、民間住宅市場及び民間非住宅市場 に如何なる影響を及ぼすか、定性的に分析し、それを枠組みとして推計を行った。

a) GDP成長率の予測に、ケインズ理論を定式化した計量経済モデルが用いられるのは、

マクロ経済学においては、国民所得を中心とする諸集計量が相互依存関係にある、

すなわち、GDPとGDPを構成する消費、投資等は同時に決定するものである。例 えば、消費の水準だけが先に決まり、それに応じて GDPの水準が決まるといった ものではない。

b) 一方、モデルが過去の諸変数間の因果関係に基づき作成されているため、この諸変 数間の因果関係が大きく変化する時期には予測の精度が落ちる。我が国においては、

2030 年度までの期間を見通した場合、今後も人口・世帯数の減少やライフスタイ ルの変化、技術革新など、投資環境の変化が各分野において予想される。

建設投資に影響を与える要因は、①経済・財政の動向、②人口・世帯の動向、③IT等の 技術革新の動向、④ライフスタイルの変化、⑤ストックの蓄積 の5つとした。

1.2.1における前回予測のレビューで述べたように、前回の手法は中長期の予測手法とし

て一定の有効性があると考えられ、今回の予測においても基本的に踏襲することとした。

また、今回の中長期予測の新たな取り組みとして、前回は物価変動を考慮しない実質ベ ースでの建設投資額の推計のみ行ったが、額面としての将来の建設投資の規模を把握しや すくする観点から、実質建設投資額と併せて名目建設投資額の推計を行うこととした。

(3) 予測の前提条件

①将来の経済財政の姿

最新の政府の経済財政に関する運営方針である「経済財政運営と改革の基本方針2015」

(2015年6月30日閣議決定)は、中長期的に、経済成長率が実質2%程度、名目3%程 度を上回る経済成長を目指している。また、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2016 年1月21日)は、マクロ経済に関して「経済再生ケース」と「ベースラインケース」の 2つのシナリオを提示している。これを踏まえ、経済成長率に係るケースは、ケース1と して「経済再生ケース」が実現する場合、ケース2として「ベースラインケース」が実現 する場合の2通りを設定した(図表1-2-10)。

図表1-2-10 マクロ経済に関するシナリオ

経済再生ケース

→ケース1

日本経済再生に向けた、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起す る成長戦略を柱とする経済財政政策の効果が着実に発現。

中長期的に経済成長率は実質2%以上、名目3%以上、消費者物価上昇率(消費 税率引上げの影響を除く)は2%近傍で安定的に推移。

ベースラインケース

→ケース2

経済が足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移。

中長期的に経済成長率は実質1%弱、名目1%半ば程度。

(出典)「中長期の経済財政に関する試算」(20161月内閣府)を基に当研究所にて作成

それぞれのケースの経済成長率については、図表1-2-11のとおり、2024年度まで予測 されている。2025年度~2030年度については、ケース1においては、実質2.0%、名目

3.0%で推移、ケース2においては実質0.8%、名目1-2%で推移すると仮定した。

図表1-2-11 「経済再生ケース」及び「ベースラインケース」における経済成長率

年度 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024

経済再生ケース 実質 1.2 1.7 0.6 2.5 2.1 2.2 2.3 2.3 2.4 2.4

(ケース1) 名目 2.7 3.1 2.4 3.9 3.5 3.6 3.7 3.7 3.8 3.8

ベースラインケース 実質 1.2 1.7 0.1 1.4 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8

(ケース2) 名目 2.7 3.1 1.3 1.9 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3

(出典)「中長期の経済財政に関する試算」(20161月内閣府)を基に当研究所にて作成

②デフレーターの設定

建設投資額の実質値の推計や建築単価の伸び率の設定にデフレーターとして、建設工事 費デフレーター(2005年度基準)・建設総合を採用する。当該デフレーターの変化率は、

企業物価指数の変化率に近似した動きを示しており、同デフレーターが国内企業物価と同 様の伸び率で推移するものと仮定する。国内企業物価の伸び率については、前出の内閣府

「中長期の経済財政に関する試算」における予測値(図表 1-2-12)を使用し、2025 年度 以降は2024年度の予測値と同値で推移すると仮定した。

図表1-2-12国内企業物価上昇率の将来予測

単位:%

年度 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 経済再生ケース -2.9 0.2 2.7 1.2 1.1 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 ベースラインケース -2.9 0.2 2.3 0.4 0.3 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5

(出典)「中長期の経済財政に関する試算」20161月内閣府)を基に当研究所にて作成