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結論

ドキュメント内 修士学位論文 (ページ 100-105)

 環境問題と資源・エネルギー問題の同時解決に向けた取り組みとして,化石資源に代わる バイオマスの利活用に大きな期待が寄せられている.このため,世界中で毎年大量に生産さ れるとうもろこしは持続可能性が極めて高い資源として,その価値が見直され始めている.しか しながら,現状のとうもろこし利用は主に実部を対象としており,茎・葉部は未利用のままである.

したがって,とうもろこしの廃材も含めた高度利活用に向けた研究開発が求められる.

 このような観点から,本研究ではとうもろこし茎部からの抽出繊維の引張強度特性を評価す るともに,これを強化繊維材として,やはりとうもろこし等の植物由来のポリ乳酸系ポリマーをマ トリックス材としたとうもろこし長繊維強化GCの製造プロセス条件の最適化を目的とし,とうもろ こしの茎部から抽出した繊維,およびとうもろこし長繊維強化GCの基本的特性として重要な 引張強度特性に及ぼす種々のプロセス条件の影響について綿密に検討した。

 各章で得られた主要な成果は以下のように要約できる.

 第1章は緒論であり,とうもろこしの利活用の現状と構造部材としての天然繊維,生分解性 プラスチック,及びGCに関する研究動向を概観し,先行研究から浮彫りになった課題を示し,

本研究の意義と目的を明確にした.

 第2章では,先行研究において比較的高い引張強度特性を有すると評価された多目的品 種である「おおぞら」種を用いて,とうもろこし繊維の機械的特性評価について検討した.その 結果,とうもろこし茎部には表皮付近にうろこ状の表面形状を有する単繊維の集合体が存在し ており,茎の直径が雄穂から根にかけて太くなるのに対応して,その本数は増加傾向を示すこ とが観察された.また,とうもろこし繊維の引張強度特性は著しいばらつきを示すため,茎から の繊維抽出部位毎に分類して統計的評価を試みた結果,引張強度特性が繊維抽出部位毎 にワイブル統計によって評価できることを明らかにした.そして茎最下部や,雌穂直下の茎部 から抽出した繊維に比べて,雌穂より下部の茎中央部分より抽出した繊維が優れた引張強度 特性を有すること,それゆえこの中央部から抽出した繊維がコンポジットの強化繊維材として 最適であることを明らかにした.

 第3章では,とうもろこし長繊維の積層技術とGC圧縮成形機の設計について検討した.そ の結果,麻挽き機械のメカニズムを参考に作製した繊維抽出器具により,とうもろこし茎繊維を 繊維方向に整列させた状態で,Hemp繊維東とほぼ同様の線粗さを有する繊維束の抽出方 法を確立した.そして,その繊維束を新たに設計したGC圧縮成形機に適用することにより,道

切に整列した繊維束を含有したGCの製造に成功した.

 第4章では,第2章で得られた新知見に基づき,第3章で設計した成形機を用いて,「おお ぞら」種の雌穂より下部の茎中央部分より抽出したとうもろこし長繊維強化GCの機械的特性 に及ぼす積層プロセス諸条件の影響について,異なる冷却条件を用いて製造したGCの結晶 化ならびに引張強度特性を評価し,損傷解析に基づく考察を加えた.その結果,GCの引張 強さとヤング率は繊維含有率の増加に伴い向上し,複合則に従うことが確認された.また,溶 融成形後空冷したGCは比較的高い引張強度特性を示し,さらに繊維束にスリットを入れマトリ ックスとの接触面積を増やすことにより引張強度特性が向上することを見出した.そして,溶融 状態からの急冷固化によって製造したGCの結晶化度は,繊維含有率の違いによらず同程度 である一方,空冷固化では,強化繊維材がマトリックス材の結晶化を促進することを見出した.

さらに,損傷解析からは,急冷固化によって製造したGCは繊維/マトリックス界面の密着性が 比較的良好に保たれる一方,空冷固化によって製造したGCは繊維の引き抜けが多数認めら れ,繊維/マトリックス間で界面はく離を容易に生じていたことなどを明らかにした.そして,い ずれの場合においてもマトリックス材であるしACTY#9010が起点となりGC全体の損傷へと結 びついたと結論された.これらの結果を総括して,とうもろこし長繊維強化GCの今後の技術課 題について,マトリックス材および強化繊維材の選定と関連付けた考察と提案を試みた.

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