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X- band EPR(電子スピン共鳴)

3. フッ素置換フェニルニトロニルニトロキシドの構造と磁性

3.7. 結論

士の接近が顕著に観測された。これらのことから類似の構造を有しているにもかかわらず、

僅かな分子間接近の違いで磁気相互作用は大きく変化し、NO 基とフェニル基の接近には 強磁性相互作用、NO基同士の接近には反強磁性相互作用がもたらされる結果が得られた。

-2,3,6-F3PNN においては結晶作製条件を変えることで晶系の異なる多形を得ることに

成功した。結晶内には結晶学的に独立な 2 分子が存在し(分子 A、分子B)、それぞれが二 量体を形成していた。分子AはNO基同士の接近が観測され、分子BはNO基とフェニル 基パラ位炭素原子との間に接近がみられ、それぞれ二量体構造を形成していた。磁気測定 の結果からpT値の温度依存性は、反強磁性的な挙動を示したが温度低下に伴い、4 K付近 で一定値(pT = 0.247 emu K mol1)をとった。磁化の磁場依存性は1 T以上でS = 1/2の半分 の値で一定値をとったことから、1/2 molが反強磁性的に結合し、S = 0種を形成している と考えた。また、磁化曲線をブリルアン関数と比較した結果、残りの1/2 molは強磁性的 に結合し、S = 1種を形成することが示唆された。これらの結果からpT値の温度依存性を 2 種類のダイマーモデルで解析を行い、二量体内磁気相互作用を検討した結果、強磁性相 互作用2JF/kB = 16.2 Kと反強磁性相互作用2JAF/kB = 22.7 Kと見積もられた。一方、0.4 K における磁化測定の解析の結果、1 T以上で磁化はS = 1/2が1/2 mol存在するときの値で 一定値をとり、その後S = 1/2が1 mol存在するときの磁化の値(5600 emu mol1)に達した。

このときの磁化の微分曲線から偏極点は17.5 T付近に観測され、分子A二量体内反強磁性 は2JAF/kB = 23.5 Kと見積もられた。この結果は、pT値の温度依存性を反強磁性ダイマー モデルで解析を行って得られた値とほぼ一致する。しかし、結晶構造を詳細に検討した結 果、分子Aによって形成される二量体間にフェニル基同士の接近が見られた。このフェニ ル基同士の接近は反強磁性相互作用および強磁性相互作用がもたらされる可能性が考えら れることから、分子 A は反強磁性交互一次元鎖または強磁性反強磁性交互一次元鎖を形 成していることが示唆された。まず、pT 値の温度依存性を強磁性ダイマーモデルと反強 磁性交互一次元鎖モデルとの和として解析を行った結果、分子Bダイマー内に働く強磁性 相互作用は2JF/kB = 21.4 K、分子Aは交替比 = J1AF/J2AF = 0.14、反強磁性相互作用2J1AF/kB

= 24.0 K、2J2AF/kB = 3.4 Kが働くと見積もられた。また、pT値の温度依存性を強磁性ダ イマーモデルと強磁性反強磁性交互一次元鎖モデルとの和として解析を行った。その結 果、分子Bによって形成される二量体内に働く強磁性相互作用は2JF/kB = 15.0 K、二量体 間反強磁性相互作用は2zJ’AF/kB = 0.14 Kとなり、一方、分子Aは交替比 = J’F/JAF = 0、

反強磁性相互作用2JAF/kB = 22.3 K、強磁性相互作用2J’F/kB = 0 Kと見積もられた。いずれ のモデルによる解析結果も、分子Aによる交互一次元鎖の交替比は0.2以下と見積もられ

たことから、磁気相互作用を支配しているのはNO基同士(O···O 3.102 Å)の接近によって 形成される二量体構造と決定した。2種類の二量体構造の分子パッキングをみると、まず、

分子Bにおける二量体内にはNO基とフェニル基による接近が観測された。このときのラ ジカル平面とフェニル基が成す二面角の角度は 60.74と大きく、またhead-to-head で分子 が接近し、NO基同士は互いに遠く離れるような分子配置を示した。分子Aにおける二量 体内にはNO基同士の接近が観測された。このときのラジカル平面とフェニル基が成す二 面角の角度は71.64と大きくNO基同士の接近が顕著にあらわれる結果となった。これら の結果から、分子Bによって形成される二量体構造に強磁性相互作用が働きS = 1種を形 成し、また分子Aで形成される二量体内には反強磁性相互作用が働きS = 0種を形成する と決定した。

2,3,4,5-F4PNN はフェニル基パラ位に水素原子ではなくフッ素原子が置換されているた

め、その他の化合物で結晶内に観測された水素結合鎖はみられなかった。また、結晶学的 に独立な 2 分子(分子A、B)を含み、a軸方向にそれぞれ均一な一次元鎖を形成していた。

分子Aによる一次元鎖内分子間接触はNO基とNNのO-N-C-N-O中心炭素原子との間に接 近がみられた。一方、分子Bにも同様の分子間接近が観測されたが、O-N-C-N-O中心炭素 原子から僅かに偏って配置していた。静磁化率の温度依存性の測定では温度低下に伴い、

pT 値は上昇していき強磁性的な振る舞いを示した。しかし、磁化の磁場依存性から飽和 磁化の約半分で一定値をとるような挙動を示したことから、強磁性相互作用と反強磁性相 互作用の2種類の磁気相互作用の存在が示唆された。これら分子パッキングと磁気測定か ら分子Aには強磁性相互作用、分子Bには反強磁性相互作用が存在していると考えた。よ ってpT値の温度依存性を2種類の一次元鎖モデルで解析を行った結果、分子Aには2JF/kB

= 9.5 K、分子Bには2JAF/kB = 7.7 Kと見積もられた。NO基とNNのO-N-C-N-O中心炭 素原子との間には強磁性相互作用が生じることが以前に報告されている。今回得られた

2,3,4,5-F4PNNにおける NO基とO-N-C-N-O 中心炭素原子との接触は磁気的に非常に敏感

で、NO基がO-N-C-N-O中心炭素原子上から僅かに一方のNO基上に偏ると、NO基同士

の接近が有効的に働き、反強磁性相互作用が生じることが分かった。

以上、F3PNNおよびF4PNNの合成を行ない、5種類の単結晶を作製した。それらの構造 と磁気特性について調べ、分子間接近と磁気相互作用の関係を明らかにした。また、隣り 合う分子間でラジカル基の相対配置が磁気相互作用に敏感に影響を与える結果を得た。そ れぞれの化合物における分子間接近と磁気相互作用の関係をTable 21に示す。

Table 21. 分子間接触と磁気相互作用

空間群 分子間接触 磁気相互作用

2,3,5-F

3

PNN P2

1

/c

2J

F

/k

B

= 6.1 K

2J

AF

/k

B

= 1.6 K

2,3,5,6-F

4

PNN P2

1

/c

2J

F

/k

B

= 5.5 K

2J

AF

/k

B

= 1.4 K

-2,3,6-F

3

PNN P2

1

/n

2J

1AF

/k

B

= 18.0 K

2J

2AF

/k

B

= 0.6 K

2,3,4,5-F

4

PNN Pa

2J

F

/k

B

= 9.5 K

2J

AF

/k

B

= 7.7 K

-2,3,6-F

3

PNN

2J

F

/k

B

= 16.2 K

2J

AF

/k

B

= 22.7 K

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