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図4−6繊維体積率と引張強度特性の関係
60
4.3.2ポリ乳酸ポリマーおよびグリーンコンポジットの結晶化に及ぼす冷却条件と繊維の影響 種々の製造プロセス条件を用いて製造したポリ乳酸単体試験片およびGCのDSCサーモ
グラムを図4−7に,結晶化度を表4−5に示す.
空冷固化によって製造したポリ乳酸単体試験片と種々の繊維含有率のGCに関して図4−7 より,繊維体積率51%のGCは発熱ピークが現れず,ポリ乳酸単体試験片よりも結晶化度が高 いことがわかった.このことから,A.L.DuigouらのF1ax/PLLAバイオコンポジットの研究39)にて 観察された繊維の周辺に発生する結晶変換領域のように,空冷固化における冷却速度ではと うもろこし繊維がポリ乳酸の結晶化における核形成位置を提供する役割を果たしている可能 性が示唆される.
さらに表4−5より,急冷固化によって製造した種々の繊維含有率のGCの結晶化度は,とう もろこし繊維周辺から提供される結晶核の影響によりポリ乳酸単体試験片より若干高いものの,
結晶化度が5%程度に抑えられていることから,本研究で用いた急冷固化による冷却速度が GC製造時のポリ乳酸のアモルファス化に有効であるものと考えられる.
以上より,とうもろこし繊維がポリ乳酸の結晶化における核形成位置を提供すること,急冷固 化によって製造したGCの引張強度特性に及ぼす諸因子にはマトリックス材であるポリ乳酸の 結晶化の影響が極めて小さいこと,さらに,GCの引張強度特性に及ぼす冷却条件の影響は,
ポリ乳酸の結晶化と関連づけて考えられることが明らかになった.
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s
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2
u。一〇
〇
工
PLA(AC)
GC(Vf=28%,AC)
GC(Vf:51%,AC)
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s
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2
u.一〇
〇
工
Pリ(WQ)
GC(Vf:28%,WQ
GC(Vf:51%,WQ)
50
図4−7
100 150 Temperature(oC)
種々のポリ乳酸単体試験片およびGCのDSCサーモグラム
表4−5種々のポリ乳酸およびGCの結晶化度
Crystallinity(%)
Pリ(AC) 8.2 Pリ(WQ) 3.4 GC(W28%,AC) 16.1 GC(W28%,WQ) 6.3 GC(W51%,AC) 14.1 GC(W51%,WQ) 4.6
190
4.3.3ポリ乳酸ポリマーおよびグリーンコンポジットの損傷解析
種々の製造プロセス条件を用いて製造したGCの破断後の試験片平行部の厚み方向概観 を図4−8に,正面方向概観を図4−9に示す.図4−8より,空冷固化によって製造したGCは一 層一層に分かれ厚み方向に広がっており,繊維含有率の高い場合はその傾向が顕著である ことがわかる.そして,引張荷重を経験し細かくなったマトリックスが選択的に繊維に付着して おり,繊維の破断は平行部の至る所で起きているのがわかる.急冷固化によって製造したGC はいずれの場合も厚み方向における目立った変形は観測されず繊維はほとんど同一面で破 断しているのが確認された.図4−9より空冷固化によって製造したGCは平行部全体にき裂が 入っており,繊維束の破断箇所も一層ごとに異なる一方,急冷固化によって製造したGCが特 定箇所のき裂が大きく進展して破断に至っていることがわかる.
