本研究では、原子力発電プラントを解体する際の計画立案作業を支援するため、拡 張現実感を利用して、解体機器と作業機器を作業現場に重畳して、複数人がプラント 協調解体作業のシミュレーションを直感的に実施できる協調作業シミュレーションシ ステムを開発した。そして、開発したシステムの有用性を評価するため、本システム をプラント解体作業に従事している職員、ヒューマンインタフェースの専門家と拡張 現実感を用いたプラント作業シミュレーションシステムを開発した専門家に試用して もらい評価した。
第2章では、研究の背景として、ふげん発電所における複数人のプラント解体協調 作業の現状および問題点を述べた。次に本研究で採用する拡張現実感を説明した。そ して、本研究の目的が、プラント解体協調作業シミュレーションシステムを開発する ことであることを述べた。
第3章では、提案したプラント解体協調作業シミュレーションシステムの設計につ いて述べた。まず、本研究の対象とする解体作業について述べた。次に、システムの 要求仕様と機能構成を述べた。最後に、設計を元に開発したシステムの詳細について 述べた。
第4章では、開発したシステムを評価するため、4名の評価者に本システムを利用し てもらい、アンケートとインタビューを実施したことを述べた。システム評価の結果、
本システムを用いて複数人でプラント解体作業を検討することは有効であることが分 かった。ただし、解体対象と作業環境の間の接触した箇所の表現方法、チェーンの操 作方法などを改善する必要があることが分かった。
本研究の成果として、拡張現実感を用いた作業機器や解体機器の三次元モデルを作 業現場に重畳する方法は、実際の解体作業計画を事前に検討することにより有効であ ることが分かった。機器を仮想的に配置・運搬するだけでなく、物理エンジンを利用 して、チェーンにより解体機器を横に倒すこともシミュレーションできた。また、作 業員の位置と見ている方向を提示でき、複数人の操作を統合できることにより、複数 人の協調作業をシミュレーションできることが分かった。本システムでは、複数人の 間の操作の情報を通信・統合するため、サーバ・クライアントの形式により、複数台
iPad2デバイスが必要であるだけでなく、パソコンも必要である。実際の作業現場にパ
ソコンを持ち込み、作業シミュレーションを行うことは不便であるため、携帯デバイ スのみで利用できるシステムの実現を検討する必要がある。
本研究で提案した協調作業シミュレーションシステムはプラント解体作業だけでな く、様々な協調作業の検討にも利用できる可能性がある。
謝 辞
本研究を進めるあたり、京都大学大学院エネルギー科学研究科下田宏准教授には、研 究の方向性や進め方から修士論文の書き方に至るまで、大変お忙しいところ、終始親 切あふれるご指導とご鞭撻を賜りました。この場を借りて、心より深くお礼を申し上 げます。
何度もふげんへ引率、また本研究の基礎となる拡張現実感やプログラミング設計な ど、それから論文のまとめ方のご教示、ご指導を頂きました京都大学大学院エネルギー 科学研究科石井裕剛助教には、深く感謝いたします。
ふげんの泉さん、この研究に関わる様々なご支援とご助言それから評価にご協力を いただき、心から感謝いたします。
研究室秘書の普照郁美さん、若林友美さん、山下恵未依さん、部品や本を発注のお 願いを毎度快く引き受けていただき、誠にありがとうございました。
研究室で3年間半を無事過ごせたのは、親切な先輩、後輩と同級の学生に恵まれた おかげです。本当にありがとうございました。
中でも、本実験を遂行するあたり、過酷なスケジュールに苦楽を共にして、プログ ラム設計と評価実験に多くのおヒント、たくさんなご助言と度々のお手伝いを頂きま した博士課程後期の顔偉達さんに心より感謝いたします。
またプログラム設計にご支援をいただいた卒業生の趙躍さんと研究生の顧穎成さん に感謝いたします。
評価に関してご協力を頂きました修士課程二回生の小野さんに心より感謝いたしま す。本論文の作成のあたり、協力していただいた課程二回生の伊藤達理さん、河野翔 さん、北村尊義さん、藤原央樹さん、修士課程一回生松田宅司さん、高松貴佐雄さん と大石晃太郎さんにも感謝いたします。最後に、様々なご支援ご協力を頂いたのすべ ての方に、お礼を申し上げます。
参 考 文 献
[1] 水野 倫之, 山崎 淑行, 藤原 淳登: 緊急解説! 福島第一原発事故と放射線, NHK出 版(2011).
[2] 核燃料サイクル開発機構・ふげん発電所ホームページ, http://www.jaea.go.jp/
04/fugen/index.html(2012年2月9日現在).
[3] 未来を拓く原子力−原子力機構の研究開発成果http://jolisfukyu.tokai-sc.
jaea.go.jp/fukyu/mirai/2006/9_3.html(2012年2月9日現在).
[4] 筒井 真作, 西川 誠一: 初歩から学ぶ3次元CAD活用設計再入門, 日刊工業新聞社 (2007).
[5] P. Milgram, F. Kishino: A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays, IEICE Transactions of Infomation System, Vol.E77-D, No.12, pp.1321-1329(1998).
[6] H. Ishii et al.: Development of Wide Area Tracking System for Augmented Re-ality, the 12th International Conference on Human-Computer Interaction, Vol.14, pp.234-243(2007).
[7] T. Karitsuka and K. Sato: Head-mounted display systems, International Sympo-sium on Mixed and Augmented Reality 2003, pp.321-322(2003).
[8] J. P. Rolland and Hong Hua: A Wearable Mixed Reality with an On-board Pro-jector, Encyclopedia of Optical Engineering, New York, NY: Marcel Dekker, pp.1-13(2005).
