せてしまう」といった趣旨の回答からも読みとることができる。前述の尺度における基本 的な行動因子は、まさにこの観点を抽出する尺度と考えられる。従って調査の結果から、
学年においては一年生が、性別において女子が高い態度得点を示し、学校によりばらつき が生じ、地域性にも左右されることが明らかになった。その学校において相対的な評価基 準を教師は設定するであろうが、本来の評価観点における「態度」とは異なった面を評価
している可能性があり、生徒個々を正当に評価できない状況であることが考えられる。
6.1.2 「関心・意欲・態度」の評価における教師と生徒の評価に関する比較
評価基準は教師であろうと、生徒であろうと、個人において設定される。これはFestinger の社会的比較過程の理論注)において「他者の意見や行動、能力との比較を行うことにより 自己の評価基準を設定する」と述べられており、授業評価の1つの方法として、自己評価 の利用は有効である。つまり、評価の客観的な観点から考えると、必ずしも教師の評価自 体が客観的であるとは言えず、前節の「態度」についての評価に関して述べたような状況 も起こり得る。従って、客観的な評価は、教師の評価と生徒の自己評価、相互評価等の複 数の評価を総括することが必要であると考えられる。また、評価は客観的なものでなくて 良いという極論を唱えるケースも少なくないが、それは、社会的比較過程の理論において 考えると、評価しようとする者があらゆる影響を受けることなく、常に客観的な立場、も のの見方により、評価できていなくてはいけない。そうでなければ、評価される側が、表 面的にでも評価者の基準に沿うような行動をとる状態を作り出すことが予測される。その 結果、評価に左右されるだけの人間を作りだし、さらにそれが不得手な人間は良さを評価
されず埋もれるケースも生じる可能性がある。
本研究における第3章において、教師の評価と生徒の自己評価を比較した結果、達成感・
意欲や模範的な行動において、生徒は自己を高く評価する基準を設定する傾向があり、不 安感・恐怖感は逆に教師の方が高い基準を設定する。不安感・恐怖感は前節で述べたよう に自己効力感を低減させる可能性がある。調査の結果から、教師が恐怖感・不安感を捉え にくい生徒(態度得点の低い生徒=不安感・恐怖感の低い生徒)については、教師側の先 入観により生徒を把握できない可能性があるので、製作に入る前に予備調査を行い把握す る必要がある。また、達成感・意欲は授業を通して一貫性があるものではなく、形成的評 価を行う必要がある。さらに、生徒自身が自己の意欲や模範的な行動を評価する場合、一 般にいわれる 社会的望ましさ が回答結果を歪ませることが想定される。このような結 果から、意欲面を客観的な評価を行おうとする際、複数の評価を使用することは必要であ るが、ただ単に複数の評価を統括するだけではだめで、統括するための一定の指標を設け る必要がある。
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注)… 1.人には自分の意見や能力を評価しようとする動因がある。2.人は客観的または物理的な手段が 利用できない場合、他者の意見や能力との比較を行うことによって自己を評価する。3.他者と 自分を比較しようとする傾向は他者の意見や能力の差が増大するにつれ減少する。という論理
6.1.3 生徒のものづくりに関する興味と教師の題材設定の現状把握
平成14年度より実施される指導要領において「A:技術とものづくり」、「B:情報と コンピュータ」という内容が技術分野の中に設けられ、従来の木材加工、金属加工、機械、
電気、栽培は内容Aに統合され、情報基礎が単独でBとなった形である。しかし、目標は 平成元年と文言は若干違うものの、その内容において大きな変革は見あたらない。指導要 領の上での変化にともなう教育現場での対応は様々で、それぞれの教師が教育目標に則り 教材開発において試行錯誤している状況である。しかし、生徒を主体とした「関心・意欲・
態度」の観点から捉えると、教師の興味の対象において教材開発を行っている状況、ある いは、授業における意欲を高めるためのパフォーマンス重視の教材開発を行っているので はないかという疑問が持てる。評価をするという立場においてもこのことは重要で、生徒 のものづくりに対する興味を把握することから教師は題材設定を行うことで、「生活や技術 に対する関心」、「自ら学ぶ意欲」等が増すと考えられる。
調査の結果から、第4章において、生徒には「必要」「欲求」「嗜好」、教師には「感情」
「技術」「個人」という要素が抽出された。生徒においては自分が必要としているもの、単 に欲しいと考えているもの、自分の趣味に関わるもの又は、好きなものに対し興味を持ち、
教師のよろこぶ・記念に残るもの、技術の教科として内容を持つもの、日常生活で役立つ、
必要としているものを題材設定の動機として設定するという結果が得られた。つまり、生 徒の興味と教師の題材設定と結びつける点は、回答の内容から「必要」一「個人」、「欲求」
一「技術」、「嗜好」一「感情」といえるであろうがその結びつきにおいては単純なもので はなく、他の要素との関係も存在すると考えられる。最も回答内容として近いと考えられ る「嗜好」一「感情」において、「嗜好」は「十人十色」という言葉があるように教師側が 統制することはきわめて難しい。これらの要素から唯一、問題解決の糸口になると考えら れるのは「必要」である。地域において生活様式は様々であろうが、生徒の要素「必要」
においては個人の欲求や好みより統制は容易であると考えられる。生徒の興味を喚起する ための題材設定において、生徒の「必要」に応じることのできる題材に教師の技術的な内 容を盛り込むような方法をとることが有効ではないかと考える。
6.2 具体的な評価法の開発に関して
緒論で述べた「関心・意欲・態度」の評価における一般的な方法に関する問題点を改善
する具体的な方法について、これまでの調査の結果から考察する。
客観性についての問題については、信頼性のおける評価尺度を用い、教師、生徒におけ る自己、相互等の複数の評価を活用する必要がある。当然、生徒の自己評価と教師の評価 の比較結果におけるような評価基準の差は起こり得ると考えられるので、複数の評価を結 びつけるための指標の準備が必要である。観察時間の問題、耐性の問題については、評価 尺度の繰り返しテストにおける妥当性を検証するとともに、尺度における因子抽出を行い、
各因子を活用して調査の簡素化を試みる。性格や個性などの内面的問題においては、生徒 個々の性質に照らし合わせ、予備調査などを用いることによって個人差を統制できるよう な取り組みを行い、客観的な評価を用いて多面的な測定をする。生徒のセルフモニタリン グにおいては、弁別可能な質問項目を設定した評価尺度を用い、形成的評価の結果をフィ ードバックし、自分の集団における位置づけを確認させる。また、授業自体においても、
生徒のものづくりに関する興味の要素として得られた事項を考慮し、題材設定に盛り込む ことにより、意欲的に取り組む態度を統制できると考える。
6.3 おわりに
本研究を通じて、観点項目「関心・意欲・態度」について問題提起、生徒の製作学習に おける情意的側面、評価活動、興味の要素についての傾向を調査してきたが、教育現場に おける諸問題を解決し、具体的な実践に耐えうる評価については緒についたばかりである。
今後においては教育現場にもどり、本研究の結果をふまえ、仮説における検証を行ってい く所存である。
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