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第 4 章 金クラスター界面にポルフィリン系超分子構造を有する光化学的機能制御シ

4.1. 序論

4.1.1. ロタキサン

ロタキサンはドーナツ型の大環状分にダンベル型の軸分子が貫通した構造を持つ分子 複合体の総称で、超分子化学の一大分野を形成している。互いの分子が位相幾何学的に束 縛されているという際立った特徴は、分子スイッチング等の機能発現のための構成単位と して注目されている。ロタキサンの合成は1967年にまで遡る1)。ハリソンらはC30環状ア シロイン (α-ヒドロキシケトン) をドーナツとして用いている。これをピリジン中、無水コ ハク酸と反応させることにより得られるヘミコハク酸塩をナトリウム塩とした後、これを メリフィールド樹脂(クロロメチル化ポリスチレン)に固定化した。次いでここに長鎖アル キル鎖を有するジオール(ダンベルの持ち手部分)、塩化トリチル(ダンベルの両端部分)、ピ リジン、N,N-ジメチルホルムアミドおよびトルエンの混合物で処理した。偶然ドーナツに 糸通しされたジオールの両端をトリチル化により封止することでロタキサンを得ようとし たのである。得られたのはほとんどが糸通しされていないダンベル型のビストリチルエー テルで、糸通しされたのはわずかに痕跡量であった。この封止反応を70回繰り返し、樹脂 を洗浄後、炭酸水素ナトリウム水溶液中で還流することによりロタキサンを 6%の収率で 得た (図4.1)。

図4.1 ハリソンらが合成したロタキサン

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このように、初期のロタキサン合成は確率論的な糸通しによるもので大変収率が低かっ た。間もなくドーナツとダンベルの間の分子間力を利用した、積極的な合成が考案された

2)。この内、クラウンエーテルと二級アンモニウムを用いたロタキサン合成は1995年にコ ルチンスキーらによって初めて報告された 3)。クラウンエーテルの酸素原子とアンモニウ ムとの間の水素結合により、これらの化合物は非常に安定な擬ロタキサンを形成する。効 率的な擬ロタキサン形成にはN-H結合が必要で、三級アンモニウムや四級アンモニウムは 擬ロタキサンを形成しないことが知られている4)。24-クラウン-8の環内の空孔は二級アン モニウムが貫通するのに十分に大きい。後に、21-クラウン-8でも同様のロタキサンの形成 が可能であることが明らかとなっている 5)。このようなドーナツとの親和性を有する軸分 子上の原子団を特別に「駅」と呼ぶ。さらに彼らは、形成が容易で安定なジスルフィド結 合(S-S)を用いた高収率な対称[3]ロタキサン合成を報告してい (図4.2) 6)

図4.2 コルチンスキーらが合成した二級アンモニウム/24-クラウン-8-エーテル型ロタ キサン

クラウンエーテルは二級アンモニウムの二つの水素原子と水素結合により安定化され ているが、脱プロトン化すると今度はむしろ窒素原子上の非共有電子対とクラウンエーテ ルの酸素原子上の非共有電子対との間で静電的反発が起こる。これを駆動力とした、アン モニウム塩の酸塩基反応による往復運動は1997年にマルティネス-ディアスらが初めて検 討した (図 4.3) 7)。この往復運動は同じ場所を行ったり来たりすることからシャトリング とも呼ばれる。このシステムは、2 つの異なる駅を利用した巧妙なものである。ビピリジ ニウム塩がクラウンエーテルと包接化合物を形成することを利用したロタキサン合成は、

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ストッダートらによりアンモニウム塩を用いる方法よりも早くから知られている 8)。ビピ リジニウムとクラウンエーテルとの相互作用には、電荷移動、π-π相互作用、水素結合そし て双極子-双極子相互作用などがあり、それらの組み合わせがロタキサン形成で最も重要な 糸通しの原動力となる。二級アンモニウム/クラウンエーテルの相互作用はビピリジニウム

/クラウンエーテルのそれよりも十分に強い。両者を同一軸上に有する軸分子上の1つのク

ラウンエーテルは定量的に二級アンモニウム駅に存在する。二級アンモニウム部分を中和 すると、クラウンエーテルはビピリジニウム側に移動する。ビピリジニウムは酸塩基反応 に供出しうる水素原子を持たない。ジベンゾ-24-クラウン-8 はビピリジニウムとの相互作 用が弱く、単に混ぜただけでは擬[2]ロタキサンを生成しない。これにより、合成の際に軸 分子上の両方の駅にクラウンエーテルが導入されてしまうのを避けることができる。

図4.3 酸塩基反応により駆動されるシャトリング運動

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4.1.2. 本章の目的

本章では、金微粒子表面でのポルフィリン修飾ロタキサンの構築とその光化学的挙動の 検討を目的とした。まず我々は、ロタキサン構造としては二級アンモニウム/24-クラウン -8 エーテルを用いることとした。ロタキサン封止基の反対側に金微粒子と高い親和性を有 するチオール基 (-SH) を有する半ダンベル型軸分子 4.16および4.22を設計し、これとポ ルフィリン修飾大環状分子とを混合することにより[2]擬ロタキサンを得た。ついでこの擬 ロタキサンと金微粒子と有機溶媒中室温で混合することで金微粒子表面にポルフィリン修 飾ポリ[3]ロタキサン構造を構築した (4.23および4.24)。ここで、金微粒子とポルフィリン との間にはいかなる共有結合も存在しない。本章ではこれら金微粒子上でのポルフィリン 修飾ロタキサンの光化学的挙動について、蛍光量子収率 (ΦF)、一重項酸素量子収率 (ΦΔ) により定量的に議論する。

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