[9] D. Wagner, T. Pintaric, F. Ledermann, D. Schmalstieg: Towards Massively Multi-user Augmented Reality on Handheld Devices. Pervasive 2005, pp.208-219(2005).
[10] T. Tetsu et al: ARマーカーを用いた机上協調作業のための現実仮想融合インタ
フェースの構築Copyright (c) 2011 by the Information Processing Society of Japan, pp.289-291(2011).
[11] 青山 周平: 拡張現実感を用いた仮置・運搬作業シミュレーションシステムの開発, エネルギー科学研究科エネルギー社会・環境科学専攻修士論文(2011).
[12] Sweet Home 3D: http://www.sweethome3d.com/ja/index.jsp(2012年2月9日 現在).
[13] 正投影図: http://www.onlec.com/kod/kod09.htm(2012年2月9日現在).
[14] 橋本洋志, 佐々木智典: 3Dモーションシミュレーション, オーム社(2011).
[15] アーロンヒレガス, ジョー・コンウェイ, A. Hillegass, J. Conway: iOSプログラミ ング第2版, ピアソン桐原(2011).
[16] W. Schroeder, K. Martin, B. Lorensen: The Visualization Toolkit, Prentice Hall Ptr, 2 Har/Cdr版(1997).
[17] 楊首峰: 拡張現実感用画像マーカの3次元位置自動計測システムの開発と評価,エ ネルギー科学研究科エネルギー社会・環境科学専攻修士論文(2008).
[18] 無線LAN親機: http://buffalo.jp/products/catalog/network/whr-g301n/
index.html?p=spec(2012年2月9日現在).
[19] インカム: http://www.e-incom.net/product/13?(2012年2月9日現在).
[20] イヤホンマイク: http://www.e-incom.net/product/24(2012年2月9日現在).
付録 A 事前説明資料
以下に評価の際に用いた事前説明資料を示す。
プラント プラント
プラント プラント解体協調作業 解体協調作業 解体協調作業 解体協調作業シミュレーション シミュレーション シミュレーション シミュレーション システムの
システムの システムの システムの評価 評価 評価 評価
エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻 エネルギー情報学分野 満 智遠
図 A.1: 事前説明資料(1/22)
本説明の概要
本研究の背景
システムが対象とする作業 システムの使い方(15分)
本評価の作業内容(10分)
評価(40分)
アンケートとインタビュー(40分)
2
図 A.2: 事前説明資料(2/22)
研究の背景
運転を終えた原子力発電プラントは放射能が 残存している
解体されるプラントが増加すると見込まれる
→事前に綿密な解体作業の計画の立案が重要
3
図 A.3: 事前説明資料(3/22)
大型機器の解体協調作業の手順:
4
①
①
①
①解体対象機器解体対象機器解体対象機器解体対象機器のののの上上上上のののの天井天井天井天井にににに 複数
複数 複数
複数のチェーンブロックをのチェーンブロックをのチェーンブロックをのチェーンブロックを配置配置配置配置
②
②
②
②チェーンでチェーンでチェーンでチェーンで解体対象機器解体対象機器解体対象機器解体対象機器とととと チェーンブロックを チェーンブロックを チェーンブロックを チェーンブロックを繋繋繋繋げるげるげるげる
③③
③③複数人複数人複数人複数人のののの作業員作業員作業員はチェーンを作業員はチェーンをはチェーンをはチェーンを 引
引 引
引っっっっ張張張張ったりったりったり緩ったり緩緩緩めたりすることにめたりすることにめたりすることにめたりすることに より
より より
より、、、、解体対象機器解体対象機器解体対象機器解体対象機器ををを横を横横横にににに倒倒倒倒すすすす
④
④
④
④解体対象機器解体対象機器解体対象機器解体対象機器をををを台車台車台車に台車ににに載載載せ載せせせ て
て て
て解体作業場所解体作業場所解体作業場所や解体作業場所やや保管所や保管所保管所保管所へへへへ運運運運 搬搬
搬搬
天井
チェーンブロック
チェーン
作業員A 台車
図 A.4: 事前説明資料(4/22)
解体協調作業の問題点
5
複数人による協調作業を安全・円滑に行うためには、事前に:
①計画立案に複数人の作業員の詳細な分業を考える
②自分の仕事の内容と他の作業員とどう協調すれば良いを理 解
解体作業の立案を紙で書くことについて:
①作業機器を配置した後、作業の過程を直感的に見えない
②作業機器の位置とどう作業を検証できない
事前に複数人の作業員の協調作業をシミュレーションにより仮想 的に実施し様々な検討を行えるようにすることは非常に重要
図 A.5: 事前説明資料(5/22)
本システムの概要
拡張現実感技術を用いたプラント解体協調作業シミュ レーションシステムPDCW(Plant Dismantling
Collaboration Work)である
→計画立案を支援
→作業員が自分の仕事を直感的に体験•把握 作業機器を作業現場に仮想的に配置できる 配置された作業機器を移動、回転できる
チェーンを操作し、解体機器を横に倒す過程をシミュレーションで きる
台車を利用し、解体機器を運搬する過程をシミュレーションできる 複数人の協調作業を支援できる
6
図 A.6: 事前説明資料(6/22)
協調作業システムの概要
画面が大きく、タッチジェスチャで 入力が行えるiPad2
チェーンブロックなど作業機器を仮 想的に配置
拡張現実感を用いて、配置された 対象を直感的に提示
全員の位置を確認できる インカムを用いて作業員間で会話 作業員の操作を他の作業員へ転送 デバイスに全員の操作を統合
7
解体機器 チェーンブロック
チェーン 解体機器 携帯 モデル
デバイス
作業現場 インカム
事前に作業現場で解体協調 作業をシミュレーション
図 A.7: 事前説明資料(7/22)