次に,種々の製造プロセス条件を用いて製造したポリ乳酸単体試験片とGCの同一破面の 顕微鏡写真とSEM画像を図4−10〜4−13に示す.図4−10より,空冷固化によって製造したポ リ乳酸単体試験片は断面左下に入った小さなき製を起点に同一平面全体に伝播し破断して いることから,微小な欠陥に敏感に反応する脆い性質があることがわかった.急冷固化によっ て製造したポリ乳酸単体試験片は断面右上より大きなき裂が入り内部に複数のき製を発生さ せた後に断面全体に伝播し破断していることから,微小な欠陥に対して比較的耐性があること がわかった.これらの特性により種々のGCの破面について説明できる.図4−11より,空冷固 化によって製造したGCの破面は繊維束ごとに区切られており,マトリックスのほとんどが繊維 束の表皮側とギャップを形成しており,繊維束の内側に接着していた.これは,表皮側が滑ら かな表面状態を持っため接着性が弱く,荷重を受けて発生したマトリックスの複数の細かいき 裂が繊維束の表皮側の界面で合体したことによると考えられる.そして,繊維の破断が繊維束 の層毎に繊維束の内側のき裂の近傍に発生していたことからも,複合材料の引張強度特性に 重要な繊維/マトリックス間の摩擦力が多く働いていたと考えられる.その一方で,図4−12より 急冷固化によって製造したGCはアモルファス状態を相当程度維持していることにより良好な 密着性を有しているため,繊維束は一体化しており,同一平面で破断している.空冷固化によ って製造したGC同様に繊維束の内側の方が表皮側よりも良い接着性を有しているため,繊 維の引き抜けは比較的接着性の弱い表皮側/マトリックス間の界面と繊維同士の界面におい て優先的に生じたものと考えられる.また,繊維同士の接着の弱さにより,図4−13上段のような 繊維方向に裂けるように破断するケースが多く観測された.図4−13下段よりスリットを入れて空
冷固化によって製造したGCの破面は繊維の位置が多少移動しているものの,繊維同士が離 れているため繊維束ごとに区切られることなくほぼ同一平面で破断している.これは繊維束に よる隔てがないことによりマトリックスが大きなままで存在できるので,マトリックス内で発生した ぎ裂が大部分に一気に広がるためであると考えられる.また,繊維が独立して存在するため,
繊維/マトリックス間の荷重伝達が抽出し乾燥させたままの状態の繊維束よりも比較的優れて いたと推察される.以上のような損傷解析結果を総括して,2種類の冷却方法におけるGCが 破壊に至るまでの引張損傷挙動を模式的に図4−14に示した.いずれの場合においてもマトリ ックス材であるしACTY#9010が起点となりGC全体の損傷へと結びついたと考えられる.
図4−8種々のGCにおける引張試験後の試験片平行部の厚み方向概観
図4−9種々のGCにおける引張試験後の試験片平行部の正面方向概観
図4−10種々の製造プロセスを用いたポリ乳酸単体試験片の破面の顕微鏡写真とSEM画像
800μm
200μm
800μm
200μm
図4−11GCの破面の顕微鏡写真とSEM画像(Vf=28,51%,AC)
図4−12 GCの破面の顕微鏡写真とSEM画像(Vf:28,51%,WQ)
200μm二
回4−13GCの破面の顕微鏡写真とSEM画像(Vf:51%,WQ側面.Vf:28%,ACスリット有)
Pu11out
一nte㎡acial Gap
Main Crack
Time
図4−14
Fracture
Su㎡ace
2種類の冷却方法におけるGCの引張損傷挙動の模式図(ひずみ速度一定)4−3.4グリーンコンポジットの損傷解柵こ基づく今後の技術課題
とうもろこし長繊維強化GCの引張強度特性向上に向けた指針について考察する.
本研究では,GCの引張強度特性は強化繊維材の諸特性のばらつきが支配的要因である と考えた.しかしながら,本研究で用いだしACTY#9010は十分な湿度管理を行っていたもの の長期保管によって諸性質の劣化が進行している可能性が強いため,今後は種々の延性レ ベルを有する新しいポリ乳酸系ポリマーを用いて製造したGCの引張強度特性を調べ,この推 察が適当であるかを検証する必要がある.その上で,やはり引張強度特性の低い強化繊維材 によってGCの破壊が誘発されることが明らかになった場合,抽出後の繊維の調整が求められ る.筆者が所属する研究室では,強化繊維材として茎部から抽出したままのシート状の繊維束 を通例として用いており,これは個々の繊維同士で繋ぎとめられた状態のためマトリックスの延 性が十分に活用されていない上に,単繊維本来の引張強度特性が十分に発揮されない荷重 伝達機構の欠如をM.Daudaは指摘している工4).
また,本研究で用いた積層用とうもろこし繊維束は表裏で異なる様相を呈し,特に表皮側の 表面形状め滑らかさにより繊維/マトリックス界面にギャップによる巨視的な破壊を引き起こし ているため,茎部から抽出した繊維束をより細かく分けて単繊維に近い大きさにする,もしくは 繊維を撚り糸状にしてマトリックスに曝される表皮を少なくすることで,引張強度特性が優れ巨 視的な破壊が起こり難いGCが製造される可能 性が期待できる.
また,空冷固化によって製造したGCは,強化繊維材によってポリ乳酸の結晶化が促進され ていたことや,表皮側の繊維/マトリックス界面にギャップを生じていたことから引張強度特性 だけでなく,優れた熱特性や衝撃特性などを有すると考えられる.一方,水冷固化によって製 造したGCは,繊維/マトリックス界面の密着性が比較的良好に保たれることがわかったため 優れた曲げ特性なども有すると考えられる.
これらのことより,今後は基本的特性として重要な引張強度粋性に加え,熱特性や衝撃特 性,曲げ特性など実際の使用環境を考慮した最適製造プロセス諸条件の検討が望まれる.